一寸先は闇

【1】

どういう事だろうか。
俺ことブルース・ヤスパースは動揺していた。
俺はあの時、河田遥と言う少女を守って死んだ。
それは不変の事実である。
あの時実は死んでいなかったなど、あり得ない話だ。
確かに自分は死んでいったはずだ。
傷も、痛みも、あれは本物であった。
だけれども今、それが何一つなかった。

「……意味が分からないな」

そう言いつつデイバックを探る。
あの時とデザインが似ているし、構造はほぼ同じだ
あの時の事を鮮明に思い出す。
自分が守れなかった二人、そして守れたかもしれない女の子……。
すべてが昔の事のように思い出される。
いや、昔ではなく最近なのだが。

「……カワダハルカ?なんで、彼女が――――」

河田遥、彼が実を呈して守った女の子である。
この場に呼ばれたと言う事は、また彼女は危険にさらされているのか。

「……探してあげないとな」

ブルースの大事な人であった彼女と似ていた。
それだけの理由で命を捨ててまで守った少女だ。
ならば、助けなくてはなるまい。
もう自分は十分に生きたと思っている。
35歳の人間が何を言っていると言われるかもしれないがな。

「……ん?俺の名前がない?」

名簿の中にはブルース・ヤスパースの名前がなかった。
ミスだろうか、とは思ったがこう日本人名が多い中で俺みたいな外国人の名前を入れ忘れるだろうか。
いや、あの主催の事だ、忘れてもおかしくなさそうだ。

「さてと、武器は……っと、これは」

中から出てきたのはシグプロSP2340だった。
フラッシュライトやレーザーサイトなども搭載されている。
機体自体もそこそこがんじょうで壊れにくい。
自分にとって当たりと言っていいものだった。

「……他には、ゲッ」

次に出てきた物、それはお徳用の割り箸だった。
前回より質量が増えただけである。
少しいらっと来たのかブルースはこれを一気に叩き折った。
袋の外にも漏れるバギィ、という音。

「……もう支給品もないようだな、とりあえずハルカを探すか……」

ブルースは立ち上がり、うろつき始めた。

【2】

怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、
辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、辛い、
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、

「あああああああああああああああああああああああああああ!!」

一人の大人が走っていた。
大人に見えないかもしれないが、これでも大人である。
彼は少し前、異常者の如き少年とであった。
そこからまさに心機一転の名前の通りに、彼は変化した。
いや、悪化したと言うべきであろう。
彼は今、殺すことしか考えていない。

「あああああああああああああああああああああああ!!!」

彼は走るのをやめない。
どうしようもない恐怖で彼は潰されそうになっていた。

【3】

D-3にて一人の男が落ち込んでいた。
彼は香坂幹葦と言った。
人狼であり、悪人シボウな青年だ。

「……どうすればいいんだよ、クソっ……」

彼の支給品であるS&WM19を見つめる。
それは普段の彼にも支給されている銃である。
彼は警察官と言う職業についていた。
善と言う行いに絶望して、悪に走った。
ただそれだけの理由だった。
彼にとってはそのそれだけは大きいものであるが。

「……やっぱり俺は、悪い事をしたい……だから人を……」
「ああああああああああああああああああああ!!」

そこで後ろから聞こえてきた声に驚いて後ろを振り向いた。
走ってきて叫んでいたのはおかっぱ頭のモノクロ服の男だった。
目をこれ以上あるかと言うほどまで開いて、走ってきている。
それを見て銃を構えた。

(これは正当防衛だ――――いや、悪い事だ……だから)

香坂は銃の引き金を引いた。
手が若干震えて、的が定まっていない。
向こうは着実に距離を縮めている。
こっちも撃ち続けるが一向に当たらない。

バン、バン、バン、カチッカチッ

「な、弾切れ……!?速くリロードを……」

弾をポケットから取り出したところで心機一転が飛び込んできた。
香坂は驚きのあまり動けなくなっていた。
手に持たれていた357マグナム弾が地面に落ちる。
心機一転の手が香坂の『両肩』に触れた。
そして勢いに負けて香坂が吹き飛ばされた。

「ぐ、がぁ……ッ痛ぇ……」

香坂が痛がっている中心機一転がにじり寄ってきているのが見えた。
香坂は銃を探すが、先ほど落としてしまった事に気付いた。
人狼化をするべきかそう思ったころには遅かった。
心機一転の間の手が下ろうとしていた。
だが、心機一転はあるものに足を滑らせた。
S&WM19そのものだった。
心機一転は両手を地面につけた。
いや、地面ではなかった。
その場所は、香坂の『両胸』であった。

「…………あ」

香坂は何かに気付いたような顔に変わった。
だが、心機一転はそれも気にせず香坂の喉を絞めた。
少しづつ、どんどん力が強くなる。
香坂の顔色もどんどん悪くなっていく。
もう少しで終わる、その時だった。

「ッ、ラァアアアア!!」

心機一転は吹き飛ばされた。
数回転するような転がりをして、止まった。
香坂は少しづつ息をして自分を助けてくれた人物を見る。

「大丈夫か?アンタ」
「……あ、あ……ありがとう、僕は香坂幹葦と言います……貴方は?」
「俺か?俺はブルース・ヤスパースだ」
「あ、ありがとうございます……」

香坂は落ちていたS&WM19を拾う。
そして土を払う。

「えーと、俺は警察をやっていてな、一応保護したい人物がいるんだが、一緒に来るか?」
「貴方も警察なんですか?だったらありがたい」
「お前もなのか、何だ?休みの時だったのか?私服のようだが」
「ああ、はい……」

香坂はS&WM19に弾を込める。
ブルースはその様子も気にせずに話を続ける。

「……とりあえず、こいつをどうするかだな……」
「そうですね」




――――――――――――バン



左肩に痛みを感じた。
それは、間違いなく、銃弾による痛みだった。
後ろにいたのは誰だ?
そんなのは、単純明快すぎる。

「……コウサカ……お前、何故……?」
「え……ああ……」

香坂は驚いたように自分の手を見つめている。
暴発なのか、それは分からなかった。
だが、衝撃を受けたような顔をしていた。

「うそだ、嘘だよ……うああああああああああああ!!」
「待て!コウサカ!」

香坂は走って逃げてしまった。
その場に残ったのは、ブルースと心機一転だけになった。

「……あいつを追いかけるよりも、こいつをどうにかした方がいいだろうな」

ブルースはその場に座り自分の傷の治療を始めた。


【D-3/平地/一日目/朝】


【心機一転@四字熟語ロワ】
[状態]:精神崩壊、発狂、気絶中
[服装]:モノクロの服
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×3
[思考]
基本:殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺。
1:ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!
[備考]
※死亡後からの参戦です
沖崎翔の能力で様々な、曰くマイナス的な感覚が過剰とされました。

【ブルース・ヤスパース@DOLオリジナルキャラバトルロワイアル】
[状態]:左肩に銃創(治療中)
[服装]:警官服
[装備]:シグプロSP2340(15/15)
[道具]:基本支給品一式、シグプロSP2340のマガジン(3)、折れているお徳用割り箸セット
[思考]
基本:この殺し合いの打倒
1:こいつが起きるのを待つ
2:ハルカを探す
[備考]
※DOLオリロワ死亡後からの参戦です。
※香坂幹葦の外見、名前記憶しました。

【4】

どうして僕は悪い事がしたいなんて思ったんだろう。
人間の本質は人を救う事だ。
いい事をするんだ、僕は。
そうすれば、今までの考えを変える事が出来る。
今までの僕は偽物だ。
今からの僕が本物だ。

「うああああああああああああああああああ!!」

それが、どうしてこうなったんだろう。
自分はブルースさんを撃ってしまったんだろう。
それが間違いによったものでもだ。
善人を目指すのに、撃ってしまったのだ。
どうしようもない……僕はどうすればいいんだろう。
誰か、教えてほしい。


【D-3/平地/一日目/朝】


【香坂幹葦@夢オチだったオリロワのキャラでロワ】
[状態]:スタンス反転、精神的ショック
[服装]:特筆事項無し
[装備]:S&WM19(5/6)
[道具]:基本支給品一式、357マグナム弾(12)
[思考]
基本:悪い事はしたくない、いいことはしたい
1:うあああああああああああああ!!
[備考]
※夢落ちロワ参加前からの参戦です。
大崎年光の外見のみ記憶しました。
※心機一転の能力でスタンスが反転している最中です。


【支給品説明】

【お徳用割り箸セット】
ブルース・ヤスパースに支給。
割り箸が30本も入ったお得セット。
全部彼の手によって折られてしまった。

【シグプロSP2340】
ブルース・ヤスパースに支給。
シグ社が1998年に発表した自動拳銃。
世界的なプラスチックの使用による拳銃の軽量化を踏まえてフレームが金属製からプラスチック製となった。
フラッシュライトやレーザーサイトなどのオプションは充実している。

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GAME START ブルース・ヤスパース 046:Downfall
016:悪人シボウデス 香坂幹葦 054:マインド・イミテーション
008:あなたはそこにいますか? 心機一転 046:Downfall

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最終更新:2012年05月13日 16:21