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両雄、守るもののために ◆aWSXUOcrjU




「――ォオオオオオッ!」
 それはさながら獅子の叫びか。
 轟然と響く咆哮と共に、燃えるたてがみが闇夜を駆ける。
 振りかぶる緑碧の鉄拳が、空中で光を炸裂させた。
「っ……!」
「……!」
 拳を受け止めたのは漆黒の影だ。
 闇色の鎧を身に纏った、桃髪の女性のストレートが、獅子の拳と重なっていた。
 黒い女の顔は、白い。
 ほとんど白一色の仮面で、顔面が覆われているからだ。唯一右の目元だけが、ひび割れ素顔を晒していた。
「はぁっ!」
 女の瞳に、力が宿る。
 眉根がしかめられると同時に、紅蓮の衝撃波が弾ける。 
「く、ぉおおおおっ!」
 拳から放たれる赤色のオーラに、たてがみの青年――獅子王凱もまた、己が力をぶつけて応じた。
 轟、と音を立て渦を巻くのは、緑と赤の力の波動。
 炸裂する莫大なエネルギーが、鉄橋の上でぶつかり合った。
 びりびりびりと、大気が揺れる。
 ぎしぎしぎしと、足場が震える。
 極彩色の暴風が、長髪をばたばたとはためかせる。
「何故だ! 君は何故、こんな惨いゲームに乗ろうとする!?」
 爆音を引き裂いて叫ぶのは、凱だ。
 目の前で相対する仮面の女は、こちらの姿を見るや否や、突然襲いかかってきていた。
 すなわち、この殺し合いに乗っているということだ。
 であれば、その真意を質さねばならない。
 暴力的な波濤の中、凱は懸命に問いを発する。
「知れたこと……我が弟を守るためだ!」
 鎧に身を包んだ女戦士は、一瞬の逡巡もなくそう告げた。
 凛とした、気丈な女の声だ。
 恐らくは凱とほぼ同じか、あるいはいくつか下といったところか。
「弟……!? 君の身内が巻き込まれているのか!」
「そうだ! あの子は生きなければならない……あの子はこの世界にとって、必要な人間なのだ!」
「君の手を血で汚してでもか!」
「今更躊躇うつもりなど、ないッ!」
 裂帛の気合と共に、一喝。
 瞬間、虚空に灯るのは、血染めのごとき紅球だ。
「トワイライト・マリオネット!」
 叫びと共に、炸裂。
 無数のエネルギー球が、凱目掛けて殺到する。
「くっ!」
 刹那と経たず、粉塵が上がった。
 どんっ――と音を立てて着弾したそれが、鉄橋の上で爆裂したのだ。
 灰色の闇を引き裂いて、獅子が天高く跳躍。
 飛び退る漆黒の少女を、眼下に見定め睨みつける。
「なら、仕方ない……!」
 これ以上は平行線だ。
 どうあっても聞く耳を持たないのなら、全力で戦ってでも止めるしかない。
「イィィ――クィィィィ――ップ!」
 背負ったデイパックから取り出した、鉄のケースを高々と投げた。
 開放されたケースの中から、続々と凱目掛けて飛び出したのは、強化装甲・IDアーマーだ。
 完全に破壊されたものと思っていたが、まさかこんなところで、それも本来の持ち主の元へ渡ってくるとは。
(ナイフがない? ……だが、それでも!)
 左手に仕込まているはずの得物・ウィルナイフだけが、何故か抜け落ちていることには驚いたが、だからとて泣きごとは言えない。
 ナイフが備わっていないなら、拳に訴えかけるだけだ。
「はァァァァッ!」
 天地を揺るがす雄叫びと共に、金色の獅子は疾駆した。
 闇夜を黄金の体躯で駆け、鉄拳と共に唸りを上げた。
 着地と同時に、足場が軋む。
 振り降ろす右ストレートの一撃が、女の飛び退った足元に、深々とクレーターを刻み込む。
「黄金聖衣!? いや……ただの鎧か」
 ち、と仮面の下で舌打ちながら、女が着地し、構えを取る。
「ホーネットスティンガー!」
 次いで放ったのは速射弾だ。
 どどどどっ――と撃たれる様は、まさに矢継ぎ早といったところか。
 深紅の針を象ったエネルギー弾が、凱の喉笛目掛けて発射される。
「そんな攻撃じゃビクともしないぞ!」
 それでも、凱は怯まない。
 地上最強のエヴォリュダー、人類を守る勇者王。
 黄金の鎧を身に纏った、勇者・獅子王凱の進撃は、何者にも止められはしないのだ。
 迫り来る弾幕を物ともせず、獅子は真っ直ぐに大地を駆ける。
 ホーネットスティンガーを拳で弾き、その先の女の元へと迫る。
「てぇぇやッ!」
 遂に懐へと距離を詰め、一撃。
「ちィッ!」
 渾身の力を込めた右ストレートは、しかし、漆黒の手によりいなされる。
 のけぞる凱の顔面へと、吸い込まれるように飛び込んできたのは、女の黒いハイキックだ。
「ぐっ!」
 恐るべきはその器用さだ。
 彼女は凱の手を弾く勢いを利用し、空中に浮いて、回し蹴りを放ったというのか。
 キックをもろに受け身じろぎながら、凱は敵の攻め手に驚嘆する。
「もらった!」
 追撃の手刀が凱に迫る。
 地を蹴り飛びかかる仮面の女が、漆黒の矢じりとなって殺到する。
「っ、ぉおお!」
 そう何度も攻撃を食らってたまるか。
 今度はこちらが迎え撃つ番だ。
 鋭い手刀が届くより速く、自らの手刀でこれを払う。
 背が高い分、腕のリーチも凱が長い。タイミングさえ見抜ければ、これくらいは造作もない。
「はっ、せやっ!」
 それでも女は怯みもせず、更なる追撃を仕掛けてきた。
 左手で放つジャブからの、流れるような連撃だ。
 これはさすがに潰せない。両腕をクロスし、籠手のガードで凌がんとする。
 その細身の体躯の一体どこに、これほどの力が宿されているのか。
 あるいは従妹ルネと同じ、サイボーグ改造を施されているのか。
 IDアーマーを伝う衝撃に、凱は改めて目を見張る。
「はぁあああッ!」
 防戦一方のこちらに対し、油断を覚えたのだろうか。
 ここに来て女が一歩後ずさり、大ぶりな回し蹴りを放たんとする。
(ここだ!)
 相手の連撃を崩すにはここしかない。
 ガードを解き、キックに回り込むようにして、右腕を勢いよく伸ばす。
 凱の黄金色の籠手は、過たず女の足首を掴んだ。
「何っ!?」
「おおおおおおッ!」
 驚嘆するソニアの足を持ち上げ、身体を思いっきり振り落とす。
 どんっ――と鈍い音と共に、鎧が鉄橋に叩きつけられた。
 うつ伏せに押しつけられた女を押さえるべく、凱は速やかに背後に回り、左腕をねじり上げる。
「くぁっ……!」
「手荒に扱ってすまない。だが、ここは大人しくしていてもらうぞ」
 レディに対する対応ではない。基本的に、荒事を好まない凱の胸が、良心の呵責にちくりと痛んだ。
 それでも、手心を加えていては、彼女の脱出を許してしまう。
 本当に驚くべき相手だ。
 かつて、ゾンダリアンであった頃のソルダートJと戦った時と、ほぼ同等の緊張感を味わわさた。
 このまま力を入れてしまえば、そのままへし折れてしまいそうな女が、あれほどの超能力を駆使してきたとは。
 あるいは、ルネやJとも、ソール11遊星主とも異なる、未知の強敵かもしれない。
「……ターン、バック・ジ――」
 その時だ。
 不意に女の右腕が、薄っすらと赤く煌めいたのは。
 自由になっていた方の腕を中心に、光の渦が巻き始めたのは。
「――ダークネスッ!!」
 瞬間、天地が朱に染まる。
 視界を満たす紅の波動が、猛然と唸りを上げて解き放たれる。
「しまっ――!?」
 反応した時には既に遅かった。
 足元に襲いかかる衝撃は、べきべきという破砕音を伴っていた。
 冷たい鉄橋に亀裂が走る。
 深紅の衝撃が鋼鉄を引き裂き、容赦なく微塵に粉砕していく。
「うわぁぁぁぁーっ!」
 獅子の背中に翼はない。
 いかな勇者王と言えど、自力で空を飛ぶことはできない。
 重力に引きずられるままに、凱は瓦礫と道連れに、海へと引きずり込まれていった。


(誤算だった……)
 痛みに顔をしかめながら、雀蜂(ホーネット)のソニアは思考する。
 橋を離れ、砂浜を走り、平野を進みながら回想する。
 小宇宙の気配も感じ取れない、ただの一般人と思っていた男が、あれほどに手強い相手だったとは。
 あの未知のエネルギーを駆使した戦闘能力は、ハイマーシアンの自分にも匹敵するほどだ。
 恐らく、あのまま戦っていても、負けることはなかっただろう。
 それでも、あの男相手に、無駄な時間は使えない。弟・エデンが巻き込まれている以上、速やかに合流しなければならない。
 結果ソニアは、凱へとどめを刺すのを諦め、戦場からの離脱を決心したのだ。
(……エデン)
 支給された宝石つきのグローブ――オリオン聖衣を握り締めながら、ソニアは家族のことを想う。
 彼はアリアを殺されて以来、腑抜けのようになってしまった。
 その上今のエデンには、身を守るオリオン聖衣がないのだ。
 万が一、あの凱のような強敵に出くわせば、そのまま命を奪われかねない。
(エデンは私の手で守る)
 エデンを殺させないために、他の参加者は抹殺すると。
 改めて、固く心に誓った。
 父・マルスの地上支配が成った時、新天地を治めるべき王はエデンだ。
 己はエデンの矛として、そしてエデンの盾として、彼を守らなければならないのだ。
 そうする他に、ソニアには、為すべき使命などないのだから。
 そうすることでしか、彼女の願いは、永遠に果たされないのだから。
(……我ながら、随分と慣れたものだな)
 そうしてソニアは、いつの間にか、自然に殺意を滲ませていた自分に、内心で静かに冷笑した。


【1日目・深夜/B-5 平原】

【ソニア@聖闘士星矢Ω】
【状態】全身にダメージ(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式、オリオン聖衣@聖闘士星矢Ω、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:エデンを守るために戦う
1:速やかにエデンと合流する
2:他の参加者を殺害する
【備考】
※第28話「最強の軍団! 黄金聖闘士集結!」終了直後からの参戦です

【オリオン聖衣@聖闘士星矢Ω】
オリオン星座の青銅聖衣。エデンが装着する。待機形態はグローブ型。


「……ふぅ」
 顔面の水気を拭いながら、凱は静かに息をつく。
 橋の崩壊に巻き込まれ、そのまま落下した彼だったが、そのまま海中を泳いで、何とか地上へと復帰したのだ。
「彼女は、もう行ってしまったか……」
 橋の上に、人の気配はない。
 自分を叩き落としたソニアは、既にどこかへ行ってしまったようだ。
「こうしちゃいられない」
 理解してからの、凱の行動は素早かった。
 IDアーマーもそのままに、再び鉄橋へと走る。
 一部が崩落してしまったが、エヴォリュダーである自分にとっては、飛び越えられない距離ではなさそうだ。
 弟との合流を目指すソニアが、今自分がいる離れ小島に、わざわざ足を運ぶとも思えない。
 彼女が犠牲を増やす前に、何としても追い付かなければ。
(……人の命を、ゲームで弄ぶだなんて)
 現状を思い、自分達を閉じ込めた、あのバラのタトゥの女を思い出す。
 絶対に許せない。
 勇者の胸に燃え上がるのは、赤き義憤の炎だった。
 金色の鎧の男を殺し、こんなふざけたゲームを開いた彼女を、絶対に許すわけにはいかない。
(俺が必ず止めてみせる……!)
 絶対にこのゲームを中止させ、背後の彼女らを打倒してみせると。
 勇者は固く胸に誓い、なおもスピードを上げて疾駆した。


【1日目・深夜/A-6 海岸】

【獅子王凱@勇者王ガオガイガーFINAL】
【状態】顔面ダメージ(小)、両腕ダメージ(極小)
【装備】IDアーマー@勇者王ガオガイガーFINAL
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:この殺し合いを打倒する
1:仮面の女(=ソニア)を追いかける
【備考】
※FINAL.06「我が名はG(ジェネシック)」にて、ソール11遊星主達の前に姿を表す直前からの参戦です

※B-6の橋の一部が崩落しました

【IDアーマー@勇者王ガオガイガーFINAL】
獅子王凱の専用戦闘服。「イークィップ」の号令で、全身に装着される仕組みとなっている。
耐熱・耐寒・耐衝撃性能が極限まで高められており、ファントムガオーとのフュージョンの際には、神経接続補助の役割も果たす。

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最終更新:2013年04月03日 20:09