戦士の条件 ―魂― ◆F3/75Tw8mw
(加頭か……あの男、一体何者なんだ?)
場所は警察署の一室。
『未確認生命体対策本部』に割り振られたその部屋で、
結城丈二は現状を冷静に分析していた。
彼がこの殺し合いに招かれたのは、四国における再生デストロン軍団との決戦中。
V3の加勢に向かおうとした最中だった。
(先輩達に沖、村雨もここにはいるようだが……やはり、バダンが絡んでいるのか?)
ここで結城が真っ先に考えたのは、この殺し合いはバダンの仕業ではないかということだ。
そう考えた理由は、ずばり自分達……仮面ライダーにある。
迫り来るバダンの魔の手を払うべく、ライダー達は全員、日本の各地に飛んでいたのだ。
しかしそれが今、何人かの例外こそあるとはいえ、こうして一ヶ所にいきなり集められたのだ。
到底人間業とは思えない所業である……しかし、バダンにはそれができる。
遠く離れた空間と空間とを繋げる、転移魔法陣の力がある。
この不可思議な拉致も、あれを使われたならば納得がいく話だ。
(だが……それなら、どうして三影までここにいるんだ?)
しかし、バダンの仕業と考えるには、どうしても腑に落ちない要素が一つだけある。
それは、参加者の中に三影がいることだ。
バダンの人間、それも屈指の実力者である幹部をこんな場に参加させるなど、ありえるだろうか?
(加頭が何者か、まずは情報を集める必要がある。
もっとも、この会場に奴を知る者がいてくれたらの話にはなるが……)
その疑問をはっきりさせ、更には殺し合いをさせる目的を探る。
それには、加頭が何者かを知る事が必要不可欠だ。
(それと……これもなんとかしないといけないな)
続いて、結城は己の首に装着されている爆弾を指で擦った。
加頭に戦いを挑むにも、この首輪をつけられたままでは流石にどうしようもない。
何らかの方法で解除しなければ、抵抗したところで爆破されて終いなのだ。
無論、それは主催者達も重々承知している筈。
簡単には出来ぬ様、対策を立てているだろう。
しかし……逆に言えば。
それさえどうにかできれば、結城には首輪を解除できる手だてがあるのだ。
――――――ガシィッ!!
次の瞬間、結城は口元に微笑を浮かばせると同時に、その両の拳を勢いよく叩き合わせた。
そして、その動作をスイッチとして頭上に出現したヘルメットを、勢いよく装着し……彼は変身を遂げる。
「ムンッ!!」
もう一つの姿……仮面ライダー4号、ライダーマンへと。
「オペレーションアーム!」
続けて、彼は右腕のカセットアームに一本のアタッチメントを挿し込み、その形状を変化させる。
複数のマニュピレーターを展開する、精密作業用の義手……オペレーションアームだ。
これにはかつて、応急処置レベルとはいえど、ベルトを粉砕され重傷を負った風見の治療にも成功した実績がある。
首輪解除という観点からすれば、まさしく最適な装備なのだ。
(……成る程……一応、繋ぎ目らしきものがあるにはあるか。
恐らく、無理矢理こじ開けようとすれば爆発するタイプだな……)
展開したアームのマニュピレーターで首輪全体を隈無く触り、その感触を確かめてみる。
そこから分かったことは、首輪の後ろに繋ぎ目らしきものがあること。
ここから無理矢理にこじ開けることも出来なくはないだろうが、やれば間違いなくその瞬間に爆発するだろう。
(一時的にでもいいから首輪の機能をマヒさせられれば、その瞬間を狙っての解体は可能か?
なら、こいつの構造……動力が分かれば、或いは……)
ならば、爆発させずに解体するにはどうすればいいか。
結城は思考をフルに稼働させ、あらゆる可能性を頭の中でシミュレートし……
(……いや……待てよ?)
突然、それを停止させた。
否……停止させざるを得なかったと言うべきだろうか。
彼は、ある事に気づいてしまったからだ。
(そうだ……そもそも、こうして手を講じられる時点でおかしい。
加頭は、どうしてこいつを没収しなかった?)
何故、加頭達はこのオペレーションアームを没収しなかったのかと。
まさか、これを自分に持たせる危険性が分からない筈はない。
ならば油断か、或いは余裕か。
どちらにせよ、言えることは一つ……加頭は、結城がこうして動く事を承知の上で、オペレーションアームを敢えて支給したのだ。
(まずいな……だとしたら、迂闊には解体を試みられないぞ)
これは十中八九、加頭の仕掛けた罠だ。
恐らくこの首輪は、オペレーションアーム『では』解体が出来ない。
もしくは、オペレーションアーム『だけでは』解体が出来ないに違いない。
それに気付かず動いていたら、確実に首を吹き飛ばされていただろう。
やるならばもっと、何か特殊な器具が条件かが必要となってくる筈だ。
(……そうだ。
首輪と言えばあの時、加頭は妙な事を口にしていたな……)
――――――NEVERであろうと、砂漠の使徒であろうと、テッカマンであろうと。
――――――もちろん外道衆の方々も同様ですし、ソウルジェムにも同様の爆弾が取り付けられています。
加頭が、首輪についての説明をした時。
彼の口からは、聞きなれぬ幾らかの単語が飛び出してきた。
NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆。
これら四つは、自分達が仮面ライダーを名乗るのと同様に、何らかの部隊名・称号として考える事が出来る。
ソウルジェム。
加頭の発言からすると、恐らくこれは、装着している者にとって爆破されれば致命傷になるという何か。
恐らくは、仮面ライダー達にとっての心臓部―――ベルトに相当するものだろう。
ここまではいい。
別段怪しいと思える点もない以上、然程気に止めなくてもいいだろう。
しかし……問題は次の発言だ。
――――――加えて申し上げますと、時間を止めている間に取り外すことも不可能です。時間操作の影響を受けずに作動するよう出来ていますから
(時を止めるだと……?)
加頭は、参加者の中に「時間を止められる」者がいるという旨の発言をしたのだ。
確かに結城も、これまでの戦いにおいて多くの怪異を目にしてきた。
中には、全人類の脳内に破滅のビジョンを送り込む超能力や、四国を月面に丸ごと幽閉する暗雲という、想像を絶する現象も少なくはなかった。
しかし……そんなものと比較しても尚、時間の操作はあり得ない力だ。
それはもはや、奇跡の領域に踏み込んでいる。
(しかしあの状況では、奴がホラを吹く理由もない。
ならば、それが出来る者がこの参加者の中にいる……そう考える他ないのか)
結城は、自身の額より冷や汗が滲み出てくるのをしかと感じていた。
大首領ですらも不可能な業を可能とする者がこの殺し合いに参加しているなど、ゾッとする話だ。
そして……まだ見ぬ脅威は、それだけではない。
あの加頭が用いていたガイアメモリという道具や、先程推察したソウルジェムという装置。
他にも、人知が及ばぬ力がここには数多く存在するだろう。
それを前にして、果たして体一つでどこまで戦えるだろうか。
(それでも……とことんまで、やってみせるさ)
しかし結城に、闘う事への恐れはない。
目の前の脅威に目を背ける事を、彼は絶対にしない。
(この体がある限り……な)
他のライダー達と比較した場合、結城丈二―――ライダーマンの戦闘能力は、決して強いとは言えない。
それは彼が唯一、改造人間ではない生身の人間であるからだ。
如何に強化服で身体能力を高めているとはいえ、どうしても生粋の改造人間とは埋められない差がある。
それにも関わらず、彼は他のライダー達と共に肩を並べて闘う事が出来ている。
仮面ライダーの称号を名乗る事が出来ている。
それは何故か?
優れた知恵と武器を用いる事で、弱点をカバーしているからか?
確かに、それも彼の強みだろう。
しかし……何よりも、彼を強くしているものがある。
彼を、仮面ライダーたらしめているものがある。
(私も……仮面ライダー4号だ)
それは『魂』に他ならない。
一見冷静に見えるが、いつでも命を投げ出す覚悟がある。
改造人間であろうがなかろうが、助けを求める者があれば迷わず戦う事が出来る。
(加頭……お前の思い通りにはさせんぞ)
人知を超えた力を持つ者、人在らざる異形。
そんな者達が犇めくこの会場内においても尚、敢えて人の身で立ち向かう。
その意志の強さこそが……結城丈二の強さなのだ。
【1日目/未明 F-9 警察署】
【結城丈二@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:健康、ライダーマンに変身中
[装備]:ライダーマンヘルメット、カセットアーム
[道具]:支給品一式、カセットアーム用アタッチメント六本(パワーアーム、マシンガンアーム、ロープアーム、オペレーションアーム、ドリルアーム、ネットアーム)
[思考]
基本:この殺し合いを止め、加頭を倒す。
1:殺し合いに乗っていない者を保護する
2:本郷、一文字、沖、村雨と合流する
3:加頭についての情報を集める
4:首輪を解除する手掛かりを探す
5:三影は見つけ次第倒す。
[備考]
※参戦時期は12巻~13巻の間、風見の救援に高地へ向かっている最中になります。
※この殺し合いには、バダンが絡んでいる可能性もあると見ています。
※加頭の発言から、この会場には「時間を止める能力者」をはじめとする、人知を超えた能力の持ち主が複数人いると考えています。
※NEVER、砂漠の使徒、テッカマン、外道衆は、何らかの称号・部隊名だと推測しています。
※ソウルジェムは、ライダーでいうベルトの様なものではないかと推測しています。
※首輪を解除するには、オペレーションアームだけでは不十分と判断しています。
何か他の道具か、または条件かを揃える事で、解体が可能になると考えています。
※カセットアームの全アタッチメントが支給されている代わりに、ランダム支給品は持っていません。
また、硬化ムース弾は没収されています。
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最終更新:2014年06月14日 17:30