超日常・夏の旅プロローグ - 崩壊学園wiki

？？？
ある島で、とある伝説が語り継がれていた。
深海に棲む怪物についての伝説だ。
——この島にとある少女がやってきた。
その少女は仲間にまたねと言って、自分の部屋へと戻った。
夜の暗闇の中にカサコソという音が響いたが、彼女は気づいていない。
シュウ、シュウ……
強風の影響か窓が開いている。そして窓枠には何かが這ったような跡が残されていた。
「きっと気のせいよね。」少女はそう考え、明かりを消し目を閉じた。
先ほどの音はまだ続いていた。音が聞こえる場所は絶えず変わっているみたいだ。
シュウ、シュウ、シュウ、シュウ——
暗闇で影が次第に大きくなり、触手がクネクネと少女の体へと伸びてきた——

祈
あっ！

紬
えええっ！？

イズン
きゃあ！

桜華
キャアアアアアアア——

ホテルの一室でおびえた少女たちがひとまとまりになっている。

エーリヴァーガル
ふふ……どうやら今回の怪談大会の優勝者はノーデンスさんのようね。

桜華
わわわわ……こんな遊びはもうやめませんか？や、やっぱりお笑い大会にしましょう！それかしりとり大会とか……

ノーデンス
あら、この話、蒸し暑い夜にひんやりするのにピッタリだと思ったんだけど。
そういえば、島には真実の物語が語り継がれているそうよ……？

桜華
え、ええええっ……ほほほ、本当ですか！？

サメ娘
チリンチリンチリン〜。

祈
なに？

タコ娘
みんな、消灯の時間よ！

イズン
あ、あなたたちは進行役のふたりね。

エーリヴァーガル
わざわざありがとう。

サメ娘
明日からリアリティ番組の撮影が本格的に始まりますよ！みんな、しっかり休んで体調整えておかないとね！

タコ娘
日差し！ビーチ！熱帯！それに休日！

サメ娘
心も体もリラックスするエンターテイメント！しかし！友情と勝負が火花を散らす！！

タコ娘
すごい賞品ももらえるよ！それに「空中投下受付窓口」を使えば、いろんな福利厚生を利用することもできるよ！

サメ娘
乞うご期待！

祈
わあ！いよいよ明日クランクインなんだね！すごく楽しみ！

ノーデンス
確かに、もうこんな時間だったのね。

イズン
電気のスイッチはここね——よし。それじゃあみんな、電気消してもいい？

桜華
待ってください……………………！
電気を消したら、う、うううみ、海の怪物が！

イズン
桜華ちゃん、大丈夫よ。伝説ってほとんどの場合、その土地の習慣をもとに作られた作り話なんだから。

紬
安心して。そんな怖い事、絶対に起きないんだから！！早く寝るのよ。お休み、桜華ちゃん！！

桜華
ほ、本当にそうかな……？
わ…………わかった。お、お休みなさい！

…………
………………

翌日

祈
やったぁ！今日は快晴だよ！
わあい！外に出たの、祈が一番最初だね！
リアリティ番組ってラブラブな事がよく起きるって聞いたから何も考えずに参加しちゃったけど、どういう風に進行していくのか実は全然知らないんだよね。
でもでも、祈とペアのエーリヴァーガルさんはよく知ってるみたいだから……エーリヴァーガルさんに色々と教えてもらわなくちゃ！

エーリヴァーガル
ふふふ、いいわよ。

祈
え、ええっ！？
あ、あの、エーリヴァーガルさん！おはようございます！

エーリヴァーガル
おはよう。祈ちゃんって本当にかわいいわ。私が色々教えてあげるわね。

他の人たちも続々と入り口にやってきた。

イズン
「あなたの世界はどうなの？苦しみとは自ら来るもの〜」
いやまさかこのイベントで、ずっとファンだった巻具のお姉ちゃんに会えるだなんて思ってなかったわ。それに同じチームだなんて……。

ノーデンス
イズンさん私のファンだったの。私もイズンさんの映画、昔からすごく好きよ。

イズン
ありがとう。とても光栄だわ。今回のイベントが終わったら、私たち別のコラボができるかも——

桜華
あああああああああ…………遅刻です〜！

紬
ちょっと待ってよ、桜華ちゃん！

桜華
しくしく……あまりに怖くてずっと寝付けなくて、結局寝坊してしまうなんて……淑女にあるまじき失態です……。

紬
だから怖がらないでって言ったのに。見て！今日は快晴よ！進行役の人たち、撮影現場できっと待ってるよ。
心の準備を整えてリアリティ番組の撮影に臨むのよ！

桜華
わあ！本当にいい天気ね！ごめんなさい、みなさんお待たせしました。

祈
大丈夫だよ。祈たちも来たばかりだし！

イズン
よし、そろったことだし行きましょう——

……
陽が射すビーチ。リアリティ番組の撮影現場。

桜華
え〜と、この先が今回の撮影現場でしょうか——

あたりがメチャクチャになっている。

桜華
！？

？？？
ククク……ククククククク……

不気味な笑い声が響いた。

ベタベタする触手だ。
ベタベタする触手とべタベタする触手とベタベタする触手が、ビーチでクネクネと動いていた。

イズン
！！？？

祈
これは——

想像を絶する状況に、その場にいる全員の目が釘付けになった。

桜華
……こここれって……ううううみの怪物！？？？本当に——

紬
桜華ちゃん、おお落ち着いて！

サメ娘
助けて助けて助けて助けて……。

タコ娘
ああああ……酔って気持ち悪いオエッ……。

視界の上方に——巨大な触手によって宙づりになった二人の姿が見えた。その姿には見覚えがある。

祈
あ、あれは進行役の人たち！？

サメ娘
う……海の怪物よ！あうっ〜

タコ娘
30分くらい前……海の怪物が撮影現場に襲い掛かってきたのよ！——あうっ〜

サメ娘
みんな……リアリティ番組は……もう……続けられないわ……ひえ〜

紬
大丈夫よ、私たちが助けるから——この距離ならなんとかできるはず——

タコ娘
ダメダメ、来ないで——！

サメ娘
だって——普通の攻撃じゃ、こいつにまったくダメージを与えられないんだもの！

タコ娘
それに近づくと、まったく動きがとれなくなっちゃうの！

ガッ——
その説明を裏付けるかのように、怪物の上を飛んでいた鳥がブルブルと体を震わせ、海へと落ちていった。

桜華
ええっ、ど……どうして……。

タコ娘
でも……あたしたち——こいつの弱点を見つけたの！

エーリヴァーガル
……？

サメ娘
それは——ビーチにあるシャベルと水鉄砲よ！なぜか知らないけど……こいつそれがすごく苦手みたいで！
だからシャベルと水鉄砲を使って攻撃すれば勝てるかもしれない——ひえ〜

タコ娘
それがあたしたちから……みんなへの最後のメッセージよ！さよ——なら——
あうっ〜

イズン
進行役の人たちが海の怪物に連れ去られちゃったわ！

祈
連れ去られる瞬間のあのふたり、なんだか幸せそうな顔をしたよね？祈の見間違いかな……？

紬
みんな……ハァ、ハァ……シャベルと水鉄砲……見つけたよ！

桜華
本当にあったんだ！……どうしよう？これを使ってみるの？

エーリヴァーガル
ふふふ……いずれにしても番組の撮影は続けられないわけだから——

ノーデンス
ということは……私たちにできる事と言えば海の怪物さんと戦うことくらいね？

イズン
そうよ。この島を守り、連れ去られた二人を助けるためにも……。

桜華
この……水鉄砲とシャベルを使うんですか？
あああ、これどこからどう見ても……ただの撮影道具じゃないですか！！！

紬
……
……確かにそうだけど、他に方法もないしね！
これを使って……あの怪物と戦おう！