第二十八章-第三幕- 事前のガス抜き
勇者軍、魔神軍、そして各
ナインサークルロードとそれらの率いる軍で
全種族同盟『
生命連合』を発足し、
魔王城にて一致団結が始まった。
作戦内容は活路を見出すまでの徹底篭城戦。
天の時、地の利、そして人の和を総結集して挑む戦いになる。
そんな中、疲労回復中のため、荷物運びにも参加せず、
何故か座布団など敷いて茶をすするマリーに、一人の男が目を付けた。
「OH……なかなかナイスな佇まいでいやがるZE!」
そして話しかけて来るアフロの男。暑苦しく、チャラい。
「なんだ、貴様は? 新手のナンパか?」
「そうツンケンしなくてもいいじゃねぇかYO。
俺は魔神軍
メインメンバー、
ラケル=エフォート。
今は仲間だ、よろしくやろうZE!」
変なポーズを取りつつ、握手を求めてくるラケル。
その手をべしっと手で打ち払い、無言で無視する。
「OHOOOO! つれない嬢ちゃんだねー。
名高い勇者軍メインメンバーの割に器が小っちゃいYO!」
また変なポーズである。
「人とまともに会話がしたいのなら、
そのふざけた髪型をきちんと整髪してからにしてもらおう」
「NO! これは天然パーマだYO!
もし切っても、伸びたら元に戻るZE!
学生でも天パは違反にならねんだZE! ざんねーん!」
何故か両方の人差し指で自分のやたらデカいアフロを指差すラケル。
「……黙れ。憩いのひと時を煩わすなら、今ここでねじ伏せるぞ」
三節棍を持ち出し、ラケルを威嚇する。
「HAHAHAHA! 上等じゃねぇの!
エキシビジョンマッチだ。ここに集まった奴等に、
俺達魔神軍と勇者軍が共闘する意味、そして実力てのを
存分に見せ付けてやろうじゃん、AHA!?」
「ふん……では十分後、ここへもう一度来い。
必要は無いかもしれんが、準備時間ぐらいはくれてやる」
優雅に座っていた座布団から立ち上がり、
愛馬
ステファンに騎乗するマリー。
「OK! HERE WE GO! YAHOOOOO!!」
何かふざけたテンポを取りながら一度離れるラケル。
どうやら素直に準備をしに行くようだった。
「で、何故こんなにギャラリーが集まっておるのだ?」
十分後、草地に再び現れたマリーと愛馬ステファンは、
異様なギャラリーの数を警戒していた。
「言ったろ。エキシビジョン・マッチだって。
みんなここに来てから働き詰めなんだZE?
ちっとぐらい凄いの、面白いの見たって罰は当たらんYO!」
「
ジーニアス家の力は見世物ではないが、いいだろう。
今一度、勇者軍と魔神軍の重みの差を現実にして、
見せつけてくれる……ジーニアスの誇りにかけて!」
ハンデだ、とばかりに愛馬を降りる。
「ステファン、いい子だからちょっと待っていろ」
「HA! ハンディキャップのつもりかYO!?」
「違う。馬上ではこの武器が使いにくいだけだ」
そう言うと、マリーは三節棍を自由自在に振り回す。
映画顔負けの動きで、実に見事だった。
「はいっ、それじゃあ始めましょう!
ラケルさん、マリーさん、いいっスか?」
何故かレフェリー役になっているレオナ。
「いいZE!」
「いつでも……って貴様が審判か!?」
いきなりノリツッコミを返す間にレオナが手を振り下ろす。
「……っファイトぉ!!」
「HA!」
マリーが余所見をかましている間にラケルが急接近する。
「早い!?」
退避を諦め、マリーはステップで距離だけ調整し、
すぐに応戦体勢に入る。ラケルの拳の一撃が届こうとする。
「ふんっ!」
マリーが三節棍で応対するが、両方の勢いは相殺された。
「疾風!」
「HAHAHAHAHA! 流石だZE!」
凄まじい三節棍と拳の応酬がまったく互角の戦いを繰り広げる。
一撃がぶつかり合う度に衝撃波が飛び、小型の生き物を吹き飛ばす。
油断していると人間まで吹き飛びそうである。
「ちいっ、こいつ、只者ではない……スピードで私を上回る、だと!?」
「くっ、なんてPOWERなんだ……化けモンだNE!」
互いに相手の方が勝る部分を見つけ、素直に驚愕する。
両者の技能がほぼ互角なら、相手に劣る部分を
的確に突かれた方が負ける。そんな戦いになってきた。
「ぬううううう!」
「HAHAHA!」
マリーの一撃は重く、ヒットした箇所にダメージを大きく与えるが、
ラケルの身のこなしが軽く、思った以上に当たらない。
ラケルの一撃は巧みで、マリーより多くの箇所にダメージを与えるが、
パワーが足りず、決定打になるような攻撃が入らない。
そうなるように狙った攻撃に限って、マリーは確実にガードしている。
「ちいっ!」
マリーは一度大きく距離を置くが、ラケルは即座に追撃をかける。
「一瞬の隙をやるのが時間の無駄だZE!
ブレイクスピナー!」
ラケルはブレイクスピンをかけつつ、何故か一気に前進してくる。
衝撃でつむじ風が起こっている。
「力押しなら決して負けぬ!
トルネードジャンパー!」
マリーが竜巻を呼び出し、ラケルのつむじ風とぶつかり合う。
「げぇっ、なんでこったい!」
初めて動揺らしきものを見せるラケルだが、
それほど動じている風でもなく、すぐに手を地面につける。
「JUCK KNIFE!!」
手の動きだけで跳躍し、そのまま竜巻の中に突貫。
マリーに蹴りを叩き込みに来た。
「ジーニアスの名を軽く見るなぁぁぁぁッ!」
竜巻の中に入ったならこっちのもの、とマリーも負けじと跳躍、
そのまま三節棍の一撃を叩き込もうとした。
ガゴンッ!
空中で鈍い音を立て、双方の技が不発にとどまり、
両方とも手で着地する羽目になってしまったが、
即座に起き上がり、再攻撃態勢を整え、すぐ動く。
「つぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」
「ヒィィィハァァァァァァ!!」
片方は怒号を、片方は奇声をあげての突撃。
「そこまで!」
だが、その両者の間に割って入る者が二人。
勇者軍からはロバート、魔神軍からはイノが止めに入った。
「ガス抜きにしてはやり過ぎになる。止めやがれ、マリー」
「ラケル、あなたもよ。これ以上は怪我の元になる」
その一瞬の早技に戸惑いつつ、二人は武器を納めた。
「……ふ、見事にやってくれたものだ、アフロ」
「ラケルだYO!」
抗議するラケル。
「とはいえ、確かにな。正直重みってモンも分かったZE!
改めてよろしく頼むZE! マリーさんYO!」
やたらと暑苦しく握手を求めてくるが、
今度はマリーも拒絶せず、しっかりと握り返した。
「いいだろう。元々勇者軍のカウンターとして機能する貴様等だ。
こうして共闘する機会は二度と無いかもしれん。
その間だけなら、よろしくしてやらんこともない。
……いや、すまない。言い方が悪いようだ。
ラケル、それから魔神軍。よければ今は力を貸してやってくれ」
「HO! 勿論だYO! 絶対に勝つZE!」
わあああああああああああああ!
歓声と賞賛の声が周囲のギャラリーより巻き起こる。
世に名高い勇者軍の実力を間近で、しかも味方として
見られた幸運もさながら、それに追従以上の戦いを見せる
魔神軍をも、新時代の猛者として受け入れる賞賛の声だった。
それは確かにガス抜き以上の意味を持っており、
たとえ
イグジスター相手でもこの力があれば、という
ささやかな希望を味方に見せるだけに相応しいものである。
「通信施設より連絡……? 何でしょうかねー?」
魔王城の通信施設より緊急連絡が突然入り、
いつの間にかこっちに来ていたノーラが応答する。
「はい、こちら魔神軍
ノーラ=アドミラブル」
「我……勇者軍……
ホムラ=クロカゲ……
ナインサークル……味方……遠近問わず
離島に集結……続々と拠点を建造中……
発信源……
亜人王タイタン……!」
「了解でっす!」
元気良く応対し、通信を切る。
「だそうですよ、ゲイルさん」
「うむ、続々と対応が出来つつある。至極結構にござる」
相変わらず間違った
サムライ語を展開する
ゲイル=ウィッシュ。
勿論同様の内容を勇者軍も聞いており、
いよいよ決戦ムードが魔王城を擁する無人島群を包み、
否が応にも周囲のテンションは上がるしかなかった。
「ようし、
ガンシップ、
エリミノイド、戦艦、順次リリース!」
そして兵器工場から、怪物王の声と共に、
随時無人兵器群が出発していく。
これらの活躍を待つ、という新たな戦いが始まったのであった。
最終更新:2014年03月06日 22:45