第二十一章-第二幕- 太古の遺産
勇者軍のロバートとエナ、その愛猫ポメに触発され、
スペースポート直衛兵と予備役隊員達の協力、連携もあって、
イグジスター第一波、及び第二波は片端から駆逐された。
だがそれらの総和より更に多い第三波が襲来しつつあった。
そして管制塔の長であった上役の男は、
トップシークレット扱いになっている
機密保管庫へと一直線に入っていった。
「これまでのイグジスターのデータに、
イグジスター識別装置の
内部データをインストール、これで識別装置の反応に連動して、
この装備はイグジスターをターゲットに戦うはずだ……!」
インストールされた識別装置のデータを更に多くの機材にリンクさせ、
禁断の太古の遺産がアイドリングモードに入る。
「機動準備中。命令受理開始まであと、100秒」
「よし、まだ間に合う……!」
管制塔への連絡を始めた上役。
「こちら機密保管庫! 今より、
かつて
惑星アースに破壊と暴虐をばら撒き、
全ての生物を恐怖に陥れた禁断の兵器の一部をリリースする!
敵味方の識別はやや不充分だ!
巻き込まれないように気をつけろ!」
「はい、伝えます!」
管制塔から指示が一斉に飛ぶ。
「こちら管制塔! 機密保管庫より
『太古の遺産』をリリースします!
敵味方識別処理がやや不充分のため、
この装備とは距離を取って下さい!」
「何をする気なんですか!?」
エナが戦慄するが、ロバートは一切構わない。
「よし、使えるなら何でもいい!
この際四の五の言ってられっか!」
そう言っているうちに、イグジスターの大群が来襲した。
「おら、迎撃だ、気張れ!」
「は、はい!」
二人と一匹は更に多くの敵を殲滅していくが、討ち漏らした敵が、
多くの味方を呑み込むべく、にじり寄っていく。
「ちいッ、処理しきれんか!」
ロバートは対応に苦慮しつつ、自己の生命を最優先した。
ピーッ。
「アイドリングモードからウェイトモードへ。命令受理、可能」
人型のその機械が多数、直立を開始する。
「識別装置に反応の出た、
当施設敷地内の生命体をことごとく駆逐だ!」
「データリンク完了。全機体に受理されました。
モードをウェイトからアクティブへ。
出撃命令が出れば、いつでも出撃可能」
「よし、行くぞぉッ!!」
ズダン!
コンパネに拳を叩きつける上役。
カバーガラスが割れ、スイッチに手が届く。
「
プロハビシャン・システム、リリース!!」
その名の通り、禁断のシステムが起動した。
人型のそれ――かつて惑星アースからノア船団なる
外宇宙航行殖民船団『ノア船団』の旗艦クラスである
『フロンティアシップ・ノア』級の母艦にのみ搭載され、
誤って来訪した『
FSノア49』の存在によって
惑星アースを殺戮の恐怖に陥れた禁断の兵器、
人型蹂躙用マシン『
エリミノイド』がリリースされた。
そもそも彼がこのエリミノイドをリリースした理由は二つあった。
第一に人型の小型マシンとしては卓越した戦闘能力を保持し、
バッテリーの保つ限り戦い抜くことが出来ること、
第二にイグジスターが生物しか丸呑み、擬態出来ない事。
これらの点から人間が戦うよりむしろ向いていると言えた。
製造にコストがある程度かかるのと、倫理的、人道的観点から
使う事が極端に制限されている厄介物ではあるが、
今この時に限って言えば、奴等は救世主でさえあっただろう。
リリースされた三百あまりのエリミノイド部隊は、
時々味方を誤射しそうになりつつも、極めて冷徹に、
かつ正確にイグジスターを蹂躙していった。
「何ですか、アレは……?」
その戦いぶりにエナが驚愕するが、ロバートは即座に
端末と照合し、適したデータを見つけ出した。
「あれはエリミノイドか……なるほど、上手く考えたモンだ」
「エリミノイド?」
「かつて惑星アースから産み出された超絶非人道兵器だ。
一度は不幸な事に敵に回ったが、今また味方になったか。
あのクソ化け物共には確かに相応しい禁断の兵器だろうぜ」
「じゃあ、味方なんですね?」
「そうだな、使い方を誤らなければ……なっと!」
そう言いながらも剣でたちまち三体を切り裂くロバート。
イグジスターはとにかくエリミノイドも丸呑みにしようとしたが、
いくら呑もうとしても呑めなかったりするため、
まごついて動きもまともにならないようであり、
それがまた一層味方の反撃スピードを上げる要因になった。
だが、数が数だけにやはり味方も無事では済まず、
イグジスターから丸呑みにされる味方が多発し、
それらの擬態イグジスターがエリミノイドに対して
攻撃をしかけたりするようになってきた。
敵ながらも見事な適応力という他無かったりする。
それでも勇者軍と直衛兵、エリミノイド達は
じわりじわりと数を減らし、
次第に押し込まれていくイグジスター達。
だがまだ二千ほどのイグジスターが残っており、
圧勝というには程遠い状況だった。
「こちら管制塔、イグジスターの第四波、
三時方向より二千! 九時方向より二千!
これ以上のエリミノイド出撃が不可能です、各自、健闘を!」
「何だと!?」
ロバートは驚愕する。既に
魔神王教団で駆逐したはずの数を
超越しそうになっている。これは只事ではないと言える。
あるいはイグジスターもこの施設の
重要性を知っているのかもしれない。
すなわちそれは本気、という事なのだろう。
「まずいですね……!」
エナも
ソーサーで必死に応戦するが、疲労がそろそろ厳しい。
いざという場合は施設の一時放棄もやむなしか、という頃合だった。
「ふぎゃー!」
いい加減爪もボロボロなポメがエナの頭上に帰って来た。
一応猫としては、これでは戦うにも無理があるだろう。
「ポメちゃん、あとで治療してあげますからね!」
「うにゃー!」
応じるように元気に一鳴きするポメ。
本来、救援たるローザはこの異常事態にまったく気付いていない。
更に言えば距離もかなり遠く、気付くまでの時間もかかるだろう。
彼女の援軍など期待出来る状況ではないのだった。
苦戦と重い雰囲気が味方を包み、彼等の反逆は
早くも限界を迎えようとしていた――
最終更新:2012年07月02日 20:13