大沈没! ロワ会場最後の日


 謎の少女によって日本語ぺらぺーらが奇妙なロボットになって、突然現れた暴君怪獣タイラントと戦い始めてから既に大分時間が経っている。放送を聞いている余裕すらなかった。
 本当ならリラックマとぺらぺーらを助けたいが、目の前にいる仮面ライダー王熊もとても強い。これまで戦ってきたナイトメアやエターナルの幹部達に匹敵する実力を誇っていた。
 夢原のぞみが変身したキュアドリームは、この地で出会った呉キリカという少女と力を合わせているが、それでも王熊に決定的なダメージを与えられていない。
「だああああああああっ!」
 全力で地面を蹴って、キュアドリームは王熊に向かって突貫して、瞬時に目前まで到達する。そこから身体を一回転させて蹴りを放つが、王熊の持つベアサーベルに受け止められてしまう。
 ギン、と耳を劈くような衝突音が響いた直後、キュアドリームは王熊の仮面を目がけてパンチを繰り出したが、頭を軽くずらしたことでその一撃は軽々と避けられてしまう。反対側の手で同じことを繰り返すが、結果は同じだった。
「まだまだっ!」
「オラアアァァッ!」
 一発、二発とキュアドリームは打撃を与えようとするが、その度に分厚い刃によって阻まれてしまう。
 握り拳は幾度もなく刃を叩いているが、一向に砕ける気配はない。大気が破裂するような轟音が鳴り響くだけで、王熊は微塵も体制を崩さなかった。
 時折、キュアドリームの攻撃の合間を縫って、王熊はベアサーベルを一閃する。だが、キュアドリームは真横に跳んで回避した。無論、王熊の斬撃はそれで終わることはないが、振われる刃を確実に見切っている。
「ハアッ!」
 王熊はベアサーベルで突きを繰り出すが、キュアドリームは右足を軸に身体を捻ることで避けて、流れるように腕を掴む。
 そこからキュアドリームは渾身の力を込めて一回転をして、勢いよく王熊を放り投げた。
「どりゃあああああああああああああああ!」
「なっ……!」
 キュアドリームの叫びと共に、王熊の巨体は吹き飛ばされていく。華奢な体からは想像できないほどの力を誇るプリキュアだからこそ、可能な芸当だった。
 数メートルも浮かび上がっていく王熊の元に飛び込んでいく人影が見える。それは左右の手に六つの爪を煌めかせている呉キリカだった。
「行くよ!」
 ロケットのような勢いで王熊の上まで跳躍した彼女は両腕を高く掲げて、そのまま勢いよく両手の爪を叩きつける。ガキン、と耳障りな音が炸裂して、王熊の巨体は地面に叩きつけられた。
 激突の衝撃によって粉塵がもくもくと舞い上がり、視界が遮られていく。
 王熊を落下させたキリカは地面に着地して、キュアドリームの横に立った。
「キリカちゃん、ナイス!」
「喜ぶのはまだ早いよ! あいつはこれくらいじゃやられたりなんかしない!」
「おっと、そうだった!」
 思わずサムズアップを向けそうになったが、キュアドリームはその衝動を抑える。
 まだ戦いは終わっていないのだし、これくらいの攻撃で王熊はそこまでダメージを負っていない。戦いの経験からキュアドリームはそれを察していた。
 直後、煙の中に人型のシルエットが浮かび上がり、キュアドリームとキリカは本能的に構える。王蛇が仕掛けてくる前にキュアドリームは飛び掛かろうとしたが……
『ADVENT』
 粉塵の中より電子音声が響き渡る。
 急に響いてきた新たなる声によってキュアドリームが面を食らってしまう。一体何だったのかと思った、その直後だった。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
「えっ!?」
 大気を震えあがらせるほどの咆哮が響き渡り、視界を遮っていた煙が吹き飛んでいく。
 その中から現れたのは王熊だけではない。王熊の隣には、ヒグマのような巨大な怪物が立っている。
 現れた怪物・ヒグマプレデターは勢いよく飛びかかってきたのだ。
「グアアアアアアアアアアアアアッ!」
「わあっ!?」
 ヒグマプレデターは3メートルに達しそうな巨体で突貫してくるが、キュアドリームとキリカはそれぞれ反対側の方向に跳んで一撃から逃れる。
 ズシン、という鈍い音と共に地面が揺れた。ヒグマプレデターによって押し潰された土は大きく凹んでいて、威力の凄まじさを物語っている。
 それに何らかの反応を示す暇もなく、ヒグマプレデターはキュアドリームに振り向いて、その口から緑色の濁った液体を放出した。

 それを堪えようとした直後、炭酸水が流れるような音と共に地面がドロドロに溶けてしまった。
「えっ!?」
「地面が溶けてる……!?」
 キュアドリームだけではなく、キリカも目の前の光景に驚いていた。
 ヒグマプレデターの放った液体は、元々は王蛇の使役していたベノスネーカーが体内に貯め込んでいたものだった。
 王蛇と遭遇したあるヒグマは、ベノスネーカーを捕食したことでミラーモンスター・ヒグマプレデターとなっている。それに伴い、ベノスネーカーの持つ溶解液も習得したのだった。
 無論、それをキュアドリームとキリカが知る由はない。ただ、あの液体が危険なものであることを察することしかできなかった。
「グアアアアアアアアッ!」
 溶解液の威力に戦慄していたキュアドリームの鼓膜を刺激したのは、ヒグマプレデターの叫び。
 その巨体からは想像できないくらいのスピードで、ヒグマプレデターは再び突貫していた。暴走機関車のようにヒグマプレデターは突っ込んでくるが、キュアドリームはそれを受け止める。
 花火のような爆音が響き、凄まじい衝撃が両手から全身にピリピリと伝わってくるが、キュアドリームは吹き飛ばされないように耐えた。しかし、それでも数歩ほどの後退を余儀なくされてしまう。
「グルルルルルル……!」
 そんなキュアドリームを押し潰そうとヒグマプレデターは体重をかけてくる。だが、キュアドリームは対抗する為に力を込めた。
 両者の拮抗は始まる。策も技もない、単純な力比べだった。
「ウラアッ!」
「くっ!」
 ヒグマプレデターを押し返そうとしているキュアドリームの耳に、王熊とキリカの声が届く。そこから間髪入れず、今度は金属同士が激突する鋭い音が響き渡った。
 振り向くと、王熊とキリカが高速で駆け巡りながら戦っているのが見える。その勢いは二つの台風が衝突し合っているかのようだった。
「オラアッ!」
「ふん!」
 迫りくる王熊のベアサーベルを前に、キリカは漆黒の爪で防ぐ。そこからキリカは王熊の横に回り込んで、ガラ空きとなった脇腹に一撃を叩き込む。だが、王熊の鎧は傷一つ付かない。
 そんなキリカを払い除けるかのように王熊はベアサーベルを一閃する。しかしキリカは天に向かって跳躍しながら爪を振い、そのまま背後に回り込んだ。
 王熊が力で攻めるのに対して、キリカは小柄な体躯を活かしたスピードで勝負している。キリカは王熊の攻撃を確実に見切り、そして正確な一撃を与えていた。
「デアアアッ!」
「おっと!」
 苛立ちの声と共に王熊は蹴りを放つが、キリカはそれを避ける。
 反撃のようにキリカは鉤爪を叩きつけるが、やはり火花が飛び散るだけ。先程から、同じことの繰り返しだった。
 やがて幾度もの斬り合いが繰り広げられた後、王熊から距離を取ったキリカは溜息を吐く。
 それを絶好の機会と見たのか、王熊はキリカを目がけて突進しながらベアサーベルを振り上げる。王熊は獣のように叫んでいるが、キリカはそれに構わず止まったままだ。
「キリカちゃん!」
 キュアドリームはヒグマプレデターの鳩尾に蹴りを叩き込み、巨体を揺らす。
 そこからキュアドリームはヒグマプレデターを投げ飛ばし、キリカの元に駆け寄ろうとする。だが、その頃には王熊のベアサーベルが振り下ろされようとしていた。
 キュアドリームは反射的に腕を伸ばそうとした瞬間、キリカの姿が霧のように消えてしまった。
 無論、王熊の振るったベアサーベルは空を切るだけに終わってしまう。
「えっ!?」
 キュアドリームは驚いた。
 そこから瞬く間に、キリカは王熊の背後に現れる。まるで瞬間移動をしたかのようだった。
 現れたキリカの手には、いつの間にか巨大化していた鉤爪が備え付けられていた。
「ヴァンパイア・ファングッ!」
 そして、キリカは巨人のような爪を王熊の巨体を叩きつけ、そのまま吹き飛ばす。
 その小さな身体からは想像できないほどの威力を誇っていた。よく見ると、爪は鋸のような形になっていて、一太刀でも浴びたら無事では済まないような雰囲気を放っている。
 だけど、キュアドリームはそれを持つキリカに恐怖を抱かない。無事でいてくれたことの喜びだけが心の中に生まれていた。

「……思いっきり叩き込んだけど、まだ立ち上がれるの? やれやれ」
 しかし当のキリカは呆れたような溜息を吐いている。
 キリカの一撃を浴びてしまった王熊は、幽鬼のように立ち上がっていた。その動きはどことなく鈍くなっているが、まだ戦えるということを証明している。
「ククク……楽しいな。ああ、やっぱり楽しいな……!」
「いい加減にしてよ。こっちはあんたに構っているほど、暇じゃないのに……」
「そうか……なら、俺が終わらせてやる!」
 身体に受けた傷のことなどまるで無かったかのように、王熊は高らかに笑う。
 そんな王熊に対してキリカは構えるのを見て、キュアドリームは隣に立つ。
 王熊は確かに強いけれど、力を合わせれば決して勝てない相手ではない。絶対に諦めなければ、どんなに強い相手だろうと負けないのだから。
 キュアドリームが自分にそう言い聞かせた。その時だった。
 突然、地面が大きな音を鳴らしながら強く振動する。それによって、キュアドリームはよろめいていしまった。
「な、何!? 地震!?」
「のぞみ! あれを見て!」
「えっ?」
 慌てふためくようなキリカの声につられて、キュアドリームは振り向く。
 その直後、彼女は目を大きく見開いた。遥か北の方から、凄まじい轟音を鳴らしながら巨大な水が流れ出てきたため。
 いや、それはもうただの水ではない。周囲の物を無差別に破壊する自然現象だった。
「「つ、津波だああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
 キュアドリームとキリカは大声で叫ぶ。
 そう。100キロメートルは誇るかもしれない大型の津波が、襲いかかろうとしているのだ。
「「わあああああああああああああああああああああああああああ!」」
 二人の悲鳴を発するが、それは一瞬で大津波に飲み込まれてしまった。




「な、何なんですか!? どうして、いきなり津波が起こっているのですか!?」
 暴君怪獣タイラントと戦っていたストレイカー・エウレカは動揺している。
 生まれ変わった彼でも、いきなり大津波が起こったら流石に驚きを隠すことができなかった。
 そんなストライカー・エウレカを嘲笑うかのように、タイラントの鼻から伸びた角は強く発光している。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 タイラントは咆哮する。
 それと同時に角から発せられる光は更に強くなり、津波の勢いは激しさを増した。


 暴君怪獣タイラントは怪獣・超獣・宇宙人達の怨念が集まった結果、誕生した最強ランクの怪獣だ。
 その中には、ウルトラマンジャックと戦った竜巻怪獣シーゴラスの怨念も含まれている。シーゴラスは大津波を起こす能力を持っていて、それによって日本が壊滅的な被害が受けそうになった。
 タイラントは、己の肉体を構成しているパーツとなった怪獣の能力や武器を扱うことができる。つまり、シーゴラスと同じように津波を起こせても何らおかしくない。
 その結果、MAPの外より大津波を呼び寄せることが出来たのだ。


 しかし、そんなことなどストライカー・エウレカは知らない。
 ただ、タイラントの起こした大津波に飲み込まれるしかなかった。




「ハハハハハハハハハッ! こいつは愉快だ! ゾクゾクするぜ!」
 仮面ライダー王熊に変身した浅倉威は、怒涛の勢いで流れる大津波を見下ろしながら高笑いしている。
 眼下で流れる津波によってあらゆる物が破壊されていく。くま達も、津波を起こしたモンスターも、たった今まで戦っていたガキどもも、あれだけ生い茂っていた木々も……何一つとして例外はない。
 どうして津波が起こったかなんて王熊にとってはどうでもいい。ただ、津波による無差別な破壊が起こることが愉快で仕方がなかった。
 彼が津波に巻き込まれていない理由は一つ。ミラーモンスターであるエビルダイバーを咄嗟に召喚して、津波から逃れたのだ。空を飛ぶことができるエビルダイバーならば、造作もない。
 彼の支給品には王熊のカードデッキだけでなく、仮面ライダーライアや仮面ライダーガイに変身する為のカードデッキも含まれている。そして、夢原のぞみと呉キリカのデイバッグも確保して、その中に入っている複数のカードデッキも確保したのだ。
 それは浅倉威の生きる龍騎の世界とはまた違う、龍騎の世界に存在するカードデッキ達。ライダー裁判という制度に従って戦う仮面ライダー達のカードデッキと、仮面ライダーファムや仮面ライダーリュウガの存在する世界のカードデッキだった。
 もっとも、それはまだ王熊が知ることはない。また、例え知ったとしても使うことがあるかどうかはわからない。何故なら、彼はこの王熊を非常に使いこなしているのだから。




「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 竜巻怪獣シーゴラスの得意技である津波を起こした暴君怪獣タイラントは吠え続けている。
 津波によってヒグマや人間達が流されたが、タイラントは微塵も気にしていない。理性を持たない怨念の結晶体であるタイラントには、違う生命体のことを気遣う心すらなかった。
 ただ、宇宙のどこかにいるウルトラ兄弟を倒す。それだけがタイラントを満たす意志だった。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 やがてタイラントは咆哮しながら遥か彼方の空に向かって飛び上がった。
 暴君怪獣タイラントがどこに向かうのか、それはタイラントにしかわからない……


【会場の何処か/朝】


【暴君怪獣タイラント@ウルトラマンタロウ】
状態:疲労(小)、ダメージ(小)、飛行中 
装備:なし 
道具:なし
基本思考:己の本能のまま暴れて、ウルトラ兄弟を倒す。
1:暴れる
[備考]
※タイラントの持っていた支給品は津波によってどこかに流されてしまいました。
※制限の影響なのかはわかりませんが、身長が縮んでいます。
※どこに飛んでいくのかは後続の書き手さんにお任せします。


【備考】
※タイラントが大津波を起こしました。
※それによって他のエリアにも何らかの影響が起こっているかもしれませんが、実際は不明です。




 ストライカー・エウレカとリラックマは、津波に流されていても生きていた。
 ヒグマの強靭な生命力が、過酷な環境下での生存を可能としたのだ。
 しかしその代わりに、彼らは自分がどこにいるのかわかっていない。あの凄惨な状況下では、不可能な話だ。
 ただ、一つだけ確かなことがある。彼らのことを守る為に戦っていた夢原のぞみと呉キリカの二人が、この場にいないと言うことだ……
「二人はどこにいったのでしょうね?」
「さあ、わかりません……」
 二匹のヒグマはぼやきながら歩く。
 ここがどこだかはわからないが、歩いていればきっとまた会えるはず。そんな楽観的な思考の元で、あてもなく会場を彷徨っていた。
「でも、また会えますよ! さあ、朝日に向かってレッツゴーです!」
「おー ……って、あ」
「どうしましたか?」
「うしろにあのひとがいますよー」
「えっ?」
 リラックマの言葉を聞いたストライカー・エウレカは後ろを振り向く。
 そこにいるのは、キュアドリームや呉キリカと戦っていたはずの、仮面ライダー王熊だった。
「は……?」
 そこから先の言葉は続かない。
 彼が最後に見たのは、仮面ライダー王熊がベアサーベルを振り下ろして、そして周囲が血のような赤で染まっていく光景だけだった。




「ハハハッ……美味かったぜ、熊野郎ども」
 仮面ライダー王熊の変身を解除した浅倉威は、日本語ぺらぺーらとリラックマの遺体を捕食して、笑みを浮かべていた。
 エビルダイバーに乗って彷徨っていたら、あのクマどもを見つけたので殺した。戦いの邪魔をした奴を殺せたので、鬱憤を晴らすこともできたし一石二鳥だ。
 そして浅倉は二匹を食べた。ついでに、津波で流されていた回転怪獣ギロスの遺体も。
 味はそれなりだ。これなら、もっと食ってしまいたいと思う。
「クックックックック……!」
 ああ、食べてしまいたい。
 この会場にいるクマどもを。
 あのガキどものように戦える奴らを。
 因縁の相手である北岡の野郎も。
 みんな、食ってやる。
 食って食って食いまくってやる。
 さあ来い。
 俺はここにいるぞ。
 早く来い。
 来なければ、俺の方から来てやる。
 俺がみんな食ってやる!
「ハッハッハッハッハ……ハッハッハッハッハ!」
 浅倉は笑い続ける。
 すると、彼の身体はボコボコと音を立てながら変化していった。中肉中背の体躯はどんどん逞しくなっていき、そこから黒い剛毛が生えていく。
 蛇のように鋭かった目つきは、ヒグマのようにギラリと煌めいていった。

「グハハハハハハハ、グハハハハハハハハハハハハ!」
 浅倉威の肉体はヒグマのようになってしまった。
 何故、彼はこうなってしまったのか? それは三匹のヒグマを直接食べてしまったからだ。
 ヒグマがベノスネーカーを食べたことでミラーモンスターになってしまったのと同じように、浅倉は三匹のヒグマを一気に食べてしまったことでヒグマになってしまった。
 本来なら、ヒグマを食べただけでヒグマになることはあり得ないかもしれない。現にヒグマ帝国では、ヒグマを調理した料理を食べても人間のままでいる者もいる。だが、それは『人間が食べてもヒグマにならない特別な調理法を施された』料理だった。だから、人間のままでいることができた。
 それに対して、浅倉は何の処置もしないでそのままヒグマ達を食べてしまった。その結果、ヒグマの体内に宿る無数の遺伝子も取り込むことになってしまう。無数のヒグマ遺伝子は浅倉の体内で暴れまわり、その身体をヒグマの物に変えてしまったのだ!
 究極生命体カーズは過酷な試練を乗り越えた末に“ヒグマ”の遺伝子を取り込んで、究極“羆”生命体(アルティミット・“ヒグマ”・シィング)に進化した! それと同じように、浅倉もヒグマに進化することを成功したのだ!
「グハハハハハハハハハハハ! グハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 仮面ライダー王熊に変身する浅倉威はヒグマの怪物・ヒグマモンスターになってしまった。
 しかし彼はそれを悲観しない。むしろ、歓喜すらしていた。
 何故なら、浅倉威は元からヒグマのように過酷な生存競争を生き延びて、そして野生のような心を持ってしまったのだから……


【会場の何処か/朝】


【浅倉威@仮面ライダー龍騎】
状態:仮面ライダー王熊に変身中、ダメージ(中)、ヒグマモンスター 
装備:カードデッキ@仮面ライダー龍騎、ライアのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、ガイのカードデッキ@仮面ライダー龍騎、カードデッキのセット@仮面ライダー龍騎&仮面ライダーディケイド
道具:基本支給品×3
基本思考:本能を満たす 
0:一つでも多くの獲物を食いまくる。
1:腹が減ってイライラするんだよ
2:北岡ぁ……
[備考]
※ヒグマはミラーモンスターになりました。
※ヒグマは過酷な生存競争の中を生きてきたため、常にサバイブ体です。
※一度にヒグマを三匹も食べてしまったので、ヒグマモンスターになってしまいました。
※体内でヒグマ遺伝子が暴れ回っています。
※ストライカー・エウレカにも変身できるかもしれませんが、実際になれるかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
※全種類のカードデッキを所持しています。
※ゾルダのカードデッキはディケイド版の龍騎の世界から持ち出されたデッキです。


【リラックマ@リラックマ 死亡】
【日本語ぺらぺーら(穴持たず14) 死亡】
※リラックマと日本語ぺらぺーら(穴持たず14)の遺体はギロスと共に浅倉に食べられてしまいました。




 気が付くと、津波はもう収まっている。
 一瞬、あの世にでも来てしまったのかと思っていたが、身体には感覚が残っている。だから、まだ生きている。
 呉キリカは生還を実感していたが、喜ぶことなどできなかった。
「うえっぷ……酷い目にあったよ」
 口から海水を吐き出しながら悪態をつく。
 塩辛い感覚が舌や喉に貼り付いていたので、無性に水が欲しくなった。
 その為にもデイバッグを捜したが、どこにもない。きっと、津波に流されてしまったのかもしれない。
 ソウルジェムが流されなかったのは不幸中の幸いかも知れなかった。
「……って、あれ?」
 しかしキリカは素直に喜ぶことができない。
 手元に見当たらない物が一つだけあった。キリカにとって、ある意味ではソウルジェム以上に大切な物が。
 それは、美国織莉子から貰ったあのぬいぐるみだった。あのぬいぐるみがどこにも見当たらなかったのだ。
「ない……ない……ない! どこ、どこに行ったの!? 私の命!」
「はい、キリカちゃん」
 パニックに陥りそうになった瞬間、キリカの目前に探し求めていたぬいぐるみが突き付けられる。
 それを持っているのは、夢原のぞみが変身したキュアドリームだった。
「キリカちゃん、ごめん……ぬいぐるみが濡れちゃった」
 津波によってずぶ濡れとなったキュアドリームは、しゅんと項垂れている。
 キリカが肌身離さず持っていたぬいぐるみも、あの津波のせいで濡れてしまっていた。しかし、濡れたことを除けば綺麗に保っている。
 どこも千切れなかっただけでも奇跡だった。
「ごめんなさい……キリカちゃんにとっては大切なものだったのに、守ることができなくて」
 しかしキュアドリームは謝っている。
 愛の証であるぬいぐるみをただ「大切なもの」と言われたら、いつものキリカだったら苛立ちを感じていた。だけど今は、それ以上にキュアドリームがぬいぐるみを持っていたことに対する驚きの方が強かった。
「のぞみ……君が持っていたのかい?」
 だから、そう問いかけることしかできない。
「うん……もしもこれがなくなったら、キリカちゃんはまた悲しむはずだから」
「……」
「あたしね、キリカちゃんが悲しむ顔は見たくないの。誰かが悲しんでいるのを見ると、あたしまで悲しくなっちゃうから」
「…………」
「でも、ぬいぐるみは濡れちゃった……ごめんね」
「えっ?」
「ごめんね、キリカちゃんのぬいぐるみを濡らしちゃって……本当に、ごめんね……!」
 キリカが呆気に取られた瞬間、キュアドリームの瞳が滲んでいく。
 それは海水ではなく、彼女自身の涙だった。
「ごめんね……本当に、ごめんね……!」
 先程、仮面ライダー王熊と戦っていた時に見せた凛々しさが嘘のように、キュアドリームは悲しそうに泣いていた。
 ぬいぐるみが濡れてしまったことはキリカにとっても悲しい。だが、それは突然起こってしまった津波が原因なので、キュアドリームが……のぞみが罪悪感を抱く必要などないはずだ。
 予想外の対応にキリカは戸惑ってしまう。
 キュアドリームが泣く必要など、どこにもないはずだった。
「のぞみ……泣くのはやめなよ」
 だからキリカはキュアドリームを励ます為に声をかける。
 すると、キュアドリームは顔を上げてくれた。

「キミは私の為に力を尽くしてくれた。そして、私の愛を守ってくれた……それだけで充分さ」
「でも……!」
「のぞみは言ったよね。誰かが悲しむ顔はみたくないって……それは私も同じだよ。私も、できるなら恩人には笑顔でいて欲しいから」
 自分を助けてくれた相手に対しては必ず恩返しをすることがキリカの信条だ。
 のぞみがぬいぐるみを壊したりしたならともかく、むしろ守ってくれたのだから怒る道理なんてない。濡れてしまったのは残念だが、それなら乾かせばいいだけ。
 織莉子に謝るのはその後だ。
「だから、泣くのはもうやめようよ。ね?」
「キリカちゃん……うん!」
 キュアドリームは涙を拭って、あの眩い笑顔を取り戻した。
 そしてキリカはキュアドリームからぬいぐるみを受け取り、今度こそ離さないように握り締める。津波だろうと竜巻だろうと、それに隕石が襲いかかろうとも離したりなんかしない。
 その程度で愛を手放すなんてあってはいけないことだから。
「ありがとうキリカちゃん! あたしのことを励ましてくれて」
「私からすればこれでも足りないくらいだよ? キミは私の愛を一度だけじゃなく、二度も守ってくれたからさ」
「だって、これだけは守らないといけないって思ったから!」
「……そっか」
 キュアドリームの言葉にキリカは頷く。
 その直後、彼女はハッと気付いた。いつの間にか、周囲の光景が一気に変わっていたことを。
 不意に辺りを見渡すと、そこは先程までいたエリアではない。薄暗くて、壁と天井が灰色に染まった通路だった。
「そういえば、ここって一体どこなの?」
「あたしもわからない。何か、気が付いたらこんな所にいたから……って、そうだ! リラックマ達は!?」
「……どうやら、私達だけがいつの間にか違う所に飛ばされちゃったみたいだね。ちびクマ達も、あの怪物達もいないし」
「そんな!」
「落ち込むのは後だよ! そんな暇があるなら、ちびクマ達を捜す! いいよね?」
「う、うん!」
 キュアドリームとキリカは出口の見えない通路の中を走り始めた。
 しかし、ここはこれまで彼女達がいた殺し合いの会場ではない。彼女達が走っているのは、会場の地下にあるヒグマ帝国の一角だった。
 何故、彼女達がヒグマ帝国にいるのか? その理由は極めて単純。キリカの支給品であるどこでもドアを通じて、ヒグマ帝国まで来てしまったのだ。
 彼女達は仮面ライダー王熊との戦いに集中していたせいで気がつくことはできなかったが、デイバッグからどこでもドアが零れ落ちてしまっている。そこから、タイラントの起こした津波に巻き込まれてしまった彼女達は、偶然にもどこでもドアにまで流されてしまい、こうしてヒグマ帝国にまで来てしまった。
 本来ならどこでもドアさえあれば、殺し合いの会場から脱出できたかもしれない。しかし、主催者の制限によってヒグマ帝国と会場を行き来する効果しかなくなってしまったのだ。
 だが、そんなことなどここにいる二人は知らないし、どこでもドアも津波のせいで使い物にならなくなっている。もう一つ、守ろうとしていたリラックマ達はもうこの世にいないことも知らない。
 ただ、ヒグマ帝国に新たなる潜入者が現れたことが、確かな事実として残っていたのだった。


【???/ヒグマ帝国のどこか/朝】



【夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 GoGo!】
状態:ダメージ(中)、キュアドリームに変身中、ずぶ濡れ 
装備:キュアモ@Yes! プリキュア5 GoGo!
道具:なし
基本思考:殺し合いを止めて元の世界に帰る。
0:ここってどこ?
1:今はキリカちゃんと一緒にリラックマ達を捜しに行く。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3 終了後からの参戦です。(New Stageシリーズの出来事も経験しているかもしれません)


【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
状態:健康、魔法少女に変身中、ずぶ濡れ 
装備:ソウルジェム@魔法少女おりこ☆マギカ
道具:キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ
基本思考:今は恩人である夢原のぞみに恩返しをする。
1:恩返しをする為にものぞみと一緒に戦い、ちびクマ達を捜す。
2:ただし、もしも織莉子がこの殺し合いの場にいたら織莉子の為だけに戦う。
[備考]
※参戦時期は不明です。


【備考】
※どこでもドアに流されてしまったので、二人はヒグマ帝国に辿り着いてしまいました。
※どこでもドアは既に壊れています。



No.098:ゼロ・グラビティ 本編SS目次・投下順 No.100:死のない男
本編SS目次・時系列順 No.105:Sister's noise
No.077:獲物を屠る狩人 浅倉威 No.114:SURVIVE
暴君怪獣タイラント No.102:海上の戦い
日本語ぺらぺーら 死亡
リラックマ
呉キリカ No.105:Sister's noise
夢原のぞみ

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最終更新:2015年05月08日 12:27