界聖杯に生きる人間たちは
NPCだ。
仮の命とはいえ、怪我をすれば病気にだってなる。
だから皮下医院だって用意されたし、この俺……
皮下真も医者として働いているぜ。
あの
北条沙都子って嬢ちゃんのことも、俺は医者として接するつもりさ。歯向かいさえしなければって話だけどな。
今だって、人気の皮下院長として患者の診察をしている。さっき、総督が暴れまわった件を始めとして、この東京ではキナ臭いニュースがどんどん流れてやがるから、ビビる患者も多い。
でも、そんな患者を前にしても、俺はいつもの笑顔を絶やさないさ。
ーー怖いのはわかります。
ーー俺だって、皆さんの身に何かあったらと思うと……不安で寝られなくなりそうです。
ーーでも、何かありゃ気軽に言って下さい! 俺でよければ、いつだって話くらいなら聞きますって!
そうして、サムズアップを決めてやれば、患者はすぐに俺を信用する。
けど、俺は嘘を言っているつもりはないぞ。戦前の”川下真”だった頃の俺だったら、寝られなくなるからな。
聖杯戦争に巻き込まれて
NPCの数が減ってしまえば、俺の手駒にできる奴が減っちまう。そりゃ、誰もが適合者になれるとは限らないけどよ……やっぱり、今は無駄遣いは避けたいだろ?
クイーンに差し出す被検体のことを考えると、
NPCが減っちまえば……俺の勝利が遠ざかるはずだ。
だから、俺は患者のカウンセリングだって受けることにしてる。仕事は増えちまうけど、被験体を得るための労働と考えれば何も問題ない。
(にしても、あの峰津院財閥の人間が俺たちを嗅ぎまわっているなんてな……ツイてね〜!)
俺は今、時間潰しも兼ねた被験体の観察をしている。
『タンポポ』のメンバーに頼んで、
NPCを拉致してもらったけどよ……その中に峰津院財閥の構成員が数人ほど含まれている。
俺が元いた世界じゃ聞いたことねえ組織だけどよ、この界聖杯じゃとんでもない影響力を持っていやがる。
それこそ、国家権力に等しい連中だ。トップである
峰津院大和も恐らく聖杯戦争のマスターかもしれねえが、できるならぶつかりたくねえ。
俺のサーヴァントとなった総督がかなりの化物だから、大和だってとんでもないサーヴァントを引き当てているはずだ。
負けるつもりはねえけどよ……下手にぶつかるのは分が悪すぎる。
(連中が持っていたICカードを使えば、財閥に侵入できるかもしれねえが……どうする? 「虹花」の誰かに任せてもいいけどよ……下手に楯突くと、何をされるかわからねえしな)
峰津院の強大さにため息をついていると、俺のスマホが振動する。
手に取ってみると、相手は「虹花」のアオヌマだ。峰津院財閥のスパイが現れてから、皮下医院付近をチャチャと共に監視させている。
「もしもーし? どうしたの?」
『……なぁ、皮下。緊急の患者だ』
「緊急の患者? おいおい、俺は今取り込み中で……」
『さっき、クロサワたちにアイドルの拉致を依頼しただろ? そのアイドルが、向こうから来やがったんだよ』
「……なんだって?」
アオヌマの言葉に俺は目を見開く。
話を聞いてみると、283プロのアイドルが患者としてやってきたらしい。
ハクジャから
幽谷霧子ちゃんに関する報告を受けた後、アイとミズキ、クロサワの三人に283プロに関係するアイドルの拉致を命じた。
被験体達に顔を出す前、アカイとアオヌマとチャチャの3人にも拉致の件を伝えておいたが……まさか、獲物からやってくるとは予想外だ。
『今、受付で待っているけど……俺が拉致してやろうか?』
「いいや、俺が行く! でかしたぜアオヌマ! 今度何か奢ってやるよ」
『パス』
「ありゃ? 相変わらずの塩対応……あ、そうだ。一つ頼みがあるんだ」
『何だよ。俺は病院の周りを監視している最中だぞ』
「すぐに済むから大丈夫だって! アオヌマから、アカイに伝えてほしいのさ……
星野アイってアイドルを調べてくれって」
『
星野アイ……確か、明日のライブに参加するアイドルだっけ』
「正解。彼女、283プロのアイドルじゃないけど……共演はするだろ? だから、
星野アイの周囲も探ってほしいんだ。
星野アイを拉致するかどうかは、アカイに任せる」
『了解』
そうして、スマホは切られちまう。
(アイとミズキには、こっちの
星野アイを任せればよかったか? アイだけに……なんちゃって!)
誰も突っ込まないギャグを心の中で決めた。
でも、
星野アイについても調べる価値があると思っているぜ。
彼女は283プロダクションの所属じゃないが、繋がりだけは持っている。だから、283プロのキナ臭さを考えると可能性はゼロじゃなかった。
もちろん、聖杯戦争のマスターでなくとも、283プロの"いい子、いい人"達はでかいダメージを受ける。
被験体の減少や、峰津院財閥という脅威に対する不安もすぐに吹き飛んで、この足が軽くなった。
後ろから聞こえてくる声だって、まるで気にならないぜ。
◆
現れた患者は風野灯織だ。
何でも、風邪気味だから皮下医院に受診したらしい。灯織ちゃんの付き添いとして八宮めぐるという少女も来ている。
おいおいおい。まさに、鴨が葱を背負って来るってことじゃねえの?
「それで、どうでしょうか……何だか、最近熱っぽくて……あまり、寝られてないんです」
「ん〜? 多分、夏風邪だと思うけど……意外と治りにくいんだよねぇ、こういうのって」
だけど、俺は高まる気持ちを抑えながら、優しい院長として振る舞う。
顔が火照っている灯織ちゃんと、心配そうに見つめているめぐるちゃん。
この二人はかなり仲良さそうだよな。青春っていいねえ。
「それにほら。最近、物騒な事件が続いているでしょ? そのストレスもあって、体調が悪くなってるんじゃないかな」
「……確かに、不安で寝付けなくなる日があります。だから、めぐるもよく一緒にいてくれてるんですよね」
「そうですよ! わたし、灯織のことが心配で……最近よく一緒にいるんです!」
へぇー、と俺は相槌を打つ。
「それは何よりだ! でも、俺としては灯織ちゃんはもちろん、一緒にいるめぐるちゃんも心配なんだよね。ひょっとしたら、風邪がうつっちゃうかもしれないしさ……」
「わたしなら全然へっちゃらですよ! 元々、丈夫ですし……それに、灯織が苦しんでいるのをほっとけないですから!」
「めぐる……ごめんね、私に付き添わせちゃって」
「何を言ってるの! 灯織のためなら、わたしは何だってできるから心配しないで!」
「……ありがとう、めぐる」
心配そうに見つめている俺をよそに、灯織ちゃんとめぐるちゃんは美しい友情を繰り広げている。
ははっ。この二人といい、あの霧子ちゃんといい……283プロのアイドルは良い子しかいないのか?
もちろん、その方が俺としても嬉しいけどね。どっかの酔っぱらいよりマシさ。
「まぁ、二人分のお薬は処方しておくよ。灯織ちゃんだけじゃなく、めぐるちゃんの分もね」
「えぇっ!? わたしなら平気ですよ〜!」
「いやいや! 俺からの出血大サービスさ! 君たちは体を大事にしてほしいし、もしも病気になったら……霧子ちゃんも悲しむだろ?」
慌てふためくめぐるちゃんに、俺はタンポポのような笑顔で答える。
既に二人には俺と霧子ちゃんの関係について話している。そのおかげか、俺のことをまるで警戒していない。
当然、灯織ちゃんとめぐるちゃんが病気になったら、霧子ちゃんが泣くことも知っているぜ。
「そういえば、霧子さんは病院の寮で暮らしているのでしたっけ?」
「そうだぜ、灯織ちゃん! あの子、本当に良い子なんだよな! 俺はもちろん、病院のスタッフや患者さんにも優しく挨拶をしてくれるし、手伝いだってしてくれるんだぜ?
もしかして、灯織ちゃんとめぐるちゃんも世話になってるだろ?」
「……はい。霧子さんはとても優しくて、私たちにいつも気を遣ってくれます。最近、あまり会えていませんが……また会えたら、お礼を言おうと思います」
「そうですよ! わたしからも、お礼を言いますからね! 先生にお世話になったって!」
「そっかそっか、その時が来たらよろしくな! おっと、それともう一つ……」
話に花が咲く中、水が入った紙コップに手を伸ばす。
二人の診察をする前に、俺があらかじめ用意したのさ。机の上に置いたけどよ、二人はまるで気にも留めていなかった。
「……二人とも、水でも飲もうぜ」
「えっ? ここで、ですか?」
「あぁ。この炎天下の中、病院にまで来てくれただろ? そのせいで風邪が悪化するかもしれねえし、水分補給も大事じゃん? 霧子ちゃんだって、いつも俺たちに水を用意してくれてるしさ」
「……わかりました。では、いただきますね」
「ありがとうございます! わたしも、ちょうど喉がカラカラだったんですよね!」
そのまま、灯織ちゃんとめぐるちゃんは水を飲み込む。
彼女たちは察しが悪い訳じゃなさそうだが、病気と霧子ちゃんの名前を使えば、すぐに俺の言葉を信じた。
霧子ちゃんの名誉のために言っておくが、俺たちに水を用意してくれるのは本当のことだぜ? この時期はめっちゃ暑いし、空調が効いた病院内でも水分補給を欠かすのは厳禁だ。
本当に霧子ちゃんは良い子だよな! 病院にいない時だって、こうして俺の手伝いをしてくれるからな。
「……あ、あれ? 何だか、急に……眠く……め、めぐる……」
「ひ、灯織……大丈夫……? わ、わたしが……」
「おっと? 二人とも、大丈夫か!? すぐそこにベッドがあるから、横になるといい」
俺は彼女たちをベッドに案内した。
ちょうど、二人分の医療ベッドが用意されているから、スムーズに案内できる。
横たわった瞬間、灯織ちゃんとめぐるちゃんは眠ってしまった。
「おやすみなさい、お嬢さんたち……目が覚めるまで、良い夢を見ていろよ」
二人の眠り姫に俺はそうささやく。
彼女たちが夢を見られるのはこれで最後だからな。
そして、俺は眠りについた二人を他所に準備を進める。表で騒ぎにならないよう、書類の手続きとか色々あるからね。
俺が手を回して、二人は緊急入院が必要になったと説明しよう。例えば、未知のウイルスに感染して、面会謝絶となったみたいに……いくらでもごまかす方法はある。
灯織ちゃんとめぐるちゃんの治療はここまで。
後は、二人の体力次第になりそうだな?
◆
「んっ……」
「あ、あれ……ここは……?」
「おぉ! 二人とも、グッドモーニング! もう夕方だけどな!」
瞼を開けた灯織ちゃんとめぐるちゃんに元気よく挨拶をする。
彼女たちに飲ませた水の中には睡眠薬を混ぜたおかげで、グッスリ眠ってくれたけどよ……なんか、早く起きちまったみたいだ。
俺としたことが種類や分量を間違えたか? 医者としてあるまじき失敗だな。
ま、次の反省に活かせばいいか。
「やあやあ、灯織ちゃん! グッスリ眠れたかい?」
「せ、先生……? あ、あの……これは……?」
「ん〜? 強いて言えば、精密検査……かな? ほら、灯織ちゃんは風邪気味だろ? だから、俺に任せれば大丈夫だって」
困惑する灯織ちゃんに、俺は胸を張って説明する。
彼女は全く納得していないが、そんなことはどうだっていい。
インフォームド・コンセントを気にしてはいられない程の緊急事態だからな。
「……な、何あれ……!?」
「えっ……?」
めぐるちゃんの震える声に、灯織ちゃんが振り向く。
彼女たちの視線の先に広がっているのは無数の死体だ。俺たちの実験で壊れた奴らの成れの果てさ。
当然、年頃の少女に直視できる光景じゃなく。
「「――――――――――――!!」」
二人とも、声にならない悲鳴をあげてしまった。
あーあ。やっぱり、刺激が強すぎたようだ。
これだから、灯織ちゃんとめぐるちゃんには眠ったままでいて欲しかったけど……こうなった以上はしょうがないか。
「……えっ!? わ、私たち……縛られてる!?」
「何これ!? どういうことなの、先生!?」
そこで、灯織ちゃんとめぐるちゃんは、自分たちが拘束されていることに気付いたようだ。
両手と両足が縛られて大の字になっているが、洋服はちゃんと着せたままさ。
女の子の服を強引に脱がす奴なんてサイテーに決まってるだろ? 俺はそんなことしないぜ。
「だから、言ったじゃないか……これは精密検査だって! 何、そんなに時間はかからない。二人分のお薬だって、出血大サービスだからな」
そう。俺はこの時のためにお薬だって用意している。
二人の袖をまくって、綺麗な腕を出してあげた。このくらいは医師として当然の務めだからな。
「や、やめてください! 先生!」
「ね、ねえ……霧子ちゃんは!? 霧子ちゃんは、どうしたの!?」
「……そ、そうです! まさか、霧子さんは……!?」
「ん? 霧子ちゃんはここにいないぜ! あの子は今、俺の部下とお出かけ中さ……ここのことだって何も知らない。まぁ、善意の第三者さ」
顔を青ざめながらも、二人は霧子ちゃんのことを心配していた。
当然、俺は正直に話している。鬼ヶ島と無関係な霧子ちゃんは、ハクジャと出かけている最中さ。
やけに時間がかかっているけど……まぁ、年頃の女の子だからショッピングとか色々あるか。
「そ、そうですか……」
「よ、よかった〜……」
灯織ちゃんとめぐるちゃんは安堵のため息をつく。
この期に及んで、身の危険よりも他の誰かを心配するなんて本当に良い子だ。
よし、そんな二人のために俺の方からプレゼントをしてあげるか!
「そういえば、君たちは283プロダクションのユニットだったよな。確か、名前はイルミネーションスターズ……もう一人、
櫻木真乃ってアイドルもいたよね?」
胸ポケットから出したのは一枚の顔写真。
その写真を見て、灯織ちゃんとめぐるちゃんは驚きで目を見開いた。
そう。灯織ちゃんとめぐるちゃんにとって、大切な友達と呼べるアイドル……
櫻木真乃さ。
「……ま、まさか……真乃に、手を出すのですか!?」
「やめてっ! 真乃は何も関係ないよっ! 真乃は巻き込まないでっ!」
「そうです! お金が必要でしたら、私たちがいくらでも用意します! だから……だから、真乃だけはっ!」
真乃ちゃんの写真を見せた瞬間、二人とも大慌て。
まるで刑事ドラマみたいなやり取りだけどよ、本当にあるんだなこういうのって。灯織ちゃんとめぐるちゃんのポジションはちょっと違う気がするけどな。
「あーあ、違う違う! 俺はお金なんていらないよ。君たちみたいな女の子からお金を巻きあげるなんて、悪趣味ことはしない。ただ、検査を受けてほしいのさ」
「「け、検査…………!?」」
「あぁ。灯織ちゃんは風邪気味だし、めぐるちゃんも病気がうつっていないか心配でさ……このままじゃ、真乃ちゃんだって危ないだろ?
だから、二人には検査を受けてもらう。その途中に、注射とかも使うけどね」
俺はいつだって正直さ。
霧子ちゃんのお友達に嘘をつくなんてとんでもないだろ? だから、何一つとして隠し事はしない。
それに、真乃ちゃんに風邪をうつしたくないのも、二人にとっては本心だと思うぜ?
「もっとも、二人がイヤなら別にいいよ? 俺の方から真乃ちゃんに会いに行くだけだからさ……霧子ちゃんに頼めば簡単だろ!」
二人は絶句する。
これだって俺の本音だ。霧子ちゃんを通じさえすれば、真乃ちゃんにもすぐ会える。
それなら、今の灯織ちゃんとめぐるちゃんのように、検査を受けてもらうこともできるはずさ。
「わ、わかりました! 私は先生の検査を受けますっ! 真乃は……真乃は……!」
「真乃にだけは、手を出さないでよっ! わたしにできることなら、何でもするから!」
「ははっ、いい返事だ! それじゃあ、さっそく始めようか……クイーン!」
「ムハハハハハハハ! 呼んだか、皮下!?」
闇の中からクイーンが現れる。
その巨体に、灯織ちゃんとめぐるちゃんは「ひっ!」と悲鳴をあげてしまった。
だけど、クイーンは相変わらずおっかない笑みを浮かべている。
「彼女たちは検査を受けたいそうだ。注射とかも使ってもいいけど、丁寧にやってくれよ? 灯織ちゃんとめぐるちゃんは、霧子ちゃんの大切なお友達だからな」
「そうかそうか! なら、任せろ! おれがちゃんと丁寧に検査をしてやるからな! ムハハハハハハハ!」
俺は「検査」と口にするが、大笑いするクイーンは意図を察している。
これは生贄だ。
クイーンの魔の手にかかれば、彼女たちに未来などない。
彼女たちが目覚める直前、クイーンとは「検査」の打ち合わせをしていた。
死にゆく運命にあったハクジャに「葉桜」を投与した結果、薬の副作用と病気が奇跡的に作用している。そしてハクジャが「完全適合者」として生き残ったように、灯織ちゃんとめぐるちゃんにも似たようなことをさせようと提案した。
例えば、テトロドトキシンやサルモネラ菌、あるいはカエンタケやクサウラベニタケのような毒物を摂取させた後、「葉桜」を投与すれば「完全適合者」になれるんじゃないか?
そう提案した結果、クイーンはノリノリで乗ってくれた。
「い、いやっ!」
「離して! 離してっ!」
「おいおい、今更何をビビってるんだよ!? てめェら、
櫻木真乃が大事じゃねえのかよ!?」
「「…………ッ!」」
クイーンが真乃ちゃんの名前を出した途端、二人とも黙り込んでしまう。
ここで自分たちが生贄にならなければ、真乃ちゃんが狙われると察したからだ。
「ムハハハハハ! 行儀のいいガキどもだ! さあ、このおれが検査してやるぜ!」
そうして、俺とクイーンの検査が始まる。
この鬼ヶ島に少女たちの悲痛な叫びが響き渡った。
検査の最中……灯織ちゃんは「助けて」とわめき、めぐるちゃんは「苦しい」と叫ぶ。
だけど、その度に……
「ほらほら、頑張りなよ! 真乃ちゃんに病気をうつしたくないんでしょ?」
「そうだそうだ!
櫻木真乃のため、おれたちが検査をしてやってるんだから、ちょっとは我慢しろよ? ムハハハハハハハ!」
俺たちが真乃ちゃんの名前を出せば、それだけで二人は黙っちゃう。
涙を流しながらも頑張る姿は感動的だね。でも、このままじゃ二人も我慢の限界が来るかもしれない。
だから、俺は心の中でフレフレってエールを送る。
病気に負けるな、灯織ちゃん。友達のために頑張るんだ、めぐるちゃん。
君たちはイルミネーションスターズだから、その絆があればどんな困難でも乗り越えられるからね!
◆
「ウォロロロロロロ! 帰ったぜ、皮下!」
「やあ、おかえり! 総督!」
「……ん? なんか、偉く機嫌がいいじゃねえか」
「へへっ、面白い拾い物があったからさ……それより聞いたぜ? また、街で派手に暴れたみたいだな!」
「ああ。相手にしたのは途中で逃げ出すような腰抜けだ……けど、顔は覚えた」
「そうかい」
ライダーのサーヴァント・
カイドウから逃げ出すとか、どれだけ立ち回りが上手いんだよ?
俺は心から驚いたぜ。何しろ、この暴君と戦った相手は誰一人残らず敗退したからな。
でも、逃げ出したサーヴァントはこれから大変だろうな。だって、総督はこの巨体に対して、蛇みたいに執念深いからな。
居所がバレたら、絶対に潰されるし。
同情している最中、鬼ヶ島から女の子たちの悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ、今の声は?」
「俺たちのために頑張ってくれてる子たちの気合いさ」
「……訳がわからん」
「後で説明してやるよ。それよりも、これからのことについて話したいけどよ……」
俺は総督と共に今後のことを話し合う。
総督の暴走についてはもう諦めるとして、峰津院財閥の本格的な対処も考えたかった。
そして、灯織ちゃんとめぐるちゃんの検査が本格的に成功しても、アイドルの拉致をやめるつもりはない。
アイとミズキ、そしてクロサワの三人を出撃させた以上、すぐに帰還命令を出すのも馬鹿馬鹿しい。
アオヌマが見つけた二人は、あくまでも自分たちからやってきた。だから、今回の命令とは無関係……ノーカウントさ。
アオヌマに彼女たちを拉致させることもできたが、ここは皮下医院の敷地内だ。騒ぎを防ぐため、俺が医者として灯織ちゃんとめぐるちゃんに接触する。
結果、面白いほどに俺は信用されて、二人の検査ができた。
もちろん、検査じゃなくてクイーンの実験なんだけどね。
そうだ。
もし、クイーンの実験が成功して、灯織ちゃんとめぐるちゃんが生まれ変わったら……二人を真乃ちゃんに会わせてあげよう。
当然、二人に約束をしたから、俺だけは真乃ちゃんに手を出さない。せめて「虹花」のメンバーが真乃ちゃんを見つけないことを祈っておくか。
今、俺の手元には灯織ちゃんとめぐるちゃんのスマホがある。
チャチャに頼めば、スマホ程度のセキュリティなど簡単に破れるはずだ。
そして、チェイン……だったか? その連絡アプリを使って、灯織ちゃんとめぐるちゃんの代わりに、真乃ちゃんにメッセージをしておこう。
サプライズとして、灯織ちゃんとめぐるちゃんの体内には自爆チップも混ぜるか!
『真乃! 私、めぐると一緒にいるから……会いに行くよ! by灯織』
『わたしも真乃に会いたいんだ! 灯織と一緒に、真乃の所に行くからね! byめぐる』
うん。こうすれば、きっと真乃ちゃんも喜んでくれる。
灯織ちゃんとめぐるちゃんの姿を見たら、絶対に真乃ちゃんはビックリするぞ。
今からワクワクするねぇ!
【新宿区・皮下医院/一日目・夕方】
【
皮下真@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:健康
[令呪]:残り三画
[装備]:?
[道具]:?
[所持金]:纏まった金額を所持(『葉桜』流通によっては更に利益を得ている可能性も有)
[思考・状況]
基本方針:医者として動きつつ、あらゆる手段を講じて勝利する。
1:
カイドウさんと今後のことを話し合う。
2:病院内で『葉桜』と兵士を量産。『鬼ヶ島』を動かせるだけの魔力を貯める。
3:沙都子ちゃんとは仲良くしたいけど……あのサーヴァントはなー。怪しすぎだよなー。
4:全身に包帯巻いてるとか行方不明者と関係とかさー、ちょっとあからさますぎて、どうするよ?
5:283プロはキナ臭いし、少し削っとこう。嫌がらせとも言うな?
星野アイについてもアカイに調べさせよう。
6:灯織ちゃんとめぐるちゃんの実験が成功したら、真乃ちゃんに会わせてあげるか!
7:峰津院財閥の対処もしておきたいけどよ……どうすっかなー? 一応、ICカードはあるけどなぁ。
[備考]
※咲耶の行方不明報道と霧子の態度から、咲耶がマスターであったことを推測しています。
※会場の各所に、協力者と彼等が用意した隠れ家を配備しています。掌握している設備としては皮下医院が最大です。
虹花の主要メンバーや葉桜の被験体のような足がつくとまずい人間は
カイドウの鬼ヶ島の中に格納しているようです。
※ハクジャから
田中摩美々、七草にちかについての情報と所感を受け取りました。
※峰津院財閥のICカード@デビルサバイバー2、風野灯織と八宮めぐるのスマートフォンを所持しています。
※虹花@夜桜さんちの大作戦 のメンバーの「アオヌマ」は皮下医院付近を監視しています。「アカイ」は
星野アイの調査で現世に出ました。「チャチャ」は「アオヌマ」と共に監視していますが、他にも役割があるかもしれません。
※風野灯織&八宮めぐる@アイドルマスターシャイニーカラーズは皮下に拉致されて、鬼ヶ島でクイーンの実験を受けている最中です。
【ライダー(
カイドウ)@ONE PIECE】
[状態]:ほろ酔い(酔い:10%/戦ったことで冷め気味)、全身にダメージ(小)、腹部に火傷(小)、いずれも回復中
[装備]:金棒
[道具]:
[所持金]:
[思考・状況]
基本方針:『戦争』に勝利し、世界樹を頂く。
1:皮下と今後のことを話し合う。
2:『鬼ヶ島』の浮上が可能になるまでは基本は籠城、気まぐれに暴れる。
3:リンボには警戒。部下として働くならいいが、不穏な兆候があれば奴だけでも殺す。
4:アーチャー(ガンヴォルト)に高評価。自分の部下にしたい。
[備考]
※皮下医院地下の空間を基点に『鬼ヶ島』内で潜伏しています。
時系列順
投下順
最終更新:2021年10月11日 02:08