第3部 終章-第一幕- 全てを終えて
勇者軍メインメンバーは、最終兵器
キャッスルブレイカーの力を、
高度一万メートルから推定マッハ1のスピードで叩きこむ事によって、
遂に宿敵
FSノア49を完全撃墜の末、原型をとどめないほど破壊し、
修復不能に陥れる事に成功したが、そこから離脱する際に、
セシリアが妙な物体を拾ってきたのであった。
「カプセル?」
ちょうど人一人が入りそうな大きさのカプセルを見て、
シエルがぼそり、と呟いた。
シルヴィアとリゼルが早速開封に取り掛かる。
「シルヴィア、分かりそう?」
ルシアが尋ねてくる。
「えらくレトロで逆に苦労しそうですが、
まあ元々
惑星アース製ですし、どうにかならなくはないでしょう」
「ですねー」
と、二人がかりでガチャガチャいじっていると、
とたんに効果音が鳴り出した。
ぴーっ! ぷしゅーっ!!
ドライアイスを空気中に出したときのような水蒸気のようなものが、
カプセルから猛烈に吹き出した。
バクン!
そしてカプセルのドアが開く。
「コールドスリープカプセル!?」
「なるほど、生命反応探知に引っ掛からないわけか。
まあ、この様子では尋問の意味は無いかもしれんが」
フィアナが驚くが、レオンハルトは納得したようだった。
中に入っていたのは一人の小さな少女だった。
幾千年の時を待って、彼女はここに戻ってきたのだろうか。
そして彼女は一体誰なのだろうか。
そんな純粋な好奇心と疑問が勇者軍の心を占めていた。
少女は、ゆっくりと、本当にゆっくりと目を覚まし、起き上がる。
「ん……」
「おはよう、ご機嫌はいかが?」
メロウが、いつもより努めて冷静に問いかける。
元職業軍人だけあって、こういう尋問もお手の物だ。
「……ここ、どこ?」
「惑星アースよ、宇宙から来たお嬢さん」
「わくせい、アース?」
「まずは訊きましょう。お名前は?」
「……カルナ」
カルナ、と名乗った少女は、惑星アースにいる、という事実が
よく飲み込めていないようであった。無理もない。
「年は?」
「五歳」
五歳――五歳なのである。尋問など意味が無いに等しい、という
レオンハルトの予測はいちいちもっともであった。
「分からないとは思うけど、何故あなたは
あのカプセルに寝かされていたの?」
「よく分からないけど、周りが騒がしくなって、
とりあえずここに隠れてろって、押し込められたの」
「お父さんに? それともお母さん?」
「……どっちもいないの。隠れる少し前に死んでたから。
とりあえず一緒にいてくれた、誰かも知らない大人の人に……」
「そう」
五歳とは思えないほどしっかりしていて、動じない受け答えに
むしろメロウは感心しきりであった。
それは勇者軍メンバーも同様であり、むしろ彼女の中に
勇者軍メンバー同様、秘められた力さえ感じつつあった。
「ねえ、今はU・C何年なの? 分からないわ」
「U・Cは9999年で終わっているのよ、カルナちゃん。
今はその次の年号、C・C1246になっているわ」
と、ソニアが優しく語りかけてやる。
「よく分からないけど、みんないなくなったのね……
私は、これからどこへ行ったらいいの?」
その純粋な問いに胸を打たれた。
何しろたった今彼女の住処を破壊したのは自分達なのだ。
だからといって放置しておいていいはずもなかった。
ならば、この惑星アースが今再び彼女を受け入れるしかない。
静かに、ただ静かに立ち尽くす彼女を見て、
ある一人の男……否! 漢が重大な決断を下す。
「行く当てが無くても心配する事なんかありゃしねぇってんだ!
人類史上最強の私設軍である我等が勇者軍の名と、
ワイズマン・ファミリーの名において、この未来の大船長、
コンラッド=ワイズマンがお前の身柄を引き受ける!」
「……一緒に行っていいの?」
「そうだ!」
そう言うと、カルナを肩に担いでみせるコンラッド。
その風格は、海賊というより国士の風格をこそ垣間見せた。
余りに潔いコンラッドの態度を、全員が心中で賞賛した。
「お前は今日からカルナ!
カルナ=ワイズマン!
俺達ワイズマン・ファミリーの一員だ! 俺の娘だ!
そして……親父! 出て来い!!」
「…………勿論聞こえていますよ」
カーティスがもう一人の養子、エルリックを抱いて出てきた。
「こいつがエルリック! 元々こいつが先に来てたが
何、構いやしねぇ、遠慮なくお前の弟にしてやれ!!」
「……よろしくね、エルリック?」
「だぅー」
「……可愛い。ずっと弟、欲しかったの」
エルリックは実に人懐こく、カルナに甘えてみせる。
それを見て、どこかホッとする一同であった。
それぞれの心配をしたり、帰り支度を始めたりと、
各々がやりたいことをやり始めたのであった。
そんな中、何故かエドウィンとヴェルファイア首相が
睨み合い、火花を散らしていたりする。
「この老いぼれめが、要らぬ節介を焼きに来おって」
「あぁん!? 何ぬかしてやがる! ほぼ同年齢だろうが!
そもそも俺等が来なかったらNBC兵器使うつもりだっただろ!
そんなモン使わずに済んだだけありがたいと思いやがれ!」
「勇者軍の現役部隊と例の軍機とやらがあれば充分だっただろう!
エドウィン、貴様が来る必要性がどこにあった!?」
「戦死者ゼロで終わっただろうが! 見て分からんか!」
「大体貴様は恩着せがましいにも程がある!
そのくせ、モニカの事はほったらかしだった分際で!」
「まーだ昔の事をネチネチネチネチと……!
大体好きだったんならなんで苛めてたんだ、ボケが!」
「あんなモン子供のレクリエーション程度の事だろうが!
それを貴様はお節介にも毎回毎回しゃしゃり出て!
しかも勇者軍特有の馬鹿力でぶん殴りおって!
見ろ! ほれ見ろ! ここのコブが元に戻らんぞ!」
「だから詫びにジュニアスクール時代、3回昼飯奢っただろ!」
「おうよ、だが私は14回奢らされたがな!!」
どうやらこの二人、幼馴染みらしかった。
しかも昔から仲がよろしくないらしい。
後ろで話題の種になっているモニカは完全に赤面し、
聞いてないフリどころか他人のフリに徹していたりするのだが。
安心した途端にこのゴタゴタである。
あまりにこっ恥ずかしくなって、ジルベルトもエリシャも、
リルルも、そして
コモドまでもが懸命に止めにかかる。
「じーじ、やめてなのー」
「お父様、流石に恥ずかしいですの」
「あのあの、お祖父様、止めて下さい。私も恥ずかしいですっ」
「ぎゃーう」
両者引き剥がされて、争いはノー・コンテストとなった。
「ええい、撤収だ、撤収。引き上げるぞ、作戦終了だ!」
ヴェルファイア首相が妙に人間臭さを見せたまま、
民政部は総員引き上げる。最後にリルルはユイナ姫に向けて、
『ばいばい』と手を軽く振り、ユイナ姫も応じた。
「おうし、せっかくこうして作戦部全員が集まったんだ!
アーム城で会食と行こうじゃねぇか、イスティーム王!?」
「あの……大変申し上げにくいのですが、退役総帥……
そのアーム城はついさっき、全損したばかりですが……」
「なら新築だ、新築しよう! あと会食はどっか他所でやろう!
勇者軍の年間余剰予算を全部使い切ってでもやるぞ!」
「YEAH!!」
妙に盛り上がってしまった
勇者軍主力部隊だったが、
イスティーム王はしっかり端末で必要予算を計上しており、
向こう三年は年間余剰予算が消えていく試算になったのを見て、
軽く頭を抱えたりしているのだった。
「じゃあ私達も引き上げですの。
ジルベルト、最後の音頭はあなたが取りなさいですの」
母の言葉に対し、ジルベルトは頷いた。
「進路、一般方向で
妖精の森なのー。
店を貸し切ってみんなで立食パーティーなのー。
ちなみに幹事はゼクウさんに任せてみるのー」
「難……」
「何故にッ!?」
あまりにも不適格な人選に一同がツッコむ。
社交性を高めろ、とのジルベルトなりの親切心なのだが、
そんな事、言わなければ誰にも分からなかったりする。
唯一、心中を読んだシエルだけがため息をついていた。
「とにかく行くのー!」
「サー、イエス、サー!!」
全員の声が唱和し、そして勇者軍はまた歩み始める。
辛うじて得た勝利の満足感を胸に秘めて、明日へと。
最終更新:2011年10月29日 21:16