1-1 出会いの絆 - 崩壊学園wiki

彼女たちの出会いは、落ちぶれた謎解き部に再び光を取り戻させた。工作部の「銀の謎解き人」は、再びバビロン学園で活躍するようになった。

---

黒。
それは夜の色。
分厚い黒いカーテンを閉め、月明かりがまったく入らないようにすると、部屋の中は夜の色に包まれる。
少女はそれが最も好きだった。
純粋な黒色にすっぽりと包まれた世界では、何も見えない。
このような状況で、少女は最高の安心感を覚える。
——こうしていれば、他の人の輝きを見なくて済む。
——こうしていれば、自分がどれだけ恥ずかしくて臆病なのか見なくて済む。
怖がって前に進めない自分の姿を見ることがなければ、安らかな気持ちでいられる。たとえ友達ができなくても、交友関係が広がらなくても、満足していられる。
なぜなら、それは自分だけの小さな世界だから。
しかし、この世界が揺れ動いている。
どうして？
最も快適でいられるはずの小さな暗い世界のはずが、今やあちこちに亀裂が見られる。
少女は布団の中で震えていた。
彼女は、すべての原因が分かっていた。
思い出したくなくても、記憶は刃のように湾曲した月のごとく、頭の中によみがえってくる。
「……私は『銀の謎解き人』として……」
「……ペルセポネー先輩……」
「……どうして？」
「……シィル……」
一体どこから崩れ始めたのだろうか？
この狭い世界が外界の圧力に直面し、崩れつつあるとき、少女は思い出し続けていた。その記憶はすべての始まりまでさかのぼっていた——
……
……

バビロン学園、馬術場の片隅。
ペルセポネーは馬術場脇の観客席に座り、さまざまな色の名馬が生徒の手綱さばきで疾駆する様子を退屈そうに眺めていた。
1年に1度の「式典日」とも呼ばれる、学園の創立記念日が近づいてきた。式典で最も評判の高い催しの1つである「盛装馬術」は、今年も例年通り行われる。
そのため、「部活動」で馬術部を選択した生徒はとんだ災難となってしまった。秋に入ったばかりだが、夏の厳しい暑さがまだ残っている。
完璧な「盛装馬術」を披露するため、生徒たちは秋の日差しが照り付ける中で盛装し、馬術の先生の厳しい叱責を受けながら、何度も何度も練習している。そのため、汗びっしょりになっている。
ペルセポネーは生徒たちの練習を落ち着いた気持ちで見ていた。肩越しに、パロスが眠りながら小さく「クーン」と鼻を鳴らす音が聞こえた。
普通の部活動の時間だったが、彼女は謎解き部の部室を出て、馬術場の脇で馬術部の生徒の退屈な練習を見ていた。
一体どうしてなのだろうか——
「あっ……ペ、ペルセポネー先輩——」
小さな声が聞こえてきた。ペルセポネーが振り向くと、見覚えのある小さな人影が見えた。その人は観客席横の通路に立ち、恥ずかしそうにほほ笑んでいた。

ペルセポネー
……あっ、あなただったの？

目の前に現れた少女は、数カ月前にペルセポネーと一緒に千羽学園へ学校間交流に行った生徒の1人——バビロン中等部のシィルだった。

ペルセポネー
どうしてここに？

シィル
えっと……工作部の原材料が少し足りなくて……。寮の寝室に少し残っていたのを思い出して、取りに戻ろうと思って。
でも……部活の時間なのに、先輩はどうして部室にいないんですか？

ペルセポネー
私？フフ。別に……謎解き部が廃部に追い込まれただけよ。

シィル
……は、廃部！？どうしてですか——先輩の謎解き部はアガサティー先輩の推理部と同じように、いつも生徒たちの依頼を引き受けて、さまざまな事件を解決していると聞いたことがあります——すごいじゃないですか！
そ、そんなにすてきな部活なのに、学校はどうして廃部に……。

ペルセポネー
今年から校則の部活に関する規定が変わったの。どの部活も4人以上の「部員」がいないと存続できず、人数が足りなければ廃部になってしまうのよ。
私の謎解き部の部員は明らかに私だけだったからね。新しい既定の条件をまったく満たせていないわ——パロスを「部員」と見なしても2人しかいないし、廃部になるのも当然よね。
それに学校は、推理部と謎解き部の2つの部活が重複していると思ったのかもね。

シィル
もったいない……それなら、どうしてもっと部員を勧誘しないんですか……？

ペルセポネー
私にとって、他の部員なんて意味ないから。
部活が廃部になったとしても、推理は続けられるわよ。「銀の謎解き人」として謎を解くのに、部活に頼る必要はないし、部室がなくたって構わないわ。ただ、不便な時もあるってだけよ。

シィル
……そうですか……。
……うーん……。

ペルセポネー
……

……

ペルセポネー
シィル、ずっといるけど、一緒に座って彼女たちの馬術の練習を見ていたいの？

シィル
あっ、いいえ、まだ部活があるので、見ている時間はないんです……。

ペルセポネー
じゃあ、そこにずっと立っている時間なんてあるの？

シィル
いえ、その、それは……つまり……。

シィル
ペ……ペルセポネー先輩、専用の部室がなくなってしまったなら、シィルの工作部に来ませんか——
うちの部員は、みんな静かだし、絶対に先輩の邪魔はしませんよ。心を落ち着けて推理するのに十分なスペースがあります！

……
それが全ての始まりのはず。
少女はそう考えていた。
——姉のような探偵。
彼女と出会った日から始まった。
自分の人生のレールが、少しずつ変化していった。