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守りし者として ◆aWSXUOcrjU




(……間が持たんな)
 仏頂面で沈黙する冴島鋼牙は、実のところ、少しばかり参っていた。
 原因はすぐ後ろについている、鹿目まどかという少女の存在だ。
 今も怯えている彼女に、何か声をかけてやるべきなのだろうが、どうにも、何と言っていいのか分からない。
 こういう時には、不器用な己の性分が恨めしくなる。
 そんなことを考えながら、鋼牙はまどかを伴って、森の獣道を進んでいた。
「……あ」
 その時だ。まどかが声を上げたのは。
 レギュレイスに出くわしたわけではない。どころか、そこには誰もいない。
 理由は地形そのものにあった。これまで続いていた森を抜け、ようやく平地へと出たのだ。
「レギュレイスはいないようだな。よし、ひとまずこのまま街まで行こう」
 周囲を改めて見渡し、危険がないか確認する。
 となれば、次に為すべきは、南東の市街地への移動だ。
 まどかを隠さなければならないし、他の参加者達が、あそこで助けを待っているかもしれない。
「そういえば、鋼牙さん」
「何だ?」
「あれは……あの、怪物は、何だったんですか?」
 そこまで考えたところで、まどかがそう尋ねてきた。
 先ほど戦った化け物のことを知っているようだったが、あれは一体何だったのだと。
「……あれはホラーと言う。魔界と呼ばれる、外なる世界の住人だ」
「外なる、世界」
 森羅万象に宿る邪悪な思念――すなわち、陰我。
 その闇に取り憑き、人を喰らう悪しき魍魎。それこそが、ホラーの正体だ。
 そしてあのレギュレイスは、そのホラーの中でも、特に強大な力を持った一体だった。
「そんな危険なのが……」
「だが、心配するな。人を喰らうホラーがいれば、それを狩る者もいる」
 それが俺の仕事だ、と鋼牙が言う。
「鋼牙さんの……?」
「俺達は魔戒騎士。闇を祓い、魔を戒め、人々を守るために戦ってきた戦士だ」
 言いながら、振り返り、手を伸ばす。
 まどかの桃色の髪の上に、優しく鋼牙が手を添える。
「安心しろ。俺がいる限り、君達を死なせはしない。ここにさらわれた人々は、俺の手で救ってみせる」
 優しく、されど力強く。
 諭すような言葉と共に、ごつごつとした手が、少女を撫でた。
 マメの固まった掌は、歴戦の経歴を物語る証。
 肌から伝わる体温は、正義の気骨を宿した印。
 人の世を希望の光で照らす、騎士の力と心の証明だ。
「……はい。ありがとうございます」
 それでいくらか安心できたのだろう。
 いつしか、震えが止まっていた。
 ぎこちないながらも、笑みを浮かべ、まどかは鋼牙の声に応えた。
「では行くか」
 そう言って、鋼牙はコートを翻す。
 白い魔法衣が闇に舞い、まどかが頷いてそれに続く。
 そうして森の木の下から、草原へと踏み出して、しばらく歩いた頃に気がついた。
「……?」
 明かりの灯っていない街の中で、何かが緑に光ったことに。
「どうしたんですか、鋼牙さん?」
 まどかが鋼牙へと問い掛ける。
「何かが光った。そこに誰かがいるのかもしれん」
 言いながら、鋼牙は視界を手繰る。
 一瞬片隅に灯った、緑の光の位置を探る。
 どうやらそこにあったのは、港の灯台だったようだ。
 ちょうどその辺りに、背の高い建物が少なかったのが幸いだった。
 ビルとビルの合間から、灯台がはっきりと顔を出している。
「俺は行くが、君はどうする」
 肩越しにまどかを見て、鋼牙が尋ねた。
 この先に待つ者が、安全な相手だとは限らない。
 あるいは殺し合いに乗った者が、舌舐めずりをして待っているかもしれない。
 先にまどかをどこかへ隠し、鋼牙のみが単身で、港へ乗り込むという選択肢もある。
「……私も行きます。鋼牙さんと一緒にいた方が、きっと安全だと思いますから」
 その問いに対する返答が、それだ。
 少し緊張を滲ませながらも、先ほどよりも強い語調で、まどかが鋼牙へと答えた。
 信じてくれたのだ。この娘は。
 冴島鋼牙が一緒なら、決して悪いようにはならないと。
 独りで身を隠しているよりも、たとえどこへ行くとしても、鋼牙といた方が安心できると。
「分かった。では行くぞ」
 もちろん、レギュレイスの手でまどかごと吹っ飛ばされた時のように、万一という場合もある。
 それでも彼女を受け入れたのは、柄にもなく嬉しいと思ったからかもしれない。
 鋼牙もまた力強く頷くと、先ほどよりも早足で、南東の市街地へと向かった。


(ホラー、それに魔戒騎士……か)
 視線の先で翻るコートを、追いかけるようにして進んでいく。
 そうして鋼牙の語ったことを、鹿目まどかは回想する。
(ひょっとしたら)
 もしや、あの学校を襲った魔物も、そのホラーの一種なのだろうか。
 騎士とは随分と趣が違うが、暁美ほむらも、そのホラーを倒すべく、ああして戦っていたのだろうか。
 銀髪の少女によって襲われた、見滝原中学校のことを思い出し、まどかはそう考えた。
「………」
 正直、全く怖くないと言えば嘘になる。
 いつまた、あの傘を被った怪物が、闇から現れるか分からない。
 間もなく日が昇ろうとする今でも、暗闇に潜む恐怖心を、完全に拭い去ることはできない。
(……でも、多分、大丈夫)
 それでも、今は信じよう。
 目の前で白いコートを揺らしている、あの魔戒騎士を信じよう。
 彼は自分よりもずっと強かった。あのおぞましい化け物からも、身を呈して自分を守ってくれた。
 何より、仏頂面ではあるものの、その裏には優しさを宿した誠実な男だ。
(待っててね。ほむらちゃん、みんな)
 助からない方がいいなんて言わないで――そんな言葉がリフレインする。
 不器用だけど、強くて優しい、鋼牙によく似た友を思い出す。
 今は離れ離れになってしまったが、あの地獄のような学び舎で、きっとほむらも戦っているのだ。
 美樹さやかや志筑仁美も、その他大勢の友人達も、今なおあの学校にいるのだ。
 必ず帰る。そして生きて再会する。
 そのためにも、冴島鋼牙と一緒に、精一杯できる努力をする。
 今にも震えだしそうな身体を、小さな決意で抑え込みながら、まどかは騎士の後を追った。


【1日目・黎明/F-2 平野】

【冴島鋼牙@牙狼-GARO-】
【状態】ダメージ(大)、疲労(小)
【装備】レヴァンティン@魔法戦記リリカルなのはForce
【道具】支給品一式、魔導火のライター@牙狼-GARO-、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:この殺し合いを阻止し、一人でも多くの人間を救う
1:G-3の港へ向かう
2:鹿目まどかを保護する。港の用事を済ませたら、彼女の安全を確保したい
3:レギュレイスは必ず倒滅する
4:魔戒剣を探したい
【備考】
※牙狼-GARO- RED REQUIEM終了後から牙狼<GARO>~MAKAISENKI~開始までの間からの参戦です

【鹿目まどか@魔法少女おりこ☆マギカ】
【状態】疲労(中)、足に擦り傷
【装備】無し
【道具】支給品一式、ランダム支給品1~3
【思考】
基本:見滝原市に帰りたいけど、殺し合いなんて嫌だ
1:鋼牙さんを信じて、一緒に行動する
2:できることは少ないかもしれないが、生き残るために精一杯努力する
3:あの怪物(レギュレイス)が怖い
【備考】
※魔女結界の中でほむらと別れてからの参戦です
※魔女の使い魔のことを、ホラーと同一の存在だと思っています

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最終更新:2013年05月11日 18:45