虚偽 - 崩壊学園wiki

キアナ
ここまでね……蓬莱寺九霄。

九霄
いや……まだ終わってなどない……。
希望を前に、勝利をこの手に掴むまで我は……倒れはしない！

キアナ
……そう。あなた、まだこの世界に対して非現実的な幻想を抱いているようね。
あなたたちが今追いかけている希望は、あなたのいる世界から4万年以上も前に消えてしまったもの。
あなたが大切にしているあの人たちもそう。過去の時代にとっくに死んでいるのよ。

九霄
貴様、何を言っているのだ……。

キアナ
それじゃあ、あなたに真実を教えてあげる。
今から語るのは、4万2千年前に滅びた過去の話よ。
キアナという名前の少女が……自分の守る全てをどう破壊したのか、その経緯を……。

九霄
ここは……聖フレイヤ学園？
ブローニャ……ゼーレ……。
それに姫子にテレサまで……みんな……みんな死んでる……。
これは一体どういうことだ……！

キアナ
ここは4万2千年前に大崩壊が始まった場所。
爆発の中心である聖フレイヤ学園で、律者になったキアナを元に戻すため、彼女たちは突撃していった。
しかし、その全ては無駄でしかなかった。律者の前では、人類の力など虫けらも同然だったのよ。
崩壊の与えた破壊的な力によって、キアナは自らの手で彼女たちを殺した……。
その戦いは一方的な虐殺だった。戦いとすら呼べないものだったわ。
あなたが大切にしている人たちはとっくに死んだの。
火を追う蛾は、彼女たちの執念が作り出した亡霊でしかない……最初から存在していなかったの。

九霄
デタラメを言うな！そうか、貴様がずっと偽りだと言っていたのは、
そういう意味だったんだな。……でも、彼女たちはこの世界で、生きるために戦っているじゃないか！
それも全て嘘だったと言うのか！？あの感情は絶対に偽りなんかじゃない！

キアナ
あれは彼女たち自身が作り出した、幻影でしかないのよ……。
私がその気になれば、彼女たちは一瞬にしてあなたの前から消えるわ。

九霄
それは、つまり……火を追う蛾の皆は、貴様が作り出したってことか？

キアナ
いえ、本当の意味で彼女たちを作り出したのはあなた自身よ。
この世界も同じ……あなたが私たちの記憶の中で知っている彼女たちを基にして、
無意識の中で生み出した個体なの。
長く眠っているはずだった彼女たちは、あなたの干渉によってこの乱れ切った土地に現れた。
あなたが彼女たちを、このような苦しみの中に陥れたの……。

九霄
そんな……。

キアナ
私のいた過去では彼女たちが死んだ後、人類の文明は大崩壊の波によって朽ち果てたわ。
難を逃れた少数の個体がいたとしても、その後の災いによって全滅していた……。

キアナは人類の悪夢となり、崩壊の導きによって、全てを滅ぼすためだけに存在する悪魔となった。
彼女は静かにこの星の上空を漂っていた……意識もなく、動くこともなく、感情もないまま……ただ崩壊が与える命令だけを待ち、崩壊が示した目標を消滅させるだけ。
人類の文明の火種が燃え上がるたびに、彼女は反抗する者たちの前に現れ、絶対的な力で彼らを虐殺し尽くした。
彼女はずっと同じことを繰り返していた。
殺戮……待機……殺戮……待機……殺戮……。
この長い長い道のりを、どれだけ過ごしたのか……。
わずか数百年かもしれないし……或いは数万年もの長きに及ぶかもしれない……。
彼女はもう、自分が荒れ果てた大地にどれだけ立っていたのか、それすら覚えていなかった。
人類という名の種が完全に根絶し、矛を収めるその時まで、人間だった頃の意識が戻ることはないのかもしれない……。

しかし、彼女の意識は突然目覚める。

その瞬間……全ての記憶が、悪夢のように彼女の脳裏に流れ込んできた。
無数の悲鳴が彼女の耳元で響いた。
無数の死体が彼女の足下に積まれていた。
無数の鮮血が……彼女の指の合間から流れ落ちていた。
まるで彼女を罰するかのように……彼女が目覚めた瞬間に、彼女の犯した全ての罪が脳内に蘇る。
自分の犯した罪を前にして……彼女は絶望と狂気の淵に陥った……。
苦痛の叫び声だけが、ただただ虚無の大地へと響き渡る。
そして……彼女は、その抱えきれないほどの悲しみを受け入れることができず、自らが救われる道を選んだ。

苦しみよりも……死という道を。

彼女は銃を喉元に当て、そのまま引き金を引く。
……そして、最後の1人となった人類を殺そうとした。
しかし、死ぬことはできなかった……。
そう……彼女は律者だったから。
律者とは崩壊が造り出した最強の生命体であり、その肉体は既に「人類」の範疇から逸脱をしていた。
彼女を殺せる者は存在しなかった。彼女自身も含めて。
この事実を悟った時、キアナは抵抗することを諦めた。
彼女は、自分自身を過去の思い出の中に封印した……。
その美しい思い出で、自分を麻痺させるために。
崩壊がこの星から消え去るその時……彼女は本当の意味で解放される。

これが全ての真相。
あなたが経験したおままごとよりも、ずっと残酷な世界。
このような世界を前にして、あなたに一体何ができるの？
ねぇ……蓬莱寺九霄。
このような絶望の中で、私のために一縷の希望を見つけられるの？
私に救いを与えられるの？教えて……蓬莱寺九霄……。

キアナ
このような私でも、あなたは救えるの！？

九霄
うっ……。
わ、我は……わた、私は……。

キアナ
どうやら、もう答えてもらう必要はないみたいね。
この虚構の世界と共に、終わるがいいわ。

九霄
あぁああああ——ッ！！！

キアナ
さようなら、蓬莱寺九霄。