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悠然たる金牛 ◆aWSXUOcrjU




 かつり、かつりと響くのは、男の靴の足音だ。
 静寂に包まれた破壊の跡を、1人の男が歩いている。
 その名は牡牛座のハービンジャー。金牛宮の黄金聖闘士。
 己が身一つを武器として、聖闘士の最高位へと昇りつめた、剛力無双の豪傑だ。
(跡形もなく消し飛んだ……ってのは、有り得ねぇだろうな)
 自らが蹂躙したお化け屋敷の、その残骸をひっぺ返して思考する。
 黒髪の女戦士目掛け、必殺のグレートホーンを放ったまではよかった。
 しかし、その女戦士の姿が、いずこかへと消えてしまっていたのだ。
 あの一撃をまともに食らい、この瓦礫に埋もれたというのなら、せいぜい肉片の1つくらいは残っているだろう。
 それすらもないということは、彼女がグレートホーンをかわし、この場から逃走したということだ。
(油断したところを闇討ち、って魂胆にしちゃ、ちと時間が経ち過ぎだ)
 逃げたな、と内心でため息をついた。
 身を隠して隙を狙い、反撃を仕掛けようとしているにしては、あまりにも空白が空き過ぎている。
 これは今までの時間の間に、この遊園地から脱出し、逃走したと見る方が正解だろう。
「つまらねぇオチだぜ」
 言いながら、鉄骨の破片を蹴り飛ばした。
 正直、惜しいと思ったのは確かだ。
 彼女の披露した瞬間移動は、ハービンジャーを大いに驚かせた。
 何せ自分の身だけでなく、銃弾から放った弾丸さえも、通常では有り得ない地点まで転移させていたのだ。
 どういう手品を使ったかは知らないが、何度かヒヤリとさせられたのは間違いない。
 いくら黄金聖闘士と言えど、その身体は生身と変わらない――防御や回避が間に合わなければ、普通に傷を負ってしまうからだ。
 故に彼女との戦いは、なかなかのスリルと興奮を、ハービンジャーに与えてくれた。
 それが戦いから逃げ出すような、根性無しだったという事実は、興ざめすると同時に、残念に思った。
「俺もそろそろ移動するか?」
 恐らく、このままここにいても、挑戦者に出くわすことはないだろう。
 一際大きな瓦礫の上に、どっかとあぐらをかいて座ると、デイパックから地図を取り出す。
 現在地はD-5あたり――少し南西に移動すれば、もっと広い街が広がっているようだ。
 参加者達が集まるとするなら、目立つこちらの市街地の方が、可能性は大きいだろう。
(何か使えそうなものは……)
 わざわざ武器を使う趣味はないが、馬鹿もハサミも使いようだ。
 他の参加者を探すにあたって、有効なアイテムはないだろうかと、支給品を漁っていく。
(……コイツはまだ使えそうだな)
 彼がその中から目をつけたのは、大仰なロケットバズーカだ。
 どうやってデイパックの中に納めたのかは、考えないでおくことにした。
 これを空中にでも打ち上げるか、最悪、適当に爆発でも起こせば、多少の人寄せにはなるだろう。
(うし、行くか)
 方針は決まった。後は行動あるのみだ。
 デイパックを背負い直すと、ハービンジャーは立ち上がる。
「……あん?」
 そこで、気付いた。
 ふと視線をやったその先に、妙な光が見えるということに。
 お化け屋敷が粉砕された残骸――その瓦礫の山の中から、淡い光が漏れているのだ。
 あれは一体何なのだろうか。まさか、女戦士と関係のあるものか。
 万に一つの可能性もある。ハービンジャーはそちらへ向かい、崩れた瓦礫を掘り返す。
「井戸? 何でまたこんなもんが?」
 果たして、そこにあったのは、古ぼけた石の井戸だった。
 そこにそれがある意図が分からず、ハービンジャーは首を傾げる。
 日本では、井戸と言えば、妖怪の住処として有名なモチーフだが、西洋人にとっては馴染みが薄いのだ。
 しかしどうやら、謎の光が、この下から漏れ出していることは間違いないらしい。
 身を乗り出して覗いてみたが、下の様子は伺い知れない。
(……行ってみるか)
 となれば、ここは中に入って調べるべきだ。
 中に何が待ち受けていようが、そこは牡牛座のハービンジャーである。
 鬼であろうが蛇であろうが、構わずぶちのめせるだけの自信はある。
 ハービンジャーは迷うことなく、井戸の中へと飛び込んだ。
 光を目掛けて飛び降りた身体は、その光に飲まれて消えたきり、二度と上がってくることはなかった。


「……こいつは」
 光が急にその強さを増し、視界を埋め尽くした数秒後。
 ハービンジャーの鼻をくすぐったのは、南方からの潮の匂いだ。
 井戸から飛び降りたはずのその場所には、見知らぬ風景が広がっていた。
 いくつかの建造物が立ち並び、地面はコンクリートで舗装されている。それだけを考えれば遊園地と一緒だ。
 問題はその建物が、倉庫であったり工場だったりと、どうにも無骨だということだ。
 南を見れば、その先には、大きく海が広がっている。せり出したコンクリの足場は、まるで船着き場のようだ。
「面白ぇ仕掛けじゃねえか」
 それらの風景を見下ろしながら、ハービンジャーはにやりと笑った。
 ここは市街地の南方――海に面したG-3の港だ。
 恐らくお化け屋敷跡で見つけた井戸は、参加者を瞬時に移動させる、ワープ装置のようなものなのだろう。
 ハービンジャーが飛ばされた灯台にも、それらしい光の渦が見える。
「それならそれで、早ぇところ、他の連中を探すとするか」
 どの道南の街へ来るのは、確定事項ではあったのだ。今更遊園地に戻るつもりもない。
 ハービンジャーは身を翻し、塔から地上へ降り立つために、下りの階段へと向かった。


【1日目・黎明/G-3 港・灯台】

【ハービンジャー@聖闘士星矢Ω】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ルネのバズーカ(3/3)@勇者王ガオガイガーFINAL、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:強い奴と戦って勝利する
1:市街地で他の参加者を探す
2:光牙とはまだ戦わない。成長するのを待つ
3:牡牛座の黄金聖衣を探す
【備考】
※第32話「真の恐怖!巨蟹宮に漂う妖気!」終了直後からの参戦です
※服装は第30話「脅威の実力!金牛宮の聖闘士!」回想シーンでの、マルスと謁見した際の私服です
※身体の制限に気付きました

※フィールドの各地には、ワープ装置が隠されています。
 D-5・遊園地のお化け屋敷、G-3・港の灯台以外にも、まだまだ隠されているかもしれません。

【ルネのバズーカ@勇者王ガオガイガーFINAL】
シャッセールによって開発された、ルネ・カーディフ・獅子王の使用するロケットバズーカ。
ハーフサイボーグであるルネの使用を前提としているため、通常規格を超えた威力・反動を有している。

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最終更新:2013年03月18日 01:09