第十九章-第三幕- 識別される脅威
ウォルフ王子達は
魔神王教団本部施設第一出入り口において、
イグジスター嫌疑がかかったままのグロフィスを必死に防衛しつつ、
自分達も丸呑みされないよう、細心の注意を払いながら
無数にやってくるイグジスターを蹴散らしていた。
「……ウォルフ王子……!」
そこへやってきたのはクロカゲであった。
「クロカゲさん、待っていました! ロブは!?」
その後ろからはカイトもやってくる。彼は来るなり言い放った。
「すまない、罠で分断されてしまった……私の失策だ。
だが生存は比較的楽観視していい。あと民間人を多数救出した。
今、マリーが近くに係留しているブルー・ワイズマンまで護送中だ。
私達はとにかくここを出来るだけ早く片付けて、再度救出に赴こう」
「そうですか……あれ、エナさんは?」
「彼女だけが分断の際、ロバートの元に残された。
唯一の癒し手である彼女が残ったのが幸いだったね」
「ですね。こちらにはエリックさんもいます。では、片付けましょう!」
ウォルフ王子は武器を振り回してイグジスターを蹴散らす。
ローザやヴァジェス、レオナなども同様であった。
そんな中、アンリ姫が後方で逃げ回っている。
致命傷などを負わないよう、アイゼンカグラが護衛に必死だ。
前の戦争で出した謎の巨大ライディング・フレームも出したが
またも名前すら紹介出来ぬうちに撃墜されていたりするのだが、
それはそれ、余談である。
「よっと」
鋭いキックでイグジスターを一体蹴倒すカイト。
「アンリ君。何をしているんだい?」
「おお、カイト。無事であったな。流石なのじゃ。
前に言ったであろう。イグジスターが発する
特殊な脳波のようなものを受信、解析中なのじゃ!
もうすぐ終わるからもうちょっと待つのじゃ!」
「そうか。それも大事な作戦の要だったね。
じゃあ私も協力させてもらおうかな」
カイトも加わり、イグジスターと付かず離れずの距離をキープし、
アンリ姫を完璧に護衛してのける。イグジスターの数には事欠かない。
少々倒してしまっても何の問題も無かった。
「すまん、遅れた!」
民間人を護衛し終えたマリーは
比較的素早く戻ってきて戦列に加わった。
「マリー、急げ! かなり始末が悪いぞ!」
ローザが急かすので慌てて敵を蹴散らす。
「
ヒールブラスター!」
傷だらけになっているメンバーに対し、エリックが治療を行う。
クロカゲなども加わり、一気に撃破ペースが上がってきた。
既にイグジスターを二千体以上撃破しているが、
増援は頭打ちになってきたようだ。
ロバートの方にも相当数入っているそうなので当然だろう。
「出来たのじゃ! このマスターハードで
イグジスターを識別出来るのじゃ!」
アンリ姫が解析を終えたマスターハードを掲げる。
「それじゃあ、一気に決めるッスよ!」
レオナが二本の蒼い槍を構え、一気に駆ける。
「ジャミング・
ナノ・マシン! 半数解放!」
一気に半分のナノ・マシンを解放し、敵を大いに撹乱する。
「最終奥義!」
レオナはまっしぐらに敵の一番多い所へ突っ込む。
「
蒼双槍走・総葬送繰!!」
「そうそ……!?」
技の名前の意味を図りかねて言葉に詰まるマリー。
敵の真っ只中で薙ぎ払い、突き、回転し、走り、また薙ぎ払う。
これを繰り返して膨大な数の敵を屠り始めた。
とにかく落ち着きの無い様子が遠くからよく見て分かった。
「よく分かりませんが、続きましょう!」
ウォルフ王子の指示もあって、速やかに攻撃を続ける
勇者軍。
数分後――
約三千五百もいたイグジスターの集団は、
全部が原型イグジスターだったこともあり、ほどなく撃破された。
「レオナ、なんだあのふざけた技名は?」
「そうそうそうそう・そうそうそうそうッスね。
漢字で書くと『蒼双槍走・総葬送繰』って書くッスよ!」
「もっと真面目に考えろ!」
「いいじゃないスか覚えやすくて!」
キーキー喚く二人はさておいて、アンリ姫はエリックに近付く。
「約定通り、装置がたった今完成したのじゃ。
この装置はイグジスター特有の脳波を受信し、警報が鳴る。
さっそく……グロフィスでテストなのじゃ」
「ああ……!」
既に覚悟は決まっているエリックはアンリ姫と共に、
檻の中に入っているはずのグロフィスへ近付いた。
だが……
「いな……い……!?」
そこにはひん曲げられて不自然な形になった檻だけが残っていた。
グロフィスがやったのか、あるいは他の誰かが拉致したのか。
いずれにしても看過出来る状況ではない。
「あははッ!」
しかし物陰からいきなりグロフィスが飛び出す。
「うおッ!?」
エリックは完全に虚を突かれた。
ぶぢぃッ!!
「があああッ!?」
展開中の
ニノンの翼を完全に毟り取られた。
それをそのまま強引に装着するグロフィス。
「……ッ、何をする、ロフ!」
立ち上がろうとするエリックの耳に、警報が届く。
ふぃーん、ふぃーん、ふぃーん!
イグジスター識別装置のマスターハードの警報だ。
レーザーポインタを当てて音を鳴らしていた。
ポインタの先には既にグロフィスが示されている。
すなわち、彼はやはりイグジスターだったのだ。
「取った取った! パパの翼!」
隙あらばエリックをも丸呑みにしようと伺っているが、
そうは問屋が卸さない、傍にはアンリ姫とアイゼンカグラがいる。
「
フレイムシューター!」
「わああッ!」
大きくアンリ姫の魔法で怯み、
今度は魔神王教団本部施設の中へと逃げていく。
「大丈夫か、エリック殿!?」
アンリ姫が駆け寄って心配する。
「こんな痛みが何だと言う……やはり奴はイグジスターだった……
俺とフォルテの心を弄ぶように人懐こく振舞いながら、
ずっとニノンの翼を奪う機会を伺っていたというのか……!」
「エリック殿……!」
「アンリ姫。君はそのマスターハードを何としても守り抜け……
それは擬態イグジスターに弄ばれる者を減らすための希望だ……
そして俺は、奴を許さん……! 必ずや滅してやる!
すまん……フォルテ。俺はどうやら父親失格らしい……!」
痛みをこらえ、落涙しながらも立ち上がるエリック。
彼の手は端末を見据え、妻フォルテシアへの報告を行っていた。
もっともしたくなかった報告だ。だがやらねばならないのだ。
「だが、ストレンジャーの坊やとの合流が敵殲滅には不可欠だ。
本格的に合流を急がねばならんだろうな……
グロフィス・イグジスターも中に入ったようだ。
下手を打てばロバートとやらは挟撃を受けかねん」
ヴァジェスがやってきて、エリックを何とか諭す。
「分かっている。ロブをこんな目に遭わせるわけにはいかん。
そうなれば、俺はネイにも申し訳が立たん……!
地下へ向かうぞ! クロカゲ、案内を頼む!!
急ぐんだ、ロブとエナのいる場所へ!!」
「分かった……!」
勇者軍主力部隊はほとんどの人員が合流し、
イグジスター識別装置を手にして、再度ロブの救出へ向かう。
魔神王教団との決戦は目前に迫っていた。
最終更新:2012年03月11日 22:13