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第二十一章-第三幕- 膠着打破





エリミノイドと呼ばれる禁断の非人道蹂躙人型機動兵器を用いて、
勇者軍と直衛兵達はスペースポートから
イグジスターを押し出しつつあった。
しかし既に八千以上のイグジスターを片付けたというのに、
更に五千ものイグジスターが襲来してくるという事もあり、
疲労もあって味方の士気は下がり放題になってしまっていた。
「やむを得ん! 作業を強行で続行させろ!
 イグジスターが輸送艦に到達する前に何としても作業を完了させ、
 発射直後にこのスペースポートを放棄し、総員撤退する!」
ロバートの指示により、緊急で作業員が動き出す。
少々無理はあるだろうが、強引にやれば出せなくもない。
ただし作戦に無理が生じるので味方の犠牲は更に増えかねない。
そんな苦渋の決断だったが、宇宙にイグジスター識別装置が
届かない方が余程後で問題になる。やむを得ない。

そうこうしているうちに第四波、イグジスター約五千ほどが
ロバート達を扇状に包囲し始めた。確実に殲滅するつもりだ。
「エナ、ソーサーをまだ動かせるだけの力があるか!?」
「はい、まだやれます……!」
「なら大きく動かせ、陣形に対して円形状に全部水平機動だ!
 それで敵の進撃スピードを少しでも遅らせれられれば上出来!」
「念動干渉……! 高速機動!」
エナのソーサー十五枚全部が円形にグルグルと回る。
イグジスターは構わず進撃してくるが、流石に無謀なのか
多数のイグジスターが接近も出来ずに切り刻まれていく。
それでもかなりの数のイグジスターが強引に突っ切って、
ロバート達の集団に向けて攻撃を仕掛けてくる。
ソーサーやその範囲外で戦っているエリミノイドが討ち漏らした
少々の敵を袋叩きにするだけの作業になったが、
数が数の上、疲労の蓄積もあってなかなか上手くいかない。
「ちいッ……大技を出すか!?」
しかし今大技を放てば虎の子のエリミノイドが多数破壊される。
兵力の損耗を避ける点では、それはやめておきたかった。

となれば後はジリ貧一択である。非常にもどかしい話だった。
前の戦争でだいぶ減らされた人命を可能な限り尊重するとなると、
そういう作戦しか取れないのが現状である。
勇者軍並みのスペシャルな人材でもいれば話は別だが
たった二人では攻勢にも出辛い。正直言って、
人命尊重しながら防衛出来る必要最小人数だと言える。
まったくもって鬱陶しいにも程がある敵だと言える。
ザザッ――!
その時、ロバート達の通信機に何らかの通信が入る。
管制塔から発せられるチャンネルとは別のものだ。
「周波数を合わせてみるか……」
応戦しながらも合わせると、声が聞こえてきた。
限りなく小憎らしく、小賢しく、小うるさい声だが、
限りなく信頼を置くことが出来る、聞き慣れた声でもあった。
「ロブ! そこにいるんだろう!? 状況は把握済みだ!
 あと数十秒の間、陣形を崩すな! やってのけてくれ!」
「ウォルフか! 何かするんだろ!? 遠慮は要らん、やれ!」
「了解!」
直後に少数の爆撃機が低空低速飛行で飛来する。
「爆撃するつもりか! 味方の人型兵器に出来るだけ当てるな!」
「分かった、やらせてみよう!
 ピンポイント爆撃! 味方に当てないで!」
ズドンズドンズドンズドン!
ウォルフ王子の指示が飛び、爆撃機は熱源反応を頼りにして
イグジスターのみに絨毯爆撃をかけつつ、その反動と衝撃で浮上。
軽くなった爆撃機は大きく弧を描いて見事に離脱していった。
滑走路を犠牲にした戦法だが、現状では最上の策である。
原型イグジスターには爆撃機の機動から逃れる程のスピードは無いし、
投下爆弾の火力に耐えうるほどの耐久性も持ち合わせていない。
何より対空攻撃能力に乏しいため、仮に対応出来ても迎撃出来ない。
数を頼みとしているだけに一発辺りのダメージも殊更大きく、
重火器、あるいは広域魔法による攻撃は非常に効果的だった。
絶対数が多い故に効果が目立ちにくいが、これは厳然たる事実だ。
「第二射! これで爆弾を放り尽くしなさい!」
ズドンズドンズドンズドン!
Uターンして更にもう一斉射加えてから去る爆撃機。
これでかなりの数のイグジスターが消滅したと思われる。
腕利きのパイロットのせいでエリミノイドへの損害は微小である。
「助かったぞ、ウォルフ! 悪くねぇ反逆だ!」
謝意を示すロバートに、ウォルフ王子は更に告げる。
「これで終わりだと思わない事です!
 王政部と民政部の協力した姿を、垣間見てもらいます!
 パラディン、ナイト、ソルジャー部隊、突貫!
 エリミノイドが狙っていない敵から優先して駆逐を!」
「おおおーッ!」
意気上がるザン共和王国の王政部、民政部連合軍。
騎士達による蹂躙が更にイグジスターを踏み躙る。
「踏み砕け、ターミネーター!」
ウォルフ王子も斧を手に、愛馬にまたがり自ら突撃。
一番多くの敵を一方的に蹴散らしていった。

「も、もう限界です……」
ソーサーによる守りの布陣もエナが疲れ果てては限界である。
「エナ、倒れるな! 攻撃はいいから、せめて立っていろ!
 ここからは攻めの布陣! 俺と、苦楽を共にした
 クソッタレな最高の野郎共の出番だ! 挟撃するぞ、攻めろーッ!」
「突撃ぃぃぃぃぃッ!」
直衛兵の叫びと共に、守っていた兵士達も前に出る。
「こちら管制塔! 作業が終了! 作業員退去完了!
 輸送艦の出発までのカウントダウンを開始! 残り80秒!」
「80秒だと!? ぬるい! その間に敵を殲滅してみせろやぁ!」
ロバートの声に応じて更に攻めの手を激しくする連合軍。
確かに言葉の通り、あっという間に駆逐されていくイグジスター。
そして進むカウントダウン。

「カウント10」
管制塔の冷静な声が淡々と事実のみ告げる。
「9、8、7、6、5、4、3……」
「見つけたぞ……こいつで最後だぁーッ!」
ロバートはタングステンソードを構え、踏み込む。
「輸送艦、行けぇーッ! 俺の咆哮が祝砲代わりだってんだオラぁー!」
ズバン!
一撃でイグジスターを両断すると同時に、
輸送艦のカウントが終了し、数隻の艦艇が順繰りに出向する。
これ以上敵の増援も来ないようで、打ち止めである。

「ふぅ……ふぅ……ふぅ……!」
息を整えつつ、ロバートはきちんと直立し直す。
その傍らにはいつの間に寄ってきたのか、エナとポメの姿もあった。
「見たかイグジスター共が! これが俺の! 俺達の反逆だ!!
 そう簡単に人間が殲滅できるだなどと思うんじゃねぇぞ! クソが!」
剣を高く掲げて、堂々と宣言するロバートに、頷くエナとウォルフ王子。
エリミノイドが一列縦隊で綺麗に帰っていく中、
勇者軍メンバー、予備役部隊、直衛兵、民政部の連合軍は
まさかの防衛成功に、鬨の声をあげ、勝利を喜び、
そしてまた戦死者の魂を悼むのであった。



<第二十二章-第一幕- へ続く>
最終更新:2012年07月02日 20:14