「……あれは」
大崎年光は平地で人影を発見した。
片方は外国人風の男、片方は横になっている。
気絶した者を介抱しているのか、それとも、外国人風の男が倒れている男を襲ったのか。
先刻の刀を持った男の件もあり、年光はグラディウスを固く握り締める。
「おい、そこのあんた」
「!」
年光が声を掛けると外国人風の男は気付いたようで年光の方を向く。
「……あー、日本語分かるか?」
「ああ、大丈夫だ、分かる」
「そりゃ良かった、俺は大崎年光って言うんだ、あんたは……」
男の名前を年光は尋ねる。
倒れている男は
心機一転、詳細名簿に載っていた。
しかし外国人風の男の方は詳細名簿にも記載が無かった。
「俺はブルース・ヤスパーズ。刑事だ」
「そうか刑事さんか……そこに倒れてるのは、心機一転、て奴だな」
「? 知っているのか?」
「これでな」
そう言って年光はデイパックから詳細名簿を取り出す。
「この殺し合いの全参加者の詳細が記録されてる……だけどブルースさん、あんたは載っていない。
普通の名簿にも確か載っていなかったと思ったが」
「ああ、それは俺も不思議に思ったんだけどな……主催者が忘れたのかもしれんな」
「そんな間抜けな事すっか? こんな大それた殺し合い開催するような奴が……。
まあ良いか……んで、ブルースさん、あんた、乗ってるか? 殺し合いに」
「……俺は刑事だぞ? そんな事出来る訳無いだろう」
「……だな、あんたの目見てりゃ分かる。俺も乗ってねぇよ。
んで、どういう状況なんだ? そいつが気絶して、あんたが横にいるってのは」
ブルースは先刻起きた出来事を年光に話す。
「そいつ、俺会ったぞ。多分、あんたらと会う前に」
「本当か?」
「
香坂幹葦……まあ俺も出会って別れた後に詳細名簿見て名前知ったんだけどよ。
出会うなり俺に銃を向けて、俺を殺すとかほざきやがってな。
だけど、声も身体も震えてビビってんの丸出しなんだよ、だからちと説教垂れてやったんだ。
それでお終いさ。背を向けても追撃もしてこなかったよ」
「……そうか……」
「……そいつに撃たれたって? その傷」
年光がブルースの左肩の傷を見て言う。
応急処置は済ませてあるようだが、痛々しい。
「ケッ、助けてくれた恩を仇で返すとは、最悪だな」
「しかし、どうも様子がおかしかったんだ。俺を撃った時、酷く動揺していてな、嘘だ、と喚いて、
どこかへ消えてしまった……」
「ふぅん……まあロクな奴じゃねーだろ、何にせよ。つーかあいつ警官だったのかよ。
世も末だぜ……悪徳警官は大勢いっけどよ」
二人が情報を交わしている時。
二人は倒れている男、心機一転がゆっくりと目を覚ました事に気付かなかった。
(……俺、俺、どうしたんだ)
まだはっきりとしない頭で、仰向けになったまま視線だけを横に向ける。
何やら話をしている二人の男がいた。
会話の内容は良く聞き取れなかったが、心機一転には関係無かったようだ。
(俺、気絶させ……そ、そうか、そうか! あの二人、俺をどうやって殺そうか相談してるんだ!
嫌だ、ころ、殺されてたまるか、殺されてたまるか、お前らなんかに、お前らなんかに―――――!!)
彼の精神はもう手の施しようの無い程狂ってしまっていた。
今の彼には目に映る人物全てが「敵」。
「う……」
「ん?」
「あ?」
「う、あ、ああぁああああああぁああああアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
絶叫しながら、心機一転が年光に向かって突進し、飛び掛かった。
その時、年光の胸元に心機一転の両手が触れる。
「―――――――」
押し倒された衝撃の中、年光は自分の中の「何か」が変わったのを感じた。
それが何なのかは分からない、分かろうとする間も無く自分に馬乗りになった男が自分の首を絞めようとする。
「おい、やめろ!!」
ブルースが心機一転を年光から引き剥がし、尚も暴れる彼を止むを得ず草地に放り出す。
「トシミツ! 大丈夫か!」
首元を触る年光の元へ駆け寄るブルース。
「……大丈夫だ」
「そうか……」
「……この野郎、舐めた真似しやがって」
「……?」
ブルースは異変に気付く。
年光の声のトーンが明らかに先程より低い、ドスの利いたものへ変わっていた。
年光はすっと立ち上がると、自分のデイパックを乱暴に漁る心機一転の元へ無言で歩いて行く。
「はぁっ、はぁ、あ、はははっ、ハハハハハ!!」
デイパックの中から目当ての物が見付かったらしく、心機一転は歓喜の笑い声をあげた。
そして、見付けた物――――旧式の大型自動拳銃インベルM911を手に取り、
その銃口を二人の方へ向け――――られなかった。
ザシュッ!!!
グラディウスの斬撃が、心機一転の身体を袈裟に斬り裂く。
鮮血が迸る。年光の衣服にも赤い飛沫が掛かる。
「ひっ、ぎ、あ、あぁあああぁああぁあああぁああああああああぁああ!!!!?」
激痛に心機一転は悲鳴をあげ、持っていたインベルM911を落とし崩れ落ちのたうち回る。
「ぎゃああああひぎぃいいいいイいイイ痛ぇぇええ痛ぇええよおぉおおおオオオ!!!」
「うるせぇんだよ糞野郎」
「! トシミツ、待――――」
「ほら、死ねや!!」
年光がグラディウスを心機一転の胸元に思い切り突き立てる。
心機一転はしばらくパクパクと口を動かしていたが、やがて完全に動きが止まった。
グラディウスが引き抜かれると傷口から大量の血液が溢れ出す。
「と、トシミツ、何て事を……何も、殺さなくても……」
「……正当防衛だろ? こいつが俺を殺そうとした、だから命を守るために殺したんだ」
ブルースは息を呑む。
年光の様子が出会った時とはまるで違う、別人のようだ。
「ああ、何だろう、俺随分馬鹿馬鹿しい事してたって気がする」
「……何?」
「この殺し合いから脱出する? そんな事出来る訳ねぇのによ。
前の殺し合いで分かってたろ、どんなに足掻いたって、結局無駄なんだって……馬鹿だろ俺」
「何を、言っているんだ……?」
「山本、良く考えたらあんな爺捜してどうすんだよ……糞の役にも立たねぇだろうが。
何で気付かなかったんだろうなァ、殺し合いなら、素直に殺し合うべきだって事を」
「トシ……」
「てな訳であんたも死んでくれよブルースさん」
グサ。
ブルースは胴体に違和感を感じた。
その違和感はやがて焼けるような熱となる。
視線を下に映すと、グラディウスの刃が自分の鳩尾辺りに刺さっていた。
「う……あ」
年光がグラディウスをブルースの身体から引き抜くと、ブルースはそのまま前のめりに倒れ、動かなくなる。
血に濡れた刃をブルースの衣服で拭き取ると、年光は心機一転の荷物を漁り、
インベルM911自動拳銃と予備の弾倉3個を手に入れる。
他に模造刀とガスバーナーも入っていたが、必要無いと判断し無視した。
更にブルースの所持していたシグプロSP2340と弾倉も手に入れる。
「さて行くか」
年光は装備をシグプロSP2340に切り替え、その場を後にした。
【心機一転@四字熟語バトルロワイアル 死亡】
【D-3/平地/一日目/朝】
【大崎年光@俺のオリキャラでバトルロワイアル】
[状態]:身体的疲労(中)、精神的疲労(中)、スタンス反転
[服装]:返り血(中)
[装備]:シグプロSP2340(15/15)
[道具]:基本支給品一式、シグプロSP2340弾倉(3)、詳細名簿、グラディウス、
インベルM911(7/7)、インベルM911弾倉(3)、ランダム支給品(1)
[思考]
基本:殺し合いに乗る。
1:獲物探しのためにうろつく。
2:山本? 知らん。
3:
須牙襲禅、
新藤真紀は最大級の注意及び警戒
[備考]
※俺オリロワ死亡後からの参戦です。
※香坂幹葦、
野村和也の名前を詳細名簿にて確認しました。
※心機一転の能力でスタンスが反転している最中です。
◆
ブルース・ヤスパースはまだ生きていた。
急所は外れていたようだがそれでも浅からぬ傷である事に変わりは無い。
「一体、何が……」
大崎年光のあの豹変振りは明らかに普通では無かった。
最初から殺し合いに乗っていて、自分を騙していたと言う可能性もあったが、
ブルースにはどうしても年光がそのような人物には思えない。
最初に出会った時の第一印象を考えると尚更である。
「……くそっ」
先刻の香坂幹葦の時と言い、今回と言い、一旦友好的な関係になったと思ったら、直後に裏切られる始末。
これが殺し合いの本質なのかとブルースは考えずにはいられなかった。
【D-3/平地/一日目/朝】
【ブルース・ヤスパース@DOLオリジナルキャラバトルロワイアル】
[状態]:左肩に銃創(治療中)、鳩尾付近に刺し傷
[服装]:警官服
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、折れているお徳用割り箸セット
[思考]
基本:この殺し合いの打倒。
1:とにかくまずは傷の手当てをする。
2:ハルカを探す。
[備考]
※DOLオリロワ死亡後からの参戦です。
※香坂幹葦、大崎年光の外見、名前を記憶しました。
※ブルース・ヤスパースのすぐ近くに心機一転の死体及び所持品(デイパック、模造刀、ガスバーナー)が放置されています。
≪支給品説明≫
【インベルM911】
心機一転に支給。予備弾倉3個とセット。
コルトガバメント.45オート自動拳銃をブラジルのインベル社がコピー生産した拳銃。
かつてのブラジル軍の制式拳銃だった。性能はオリジナルと大差無く部品の互換性もある。
【模造刀】
心機一転に支給。
日本刀を模した調度品。刃はついていないが脅しぐらいには使えるかもしれない。
【ガスバーナー】
心機一転に支給。
小型ボンベ式のバーナー。
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最終更新:2012年05月07日 01:17