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育ての親、生みの親

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作者:Jo8A/hrE0

217 名前:育ての親、生みの親[sage saga] 投稿日:2012/08/09(木) 00:06:27.43 ID:Jo8A/hrE0



ほむほむが仔さやを連れてきたのは、ある暑い日のことだった。
辺りを散歩していたところ、倒れていたのを見つけたそうだ。
まだ生まれたばかりのようだが、周囲に親の姿は見えず、暑さで瀕死の状態だったという。
ほむほむが見つけたのは本当にギリギリだった。あと少し遅ければ熱中症でこの幼い命は失われていただろう。

男「よくやったぞ、ほむほむ」

ほむほむ「ホムゥ」テレテレ

つれてきた仔さやに水を与え、体温を下げる。苦しそうだった表情もよくなり、今はすやすやと眠っていた。

男「どうする? 親がいなかったって事は、この暑さかなんかで死んでるだろうし、このまま野生に返しても生きていけるとは思えないし」

さやさやとはいえ、生まれたばかりの仔が一人で生きていけるほど野生は甘くない。

ほむほむ「ホム、ホムホム!」ワタシガソダテル!

突然とんでもないことを言い出した。
まぁ仔さや一匹程度なら家計的には何の問題もないのかもしれないが、大きくなった仔さやがほむほむをほ食しないとも限らない。

ほむほむ「ソレニハオヨバナイワ……」コノコガ ヒトリダチ デキルマデデ イイカラ……

ほむほむの決意は固そうだ。いざとなったら自分がとめればいいだろう。

男「……わかった。ただし、ペットじゃないんだ。しっかり親代わりしろよ。できるな?」

ほむほむ「ホム!」デキル!

男「いい返事だ」

自画自賛というわけではないが、自分が育てたほむほむだ。ちゃんと親代わりできるだろう。


仔さや「チャヤ~チャヤ~」

どうやら仔さやが起きたようだ。赤ん坊のように(正にそうだが)ぐずっている。

ほむほむ「ホムホム」ヨシヨシ

仔さや「チャヤ~! チャヤヤ~!」

ほむほむがあやしているが、全然おさまらない。泣き声は一層大きくなる。
ほむほむの意思はある程度分かる自分も、さすがに赤ん坊の言いたいことはわからない。

男「なんだ? 何してほしいんだ?」

ほむほむ「ホム、ホムホムホ」オナカスイテルミタイ

何だそんなことか。ならばご飯を用意しなければ。

男「とは言え、仔さやって何を食うんだ?」

ほむほむはある程度育ったものをペットショップで買ってきたものだ。ここまで小さいものを育てた経験はない。

男「とりあえずホムフードでいいのか?」

ほむほむ「ホム、ホムホム」コノコマダ ハガ ハエテナイ

じゃあ固形物はダメか。どうするべきか。

ほむほむ「ホムッ」タッ

突然ほむほむが庭に飛び出した。あたりをきょろきょろ見回すとおもむろにそばの土を手に掬っている。

ほむほむ「ホムン」ヨシ

掬ってきた土をその短い指でほじくり、付いた土を自身のエサ置き場の水に溶かした。

ほむほむ「ホムホム」オノミ

土を溶かした水を指につけ、それを仔さやに飲ませる。
ようやく合点がいった。ほむほむは土に含まれるきゅうべぇを水に溶かして与えているのだ。

仔さや「チャヤチャヤ~」

仔さやは喜んでいる。
ほむほむはその繁殖力から子育ての方法を本能的に知っているらしい。それは飼いほむになってからも失われていなかったようだ。

男「やるじゃないか」

どうやら子育てについては何も問題ないようだ。


――――――――――


二ヶ月が過ぎた。寿命が短いほむ種にとっては、赤ん坊が立派な若者になるには十分な時間である。
その後も仔さやは何の問題もなく育った。予想されていたほ食の心配もなく、ほむほむを本物の親のように慕っている。

今日は二匹を伴って散歩(とはいっても家のすぐ近くだが)に出ている。
ほむほむの話では、この近くで仔さや(今はもうすっかり若さやだ)を見つけたようだが別に親探しというわけではない。
若さやは生みの親を覚えていなかった。親を覚える前に死別されたのだろう。仮に親さやが生きていたとしても本人にはわからなかった。

今日ここに来たのも理由はない。しいて言うならこの辺りはほむほむの散歩コースになっていて、そこに仔さやがいたというだけの話だ。

男「じゃあ、あんまり遠くに行くなよ」

ほむほむ「ホムッ」リョーカイ

若さや「マイアガッテマスネ」イコッ、オカーサン

この辺りに遊ぶにはちょうどいい公園がある。散歩のときはいつも立ち寄って遊んでいた。今日も急かす若さやに手を引かれて駆け出す。

すっかり秋の空模様だ。ベンチでまったりするにはちょうどいいだろう。


―――――――――


さやさや「サヤァ……」コドモ……ドコ……

子供とはぐれて二ヶ月。一匹のさやさやは自身の子供を探して徘徊を続けていた。

事は二か月前。
子供がほしい一念でつがいを作っては、そのたびに先立たれてきて、やっと身ごもったと思えば、そのつがいにも先立たれ、独り身でやっと産んだ子供だった。
妊娠の身でエサなど採れるはずもなく、つがいがため込んだ貯蓄もとうに尽きていた。
出産で弱った身体では狩りもできない。土中のきゅうべぇを採取しようと巣を開け、帰ってきたら生まれた子供はいなくなっていた。

半狂乱になった。手当たり次第に暴れまわり、剣を振り回した。ようやく落ち着いたら日が明けていた。そして冷えた頭で考えた。
生まれたばかりの子供が出歩けるはずもない。攫われたと思い込んださやさやは誘拐犯を見つけて八つ裂きにしようと躍起になって辺りを探しに出たというわけだ。

余談だが、人間の手が介在しないという前提で、ほ食種はほむまどよりも先に種として絶滅するという推論がある。
たしかにほ食種はほむほむより肉体的に強い種族かもしれない。
しかしほむほむより強いからと言って、それが何か自慢になるだろうか。何の自慢にもならない。
雀に啄まれ、カマキリに喰らわれる。他の生物にかかれば、ほ食種といえどほむほむよりは厄介程度の違いでしかない。

他の種族にはどうあがいても勝てないほむほむは、だからこそ繁殖力を高めることで種としての存続を保ってきた。
しかしほ食種にはその繁殖力がない。このさやさやに子供ができなかったのも種としての繁殖力が原因だ。
ほむ種すべてを同数、ごくありふれた森と全く同じ条件にした空間に放置し、どのほむ種が最後まで残るかという実験もされているが、やはりほむほむの数が他を圧倒的に上回っている。ほむほむの繁殖力が、ほ食種の駆逐力をはるかに上回っているのだ。

ほ食種の繁殖力が低い理由としてはやはり天敵の存在であろう。
ほむほむにおけるほ食種にあたる存在、生態的に似通った天敵という存在がいないほ食種にとっては、種としてそこまで絶滅に追いやられるという危機感がないのだ。それがここまでの繁殖力の差を生み出してしまったといえる。

余談の余談だが、このことにいち早く気付いたまどまどが、肉体的弱体化をしてでも繁殖力を高めようとほむほむに取り入ったという説もある。



長くなってしまった。閑話休題。

わが子を見つけ出そうと辺りを彷徨うさやさや。
すでに死んでいるという考えもなく、血眼になって探し回っていた。しかしその日々もついに終わりを迎えた。
血走って充血した目がほむほむと手を握りながら歩く若さやの姿をとらえる。

間違いない。
どれだけ大きくなろうとあれは自分が産んだ子だ。
ほむ種はどれだけそっくりだろうとわが子を見分けることができる。
成長しようとしばらく顔を見ずともそれは変わらない。それだけはたしかだった。

確かにあれは探していた子だ。
ではそばにいるほむほむは誰だ。決まっている。あいつこそ愛しのわが子をさらった誘拐犯だ。
ほむほむの分際で他人の子を誘拐するとは。これはきつい罰を与えなければならない。

若さや「サヤヤヤ」タノシーネ

ほむほむ「ホム」ソウダネ

向こうはまだこちらに気づいていない。二匹で楽しそうに踊っていた。
さやさやはあえて身を隠さず正面から向かう。手に今か今かと獲物を狙う剣を携えて。

ほむほむ「ホム?」ドチラサマ?

ほむほむが気付いた時にはすでに射程内だった。もう遅い、さやさやは構えた剣を大きく振りかぶる。

さやさや「テンコーセー!!!!」

気合一閃。振りかぶった剣は狙い違わずほむほむの肩をとらえた。
突然の事態にほむほむは混乱し、若さやは切り離されたほむほむの手を握りながらもんどり打って倒れこむ。

ほむほむ「ホ、ホビャヤァァァァァァァアアアアアア!!!!」ウ、ウデガァァァァァァアアアア!!!!

肩から噴水のように血を吹き出しながらほむほむは叫んだ。逃がすまいとさやさやは猛攻を続ける。

さやさや「サヤ! サヤ! サヤ! サヤ!!!!」アンタガ! アンタガ! アンタガ! アンタガウチノコヲ!!!!

剣を振り下ろす。何回も何回も何回も。悲鳴がしなくなり、原型がなくなろうと手を止めない。

さやさや「サヤ! サヤ! サヤ! サヤ!!!!」アンタガ! アンタガ! アンタガ! アンタガ!

若さや「サヤァァァァァァァ!!!!」ヤメテェェェェェェェェ!!!!

若さやが腰にしがみついてきた。衝撃でようやく我に返る。

さやさや「コーカイナンテアルワケナイ……」コドモ……ヤットミツケタ……ワタシガ オカアサンダヨ

若さや「アンタッテホントバカ!!」ナニイッテルノ!! ワタシノオカアサンハ コノヒトダ!!

さやさやの言葉は届かない。若さやはすでに肉塊となったほむほむをかばうように立ちはだかる。

そんなことがあるはずない。この子の親は間違いなく自分だ。きっとあのほむほむに洗脳されてしまったのだろう。

さやさや「サヤ……サヤヤ……」イッショニカエロウ……イッソニクラソウ……

さやさやは腕を広げる。まるでわが子を抱きしめる親のように。そうしていればわが子がこの胸に飛び込んでくると信じて。

若さや「サヤサヤ!!!サヤヤ!!!」チカヅカナイデ!!!コノヒトゴロシ!!!

なぜこの子はこんな言葉をぶつけてくるのだろう。わたしは親として自分の子を助けただけなのに。

さやさやの神経は限界寸前だった。長い子供探しとわが子からの罵倒。もはや正常な判断はつかない状況だった。

さやさや「ザヤ!! ザヤヤ!!!」ウルサイ!!ハヤクカエルヨ!!!

若さやの手を無理やりつかむ。若さやは手を振りほどこうと抵抗するが、万力のように握られた手はびくともしない。

そこに――

男「なにしてんだ……!!」


―――――――――


迂闊だった。ついうとうとしてほむほむたちから目を離してしまっていた。
時間にして5分程度だったが、ほむほむ飼いにとって5分外で目を離すことは致命的だ。

男「ほむほむー! どこだー!」

辺りを見回す。すると返ってきたのはきたのは返事ではなく悲鳴だった。

男「ほむほむ!?」

最悪だ。悲鳴の大きさからして生存は絶望的だろう。それでもわずかな可能性を信じて声のした付近を探す。
断続的に聞こえてきた悲鳴は小さくなり、その命が消えていくのが手に取るようにわかる。

ようやく見つけた時には一匹のさやさやが若さやの手をつかみどこかに連れて行こうとしていた。
そばにはもはや原型もつかない肉片が転がっている。

瞬時に状況を理解した。あのさやさやがほむほむを殺し、若さやを連れ去ろうとしているのだ。
理由なんてどうでもいい。飼いほむを殺され、彼女が救った命すら連れ去ろうとしているのだ。許す理由などありはしない。

男「なにしてんだ……!!」


―――――――――


あの後若さやからさやさやを引きはがし、両方を家に連れ帰った。むろんほむほむの死体も回収している。
さやさやを手近な瓶に詰める。無駄な抵抗をしているが逃がすような馬鹿な真似はしない。
若さやはずっと泣いていた。無理もない親子同然のほむほむがいきなり殺されたのだ。ずっと泣き腫らして目が真っ赤だ。

男「お墓、作ってやろうな……」

若さや「サヤ……」ウン……

庭の隅にお墓を作る。いつぞやほむほむがきゅうべぇを掘り返したところだ。石ころを石碑に見立て、若さやが積んだ花を添える。

しばしの黙祷。

目を開けたらお互い落ち着いていた。

男「さて、若さや……」

若さや「サヤ……」

やることは決まっている。親の敵討ちだ。


―――――――――


さやさやを瓶から出す。腰から地面に落ちた。
口を開かせる暇など与えない。あらかじめ熱しておいた針金で厳重に縛りあげる。
針金が形を保つ程度の熱だが皮膚で直接触ればやけどするだろう。

さやさや「ザヤァァァァァァァァァァ!!!!」

男「口を開くな。お前にそんな資格はない」

片足を画びょうで貫く。大した太さではないがさやさやにとっては五寸釘で貫かれたようなものだ。
追い打ちをかけるようにもう片足を画びょうで貫く。

男「お前は人んちのほむほむ殺してんだ。楽になれると思うなよ」

さらに傷口を広げるように画びょうをねじ込む。白い骨が見えてきた。あらかじめはずして刺しておいたので一本につながったままだ。

さやさや「ザギャァァァァァァァァ!!!!」

男「だから口を開くな」

若さやに合図をしてさやさやの顔面を殴らせる。黙らせればいいのだが若さやは余分に多く殴っていた。

男「よし、だいぶ開いてきたな」

ここでプラモ用のデザインナイフに持ち替えた。もちろん刃は新品である。
そしてガーゼとルーペ。これで血をぬぐい、傷口をルーペで覗き見る。

筋繊維が見えた。栄養不足なのか色が悪い。
ピンセットを持ち筋繊維を摘み上げる。
さやさやがまたわめいたが若さやが黙らせた。

ピンセットでつまみあげてできた隙間にナイフを差し込む。
そして裏からカンナ掛けのように筋繊維を削り出した。一往復ごとに繊維が削れ細いものから切れていく。
そのたびに悲鳴が上がるが若さやが黙らせる。

男「ほら、痛いだろ。よく見ろよ。お前の足がだんだん役立たずになっていくぞ」

いやいやと首を振っていたが若さやが首をつかんで無理やりむかせる。
足が骨と筋肉に分かれているのを見て痛みが一層激しくなったようだ。上げた悲鳴を、若さやにまた黙らせる。

それをもう片足、両手と続けた。まるで裂いたカニカマのように手足は細い筋とやや太い骨にばらばらだ。



さて、自分はもう満足である。もともとほ虐が趣味ではない自分はこれ以上の方法は思いつかない。
さやさやは生気のない目で茫然と宙を見つめていた。もう痛みを感じないよう脳が拒否しているのかもしれない。

自分が手を放したのを見てさやさやはやっと終わったと思ったのかわずかばかりの安堵を浮かべていた。
何を安心しているのだろう。これで終わりにするはずがないのに。

男「よし、若さや。後は任せた」

若さや「サヤッ!」

自身の剣を携えさやさやの前に立つ。さやさやはまるでわが子を見るような目つきで若さやを見つめた。

さやさや「サヤ・・・・・・サヤ・・・・・・」コドモ……タスケ……

若さや「アンタッテ……ホントバカァァァァァ!!!!」オカアサンノ……カタキィィィィィィ!!!!

若さやの剣はまっすぐさやさやの心臓をとらえる。
ほむ種随一の回復力を持つさやさやと言えど助かりようもない見事な一撃だった。

さやさや「サヤ・・・・・・サ・・・・・・・」コドモ……ドウシ……

敵討ちは終わった。
さやさやを貫いた貫いた体勢のまま、若さやはさめざめと泣いている。
悲しみの涙なのか、仇をとれたうれし泣きだったのか、人間の自分にはわからなかった。





―――――――――

――――二年後

若さやはすっかり老さやになっていた。
もはや外を歩き回れず、部屋からほむほむの墓を眺める日々が続き、平均よりはるかに長生きした身体はそれすらも許さなくなっていた。

男「老さや……」

老さや「ジャヤ……」ゴシュジン、ワタシハモウナガクナイ

男「ああ……」

目から涙がこぼれる。おそらく今夜中に峠を迎えるだろう。言いたいことが次々浮かんでは消えていく。
それは老さやも同じだった。しわがれた声で語られる言葉を一字一句聞き逃すまいと全力で耳に神経をかたむける。

老さや「ジャヤ……ジャヤヤ……」ワタシハ……アノヒトニヒロワレテ……シアワセデシタ・・・・・・

男「ああ……ぁぁ……」

そんなことは分かっている。あの二ヶ月はこの老さやにとって何よりの宝ものだったろう。

老さや「ジャヤ……ジャ・・・・・・」オカアサン・・・・・・イマイキマス……

男「……」

もう老さやが動くことはなかった。これからは天国でずっと一緒にいられることを祈ろう。








終わり




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  • キュゥべえは雑に扱う癖にほむまどに感情移入しちゃってる作者
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