第四幕-第二幕- 猛爆、ブルー・ワイズマン
ヴェール・シティの市街地で、白虹騎士団の
シアンナイトと名乗った敵と
たまたま接触してしまった
勇者軍の
ローザ=カレン。
市街地での激闘をする愚を行うかどうかの瀬戸際に迫られていた。
「ちっ、ここは市民が多すぎる……どうする!?」
ローザはハンマーを構えて威嚇するが、
シアンナイトは委細構わずにじり寄ってくる。
「手前ぇ、こんな場所で戦うつもりか!?
市街地や一般市民に被害が出るぞ!」
「そんなの関係ない……そうしないといけないもの」
ガキン!
遂にその鎌を叩き込んでくるシアンナイト。
すれすれで防御に成功したローザだったが、
全力で戦う決意までは未だに至らなかった。
向こうはお構いなしの全力攻撃。
こちらは攻撃さえ躊躇われる。
不利とか何とかいうレベルを遥かに超越しており、
もはや逃走する以外の選択肢は無かった。
合流出来れば、数に任せて短時間での決着も
不可能ではない、と思えたからである。
ローザは、迷わずその場を走り去る。
「逃がさない……!」
シアンナイトが追撃に入った。
『ローザ、聞こえるかい?』
突然端末に通信が入る。相手は
カイト=ワイズマン。
ワイズマン=ファミリーの新当主であった。
「カイトか。聞こえている! 近くにいるなら救援を出せ!」
『それは出来ない。だが手は打ってある。
私の指示に従って移動を行ってくれるかい?
計算が上手くいけば、最低限の被害でカタがつく』
「……策を打ったのか! 当てにさせてもらう!
それで、俺はどう動けばいいんだ!? 教えろ!」
走りながら全力で応答するローザ。
シアンナイトはしつこくも鎌を振り回して追ってくる。
本当に市民の事はどうでもいいらしく、
逃げ惑う一般市民や車などには目もくれない。
それがローザに有利に働いていることなど、
ローザ本人すら、知る由も無いのだった。
『その路地を左折、時速15kmを維持して走って』
「おう!」
どんどんロバート達のいる場所から遠のいていくが、
今はそれどころではない。カイトだけが頼りなのだ。
最低限の被害と最低限の戦闘で勝利する。
それだけが今のローザに許された選択なのだから。
『その交差点は直進、スピードはやや上げて』
「おうさ!」
「待って……!」
どこから取り出したのか、ハンマーを投げてくるシアンナイト。
「うわっ! 奴め、投擲攻撃をしてきたぞ!」
『ならばミッションプランに修正。更にスピードを上げて。
そこの突き当たりを右折したら200メートル前進。
もちろん、敵の攻撃は全て回避して速度は落とさないで』
「簡単に言ってくれるよ、おい!」
どこから出しているのか、次々とハンマーが飛んでくる。
「よし、市街地は抜け出たか!」
一旦ブレーキをかけて止まるローザ。
ようやく市街地を抜け出るが、まだ敵は追ってくる。
どうやら市街地かどうかなど、敵には関係ないようだ。
『座標はこっちで見えている。仰角誤差修正。
最終ターミナル誘導開始、君の立ち位置を修正するよ。
現在位置から8メートル後方、3メートル右で待機、
あと32秒ほどそこで耐え抜いてくれればいい』
「細かいな!?」
とはいえ、言われた通りに動く。
シアンナイトもようやく追いついてきた。
投擲に無駄な力を費やしていた分、追跡が疎かになっていたのだ。
「どこまで逃げるつもりなの……大人しくやられて……」
「市街地じゃないなら思い切りやれるさ!」
とは言え、ローザは動くつもりは無かった。
それがカイトの決め手なのは明白だったからだ。
そして、きっかり15秒後、
すぐ目前にまで
ミサイルが来ていた。
『大陸間弾道ステルスミサイルだ。君は避けろよ』
「そう来たか! まったく、憎たらしい腹黒野郎め!
こいつは俺が有効に使わせてもらうぜ!
うぉぉぉらぁぁぁぁぁぁッ!!」
シアンナイトへ突然の突撃、
瞬間、怯むがすぐに迎撃態勢を取るシアンナイト。
「遅い!」
ずどぼがん!!
豪快な音を立てて、地面に叩きつけられるシアンナイト。
「ううっ……!」
起き上がって反撃しようとするが、
ローザは既に近くにはいなかった。
そして、ローザとカイトの声が同時に唱和する。
『インパクト!』
ずどどぉぉぉぉぉぉん!!
念入りな事に、ミサイルは8発も飛んできていた。
その大半が見事にシアンナイトを直撃する。
まともな生物なら跡形も残らないだろうし、
市街地で使っていれば甚大な被害が出ていたはずだ。
「やったぜ!」
『まだだ。奴の死亡は確認していない』
「任せろ!」
ローザが爆発の黒煙の中をしげしげと見回すと、
がちゃがちゃ音を立てつつも、震えるシアンナイト。
死亡とはいかないまでも、甚大な被害を与えたらしい。
「ずるい……!」
「へん、引っかかる奴が悪いのよ!
俺にしか眼がいかなかったのが手前ぇの敗因だ!」
『そして後悔する暇はあげないよ』
ミサイルの第二波が飛来していた。
「嫌……負けたく……ないの……」
シアンナイトが必死に逃げ始める。
「逃がさねぇ! 話してもらうぜ、目的をな!」
ローザが追撃しようとするが、シアンナイトは
思いの外、素早い退避を行っていた。
既に鎧もズタズタだというのに、凄まじい逃げ足だ。
ブルーナイトと違って、随分と臆病でもある。
数分後、ミサイルは何も無い大地に着弾し、
完全に第二波のミサイルは無駄になってしまった。
だが、とにもかくにも切り抜けることはできた。
ヴェール・シティそのものを巻き込まなかったことも
賞賛に値すると言っていいだろう。
「ローザ! 大丈夫か!?」
そしてマリーを先頭に、
勇者軍主力部隊も追いついてきた。
「大丈夫だ。カイトがミサイルで援護してくれて助かった。
敵はシアンナイトと名乗ってやがった。白虹騎士団らしいぜ」
ロバート達の不安が的中する形となったが、
切り抜けてくれたのは幸いであった。
となれば、そのカイトとの合流を急がなければならないだろう。
勇者軍主力部隊は、ローザを加えて、港へと急ぐのだった。
最終更新:2011年12月10日 21:00