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いるものといらないもの ◆aWSXUOcrjU




 ソウルジェムに穢れを溜めこんだことが、結果として冷静になることに繋がったというのも、奇妙な話ではあった。
 実際、あの場でテンションが沈んで以来、浄化された今に至るまで、それなりに大人しくなれたのは確かだ。
 荒涼とした風を受け、キリカは1人闇の中、夜の街を見下ろしていた。
(織莉子も獲物も未だ見えず、か)
 ビルの屋上から下界を見据え、胸中で不満げに呟く。
 結局、雷使いの少年と別れてから、キリカは他の参加者を、1人たりとも見つけていない。
 守るべき対象である織莉子も。
 殺すべき対象である殺人者もだ。
(手持ちの支給品を使って、流れを変えられやしないかな)
 デイパックをひっくり返しながら、落ちてきたアイテムを吟味した。
 特に目立ったものは3つ。
 まずはえらく大仰な、槍か何かのように尖ったプレート。
 それでいて、取り立てて尖っているわけでもない。相手を撲殺するためのものだろうか。
 やたらヒロイックな外観からして、武器であることは間違いなさそうだ。
(うーん、投げ捨てたい)
 まず真っ先に、このプレートは、役に立たないだろうなと判断した。
 それこそキリカの身長と、ほぼ同等の長さはあろうかというスケールだ。
 こんなもの、振り回すのも一苦労だし、何より振り回す意味があるとも思えない。
 そんなことをするくらいなら、自前の爪を使えばいいのだ。
 全く魅力の感じられないそれに対する興味を、キリカは瞬時に失っていた。
(続いて、これ)
 次に目をやったのは、漫画などでよく見るドリルだ。
 腕に嵌めて使用するものらしいが、よもやこういう外見のドリルが、本当に実在していたとは。
 実際に腕に装備し、起動してみる。うぃんうぃぃぃんと唸りを上げて、銀色の衝角が回転する。
「っととととと……!」
 これはこれで面白いが、えらい振動を生じるものだ。
 右腕で暴れるドリルのスイッチを、ただちにオフにして停止させる。
 そういえば林業に従事している人は、チェーンソーの使い過ぎで、腕が震えるようになってしまうと聞いた。
 恐らくこのドリルのような負荷が、握っている人の手にかかるのだろう。
 この武器を日頃から使っている者は、見上げた豪傑であるに違いない。
 もちろん、だからどうというわけではないのだが。
(最後はこれ……って何かイヤーな臭いがするなぁ)
 一番最後に目を向けたのは、大量のコスメ用品だ。
 別に香水臭さを感じたわけではない。どういうわけか、それらの瓶からは、理科室特有の刺激臭がしたのだ。
 そっち系の危険な薬に、中身が取り換えられているのだろうか。
 冗談じゃない。塩酸だとかアンモニアだとかを、間違って顔にかけてしまったらどうするのだ。
 これも捨てよう。胸糞が悪い。
 結局使えそうなものもなく、不機嫌な気分だけが残った。
 そうしたことに起因する苛立ちも、薬と、先ほどのプレートとに対する怒りを、より大きなものとしたのだった。
「おっ」
 と、その時だ。
 不意に南方の空に、ちかちかと光が見えたのは。
 ちょうどそこには港があり、光は灯台の中から見えていた。
 若干緑っぽい光は、灯台の明かりとは思えない。夜に緑色に光るのは、妖しいものと決まっている。
 自分でも何故知っているのかも分からない、昭和のネタを引き合いにしながら、目の前の光景を訝しがった。
「行ってみようかな」
 ひょっとしたら、あそこには、何者かがいるのかもしれない。
 そいつが何かのアイテムを使って、光を放っているのかもしれない。
 もちろん、自分がそうしたがったように、他の参加者を誘き出す罠の可能性もある。
 だが、だからと言ってそれがどうした。こちらも最初から戦うために、こうして標的を探しているのだ。
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 停滞した現状を打開するためにも、キリカはそこまで出向くことにした。
 無論、結局何の役にも立たなかった、プレートと薬品のセットを、屋上から蹴っ飛ばして落としながらだ。
 無造作にそれらを打ち捨てると、くるりと踵を返して、下へ降りる階段に向かおうとする。
「――っ!?」
 ちょうどそのまま少し歩いて、ドアに手をかけようとした時だ。
 突然、どかぁん――という爆発音が、後方斜め下あたりから聞こえてきた。
「え!? えっ!?」
 これにはさしものキリカもビビった。
 驚愕に身体を跳ね上がらせながら、先ほどまで立っていた場所へ向かう。
 そこから眼下を見下ろすと、もうもうと煙が立ち込める中、赤々と炎が上がっていた。
 そう。先ほどあれらの粗大ゴミを、蹴り飛ばして落下させたあたりだった。
「……私は知らないよ、うん」
 何でこういうことになったのだろう。
 何でゴミを落としたら、それが爆発したのだろう。
 色々と疑問は浮かんだが、ひとまずそれらは放棄して、改めて階段へと向かった。


【1日目・黎明/F-3 ビル屋上】

呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
【状態】冷や汗、腹部および背部にダメージ(小)、ソウルジェムの穢れ(2割)
【装備】ソウルジェム
【道具】支給品一式、アタッチメントドリル@喰霊-零-
【思考】
基本:織莉子を生かすために殺し合いに乗る
1:港の方へ行ってみる
2:雷の少年(=エデン)は、対策を講じるまで一旦放置する
【備考】
※第5話「そのために私はここにいる」開始直前からの参戦です
※回復魔法を使い、腹部と背部のダメージを少し回復しました

※F-3のビルの正面で、CW-AEC02Xストライクカノン@魔法戦記リリカルなのはForceと
 アイシスの薬品セット@魔法戦記リリカルなのはForceが、大破し小規模な爆発を起こしました

【アタッチメントドリル@喰霊-零-】
超自然災害対策室の現場責任者・岩端晃司が愛用する武器。腕に嵌めるタイプのドリル。
特に明言はされていないが、退魔師である岩端の武器なので、霊に効果があるのかもしれない。

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最終更新:2013年04月03日 20:04