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第十八章-第二幕- 生命の尊厳





生贄にされかかっていた民間人を救出したロバート達は、
それを他所に、魔神王教団信者達を丸呑みする
イグジスターを警戒しながらも、出来るだけ多くの人数を
脱出させるため、一旦武器庫まで退却を余儀なくされていた。
「おらぁぁあッ!」
ゲイリーに豪快な蹴りを叩き込まれ、吹き飛ぶ門番の信者。
武器庫の中にも信者がいたが、間もなく蹴散らされる。
「ひぃぃ、こんな状態で大丈夫なのかよ、俺達……!」
弱気が周囲を覆い尽くそうとする事にロバートは苛立つ。
来る途中にも多くの信者がおり、そのたびに民間人が
真っ先に襲われ、負傷する者も少なくなかった。
「助けてくれぇ……俺はまだ死にたくねぇよぉ……!」
「なんでこんな事になっちまったんだよぉ……!」
泣き喚く民間人に対し、遂にロバートが怒鳴る。
「ピーピーピーピーうるせぇぞ、民間人共!
 奴等に一泡吹かせたくねぇのか!!
 こんな目に遭わされて腹立たしくはねぇのか!
 貴様等の生きたいという気持ちはその程度のモンか!?
 だったら今すぐ置いてくぞ! 死にたくなけりゃ
 自ら武器を手に取り、信者もイグジスターも叩き潰せ!」
幸い武器だけはあちこちにある。
ロバートも銃弾を見つけ、拝借した。
これでまた射撃も出来るだろう。そうなれば有利だ。
「おらよ!」
ロバートは槍を民間人の一人に渡す。
「イノ、ゲイリー、手伝え!」
「分かった」
「おうよ!」
三人で手分けして武器を見繕ってやり、適当に渡す。
素人が使ってもそれなりの効果が見込める
槍や槌、銃などが優先して配られた。
「…………そうだな、俺達はこんな所じゃ死ねねぇ!
 あと、俺達を勝手に連れてきて大勢殺したあいつ等を
 これ以上のさばらせておくのもいい加減我慢ならねぇ!
 みんな立て! 吼えろ! 俺達の勝利を掴め!
 これは自由のための反逆だ! 俺達の反逆だ!!」
「おおおーッ!!」
武器を取って意気が上がったのか、民間人が雄叫ぶ。
「よく言った野郎共! 貴様等の命は俺が預かる!!」
ロバートの怒号が飛ぶ。
「野郎共! 俺達の為すべき事は何だ!?」
「出来るだけ大勢で生き残る事だ!!」
「野郎共! 俺達の為したい事は何だ!?」
「魔神王教団に一泡吹かせる事だ!!」
「野郎共! 俺達の為さなければならない事は何だ!?」
「勝利! 勝利! 勝利!!」
「そうだ! それでいい!!」

ロバートはエンジェルランプを掲げ、気合を込める。
「絶対勝利の心と意気で! 弱者強者を問わずとも!
 全ての命が死兵と化して! 生命の尊厳守り抜く!
 極限反逆ストレンジャー! お前達の反逆、俺が買うぜ!!」
「おおおおおお! やったるぁぁぁぁッ!!」
段々民間人というより未開の蛮族みたいになってきた元・生贄達。
「……野蛮だなぁ」
「そうは言うがあの資質はかなり貴重だと思うぞ。
 ほら、イノを見ろ。加わりたくてウズウズしてる」
いささか呆れて言うターレットをソルが窘める。
「し、してない!」
イノは慌てて否定するが表情からバレバレである。

「来るぞ、さっきのイグジスターだ!」
先程から通路を警戒していたサキが報告してくる。
信者達を呑み、擬態したイグジスターと、
信者の数が足りず、原型のままのイグジスターの混成部隊だ。
更に反対方向からは信者達が殺意をこちらに向けてくる。
典型的な挟撃になりつつあった。
「イグジスターだ……来るぞ……!」
未知の化け物に対して緊張する民間人を後ろに下げる。
「ロバート、民間人の指揮は私が取る。
 あなたは思う存分イグジスターを叩きのめして」
「良く分かってるじゃねぇか、イノ!
 おら、ソル、ゲイリー、ターレット、サキ!
 俺達は対イグジスター担当だとよ、俺に続け!!」
「おう!」
勇者軍サブメンバー級の四人がいるなら心強い。
元より信者などイノ一人でも勝てる相手だ。
そこに民間人が加われば鬼に金棒であろう。

だが、イグジスターは民間人達を襲い始めた。
「うわぁぁぁぁッ!?」
「ふんッ!」
そこにサキが割り込み、必殺の一撃を叩き込む。
「イグジスターは俺達が出来る限り食い止める。それまで不安がるな!
 その感情が奴等の思う壺だ! イグジスターは俺達の、人間の!
 いや、生命の尊厳そのものに対する敵だ、談じて許しておくな!!
 それに屈する事はもう許されねぇんだ、覚悟を決めろ!!」
更にロバートの激励が続き、民間人は信者へ攻撃を続けた。
「とはいえちっと数が多いぞ、どうする!?」
ゲイリーが一歩退いて言う。
「乱発はしたくなかったがやむを得ねぇか。
 総員! 対衝撃用意!! 伏せろ!!」
ロバートの剣が唸りをあげ、遂に封印を解かれた。
究極剣術『封神封魔流』の秘剣が轟く。
「封神封魔流! 『攻』の秘剣! 四大精霊元素爆裂剣!!」

ずぼばぁぁぁぁぁぁぁん!!

凄まじい衝撃と爆風が信者、民間人、イノ達を吹き散らす。
当のロバート自身も閉所故に凄まじい反動でよたつく。
爆風が収まって冷静に見てみると、たった一撃で
数百体ものイグジスターが損傷したり消し飛んだりしていた。
「ふん、久しぶりに使ったからこんなモンだろうな」
下品にも、べっと唾を吐き捨てるロバート。
「おおおおおおおッ!?」
民間人達の歓声と、信者達の驚きの声が偶然にも唱和する。
この場のイグジスターは今ので半数以上が戦闘不能になった。
「掃討戦だ! ソル、以後の指揮を執れ!
 俺は今度はイノと交代してくらぁ!!」
「はいよ」
余裕綽々と言わんばかりの態度を見せるソル。
「イノ! 交代だ! イグジスターってモンが
 どういう奴等なのか、お前もその目に焼き付けとけ!」
「分かった。民間人との共闘を任せる」
素直にイノはイグジスターの掃討に回る。

「さあ、次は貴様等がこうなりてぇか!?」
ロバートは次にその剣を、信者達の方へと向けた。
「ひぃぃ、化け物か!?」
「なんて奴だ! 俺達はこんな奴を相手にしてたのか!?」
今の技を見せつけられて、大きく怯む信者達。
イグジスターに擬態されていた仲間の姿も動揺に一役買った。
「さあ、反逆タイムだ! お前等のやりたいようにやれ!」
「おっしゃあああ!」
ロバートの毒に当てられた民間人が信者達を追い回す。
立場逆転した地獄絵図がロバートの中の狂気を呼ぶ。
「ひゃーははははぁ! いいぞ、その調子だ!」
その毒気に内心ではたじろぐサキだったが、さして何も言わず、
淡々とイグジスターを処理していく。と、彼女のよく利く目が
遠くに何かを発見した。それは――
「イグジスターの新手だ! さっきの倍近くいるぞ!?」
「本当か、サキ!? ええい、ロバート、さっきの技だ!」
ソルが慌ててロバートを呼ぶ。
「そう乱発出来ねぇつってんだろうが! 俺だって人間だぞ一応!」
その一言に、士気が下がり始めてしまう。まずい兆候だ。

「ロバートさん! いるんですか!?」
すると、そこに聞き覚えの、いや聞き飽きるほど聞き慣れた声。
「まさか、エナか!?」
心の底から驚愕するロバート。まさか真っ先に来るのが
彼女だとは思ってもいなかったからだ。
通路の角からそっとエナとポメが顔を出す。
「エナ、ちょうどいい所に来てくれた! ベストタイミングだ!
 他の奴等はいないのか!? 今すぐこっち来い!! ポメもだ!」
「あ、はい! 皆さん、急いで!」
「うにゃーん!」
エナの指示でまずクロカゲが来る。
「よう、クロカゲ! 最高の贈り物のおかげでまだ生きてるぞ!」
「礼……要らぬ……母親……言え……!」
次いで、カイトが入ってくる。
「ロブ、大丈夫かい? 私では不足かもしれないが、援護するよ」
「カイトか。あんたの策が要る、状況を打開してくれ!」
そして最後にマリーが現れた。
「生きているなら結構だ。巻き返すぞ!」
「話が早いじゃねぇか。当てにするぜ!」
「勇者軍の誇りにかけて!」
思わぬ援軍に再び意気が上がる民間人達。
無論、それは元幹部達も同じ思いだった。

逆転、逆転、また逆転。
反逆のメビウスリングは、まだ紡がれる――



最終更新:2013年08月29日 21:56