「汝、何をか好む?」

 と孔子が聞く。

「我、長剣を好む」

 と青年は昂然として言い放つ。
 孔子は思わずニコリとした。
 青年の声や態度の中に、余りに稚気満々たる誇負を見たからである。
 血色のいい・眉の太い・眼のはっきりした・見るからに精悍そうな青年の顔には、しかし、どこか、愛すべき素直さがおのずと現れているように思われる。

 再び孔子が聞く。

「学はすなわちいかん?」
「学、豈(あに)、益あらんや」

 もともとこれを言うのが目的なのだから、子路は勢込んで怒鳴ように答える。

 学の権威について云々されては微笑(わら)ってばかりもいられない。
 孔子は諄々として学の必要を説き始める。


「人君にして諫臣が無ければ正を失い、士にして教友が無ければ聴を失う。
 樹も縄を受けて始めて直くなるのではないか。馬に策(むち)が、弓に檠(けい)が必要なように、人にも、その放恣(ほうし)な性情を矯める教学が、どうして必要でなかろうぞ。
 匡(ただ)し理(おさ)め磨いて、始めてものは有用の材となるのだ」


 後世に残された語録の字面などからは到底想像も出来ぬ・極めて説得的な弁舌を孔子は有っていた。
 言葉の内容ばかりでなく、その穏やかな音声・抑揚の中にも、それを語る時の極めて確信に充ちた態度の中にも、どうしても聴者を説得せずにはおかないものがある。青年の態度からは次第に反抗の色が消えて、ようやく謹聴の様子に変って来る。

「しかし」

 と、それでも子路はなお逆襲する気力を失わない。


「南山の竹は揉(た)めずして自ら直く、斬ってこれを用うれば犀革の厚きをも通すと聞いている。して見れば、天性優れたる者にとって、何の学ぶ必要があろうか?」


 孔子にとって、こんな幼稚な譬喩(ひゆ)を打破るほどたやすい事はない。


「汝の云うその南山の竹に矢の羽をつけ鏃を付けてこれを礪(み)がいたならば、ただに犀革を通すのみではあるまいに」


 と孔子に言われた時、愛すべき単純な若者は返す言葉に窮した。


(中島敦『弟子』より)


    △△△△△△△△△△



「……一つ確かめるぞ。武器は、剣なのか?」
「あんたはその鉄球でもなんでも使って構わないさ。俺だって、使えるもんは全部使う」


 ただ周囲に海の渦巻きだけを響かせる丘の上で、静かに一度、そんなやりとりが交わされた。
 問いかけたのは、長剣と二つの鉄球を身に携え、仕立てのいいスーツに身を包んだ青年。
 答えたのは、純金の長刀を抜き放ち、今まさにその切っ先を青眼に据えた青年である。
 ウェカピポの妹の夫、そして、宮本明と呼ばれる者たちだ。


 その周囲を、固唾を呑んで取り囲む影は総勢8名。
 海水に近い宮本明の側に、武田観柳阿紫花英良ジャック・ブローニンソン操真晴人
 町並みを背に透かす義弟の側に、隻眼2、李徴、フォックスキュゥべえ
 8名の内3名は人外であり、そのうち2名はヒグマである。
 彼らに脇を固められ、李徴という名のヒグマに跨る拳法家フォックスはひたすらに落ち着かない。
 また残りの5名の内3名は魔法使いであり、そのうち2名は魔法少女という分類の男である。
 彼らを横目で見る純然たる魔法使いの操真晴人は、彼らのコスプレじみた様相に今更ながらに疑問を抱きつつも、全裸であるジャックの様相には及ばないことを再確認して、改めてこの場の異様な光景に思い至る。


「本当にこの場で決闘をおっぱじめる気なのか……」


 インキュベーターと呼ばれる魔法の営業マンであるキュゥべえをほぼ真正面に見て、義弟と宮本明の中間位置に陣取った操真晴人は、両方の対戦者を交互に見て、口の中にそう呟いていた。
 どうにか穏便にすませられないかと、晴人は思案を巡らせる。


 先程のウェカピポの妹の夫の問いは、確かに公平で正当な決闘を行なうためには不可欠なものだ。
 決闘とは、必ず対等な条件で行なわれなければならない。
 通常の場合、その条件は武器。
 宮本明が無言のままに抜いた刀は、武田観柳の魔法で作られた異様な長さの日本刀だ。
 ウェカピポの妹の夫は、晴人が軽く話を聞いたところでは、ネアポリス王国の王族護衛官をしているそうである。その護衛官の戦闘法は、牽制に彼が投げた奇妙な形の鉄球を使うらしい。
 武器があまりに異なっており、その確認は当然といえた。


「『使えるものは全部使う』……? それは、オレが『ネアポリス王族護衛術』の全てを用いて挑んで構わないということか」
「何度も言わせるな。そうだ……。お互いの全力だよ」
「……よし、受けよう。ならば他流の果し合いとも言えるな、これは」


 義弟は宮本明の発言を受けて、あろうことか、肩にかけていたデイパックを後ろに放り投げていた。
 李徴の背でそれを、フォックスが慌ててキャッチする。
 動くには邪魔だというのだろうか。

 しかし、操真晴人の目には、それは余りにも危険な賭けのように映った。
 魔法の力を知る彼には、武田観柳が魔法で精錬した金の刀の威力を、ありありと想像することができる。
 宮本明が構えるその刀は、目算でも全長150cm以上。人一人分の身長に匹敵するほどの長さがある。
 それが、丸太を軽々と振り回す宮本明の手で操られるのだ。
 まともに受ければ人間の体など紙細工のように切り裂かれるに違いない。
 折角『使えるものは全部使う』という条件になったのなら、防御のよすがとなりうる物品をむざむざ捨ててしまうのは不適当に思われた。


 そんな不安を抱きながら、晴人は日本刀を作り出した張本人である武田観柳の方を見やる。
 決闘をふっかけた宮本明を力ずくででも止めるなら、観柳の行動は不可欠だろう。
 白と金色をベースにした英国風の魔法少女衣装を身に纏う観柳はしかし、目を糸のように細めて微笑んでいた。
 黒ずくめに赤をあしらった衣装の阿紫花英良が、観柳にテレパシーで問いかける。


『……観柳の兄さん、いいんですかい、むざむざ戦わせちまって』
『……まぁ、しょうがないでしょう。彼らの思考は意味不明ですが、逆にいい機会だと考えることもできます』
『何がいい機会なんだ、観柳さん』
『折角だからボクもその理由を聞いておこうかな』
『ちょっと教えてくれ、まともじゃねぇよこいつら。意味がわからん』



 観柳が表情を崩さぬまま返した答えに、晴人、キュゥべえ、フォックスが次々と割り込んできた。


『なに、宮本さんの資産価値を、彼が算定して下さるというのですから、是非もない。
 ……阿紫花さん、彼、義弟さんの実力を、いかが見ますか?』
『あー……、なるほど。いや、あの人もかなり修羅場くぐってそうですよ。アタシとは真逆の舞台ででしょうけどねぇ』


 武田観柳は、宮本明の実力をここで知っておこうと言っているのだ。
 森の中で出会って以降、彼はその類稀なる膂力で人々を驚かせていたが、どうにもその力は様々な場面で空回りする場合が多く、肝心のところでいまいち役に立っていない。
 そのため、純然たる試合・決闘の中で、今後期待しうる戦力が如何ほどか、実力者同士で引き出し合い、見せ付け合って貰えるのならばそれに越したことはない。
 阿紫花は得心したように頷くが、ただちにもう一言テレパシーに添えて返す。


『ですが……、これは決闘ですぜ? 死人が出かねねぇですよ』
『ええ、承知の上です。決着がついたら彼らが死ぬ前に即座に治療をしましょう。準備はいいですね皆さん』
『そんなこと言われても俺には何もできねえぞ……?』
『ボクとしては死に瀕して契約者が増えてくれると助かるんだけど……』
『あんたは黙ってろキュゥべえさん』


 困惑するフォックスをよそに晴人がキュゥべえのテレパシーを喰って釘を刺した時、ウェカピポの妹の夫は改めて名乗りを上げながら、腰に吊った剣の柄に手をかけていた。


「『ネアポリス王族護衛術』を修めた王族護衛官、ウェカピポの妹の夫だ。お前の流派はなんと言う?」

 明は一瞬、口を噤んだ。
 宮本明が習得している技能は、兄・宮本篤と、師・青山龍ノ介との8ヶ月間の修行で身につけた、対吸血鬼のための荒削りなものである。しかしそれは、明の持つ潜在能力・集中力を驚異的なまでに引き出すものだった。

「……名前なんて大層なものは、ねぇッ!!」

 明は、裂帛の気合を放つとともに、腰に手をやる義弟に向けて、瞬きの間に走りこんでいた。
 決闘に開始の合図はいらない。
 両者ともに柄に手をかけたのなら、それで最早戦闘は始まっている。

 明の大上段からの斬り降ろしは、誰の目にも見えぬほどの高速であった。
 あたかも明の腕が金光を放ちながら空間を断ち割ったようにしか、周囲の人間には捉えられなかった。


『アキラ、アブナイ!!』


 ただ一人、今まで宮本明を心配そうに見つめていたジャック・ブローニンソンのみが、その動きを捕捉する。
 李徴、そして隻眼2も、声を出さぬままに瞠目した。

 ウェカピポの妹の夫は、その切り降ろしを、左に踏み込んで躱していた。
 左腕を前に垂らし、屈みこむように上半身を撓ませた義弟の右手は、剣の柄ではなく、その腰の鉄球に掛かっている。



 ――なんだと!?


 明の背筋を悪寒が走り抜けた。
 彼岸島の並みの吸血鬼相手ならば、今の速度の斬撃を避けられることなどなく、まして、即座に攻撃に転じられる体勢を取られることなどは絶対になかった。


 ――切り上げる。このまま返す太刀で奴の胴を切り裂く!!


 地面に切り込んだ金の刀を、明は咄嗟に引き抜きつつ、逆袈裟に振り上げようとする。
 しかし宮本明がその挙動をまさに実行に移した時、彼の視界には、義弟の足元から螺旋状に立ち昇る、白い気流のようなものが映っていた。

 宮本明の、物語を作る才能が昇華された予知能力。
 それが彼自身に、義弟の行動の危険性を視覚的に認識させていた。


 右足を軸に立ち昇る螺旋は、腰、肩、右腕と、その回転速度と密度を増しながら移動していく。
 左半身をフリップのように後方へ捻り出しながら、義弟は右腕を鞭のように撓らせ、その勢いを指先のスナップ一点に収束させる。
 密着状態から一気に5歩分程の距離を跳び退りつつ、ウェカピポの妹の夫は高速回転する鉄球を宮本明に叩きつけていた。


「くあっ!!」


 初動の瞬間に鉄球とぶつかり合った刀は、その鉄球を切り裂くことなく、甲高い金属音を立てて押しあう。
 両肩が軋むようなその衝撃を、宮本明は歯を噛んで耐える。
 僅かな一瞬のせめぎ合いが、数十秒にも数分にも感じられた。
 そして遂に、彼は高速回転を続ける重い鉄球を、横へと弾き返す。
 だがその詰まったスイングのさなかで、彼の予知能力は再びその視界に白々と死の軌跡を描き出していた。


 空へ弾き飛ばした鉄球。
 その鉄球に嵌め込まれた14個の小球体が、流星のように身を襲うだろう――、と。


    △△△△△△△△△△


『背後に気を遣うのは、俺の拳法と同じか……』


 フォックスは李徴の背中で、ウェカピポの妹の夫が行なった高速の回避動作について思案を巡らせた。
 大地という強固なガードを背負い、前方の敵に集中するのが、フォックスの修めた跳刀地背拳である。
 フォックスには、宮本明の斬撃や義弟が身を躱したその瞬間こそ見えなかったが、義弟がその斬り込みを躱し得た術理については推測できた。

 出会ってから今まで、そして先程の決闘の瞬間も、ウェカピポの妹の夫は誰にも自身の背後に隙を晒さなかった。
 隣や背後、自分の周囲に、常に人一人分の空間を保つように彼は振舞っている。
 跳刀地背拳と同様、『ネアポリス王族護衛術』という流派の名は、比較的その内容がわかりやすい部類に入るだろう。


 ――奴の流派は、その背中に他人を護衛するためのもの。だから常に、その人物とともに逃げられるスペースを意識しておくんだな。


 襲撃者からは遠く、自分からは近いその位置取りを確保するための歩法は、日本では体捌き、中国では三才歩などという名称で伝わっている。
 日常生活にまでその動きを染み込ませることにより、実戦でも、余裕や優雅ささえも感じられる挙動で回避動作を行なうことができるのだろう。


 そして続け様に、高速回転する鉄球を刃の根元で受けてしまった宮本明に対して、武田観柳が軽い苦笑を零していた。

『あらら……やっちゃいましたね』
『どういう意味ですかい、観柳の兄さん』
『あの刀、“ヤキ”で造っちゃったんですよ。もう少し調整すべきだとは思いましたが、早速懸念していたことを……』
『……ああ。24金と鋼鉄じゃあ分が悪ぃや』



 宮本明の持つ大太刀は、武田観柳が純度の高い金を用いて錬成したものである。
 詳細な宮本明の要望から、外見自体は非常に立派な日本刀に仕上がっているが、如何せん観柳に刀鍛冶の知識があるわけではない。
 扱いに慣れている上に、常に接触して魔力を流せる自分の回転式機関砲とは違い、刃付け、焼入れなどによる金属粒子の独特な構造までは再現率に乏しいであろう――と、彼自身そう考えていた。

 金は展性・延性に富み、加工品の製造には向いた金属であるものの、その硬度は非常に低い。
 それは古来より、金でできた武器が普及せず、装飾品に留まってしまっていた一因でもある。
 業界用語で『ヤキ』と呼ばれる純金のビッカース硬度は150。18金程度まで他の金属を混ぜても、その硬度は大して上がらない。
 それに対して、鍛えられた鋼鉄素材の硬度は軽く500~600を超える。

 せめて14金。貴金属合金の中では最高硬度になりうるあたりまで、宮本明の試し切りの結果次第では調整しようかと観柳は考えていたのだが、その計画は度重なる明自身の突発的な行動でおしゃかになっている。
 観柳が刀に込めた魔力は現在、その軟らかさで刀身がへたらないように復元する、形状記憶性で手一杯になっていた。
 同じく魔力で形成された阿紫花英良の糸なら切断できるだろうが、純粋に物理的な硬度勝負になった時は、良くて引き分け、魔力による復元が追いつかなければ最悪へし折れる。
 ただこの点は、刀に含まれる金成分が減れば減るほど観柳の魔力も落ちてしまうため、一概にどちらが良いとも言えない。
 その調整はひとえに、宮本明との親和性次第であった。


 ――ですが宮本さん専用に調整して差し上げても、彼、物持ち悪そうですからねぇ……。


 宮本明は鞘走りの確認だけで終始してしまっていたが、それはつまり、彼の武器への関心がその程度であるということを示している。
 武田観柳ならば、商品の刀は刀身だけでなく鞘、柄、鍔の拵えを確かめるのはもとより、刃紋の浮きや反りの角度まで検証しておく。
 そしていよいよの業物ともなれば、専用に砥ぎ師を雇って据物斬りに挑んでみるのが常だった。
 武田観柳は刀を造った本人として、その性能と価値を把握されず扱われることに、なんとも遣る瀬無い心持ちになった。


 ――明さんは、武器を選り好みできる環境にいなかったんでしょうがねぇ……。


 阿紫花英良は、武田観柳と同じ光景を見て、そのような感想を抱いていた。
 初対面の時に棍棒を丸太と言っていたり、その後も狂ったように丸太を求めていた彼の言動から、阿紫花は漠然と、彼の過ごしてきた戦いの日々を推察していた。
 恐らく、特定の得物に拘らず、武器を使い潰しては捨て、新しい武器を探しては拾う、そんな連戦の地獄だったのだろう。
 主要な武器として丸太を第一に持ってこようとする思考は、その名残に違いない(丸太だって、そうあちこちに散乱している物品ではないだろうが)。

 だがその割には、明は使う武器に過度の信頼を置いているように阿紫花には見える。
 阿紫花が自分の人形に抱く信頼は、手ずから日々調整を行なっているが故のものであり、手に馴染まない新品の武器は、よくよく試用と調整を重ねた後でなければ、実戦では怖くてとても使えない。
 鋼鉄より遥かに軟らかい金の刀を折れずに保たせている観柳の魔法は確かにすさまじいが、あれほどまでに荒い使い方をしていいものではないだろう。

 阿紫花が見るに、あの純金の大太刀ならば、重量を活かして、遠心力で最も速度のつく先端を当てることが、最大の攻撃手段たりうる。
 速度の出ない根元では、斬れない。
 さらに地面に切り込んだ直後の返す太刀ならば、その切れ味は恐ろしく落ちている。
 『鉛刀の一割』という言葉があるように、鋼鉄以外の刀ならばなおさら、まともに斬れて一回だ。
 観柳の『金の引力』により刀身の切れ味が完全に回復するには、阿紫花がソウルジェムで感知する限り2~3秒の間隙が必要なようだった。
 宮本明は、その性質を把握する必要があるだろう。
 力任せに揮って、いつでも応えてくれる武器ばかりだとは、限らない。



『明さんは気づきますかねぇ?』
『気づいて欲しいところです』
『……刀より先に気づかなきゃならねぇこともあるがな』


 阿紫花英良と武田観柳の一瞬のやりとりに、フォックスがテレパシーを加えた。

 直後に宮本明の身に何が起こるか、フォックスは知っている。
 義弟と行動をともにしていた彼や李徴は、隻眼2から『その現象』を伝え聞いている。


 李徴と隻眼2の、息を呑む音が聞こえた。
 義弟が打ち込んだ『壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)』の、奥義が開帳される瞬間であった。


    △△△△△△△△△△


 ……どこまでもこの人は、正々堂々さを求めるんだな、と、僕は思いました。


「――ネアポリス護衛式鉄球、『衛星』」

 ウェカピポの妹の夫さんは、そのように自身の技術の名を呟いていました。
 誰に聞かせるわけでもなく。
 飛び退った後に即座に剣を抜き放ちながら、それでも彼は、対戦相手や周囲に未知の技術を、教えてくれていたのでしょう。

 宮本明さんという方が、辛くも受け止めたその鉄球は、僕が以前受けたのと同じものです。
 そこから飛び出す小鉄球は最大14個。
 質量が減った分、その小鉄球一つ一つに伝達される速度と回転は、本体の鉄球を上回ります。
 ヒグマを狙うのにも使われる、人間の用いるショットガンのようなものと考えることができるでしょう。
 弾体の威力・速度は、一つ一つが銃弾に匹敵するはずです。
 生身の人間が受ければ、即死もありうると思いました。

 ほぼ密着状態で『壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)』を受け止めてしまった宮本明さんに、その小鉄球群を回避する術はない――。
 僕は確かに、その瞬間までそう考えていました。


「フッ、シィッ――!!」


 宮本さんの歯の隙間から、風を切るように息が吹き出されたのを、僕は聞きました。
 ホウセンカの種や、砕け散る彗星のように、14個の小鉄球が炸裂し、その全てが宮本明さんの体の各所へ襲い掛かります。
 ですがその時、宮本さんの上半身は、信じられないほどの高速性と精密性を持った動きで鉄球群の中を左右に振盪しました。

 残像を伴う程の機敏さ。
 ほぼ同時に着弾するであろう『衛星』の隙間へ、まるで初めから予測できていたかのように潜り込み、迷路の中から一瞬で最適経路を選択するかのように、彼はその全てを躱していたのでした。


    △△△△△△△△△△


 フィクションの中で、人間が銃弾や弓矢を自在に躱す――という描写はよく見られる。
 パロロワでも、そんなことは日常茶飯事だ。
 だがこれを一般の人間が行なうことに対しては、写実主義を重んじる書き手たちから往々にして大ブーイングが飛んでくる。
 大半の読者、特に実銃や弓を撃ったことのある人は、この表現にリアリティを感じないだろう。
 似たようなことが原因で批判に合い、残念ながら破棄になってしまったSSもいくつか見知っている。

 だが実例がある。
 この隴西の李徴は、かつて渉猟した実在人物の伝記において、その現象を目の当たりにした。


 合気道の創始者・植芝盛平翁は、1924年、関東軍特務機関の斡旋により満州からモンゴルに渡っていた。
 その際、彼は満州の支配者・張作霖の策謀により、幾度も銃撃戦の死の淵に立たされている。
 だが彼は、その身に向かって放たれる小銃の弾丸を悉く躱し、その時の体験をこのように語っていた。


「弾丸よりも一瞬早く 白い光のツブテがぱッと飛んでくる
 それをぱッと身をかわすと あとから弾丸がすり抜けてゆく」
(『植芝盛平伝』より)


 彼は帰国後に、その体験を証明するべく、モーゼル銃を発砲させて、二度同様の実験を行なっていたが、その際も彼は銃弾の全てを自在に避けたのだという。
 宮本明なる青年の洞察力は、弱冠にしてその名人の域に達しているのだと言えよう。


 ……まぁでもこの場合、彼の行動は全く以て、無駄に洗練された無駄のない無駄な動きなのだが。


    △△△△△△△△△△



 自分の視界の左半分が欠落していることに宮本明が気づいたのは、その回避行動を完了して、今一度ウェカピポの妹の夫を捕捉しようと身構えた時であった。


「え……?」


 視界だけではない。
 音も、匂いも、手足の感覚も、自分の左側にあるものは何一つ認識できなくなっている。
 自分が持っているはずの金の日本刀も、左腕がどの位置を握っているのか解らない。
 左脚がどこにあるのか、本当に地面についているのかさえも解らない。


「ちょっ……、なんだよ、どういうことだよこれ……ッ!?」


 周りを取り囲んでいるはずの立会人たちも、向かって右側にいる者だけしか見えない。
 街並みも、脇で渦巻く潮騒も、宮本明の感覚に残っているのは、自分の右側のものだけであった。


「どこだよッ!? あの男は、どこにいるんだよッ!!」
「……ネアポリス護衛式鉄球、『左半身失調』」


 狼狽えながら辺りを見回す宮本明の左脇にぴったりと密着して、ウェカピポの妹の夫は彼の耳に向けてそう呟いていた。
 それほど近くからの囁きも明には聞こえていないようで、彼は恐怖に引き攣った顔で必死に義弟の姿を見つけようと眼を動かしている。


 周囲にいた立会人、特に、今まで義弟と行動を共にしていなかった操真晴人、武田観柳、阿紫花英良、キュゥべえ、ジャック・ブローニンソンの驚愕は凄まじかった。

 傍から見てこれほどまでに異様な光景があるだろうか。
 ウェカピポの妹の夫は、宮本明が『衛星』という小鉄球の回避に専念している間、静かに彼の左側から歩み寄り、抜身の剣を持ったままその位置取りに入り込んでいたのだった。
 既にその鉄球は14個の『衛星』と共に彼の手元に戻り、ホルスターに回収されている。


「……魔法を上回る技術も、あるのか……」


 操真晴人が驚きと感嘆を交えて漏らしたその吐息を、宮本明は耳に捉える。
 彼が見据える視線の先を追い、宮本明は、消失した左側の世界の延長線上に、ウェカピポの妹の夫が潜んでいるに違いないと結論付けた。


「この辺かああッ!!!」
「その通りだが遅すぎるな」


 宮本明の刀がめくら撃ちに左側へ流れる遥か前に、ウェカピポの妹の夫は、宮本明の左脇の下を深々と剣で切り裂いていた。
 バランスを崩して地面に横倒しになった明は、最初、自分の身に何が起こったかを理解できていなかった。
 しかし数秒後、切り裂かれた傷口の痛みと、目の前に立つ義弟の姿が、彼の感覚に戻ってくる。


 ウェカピポの妹の夫は、剣についた血液を丁寧に露払いしながら、眼下の宮本明に言葉を投げかけていた。


「腋窩の動脈を切った。このままでは失血死するから、早く手当てをしてもらえ。
 おい、立会人、決着はついた。奴の処置を頼むぞ」
「はいはい。予想外に面白いものを拝見できましたよ」
「……ふざけんじゃねぇ。決闘はまだ、終わっちゃいねぇだろう……!!」


 どくどくと流れ落ちる自分の血を、強引に脇を締めて筋力で止め、宮本明は右腕だけで刀を構えて立ち上がっていた。
 左側が血染めで真っ赤になった着衣を気にもかけず、手当てに寄って来た武田観柳の制止も聞かず、彼は再び、ウェカピポの妹の夫に向けて走る。

 既に剣を仕舞い、踵を返して自分の陣へ帰ろうとしていた義弟の背中は、隙だらけに見えた。

 その義弟の左手が、腰元のホルスターで鉄球を回していることに気付いたのは、食い入るように成り行きを見つめ続けていた、隻眼2だけであった。


    △△△△△△△△△△



 二人の持つ、技術という手札は、次々とめくられていきます。
 彼らが『決闘』という殺し合いに、主張の是非を委ねるのは、その手札の枚数や相性、引き合わされ方が、既に何らかの大いなる意思によって決定されているからと考えているからかも知れません。

 宮本明さんの『怪力』も『予測能力』も『粘り強さ』も、確かに素晴らしい切り札だと思います。
 生半可な強さの人間やヒグマなら、歯牙にもかけず彼は斬り倒してしまえるでしょう。
 一対多数の乱戦で、周りの雑魚の全てをまとめて対処・殲滅するには、とても良い組み合わせの手札なんだと思います。

 ですが、宮本さんは、その自分の手札の相性を、ほとんど考慮していないように見えました。

 義弟さんの『衛星』と『左半身失調』は、宮本さんと同じく、一対多数の乱戦にも適応している切り札ですが、その性質は根本的に異なっています。


 ――彼の手札は、一対多数の戦い全てを一対一に分断し、戦場を切り抜けるためのものなのだと、僕には思えました。


 加えて、恐らく彼の『鉄球』には、まだ切り札が残っています。そして『剣』にも。
 それらの手札全てを総合した場合、恐らく、義弟さんの能力はむしろ一対一の戦いにこそ特化した技能となるのでしょう。

 恐らく今、背後を晒した義弟さんに突っ込んでゆく宮本さんは、義弟さんの最も得意とする相性の相手なのでした。


    △△△△△△△△△△


 宮本明がその大太刀を片手上段から振り下ろした時、彼の視界は、切り倒すはずだった義弟の体が信じられない挙動をとる様を捉えていた。

 振り向きながら金の太刀に触れた義弟の右腕が、関節の存在を無視するような動きで刀身を這い登る。
 蛇のように螺旋を描きながら刀の峰を押さえ込んだ彼の腕に続き、今度はその体が、地面から羽のように舞い上がった。


「なっ――!?」


 振り下ろす自分の動きに加え、さらに得物の先端へ突如人一人分の体重が乗ったことで、宮本明は前方につんのめった。
 義弟は刀身の峰を一度踏み込んで、更に上へと駆け上がる。
 宮本明の目の前に、義弟の靴底があった。


 ゴグ……ン。

 と、そんな鈍い音が、自分の頭蓋骨に響くのを明は聞いた。
 頚椎から脊髄がびりびりと衝撃に沈み込むような感覚を受け、明はそのまま地面に激突する。
 うつ伏せになった自分の脇に、何かの着地する音が聞こえ、同時に首筋に冷たいものが触れていた。


「ネアポリス護衛式中剣、『壁上の翅(フライ・オン・ザ・ウォール)』。
 お前のような暴漢から要人を護るための、先祖代々受け継ぐ剣術だ」


 ウェカピポの妹の夫は、鉄球の回転を全身に回し、螺旋状に刀を受け流していた。
 そして刀身と宮本明の頭を踏んで飛び上がり、突き倒した彼の上へ、抜剣しながら降り立ったのだ。
 落下の勢いを加えた剣は、義弟がそのつもりであれば、容易く宮本明の首を断ち落としてしまっていたことだろう。

 地に激突してひしゃげた宮本明の鼻から、どろりと血が滴り落ちてくる。
 力の抜けた左脇からは、再び勢い良く鮮血が吹き出し始めてくる。
 明の口の中は、一面鉄の味でしょっぱかった。


「宮本さん! 何回負ければ気が済むんですか! まったくもう……」
「観柳さんは……、黙っててくれ……」


 遠間から呼びかける武田観柳の声に、宮本明は首筋を剣に抑えられたまま震えた。


 ――確かに、これがただの試合か何かだったら、俺は文句なしに負けだ。


 ウェカピポの妹の夫が身に着けている鉄球の術理など、さっぱりわからない。
 かろうじて鉄球の形状から、散弾のような二段階攻撃が来ることまでは予測できたが、避けたところで、衝撃波だけであんな不可解な現象が起きることなんてわかるはずもない。
 ようやく刀を当てられても、綺麗に受け流されてカウンターだ。
 彼岸島に、こんな戦い方をするやつはいなかった。
 吸血鬼も邪鬼も、ただ自分の能力をまっすぐにぶつけて来た。だからこそ俺もそれに力で応え、押し勝ってこれた。
 こんな、相手の死角に潜り込み、相手の力を利用して倒すような戦法を採る敵とは、相性最悪だ。

 唯一、こいつに近い実力を持った相手として俺が想像できるのは、雅か兄貴くらいだ。
 そうだ。
 雅との対決で、何回か斬られたり押さえ込まれたりしたくらいで決着がつくわけはない。
 死ぬか、殺すか、『決闘』の勝敗なんて、それでしかつかない。
 ――だから、俺はまだ、負けてない。


    △△△△△△△△△△



「うおっ――」

 前触れもなく、ウェカピポの妹の夫の両足が掬われる。
 仰向けに倒れる義弟が見やった足元では、宮本明がなりふり構わぬ双手刈りで、義弟の体を後方へ押し倒していた。


「決闘は、殺すまで勝ちじゃねぇんだよぉッ!!」
「――確かに、一理あるッ!!」


 首筋に触れていた義弟の剣を左手でもぎ取り、脇から血を吹き出しながら、宮本明は地面の義弟へ向かって、二刀流となり襲い掛かる。
 ウェカピポの妹の夫は、状況を理解するや、即座に地上を転がった。
 そして腰に手をやり、回転しながら抜き放ったベルトで、踊りかかる宮本明の左手首をしたたかに打ち据えていた。

 手の皮がめくれ返るほどの衝撃で、明の左手からは剣が落ちる。
 右手の刀は、義弟の転がった地面を空ぶる。

 転がった先でウェカピポの妹の夫が立ち上がるのに向けて、明は再び金の刀を、出血を厭わぬ両手持ちにして走りこんでいた。
 今度は、上段からの切り込みではない。
 金の刀を腰だめにしたまま走りこみ、受け流されることなく、即死級の勢いをその長い刃に乗せて体当たりしようとしているのだった。


「ネアポリス王族護衛術――」


 しかしその瞬間、明の視界は、義弟の呟く声と共に一面紫色に覆われていた。
 何が起きたのか理解できぬうちに、その紫色の空間がギュルギュルと渦を巻いて、明の両腕に絡みつく。


 ――これは、あいつの着ていた、スーツ……。


 そう考えた瞬間には既に、上着を脱いだウェカピポの妹の夫の顔が、明の目の前にあった。
 明の視界の中に、白い未来が螺旋状に逆巻く。
 紫色のスーツで幻惑・捕縛した明の腕を右手で引き込みながら、義弟は地面から伝わる回転力を全身に流し、左腕に収束させる。
 その回転を伴った左裏拳が、綺麗に自分の顎先を打ち抜く未来を、宮本明は確認した。


「『払暁(ブレイクアウト)』」


 カウンターの勢いで叩きつけられたその拳に、宮本明は人形のように後方へ吹き飛ぶ。
 義弟は手元に残ったスーツの中から重い金の日本刀を引き出し、右手に掴んだままのベルトを投げ捨てて、腰から鉄球を掴み出していた。


「おい、義弟さんよ!? 追撃する気なのか!?」
「プリーズストップ!! アキラが死んじゃうよ!!」
「決闘の終了条件をどちらかの死亡だとしたのは向こうの方だ。オレはその流儀に従うのみ!!」


 周りからフォックスやジャックが声をかけるも、ウェカピポの妹の夫は一瞬も躊躇することなく、倒れ伏す宮本明に向けて『壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)』を投擲していた。

 まだ、宮本明には息がある。
 自分の武器を失っても、決してその殺意を失わない、強く鋭い光が彼の目に宿っていることを義弟は見た。
 そして何より、先程打ち込んだ拳の手ごたえで、義弟は確信していた。


「貴様はまだ向かってくる気だ!! 自分から後ろに跳んでいたのだろう!!」
「が、あ、ああああっ……!!」


 呻きながら、宮本明が燃えるような瞳で起き上がる。
 彼は先の瞬間、咄嗟に義弟の腕の動きを予測し、突進する脚の動きを無理矢理留めて、でき得る限りの速度で後方に跳ねていた。
 その分、義弟の渾身の拳によるダメージは軽減されていたことになる。

 明は即座に飛来する鉄球の軌道を予測し、あろうことか、高速回転する鉄球を、その右手で掴み取っていた。


    △△△△△△△△△△


「うおおおおおおおっ――!!」

 骨が軋む。
 凹凸に富んだ鉄球の回転で、皮膚が破れ、肉が抉られる。
 それでも宮本明は、『壊れゆく鉄球(レッキング・ボール)』を掴んだまま離さなかった。
 飛び出そうとする『衛星』までもを押さえ込み、嫌な音と焦げ臭い匂いを漂わせて、その回転を押し留める。

「だああああああっ!!!」


 そして彼は、驚愕するウェカピポの妹の夫に向けて、その鉄球を投げ返していた。
 それは回転を帯びさせたわけでもなく、ただの素人の投擲に過ぎない。
 だがしかし、その速度と狙いだけは、確実に人一人の肉体を破壊して余りあるものを秘めていた。


「くっ――!」

 瞬間、ウェカピポの妹の夫は、もう一つの鉄球を、目の前の地面にぶち当てていた。


「ネアポリス護衛式鉄球、『衛星』!!」



 花火のように吹き上がった小鉄球が、対空弾幕のように宮本明の鉄球を迎撃し、その軌道を逸らす。
 義弟の鉄球には、投球技術に秀でたウェカピポのような、飛来する鉄球を鉄球自体で打ち落とすなどという常軌を逸した精密さはない。
 その分、彼は投球技術以外の『ネアポリス王族護衛術』でそれをカバーしようと修練に励んできていた。

 頬を掠めて去る明の投球を避けて、彼は重い金の日本刀を構えて走り込む。
 宮本明には、先の鉄球を受け止めた際に『左半身失調』の回転が伝導されていた。
 義弟の視界内で、明は義弟が叩き落した王族護衛官の剣を必死に掴み上げているが、最早その左半身はほとんど動いていない。
 確実に、今の彼は左側を認識できていなかった。


 ――正真正銘、この一撃で最後になるな。カタを、つけさせてもらう。


 義弟は宮本明の左側から、その手に持つ金色の死を、運び込む。


    △△△△△△△△△△


 宮本明は、欠落した視界の左側に、白く義弟の足跡を見ていた。
 彼の体重、身長、立ち居振る舞いから無意識下で算出した、未来の足跡である。
 1秒後、2秒後、3秒後。
 ウェカピポの妹の夫は正確にその足跡を踏んで、宮本明の首を断ち落とそうと、金の日本刀を振り下ろしにくるだろう。

 明は、赤黒く血まみれになった右手に剣を掴み、ハァハァと息を荒げる。
 先程まで大太刀を持っていた感覚からすると随分と軽い。
 左脇からの出血も既にかなり大量に及び、貧血で意識が朦朧としてくる。


 ――正真正銘、この一撃で最後になるな。カタを、つけさせてもらう。


 宮本明が最後に残した策は、その未来予知で予測した義弟の攻撃タイミングに合わせ、右回りに体を回し、振り下ろされる日本刀を受け止めながら義弟を切り殺すというものだった。
 右肩にかけたデイパックをクッション・バンパーとして斬り下ろしを受け流し、そのまま右手の剣で横薙ぎに義弟を斬る。


 1秒後、2秒後、3秒後。


 白い足跡を義弟が踏んでくるのが感じられる。
 体の真横で、義弟が刀を振り上げるのが予測される。


「今だっ――!!」


 宮本明は、横座りの上半身を勢い良く時計回りに振り抜いていた。
 半回転した視界の中に、まさに義弟が振り下ろす刀の輝きが映っていた。
 しかしその刃は、肩のデイパックには、触れなかった。


 ――えっ。


 その刃は、デイパックをちょうど通り過ぎた、宮本明の右下腕に斬り込んでいた。


「があああああああッ!!!」


 肉が裂けた。
 尺骨がへし折れた。
 指への神経を切断されて、剣が地に落ちる。
 宮本明は、一般人が12キログラム近い重量の金の日本刀を持った際に生じる動作の遅れを、予測から外してしまっていた。
 彼岸島の人間や吸血鬼を基準にしていた自身の未来予知の校正を、完遂できなかったのだ。


 義弟はそのまま、日本刀の重量で腕ごと彼を断ち切ろうと力を込める。
 しかしその瞬間、義弟の持つ刀の柄に、蛇のように駆け上がるものがあった。


 ――宮本明の左腕。


 斬り下ろしを耐えた明は、すんでのところで『左半身失調』から回復していた。


「しまっ――!?」
「シェアッ!!」


 身を引こうとした義弟の腕に、勢い良く跳ね起きた宮本明のハイキックが衝突した。
 ボギン。
 と鈍い音を響かせて、華のように張り裂けた義弟の左肘から血と骨の破片が飛び散る。


「ぐおおおっ――!?」
「お……わ、り、だああああっ!!」



 地面にもんどりうった義弟は、落ちている自分の剣を、無事な右手で必死に掴んだ。
 しかしその時には既に、奪い返した金の日本刀を左手で逆手に持った宮本明が、彼の上に馬乗りになっていた。

 義弟は、咄嗟に右手の剣を振り上げる。
 しかしそれよりも、宮本明が彼に日本刀を突き立てる動作の方が、早かった。
 義弟の振った剣は、力なく明の顔の横を逸れ、見当違いの場所を切り裂いていた。


 ――勝っ、た……。


 大量出血で、ほとんど何も見えなくなった宮本明は、ただ自分の腕に伝わる手ごたえで、深々と義弟の体に自分の刃が突き刺さったことを確認した。
 そして決闘の勝利に安堵した瞬間。


 宮本明は自分の背後から鋭い斬撃を受けた。


 首筋に激しい灼熱感を覚えて意識が闇に飲まれるその瞬間に、宮本明は、ウェカピポの妹の夫のか細い呟きを聞き取っていた。


「――ネアポリス護衛式中剣、『切断からの続開(スタート・オール・オーバー)』……」


    △△△△△△△△△△



 宮本明が目を覚ました時、目の前にはタバコを咥えた阿紫花英良の神妙な面持ちがあった。
 状況を理解できぬまま身を起こした明があたりを見回すと、そこは屋外の丘ではなく、オフィスビルと思われる建物のロビーであった。
 寝かされていたソファーの上に腰掛ける明へ、阿紫花は紫煙を吐きながら呆れ顔を見せる。


「本当、呆れた根性ですよアンタ。アタシと観柳の兄さんの反応が少しでも遅かったら二人とも死んでたところだったんですからね?」
「え、英良さん……。決闘は、一体どうなったんだ……?」
「アンタの粘りで、結局は引き分けってとこですかね」


 阿紫花が顎をしゃくった先には何事もなかったかのようにスーツを着て佇んでいるウェカピポの妹の夫がいた。
 彼は明が目を覚ましたことに気づくと、軽く微笑みを浮かべて歩み寄ってくる。


「お前のような真摯に勝利を目指し続ける男と立ち会えて光栄に思う。
 互いに、悔いのない決闘ができたのではないか?」
「……あんた、一体どうやって、俺の刀から無事で……。いや、それよりも俺が最後に受けた斬撃は……」
「ああ……あれか。オレにもギリギリの賭けだったぞ」


 義弟は明に向けて、左腕の袖をまくって差し出した。
 明が蹴り折った肘から、掌に至るまで、螺旋状に阿紫花英良の魔法の糸で縫われている。

「お前に折られた腕を回転させて刃を引き込み、かろうじて僅かに心臓からずらせた。それでも大動脈に刺されて、そのままでは死を免れなかっただろうがな」
「それじゃあ、あの最後の斬りつけは……」
「西洋剣術には『裏刃切り』があるんだぜ、脳筋さんよ」


 明の発言に、遠くから答えが返ってきた。
 義弟と明、阿紫花が顔を振り向けると、ロビーの奥で待機していたらしい残りの一行がぞろぞろと歩いてきている。
 返事をしたのは、李徴の上にまたがっているフォックスの声であった。
 それに頷いて、義弟は明に向けて補足説明を加える。


「日本の刀は良く斬れるらしいが、オレたちの剣は斬ることだけを目的には作られていない。
 斬り付けたところで、それこそお前ほどの腕力がない限り甲冑には弾かれるからな」


 王族護衛官の使う剣は、分類としてはバスタードソードという、両手・片手でともに活用できる剣に当たる。
 キヨンと呼ばれる十字鍔は、相手の刃を受け止められるよう凹面に切ってあり、ポンメルと言う柄頭には近接打撃用の稜を打ち出したナットが留まっている。
 斬撃に特化した日本刀よりも、近距離での多彩な戦術に対応できる構造になっていた。

 フォックスが『裏刃切り』と呼んだのは、その西洋剣術における接近戦の攻撃手法の一つ、『ラップショット』のことである。
 概して盾を持つことの多い西洋での剣闘では、密着での正面からの打ち合いは有効打が出しづらい。
 そのため、西洋剣術には『相手の背後から』切りつける技術が発生した。

 その剣が諸刃であることを活かし、わざと外して相手の裏に流れた剣先を、肩・腕と手首を鞭のようにしならせ回転させることで引き戻し、相手の首筋や尻に高速の斬撃を叩き込むものである。
 『西洋剣は切れない』というイメージは半ば一般化しているが、これは多分に個人の好みに依っており、厚さ40cmの肉塊や牛の大腿骨を切断するくらいならば、西洋の剣でも可能である。
 義弟の剣においては彼自身が調整しており、リカッソはやや短め、刃先はやや鋭利に手入れをしていた。


 宮本明が自分の首筋を触れてみると、そこには首筋の左半分を深々と切断された跡が縫い目となって残っている。
 頚動脈はおろか、食道、気管、頚椎の端までを一撃のもとに吹き飛ばされていたのだ。
 阿紫花英良と武田観柳がその場にいなかったら、ほとんど即死は免れなかっただろう。



「……すげぇよ、義弟さん、あんた……」


 宮本明は、自分に刻まれた数多の傷跡を確かめて、ポツリと呟いていた。
 最終的に、かろうじて引き分けと呼べなくもない終結をみたが、初めからこの決闘を見返してみれば、その戦績は実質、ウェカピポの妹の夫が2勝している。
 その上でもつれ込んだ最後の最後でも勝ちきれなかったとなれば、明の内心ではそれは完敗に等しかった。


「……俺の負けだ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」
「いや、引き分けだ。オレたちそれぞれの主張がどうなるかは、ひとえに立会人の意向にかかっている」


 ウェカピポの妹の夫は、項垂れる宮本明に対してそう声をかけ、武田観柳や阿紫花英良に目を配る。
 フォックス、阿紫花、ジャック、晴人が観柳と目を合わせ、観柳は最後に李徴と隻眼2を見やってから明に話しかける。


「……とりあえずですねぇ。ご自分が了承した決闘で勝ちきれなかったのですから、『何があろうと羆は殺さなくちゃいけない、一匹たりとも残しちゃいけない』という主張が通らないのは解りますね?」
「ああ……。それくらい、わかってるさ……」

 観柳は振り返って義弟にも言う。

「ですが、義弟さんの『命を差し出してもらう』というのもナシですよ?」
「まぁ、そこは当初から覚悟の有無だけの問題だからな」

 観柳はそこで、気絶中の明から回収していた金の日本刀を、再び取り出した。
 それをロビーの床に突き立たせ、言葉を続ける。


「今回の決闘で、私はあなたが、相当に大きな金剛石の原石にも匹敵する人物であると思いましたよ。
 ですがそれもまだまだ原石であるまま。この玉を真に美しく価値ある商品にするには、あなたの受けた修練は荒すぎだったと思わざるを得ません」

 観柳は、フォックスから手まねでノートパソコンを受け取り、明に渡す。
 そこには、隻眼2が口頭で述べた、この島で繰り広げられた活劇の様子、そして李徴が記したパロロワのプロットが、克明に記されていた。
 明は、その文章力に衝撃を受けた。
 曲がりなりにもかつて物書きを目指していた明をして、『及ばないかも知れない』と思わせるほど多彩な文章がそこに躍動していた。
 読み進めながら隻眼2や李徴を交互に見やる明に向かって、観柳は再び言葉を繋ぐ。


「人間にもいろいろいるように、羆にだっていろいろいるんでしょう。私にとっては驚きの連続。
 この『ぱぁそなるこんぴゅうたぁ』だって、明治に持って帰れたらどれほど良いことか。構造を知りたいものです。
 ……私達はまだまだ、学ぶべきことばかりなのですよ」


 明は頷いていた。
 今まで敵愾心しか抱かなかった二名のヒグマの姿にも、今は書き手仲間としての親近感さえ感じるようになっていた。


「ですからね。宮本さんは、義弟さんから技術や心構えを学んで頂きたく思います。義弟さんは、宮本さんにできる限り教えて頂く。構いませんね」
「立会人の決めたことならばオレは従うぞ」
「……!」


 目を細めて二人に呼びかけた観柳の言葉を受けて、明は立ち上がる。
 そして、腕組みをする義弟へ向けて、頭を下げていた。

「すまない……、義弟さん。俺に、あんたの技を教えてくれ。俺がこの島で、西山の仇をとって、主催者を倒せるように!!」
「……まずオレに言えることはな、お前はその短絡的に決め付ける思考を何とかした方がいいということだ。それが折角のお前の能力を曇らせているのだと、オレは思う」

 ウェカピポの妹の夫は、自分の剣と鉄球を宮本明に見せて静かに言う。

「それに、オレだけについて学んでも効果は薄いだろう。オレのこの技術は、物心ついた時から親父や師範から仕込まれ続けてきたものだ。
 お前に合っているものとも思えないし、人間が数日や数時間で無制限に技術を身につけて強くなれるものか」
『ボクと契約すれば、すぐにでも強くなれるよ!』



 語り始めた義弟の話の腰を折るように、突如天井からテレパシーが届いた。
 見上げると、そこにはボロ雑巾のようになったキュゥべえが張り付いている。
 それを宮本明が見た瞬間、見えない力に引っ張られるようにキュゥべえは床に高速落下し、激突した後再び天井に衝突した。

 武田観柳が、笑顔の端を引き攣らせて指を上下させている。
 先だって埋め込んだ一円金貨を引っ張って、キュゥべえの体を操作しているのだ。

「義弟さんの話の途中ですよ? 私が妨害しなければ、あなたは気絶した宮本さんの深層意識に直接語り掛けて契約させようとまでしていましたよね? 大概にしませんかねぇそういうの」
『流石カンリュウだね。キミの魔力はボクの予想以上だ! そのまま魔力を無駄遣いして早く魔女になってくれると有り難いな!』

 キュゥべえの大音声のテレパシーに、阿紫花と観柳は顔を引き攣らせた。
 その狼狽をせせら笑うかのようにキュゥべえが天上で首を傾げた時、突如辺りに無機質な機械音声が響く。


『コネ『コネ『コネ『コネ『コネ『コネ『コネ『コネクト・プリーズ』』』』』』』』


 キュゥべえの周囲に大量の魔法陣が出現し、そこから出現した握り拳がキュゥべえへ猛烈なラッシュを叩き込んでいた。
 そのままキュゥべえは力なく地に落下する。
 操真晴人、怒りの魔法であった。


「……ジャックさん、悪いんだけど、そいつを黙らしといてもらえないか?」
「そうだねハルト。キューベーちゃん、部外者は部外者でしっぽりやろうゼ」

 青筋を立てて息を荒げる晴人に応えて、全裸のジャックは、身じろぎもしなくなったキュゥべえを労わるように抱え、ソファー脇の宮本明のデイパックに入っていく。
 宮本明の目に、初めて操真晴人がそれなりに強そうな人物に映って見えた。


「……まあ、その魔法というのも、結局は自分の根源に由来するものなのだろう。
 強くなれる骨子となるのは、いつでも、自分の根源だけだ」

 ようやく辺りが静かになり、義弟は話を続け出す。

「お前のその強さは、自分の根源を引き出し続けてきたが故のものだろう?
 それを矯めるのはいい。肉付けするのもいい。だが、今から新たな強さを土台もなく建てるのはほぼ不可能だ。
 見せるだけならいくらでもしてやる。お前はここにいる全員を師とし、その中から自分に合っているものだけを選べ。くれぐれも、敬意を忘れずにな」
「ここにいる全員を……」
「オレだって、お前から学ぶことはあった。心がけとしては、自分以外は全て師匠だと思っていいくらいだ」


 自分の知識を逸した技術を持つウェカピポの妹の夫。
 取り引きや金銭に纏わる才覚なら誰にも追随を許さぬ武田観柳。
 芸術的な魅せ方と戦術に長けた阿紫花英良。
 妄想と肉体を理想的なバランスで兼ね備えたジャック・ブローニンソン。
 武器や武術にはこの中で最も詳しいであろうフォックス。
 見習うべき物書きである李徴と小隻。
 地味ながらも要所ではしっかり仕事をこなす操真晴人。
 他人の神経を逆撫でするやり口には随一であるキュゥべえ。

 宮本明が周りの人物を思い返すに、彼らはみな、自分にない要素を持ち合わせた者たちである。
 これから出会う仲間にも敵にも、こうした、自分の尺度では測れない者は多く現れるだろう。
 先の決闘を思い出しても、自分の知識や戦術を広げ深めるには、こうした者たちから学び取る意識が非常に大切なもののように思えた。



 息を飲む宮本明に、今度は武田観柳が今一度話しかけてくる。
 真っ白な衣装と手袋に包まれた手を、突き立つ金の刀の塚頭に置き、試すような視線で微笑みかける。

「……さて、そんな宮本さんに私から契約をお持ちかけします。キュゥべえさんと違って無理強いはしませんので、ご自由に選んでくださいね」
「一体なんだ?」

 問い返す明の視界で、その日本刀は融けたり刀に戻ったりを繰り返している。

「あなたと私の契約は、『護衛』と『武器』の交換でしたね。ですがこの武器が私の魔力でできている以上、そうそうお安くお譲りしたくはありません。
 特に、商品を大切に扱って下さらなさそうなお客様にはね」

 彼岸島で吸血鬼たちの武器を奪っては捨て、拾っては砕いてきた明には、返す言葉もない。

「……ですがもし、あなたがこの商品を心底大切に愛用して下さるというのなら、私は商人として、この武器を、あなたに合う最高の調整で提供いたしましょう。
 魔法だって、あなたの元の力と合わせて利用してやればいい。余り難しく考える必要はありません。
 さぁ、契約書を破棄するか、署名するか、如何いたしますか?」


 明が辺りを見回せば、周囲の注目は全て自分に集まっていた。
 パソコンには、自分が目覚める寸前まで筆談されていたらしい文章も記されている。
 今一度その文面を見やって、明は笑みを浮かべる。


 今、彼はその魔法の契約書に手を伸ばした。


【E-6・街(あるオフィスビルのロビー)/昼】


【宮本明@彼岸島】
状態:ハァハァ
装備:なし
道具:基本支給品、ランダム支給品×0~1
基本思考:西山の仇を取り、主催者を滅ぼして脱出する。ヒグマ全滅は……?
0:??????????
1:もっと、知識をつけて物事を広く見るべきか……。
2:西山……
3:兄貴達の面目にかけて絶対に生き残る


【ジャック・ブローニンソン@妄想オリロワ2(支給品)】
状態:木偶(デク)化
装備:なし
道具:なし
基本思考:獣姦
0:動物たちと愛し合いながら逝けるならもういつ死んでもいいよぉ!!
1:キューベーちゃん、アキラたちの邪魔しちゃいけないゼ?
[備考]
フランドルの支給品です。
※一度死んで、阿紫花英良の魔力で動いています。魔力の供給が途絶えた時点で死体に戻ります。



【阿紫花英良@からくりサーカス】
状態:魔法少女、ジャック・ブローニンソンに魔力供給中
装備:ソウルジェム(濁り:中)、魔法少女衣装
道具:基本支給品、煙草およびライター(支給品ではない)、プルチネルラ@からくりサーカス、グリモルディ@からくりサーカス、余剰の食料(1人分程)
紀元二五四〇年式村田銃・散弾銃加工済み払い下げ品(0/1)、鎖付きベアトラップ×2
基本思考:お代を頂戴したので仕事をする
0:ひと段落しましたし、筆談したとおりに動きましょうか……。
1:手に入るもの全てをどうにか利用して生き残る
2:何が起きても驚かない心構えでいるのはかなり厳しそうだけど契約した手前がんばってみる
3:他の参加者を探して協力を取り付ける
4:人形自身をも満足させられるような芸を、してみたいですねぇ……。
5:魔法少女ってつまり、ピンチになった時には切り札っぽく魔女に変身しちまえば良いんですかね?
[備考]
※魔法少女になりました。
※固有魔法は『糸による物体の修復・操作』です。
※武器である操り糸を生成して、人形や無生物を操作したり、物品・人体などを縫い合わせて修復したりすることができます。
※死体に魔力を注入して木偶化し、魔法少女の肉体と同様に動かすこともできますが、その分の維持魔力は増えます。
※ソウルジェムは灰色の歯車型。左手の手袋の甲にあります。


【武田観柳@るろうに剣心】
状態:魔法少女
装備:ソウルジェム(濁り:小)、魔法少女衣装、金の詰まったバッグ@るろうに剣心特筆版
道具:基本支給品、防災救急セットバケツタイプ、鮭のおにぎり、キュゥべえから奪い返したグリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、魔法製金の刀
基本思考:『希望』すら稼ぎ出して、必ずや生きて帰る
0:さぁ、宮本さんはどちらを選びますか?
1:他の参加者をどうにか利用して生き残る
2:元の時代に生きて帰る方法を見つける
3:取り敢えず津波の収まるまでは様子見でしょうか。
4:おにぎりパックや魔法のように、まだまだ持ち帰って売れるものがあるかも……?
[備考]
※観柳の参戦時期は言うこと聞いてくれない蒼紫にキレてる辺りです。
※観柳は、原作漫画、アニメ、特筆版、映画と、金のことばかり考えて世界線を4つ経験しているため、因果・魔力が比較的高いようです。
※魔法少女になりました。
※固有魔法は『金の引力の操作』です。
※武器である貨幣を生成して、それらに物理的な引力を働かせたり、溶融して回転式機関砲を形成したりすることができます。
※貨幣の価値が大きいほどその力は強まりますが、『金を稼ぐのは商人である自身の手腕』であると自負しているため、今いる時間軸で一般的に流通している貨幣は生成できません(明治に帰ると一円金貨などは作れなくなる)。
※観柳は生成した貨幣を使用後に全て回収・再利用するため、魔力効率はかなり良いようです。
※ソウルジェムは金色のコイン型。スカーフ止めのブローチとなっていますが、表面に一円金貨を重ねて、破壊されないよう防護しています。
※グリーフシードが何の魔女のものなのかは、後続の方にお任せします。


【操真晴人@仮面ライダーウィザード(支給品)】
状態:健康
装備:普段着、コネクトウィザードリング、ウィザードライバー
道具:ウィザーソードガン、マシンウィンガー
基本思考:サバトのような悲劇を起こしたくはない
0:話が終わったら、筆談したとおりに動こうか。
1:今できることで、とりあえず身の回りの人の希望と……なれるのかこれは?
2:キュゥべえちゃんは、とりあえず目障り。
3:観柳さんは、希望を稼ぐというけれど、それに助力できるのなら、してみよう。
4:宮本さんの態度は、もうちょっとどうにかならないのか?
[備考]
※宮本明の支給品です。


【キュウべぇ@全開ロワ】
状態:尻が熱的死(行動に支障は無い)、ボロ雑巾(行動に支障は無い)
装備:観柳に埋め込まれた一円金貨
道具:なし
基本思考:会場の魔法少女には生き残るか魔女になってもらう。
0:わけがわからないよ。
1:人間はヒグマの餌になってくれてもいいけど、魔法少女に死んでもらうと困るな。もったいないじゃないか。
2:道すがらで、魔法少女を増やしていこう。
[備考]
範馬勇次郎に勝利したハンターの支給品でした。
※テレパシーで、周辺の者の表層思考を読んでいます。そのため、オープニング時からかなりの参加者の名前や情報を収集し、今現在もそれは続いています。



ヒグマになった李徴子山月記?】
状態:健康
装備:なし
道具:なし
基本思考:羆羆羆羆羆羆羆羆羆羆
0:ああ、対主催の人材が肥えてきている……興奮するなぁ。
1:小隻の才と作品を、もっと見たい。
2:フォックスには、まだまだ作品を記録していってもらいたい。
3:人間でありたい。
4:自分の流儀とは一体、何なのだ?
[備考]
※かつては人間で、今でも僅かな時間だけ人間の心が戻ります
※人間だった頃はロワ書き手で社畜でした


【フォックス@北斗の拳】
状態:健康
装備:カマ@北斗の拳
道具:基本支給品×2、袁さんのノートパソコン、ランダム支給品×0~2(@しんのゆうしゃ) 、ランダム支給品×0~2(@陳郡の袁さん)、ローストビーフのサンドイッチ(残り僅か)
基本思考:生き残り重視
0:終わったら筆談通りやるか。
1:メンバーがやばすぎる……。利用しつづけていけるか、俺……?
2:李徴は正気のほうが利用しやすいかも知れん。色々うざったいけど。
3:義弟は逆鱗に触れないようにすることだけ気を付けて、うまいことその能力を活用してやりたい。
4:シャオジーはいつ襲い掛かってきてもおかしくねぇから、背中を晒さねぇようにだけは気を付けよう。
5:俺も周りの人間をどう利用すれば一番うまいか、学んでいかねぇとな。
[備考]
※勲章『ルーキーカウボーイ』を手に入れました。
※フォックスの支給品はC-8に放置されています。
※袁さんのノートパソコンには、ロワのプロットが30ほど、『地上最強の生物対ハンター』、『手品師の心臓』、『金の指輪』、『Timelineの東』、『鮭狩り』、『クマカン!』、『手品師の心臓』、『Round ZERO』の内容と、
 布束砥信の手紙の情報、盗聴の危険性を配慮した文章がテキストファイルで保存されています。


【隻眼2】
状態:左前脚に内出血、隻眼
装備:無し
道具:無し
基本思考:観察に徹し、生き残る
0:主催者に対抗することに、ヒグマはうまみがあるのかしら……?
1:とりあえず生き残りのための仲間は確保したい。
2:李徴さんたちとの仲間関係の維持のため、文字を学んでみたい。
3:凄い方とアブナイ方が多すぎる。用心しないと。
4:見ごたえのある戦いでした……。
[備考]
※キュゥべえ、白金の魔法少女(武田観柳)、黒髪の魔法少女(暁美ほむら)、爆弾を投下する女の子(球磨)、李徴、ウェカピポの妹の夫が、用心相手に入っています。


【ウェカピポの妹の夫@スティール・ボール・ラン(ジョジョの奇妙な冒険)】
状態:疲労(中)
装備:『壊れゆく鉄球』×2@SBR、王族護衛官の剣@SBR
道具:基本支給品、食うに堪えなかった血と臓物味のクッキー、研究所への経路を記載した便箋、HIGUMA特異的吸収性麻酔針×3本
基本思考:流儀に則って主催者を殴りながら殺りまくって帰る
0:筆談したとおりに動く。それが流儀。
1:宮本明は自分の素質を最も活かせる流儀を知るべきだ。
2:フォックスは拳法家の流儀通り行動すべきだ。
3:李徴はヒグマなのか人間なのか小説家なのかはっきりしろ。
4:シャオジーは無理して人間の流儀を学ぶ必要はないし、ヒグマでいてくれた方が有り難いんだが……。
5:『脳を操作する能力』のヒグマは、当座のところ最大の障害になりそうだな……。
6:『自然』の流儀を学ぶように心がけていこう。

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最終更新:2014年06月03日 02:07