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完全な置き場⇒詩の想い 詩の想い2 詩の想い3
第三弾エントリーNo.13以降はこちらに⇒詩の想い5




エントリーNo.10
提供はyomogikorin氏です

※ 戦 闘 曲 で す 。のつもりで書きましたwこんなラプランカ伝承(というか童話)があってもいいんじゃないかなというコンセプトです。
効果は「共感」という感じで、対象のレーヴァテイルと感覚を共有し相手の感情を意のままに操れる、話術あればいらんがな的なやつ。 

+ ...


おっちょこちょいのラプランカ
せっかくそだてた だいじなきなのに
からしちゃったよ どうしよう
みずをあげなかったからかしら
そうおもって たくさん たくさん みずをあげても
かれたきはしおしおのまま

いばりんぼうのマオがきた
やいラプランカ おまえはどじだな
きのえだいっぽん そだてられない
おまえのかわりにそだててやる
このマオさまが でっかい でっかい きにしてやるから
このマオさまのこぶんになれ

こぶんになったラプランカ
マオのやりかた じっとみていた
マオはせっせと みずをあげてる
さっきたくさんあげていたから
あふれたみずが どんどん どんどん かわのよう
どうしてそんなことするの

おこりんぼうのマオはいう
やいラプランカ だいじなきだって
どじなおまえが からしたんだぞ
このきのかわりにこたえてやる
みずをやって でっかい でっかい かわになって
みんなながされてしまえって

なきむしこむしのラプランカ
マオのうそつき マオのいじわる
やさしさだけが とりえのわたしに
どうしてほかのこころをおぼえさせるの
おみずのように なみだが なみだが とまらないよ
はじめてかなしいっておもったよ

マオはこのきのこころそのもの
やいラプランカ かなしいこころ
しったらすこしは このきのきもち
かなしくてつらかったってわかったか?
みてみろよ ちっちゃい ちっちゃい めがでてるだろ
いまにでっかいきになるぞ





エントリーNo.11
提供はhoim_in氏です

やはり「空」「海」などをちりばめつつ、戦闘回復なんでもござれ、どうとでも取れますよな「想い」です。
詩魔法サーバー接続時における回線の最適化を行うヒュムノス。
一つの目的のために複数のRTが詩魔法を紡ぐときに、一人のRTがこの詩の詠唱に専念することで、コスモスフィアと詩魔法サーバーを接続する回線を最も効率よく配分する。
簡単に言えば「一人が指揮者になる」ヒュムノス。
コスモスフィアそのものには干渉しないPAJAの亜種的なもの。というイメージ。
あくまでそういうイメージで書いただけなので、作詞さんは無視してもおっけーですです。 

+ ...


深き碧(あお)の海の底には、人魚たちの都があった
人魚たちは魔法の詩を歌うことができ、
月夜の度に岩べりに顔を出しては、美しい歌を響かせていた
歌は波を起こし、風を震わせ、多くの生命を和ませた

しかしある時、地上で戦争が起こった
強大な魔法の詩を持つ人魚たちは、傷つけあうことを恐れて海の底に隠れ棲んだ
そうして長い長い年月を過ごすうちに、人魚たちはすっかり詩の力を忘れてしまった

人魚の末妹である阿古屋(あこや)姫は、
詩の力を信じる強く純粋な娘だった
ある月の夜、阿古屋姫はみんなに内緒で、禁じられている海の上を見に行った
丁度いい岩を見つけて身を乗り出すと、月に向かって歌った

すると、すぐ近くから美しい歌声が重なった

「よい月夜ですね」

見ると、岩の端に一羽の小鳥が止まっていた
海底で見るどの魚よりも美しい小鳥だった

「あなたは空の住人ね。どうしてこんなところに?」
「私は瑠璃。天上で蒼天帝の使いをしていたのですが、雷に打たれて落ちてしまったのです。ご覧の通り羽根を濡らしてしまい、戻ろうにも飛ぶことすらできません」
「まあ」

阿古屋姫はなんとか小鳥を天に返せないだろうかと思案した
人魚の詩の力を以ってすればできるかもしれない
さっそく阿古屋姫は魔法の詩を奏ではじめたが、
付近の海面が細波をたてるくらいで、これといった効果は顕れなかった

「ごめんなさい、何もしてあげられなくて」
「いいえ、あなたの歌を聴いて勇気づけられました。まるで魔法の詩ですね」

それを聴いた阿古屋姫は、ますます小鳥を助けたくなった
一人では細波が精一杯でも、大勢で歌えばもっと大きな波をおこせるかもしれない

阿古屋姫は海底の都へ帰り、姉妹たちを一生懸命説得して回った

「わたし達が恐れてきた詩の力で、彼を助けましょう」

最初は乗り気でなかった姉妹たちだったが、
阿古屋姫の純粋な想いに打たれ、歌いたいという気持ちを取り戻していった
やがて日が昇る頃、楽器を携えた人魚たちが次々と海面に姿を現した
阿古屋姫が昨夜の岩場を探すと、
小鳥は濡れた羽をふるわせて一生懸命飛び立とうとしていた

「小鳥さん、もう大丈夫。今度こそ帰れるわ」

阿古屋姫と姉妹たちは顔を見合わせ、曲を奏で、歌を紡ぎ始めた
しかし、長いあいだ一緒に歌うことを忘れていた人魚たちのメロディは
ちぐはぐでなかなか噛み合わない

阿古屋姫は思った

(彼を助けたいという思いはひとつ、だから私達はシンフォニーを奏でられるはず!)

阿古屋姫はそれぞれの旋律に耳をすませ、時には沿うように、時には導くように歌い上げた
ばらばらな縦糸が横糸で織り上げていくかの様に、一つの調べが紡がれていく

人魚の歌がクライマックスへ向けて束ねられていくと同時に、
ただ波紋を起こすだけだった海面が渦を巻き、
その腕でやわらかく小鳥を抱き、海の竜巻となって天に伸び始めた

人魚の歌を背にうけた小鳥は、気がつくと自分も歌を歌っていた
海のメロディに合わせて、空を恋うように、高く鳴いた
すると、蒼天帝の御心だろうか
空からも風の渦がおこり、小鳥にむかって伸びていく
一瞬、海と空がひとつの柱でつながれた

ほどなくして柱はほどけ、小鳥は感謝の気持ちを歌いながら天へ帰っていった
その姿を見送った阿古屋姫と人魚たちは、とても満たされていた





エントリーNo.12
提供はikainoutaiteです

四の五の言わずに頭文字とってみてください。
数が少ないって嘆いていた方のために、数増やし的な感じですが。
それなりにうまくつながったんじゃないかなって思います。

+ ...


私の心は満たされている
飽くなき力を求める心で
際限なき願いで

やがて来る光よ
選ばれた恋人たちの
明るき道を照らしたまえ

螺旋辿る命に
朝を迎えるための助力をどうか

小さな子供はやがて成長し
果てなき情熱を抱いて
真実を願うのだろう

破滅の炎を消し去り
揺るぎなき光を齎し
まだ見ぬ救いと
女神のごとき慈悲を
無にしてはならない
多くの邪まに阻まれた
世界の願いを奏でよ

魔に心揺さぶられず
得難き愛をその手に
明日へ向かう力を私に授けよ





エントリーNO.13
提供はkairi_infel氏です

内容がちょっと(かなり)長いんで、以下のURLから取得して下さい。
http://ux.getuploader.com/Hymmnos_kikaku/
ヒュムノスタ12神の方で書いた神話を詩の想いとして使おうと想い、こういう形を取りました。
テーマは「自由度」です。敢えて対極のベクトルを絞るようなことをせず、作詞作曲の方に自由に構想を組んでもらうことを考えて、
こういった「神話」という形を取りました。
あくまで「詩の想い」ですんで、こういう神話があったんだなへーくらいに感じてくれれば幸いです。


第二回用ここまで

第三回用ここから

エントリーNo.1
提供はikainoutaiteです

自分的正統派伝承詩第一弾
男声もうまく生かせるんじゃないかなぁと思います
サブテーマとしては「愛」と「二面性」と「説話」をちょこっと混ぜた感じです

+ ...


天声の少年と魂踊の少女のお話

那由他羅と六冠はその昔零獅姫を取り合ったという
その二柱の争いの一つの話を紹介しよう

那由他羅は一人の少年を世界に送り出した
天より授かりし声を持ち
空へ響く詩声を持つ少年

六冠は一人の少女を世界へ解き放った
この世のものとは思えぬ踊りは魂そのもので
その舞で心を誘う少女

那由他羅は言った
「零獅姫は詩が好きだ
 この少年の詩は零獅姫を癒すだろう」

六冠は返した
「零獅姫も詩は聞き飽きたに違いない
 この少女の舞は零獅姫を喜ばせるだろう」

少年は詩を生業にして一人旅をしていた
少女は舞を売りに旅団と共にしていた

ある時旅団は少女の舞に合わせる歌い手を探していた
少女の舞はいつでも華やかだが
今回はもっと派手な演出をしたかったのだ

少年はとある街にたどり着いたとき
街のそこここにある張り紙を見て
旅団を訪ねて行った

「ここで謳い手を探していると聞いた。
 僕にも謳わせていただけないだろうか」

少年以外に集っていたのはみんな女性だった

そこへ少女が現れて言った

「お集まりいただいた皆様
 私のバックコーラスのためによくおいでくださいました」

それを聞いた女性たちは一様に眉をしかめました
踊りと歌のハーモニー、そう聞いてやってきたのに
少女は主役は自分で他は端役だという
一人の女性がそれを訴えた

「同じことですわ
 私がいくら踊りに手を抜こうと
 あなたがたの歌が勝ることはないのですから」

それを聞いた女性たちは残らず帰ってしまった
しかし少年は帰らなかった

「端役でもいいなんて物好きな方ね」

少年はそれには応えなかった
少女は余計なことを言わない少年を気に入って
少年に歌ってもらうことを決めた

宴の当日
三柱の意志たちはこっそりと地上に降りてきていた
自分たちの遣わした半神のどちらが零獅姫に気にいられるか見届けるためだ

宴は少年の詩から始まった
あとから出てきた舞姫がより映えるようにとの演出だった
しかし予想とは違い
少年の詩声はこの場にいる人々を魅了してやまないものだった
ただ一人を除いて

負けじと少女が躍り出ると
今度は全ての人が少女に目を引かれた
優美で可憐で華やかな舞に人々は目を奪われた

すると今度は少年が静かに謳い始めた
決して派手でもなく
そして華美でもない
ただ幽玄に満ちた詩だった

詩と踊りは夜を徹するまで行われ
どちらがどちらとも素晴らしいもので終わった
誰もどちらを贔屓しなかった
零獅姫も同じ気持ちだった
だというのに那由他羅と六冠は自分の半神が素晴らしかったと言って譲らない

零獅姫は地上を指さした
少女と少年が黎明に語らっていた
どちらも自分を誇ったりなどしていなかった
どちらも相手を褒め合っていた

「あなた方が生み出した半神でさえ
 互いに優劣つけることなく
 切磋琢磨しているというのに
 あなた方は恥ずかしくないのですか?」

那由他羅と六冠はそう言われて
渋々と互いに手を出しあったが
触れるか触れないかのところで互いに反対側へ飛び立ってしまった

呆れた零獅姫だったが
地上の二人に最後に祝福を送ると
彼女もその場を飛び立っていったのでした




エントリーNo.2
提供はyomogikorinです

「伝承詩」「童謡」「モロヘイヤ」「踊りたくなる」「二面性」
これらのキーワードから導き出される答え…それは
『モロヘイヤ音頭』なんだよ!(な、なんだってー

+ ...


植物の神、沙羅世命が新しいいのちを生み出そうとしていました。
動物の神、咲夜琉命にお願いをされたのです。

私の生み出した動物たちのためになる植物を創ってはもらえないだろうか

咲夜琉命は、
動物たちは飢えるととても苦しいのですと言ったので
沙羅世命はそのいのちを
食べられるもの、食べやすい味にもしてあげた。

咲夜琉命は、
動物は栄養というものが必要と言ったので、
沙羅世命はそのいのちに
いっそ豊富に栄養を持たせてあげた。

咲夜琉命は、
動物たちは寒さというものに弱いと言ったので、
沙羅世命はそのいのちに、
その繊維を束ねて纏えば寒さをしのげるようにしてあげた。

沙羅世命は少し考えた。
でもこれでは他の植物より優秀すぎるのではないか。
そこで実に少しばかりの毒をいれておいた。
これなら種まで食べられることなく次の芽も出るでしょう。

こうして生まれたいのち、植物を、咲夜琉命はたいそう気に入り、
まるで植物の王のようだと讃えました。
沙羅世命は嬉しくなって、それを植物の名前としました。

その名は星の言葉でmolokheiyaというそうです。
生命の神に愛された、奇跡の子に祝福を―




エントリーNo.3
提供はym0gagisです

伝承とモロヘイヤを混ぜてみました。物語に近いかもしれません。
モロヘイヤ茂る静寂な森のお話です。

+ ...

緑生い茂る世界樹の森があった。
その森には万病に効く薬草が生えていた。
この森を治める女王はその薬草が好きだった。愛でていた。
森に住まう者たちは皆平等に薬草を分け合い暮らしていた。
怪我をしたとき、病気になったとき、飢えに苦しんだとき、女王は皆に薬草を与えていった。
森に住まう者たちは皆が女王と薬草を尊んでいた。
恨まず、僻まず、欲に溺れず、森に住まう者たちは平和に暮らしていた。

そんな中で森の外から一人の傷ついた若者が森に足を踏み入れた。
傷つき疲弊した若者を見つけた女王は彼に薬草を与えた。
みるみる若者は元気を取り戻し、女王に深く礼をした。
それから若者は街へ帰り薬草のことを街の人々に話した。
興味を持った人々は森へと訪れ次々に薬草を取っていった。
そのことを知った女王は森に住まう者たちのためにどうか全ての薬草を取らぬよう願い出た。
街の人々はそんな女王の言うことなど気にもせずに薬草を採り続けた。
女王は悲しみ世界樹の元へ行くと祈り、謳った。
するとたちまち茨が森を取り囲み、人々を絡め取り、森は誰も立ち入ることのできない茨の園へと姿を変えてしまった。
人々は森を恐れ近付くことをしなくなった。
森に再び静寂が戻った。

そして噂が広まった。
茨に閉ざされた森の中に万病に効く薬草があると。
幾人もの勇気ある者が森に挑んだが、茨を抜けることは相成らなかった。

そしてある時、薬草の噂を聞いた炎の国の王がその薬草を欲し、炎の軍勢を引き連れて森へと進行していった。
軍勢が進むほど森は炎に巻かれ燃え尽きていった。
女王の張り巡らした茨も炎の前にはただ焼かれていくのみだった。
焼き尽くされる森の惨状を見た女王は大いに悲しみ、炎の王これ以上の進軍をやめるよう立ちはだかった。
炎の王は言う。この森に生えている薬草を渡せばこれ以上進軍しないと。
女王は炎の王に薬草を渡した。しかし、炎の王の手に渡った薬草は王の出す炎のせいですぐに燃え尽きてしまう。
薬草を手に入れられない炎の王は怒り森の全てを焼き尽くそうとした。
女王はこの森を守るため炎の王の前に再び立ちはだかる。
この薬草は皆の宝物。例え炎の王の怒りがあろうともこの森を守ってみせる。
女王と炎の王は戦った。炎を前にしても決して屈せず女王は戦い続けた。
森は燃え尽きていく。
女王は炎に圧倒されながらも持てる力の全てをもって戦った。
二人の戦った跡には灰だけが残り、森は衰えていった。
茨を張れども炎が焼き尽くす。炎をかざそうとも茨が女王の盾となる。
終わりのない戦いが森を蹂躙した。
女王は叫んだ。私に森を守る力を。
炎の王は叫んだ。全てを燃やし尽くす炎よあれと。
三日三晩女王と炎の王は戦った。
森を守る戦いから森を焼き尽くす戦いになり、次第に二人は何のために戦っているのかわからなくなっていった。
その様子を見ていた世界樹は涙した。
一滴では足りぬ、滂沱にも等しい涙を流した。
その涙は雨となり森に降り注いだ。
その雨は炎を鎮め、まだ燃え残っていた森に恵みの雨となり降り注いだ。
女王と炎の王は激しい雨に打たれ我に返る。
炎の王は自らの命の炎が雨によって消え去るのを恐れ軍勢と共に森から逃げていった。
焼き尽くされた森を前にして女王は愕然となった。
自分が守ると言った森を自らが蹂躙してしまったことを大いに嘆いた。
森に住まう者たちは女王を責めたりなくなってしまった森の焼け跡を見て泣いたりした。
そして女王は世界樹に己の愚かさを詫びた。
ただ涙の雨に打たれ女王は世界樹と約束をする。
森を再生するために私の命をお使いください。
私の罪は決して許されるものではありません。
ですからせめてもの罪滅ぼしに、私の命を捧げます。
この命で失った森を蘇らせてみせます。
森に住まう者たちは悲しんだが、世界樹はその言葉を聞き入れ女王に魔法をかけた。
女王は光の粒となり雨と共に森に降り注いだ。
焼け跡となった森は少しずつ緑を取り戻し、薬草も生えてきた。
女王がその身を捧げ幾星霜。森は再び緑を取り戻した。
そして女王が愛でた薬草は瑞々しく世界樹の周りに芽吹いている。
願わくば愚かな争いが二度と起こらぬようにと祈りを込めて。




エントリーNo.4
提供はCotoriTrioです

創世、知楽もどきと月奏の少女の伝承、伝承から汲み上げられた実際のヒュムノスの想い、あたりで三段構造。
伝承詩と物語をテーマに、生きるということ、ニアイコール謳うということがモチーフです。
謳う理由云々言い出すと諸説ありそうですが、そこはブラッシュアップしていけたら嬉しいな、と。
Q. 第一弾とか第二弾とか意識してる? A. わりとしてます。

+ ...


『万劫の昔、一縷の詩が払暁を紡いだと謂ふ。』

1.
古伝に謂う。
初めに詩があった。
或いは詩と呼ぶのは正しくないのやも知れない。それは大小の波紋、波動、うねり、そして意志であった。
或いは其れを指して神と呼ぶことが出来る。

詩である意志は天地を為した。
風そよぎ鳥が踊る空を、雲のうすぎぬを、天体の巡りを。
四つ脚の獣の駆ける森を、鰭持つ魚の泳ぐ海を、そしてひとの愛かわす野を。
遍く命、質量、あえかな精神の詩を。

古伝に謂う。
世界は詩で出来ている。
なぜならば、万物は始りの詩を紡ぐひと重ねの声だから。
かつ分かれかつ交わる奔河の如き詩のひとしずく、連綿の系譜を受け繋ぐものなのだから。


2.
それはいつの頃だったのか、天神の末の子が少年の姿を纏い地上へ降り立ってすぐのこと。
とある山の中腹に、カドラという少女が暮らしていた。
カドラは滝の裏の岩屋に籠り、ひとり謳い続ける使命を担っていた。
カドラが謳えば、荒涼の大地はほのかにぬくもりを取り戻し、わずかに暖かな風が吹く。
けれどカドラの目に映るのは、いつでも冷たい岩肌と瀑布だけ。
誰にも届かない詩に、孤独な人生に、カドラは辟易していた。
代わり映えなく、ただ詩を紡ぎ続ける日々。
カドラの詩のおかげで多くの人々が救われるのだと、朝晩の食事を運ぶ老人が告げる謝辞も、カドラの心へは届かなかった。

ある夜、一人の少年がカドラの岩屋に忍び込んだ。
突然のことにカドラは驚き、ついで願った。
私を連れ去って欲しい、と。
少年は言った。
一夜だけ、魂となって飛ぼう。
その少年こそが神の子であった。

少年がカドラの耳朶に息を吹きかけると、カドラは肉体から抜け、空を翔ける翼を得た。
少年とカドラは夜のひやりと湿った空気に乗り、翼を連ねて方々へ飛んだ。
雲のうすぎぬを縫い、星の光を背に負って、黒く眠る森を、とろりと月明かりを舐める海を、そして様々な野を、村を、街を見た。

そのうちに、カドラはざわざわと魂の身に触れるさざめきに気が付いた。
それはあたたかく、つめたく、まだらに身をひたし揺する波だった。
カドラはその波を知っていた。なぜなら、それはカドラの詩とよく似たふるえだったのだから。

少年は小さな木の洞へカドラを導いた。そこには詩を紡ぐ青年がいた。
このひとは誰。カドラは呟いた。
少年は応えず、遠く離れた山村の外れの祠へカドラを導いた。そこには詩を紡ぐ娘がいた。
このひとは誰。カドラは呟いた。
少年は応えず、遥かな海岸の洞窟へカドラを導いた。そこには詩を紡ぐ子供がいた。
このひとは誰。カドラは呟いた。
わたしは詩、と子供が微笑んだ。
カドラはその答えを知っていた。なぜなら、それはカドラの詩そのものだったのだから。

カドラは魂を揺する波が強まるのを感じた。
これは何。カドラは呟いた。
少年は応えず、カドラの手を引いて虚空へと駆け上がった。
否、そこは虚空ではなかった。
天には風が、鳥が、雲が、星が、天体の巡りが、ひとつの詩を紡いでいた。
カドラは曠野を見降ろした。
否、そこは曠野ではなかった。
地には森が、海が、獣が、魚が、そしてひとの営みが、ひとつの詩を紡いでいた。
カドラは少年と繋ぎ合った手を握りしめた。
否、それは手ではなかった。
繋ぎ合ったぬくもりは遥か神代の詩であり、天の詩であり、地の詩であり、出会った全ての紡ぎ手の、命の、そして己の魂の詩であることを――唯一の詩を、連綿の系譜を、カドラは知った。
ごうごうと響く世界の詩が、その片鱗である魂を揺さぶっていた。
カドラは少年の手を離した。そうして、魂の身を掻き抱き、地上へと身を躍らせた。

カドラは岩屋の床を踏み立ちあがる。
夜の香りのしみ込んだ岩肌へ、カドラはまるで自分が根を張っているように感じた。
そっと腕をかざせば、湿った空気へと枝を、葉を伸ばして行くように。
指先で滔々と飛沫を散らす滝へ触れれば、その震えに詩の波が重なり、そして瀑布の向こうの世界へと、響き渡って行くように。
そうしてカドラは息を吸い込んだ。
水のベールの向こう側で曙が訪れ、金色の光とぬくみの水が溶け結い、世界を照らし出す。


3.
私の目に映るのは単色の孤独。
私の手に触れるのは拒絶の壁。
冷たい谺が私を脅かす
膝を抱えてちいさく蹲った。

――何を悲しむの。
独りであることを

――謳うことを忘れてしまったの。
もどかしい想いは今も私のなかに逆巻いている

誰にも届かない想い、溶け去っていく声
私が何故謳うのか、何のために謳うのか、誰のために謳うのか、その理由を忘れてしまった。


――わたしが貴方の詩を聴いている。
――それはわたしの詩そのものだから。

――そして耳を澄ませて。
――貴方の手が届かないところで、貴方と同じ詩を紡ぐひとが在る。

――どうか想いを閉じ込めないで。心のままに謳ってみせて。
――それはわたしの詩そのものだから。


優しい手が私の目を啓いた。


謳う理由はあまりにも自明だった
詩は初めからそこに在った。
謳うものから生まれ、謳うものと交わり、謳うものに抱かれて歩む、
それはひとつの命のありさまにして、何遍となく繰り返された営為。

それは、
生きるということ。息をするということ。
命を取り入れ、命と結び合うということ。
そして、その吐息にそっと旋律を乗せるということ。

謳うということ。なぜならば、それは喜びなのだから。
たとえ誰の耳にも届かなくても、同じ想いを持つ人がいる。
この想いは天地とあまねく命に繋がっている。
夜に望み潰え心折れても、朝には何度でも再び羽搏く

詩は波動にして粒子
指先に触れてぱちぱちとはぜる細かな泡
一気圧の風のざわめき
肉体を駆け抜ける振動の熱さ

繰り返される系譜が奏でる
一刻も不変でなく幾歳も普遍である営みを
そこにただ在る、ただひとつの想いを
大地に根を張り蒼天に枝葉を伸ばし、どこまでも続いて行く永遠の詩を

はるか古に、ただひとつの詩によって世界の夜明けは紡がれたという。
その詩を私は繋ぎたい。





エントリーNo.5
提供はikainoutaiteです

モローシャの物語です
え?ギャグですよ?

+ ...


昔々あるところにモロヘイヤ農家の夫婦がおりました
一生懸命モロヘイヤを育てては出荷しておりましたが
モロヘイヤの実には毒がある
という事実のせいで
モロヘイヤの販売はうまくいっておりませんでした
若葉は美味しいのにね

あるときモロヘイヤの一株が病気にかかり
それが畑のモロヘイヤに広がってしまいました
お金のない夫婦は病気を治してあげることができませんでした
その年のモロヘイヤたちは全滅してしまい
次の年からはモロヘイヤを育てることができなくなってしまいました

その年のことです
夫婦は一人の赤ん坊を授かりました
夫婦は娘にモローシャと名付け
貧しいながらも懸命に育てていくことを決意しました

やがてモローシャは慎ましやかな容姿
そして毒々しい性格に育ちました

仲の悪い二人のところへ行っては両方をけなし
喧嘩の場に行っては嫌味を言い
悪事を働いている人を罵倒して回りました

仲の悪い二人はこう言います
「あんたなんかよりモローシャの方がよっぽど嫌なやつよ」
「モローシャなんかよりあんたと遊んだ方がましだわ」
そして二人はモローシャから離れて行きました

喧嘩をしていた人はこう言います
「モローシャの前で喧嘩するのは面倒だな」
「というかもう喧嘩するのも面倒だな」
そしてその人たちは喧嘩を止めました

悪事を働いていた人はこう言いました
「本当のことを言われているだけなのに胸が痛い
 心が痛むことはもうやめよう」
そして悪事を止めました

モローシャの言葉は酷く辛辣で
そして怒ってしまうような言葉ばかり
誰もモローシャがしたことを褒めたりはしない

けれども気づいた
「モローシャがいなかったら
 私たち仲が悪いままだったわ」
「モローシャが来なかったら
 俺たち喧嘩したままだった」
「モローシャに言われなかったら
 僕は悪事を続けていただろう」

やがてモローシャは病にかかった
人に移る病に
誰もモローシャに近寄ろうとしなかった
両親以外は

貧しい夫婦に薬を工面してやる金があるはずもなく
モローシャは日に日に衰弱していった

けれどもモローシャは微笑んでいた
もう誰の傷つくことも言わなくていいのだと

ある日両親が薬を持ってきた
高価でとても手が出せないと言っていた薬だ
心ある方が恵んでくださったのだと言った
滋養のある食べ物もあった
モロヘイヤもあった
こんなものをどこでと尋ねると
やはり心ある方がとしか返ってはこなかった

やがて薬もかいなく
モローシャは力尽きる
泣いた
たくさんの人が泣いた
モローシャの本当の愛に気づいた人たちだった

「モロヘイヤの実には毒がある
 だけどモロヘイヤの若葉には愛があるのよ」

次の年
モローシャの家の畑にはたくさんのモロヘイヤが成った
たくさんの人がモロヘイヤを植えたからだ

どうかみんながモロヘイヤで幸せになりますように・・・




エントリーNo.6
提供はym0gagisです

苗を育てるラプランカとマオのお話です。
モロヘイヤ誕生までの物語調のお話です。
モロヘイヤ宿す大樹の伝承です。

+ ...
荒廃した大地にただ一人苗を育てる少女がいた。
彼女の名はラプランカ。
決して潤うことのない大地にめげずただ一つの希望を持ち苗を育て続ける。
ラプランカは皆が絶望に打ちひしがれる中でただ一人苗に水を与えていた。
ラプランカはいつもひもじい思いをしていた。
そして育てた苗を食べることを夢見ていた。
それが彼女の希望だった。
ラプランカの与える水を飲み苗は少しずつ成長していく。
苗はラプランカに食べられるという運命を背負いながらも懸命に大きくなろうとしていた。
やがて大きく生い茂っていく苗を見てラプランカは感嘆した。そして思った。
これだけ大きな苗を一人で食べきれるだろうか。
ラプランカは考えた。一人で食べるには苗は大きすぎる。
ならば多くの人に分け与えればよいのではないだろうか。
それならば大きく育った苗をもっともっと大きく育てよう。
ラプランカは前にも増して苗を育て続けた。
日照りの日自分が飲む分の水がなくなっても構わず水をやった。
水が足りないときは手伝いに奔走して苗のための水を得た。
ラプランカは水を飲まずに苗へと水をやった。
苗は少しばかりの水でも大いに喜びわずかながらにも成長した。

ある時ラプランカが水をやる姿を見た少年がいた。
彼の名をマオといった。
マオはラプランカに話した。
なぜこの苗を育てているのか。
ラプランカは答える。
この苗を大きく育ててみんなでおいしく食べるためだと。
それでは苗が可哀想じゃないかとマオは言う。
どうしても食べたければこの苗を大樹に育て、その果実を分けてもらえばいいとマオはラプランカに告げた。
ラプランカはそんなに大きく苗を育てられるのかと不安になったが、君が今まで傾けてきた熱意を捨てなければきっとそれは成し遂げられると励ました。

ラプランカとマオは二人で苗を育て始めた。
二人のやる水によって苗は前にも増して大きくなっていく。
ラプランカとマオの姿を見て嘲る者もいたが二人は構わず水を与え続けた。
苗は少しずつだが大きく成長していった。
そして苗は荒廃した大地の中苗は希望の象徴となって人々に希望を与えていった。
ラプランカとマオが育んだ苗を見てある子供が二人に問いかけた。
なんでこの苗を育てているの。
ラプランカは答える。
この苗を大樹に育てその果実をみんなで食べるためだと。
マオがそのためにはもっとたくさんの水がいると付け加えた。
子供は自分の飲む水を一口だけ我慢して苗に与えた。
ラプランカとマオは大いに喜んだ。大事な水をくれてありがとうと。
子供は嬉しくなって母親にそのことを告げた。
子供はそれから毎日水を与えに来た。
数日後、子供とその母親が苗の元にやってきた。
母親はラプランカに問うた。
この荒れた土地で本当に大樹が育つのかと。
ラプランカは答える。
この苗が育ったのは少しでも与えようという気持ちがあったからです。
ほんの少しでも与えるという気持ちが積み重なればきっと大樹はこの地に芽吹くでしょう。
母親は子供が水を与えるのを見て少しの間考えてから、一口にも満たない水を与えて帰って行った。
それでもラプランカとマオは嬉しかった。

次の日、水を与えた子供の両親が水を与えに来た。
微々たる量だったがラプランカとマオは大いに感謝した。
その日を境に代わる代わる人々が苗に水を与えに来た。
たくさんの水を与えられた苗はすくすくと成長しやがて大きな樹へと成長した。
その樹は水を与えてくれた人々皆に感謝したくさんの実を実らせた。
樹の感謝はそれでも足りず周りに幾重にも野菜を生み出した。
私をここまで育ててくれてありがとう、お礼に私に実った果実を差し上げましょう。
そして私の周りに生えた葉っぱを食べてください。あなた方への感謝の気持ちを詰め込んであります。
ラプランカとマオは喜び早速果実を収穫し、水を与えてくれた人々に配って歩いた。
誰もが驚きそして樹に感謝した。
再び樹の元へ帰ってきた二人は自分達がまだなにも食べていないことに気付いた。
ひもじい思いを堪えていたラプランカは我慢できなくなり樹の周りに生えた葉っぱを食べた。
その葉はとてもおいしくラプランカはみるみる元気を取り戻していった。
ラプランカは有無を言わさずマオにも葉っぱを与えた。
マオもラプランカと同じようにみるみる元気を取り戻していく。
二人は樹に感謝しこの野菜を果実と共に讃えた。
その野菜の名をモロヘイヤという。



エントリーNo.7 
nishi1018だす

物語系だと思いたいです!
モロヘイヤないと大変ー!みたいな感じが表現したかったんです
文章力なくてごめんなさい

+ ...
遠い昔に、世界を彷徨い歩きやっとの思いでこの地へたどり着いた民が居た。

はじめ、この地には沢山のモロヘイヤが在り、民はそれを神からの授かり物だと大切に扱った。
中にはそれ自体が神だと崇める者も居た。
それを体内へ吸収することで、民は命を取り留めていて、皆それに感謝の気持ちを持っていた。

しかし、時が経つにつれその気持ちは薄れていく。
沢山の量が生息していた為に。民は安心感を得てしまっていた。

在ることが当然となってしまった時、人はなにも感じなくなった。
当然のように大量に毟り取り、要らなくなった分は捨てはじめた。
中にはひどく嫌って、触りたがらない者も居た。
それを無理に食さなくとも、生きて行けると考えるようになり
とうとう民は皆、それへの感謝の気持ちを忘れてしまった。

短い時の間で村は大きく発展した。
しかし感謝を忘れた民は、発展の基が何であるかも忘れていた。
まず民は村を広げようと森を切り、周りの草木を焼いた。
過去に崇められた大切な緑もすべて。
村を広げた民は、大切なものを焼いたことにすら気がついていない。
家を増やし、ルールを作り、役割を決め畑を耕したが、その畑にモロヘイヤは植えられていない。
この頃発展に浮かれた民の目を盗み1人の少年が旅に出る。

そして突然、村は衰退した。身体が弱り、満足に動かせなくなった彼らには原因がさっぱり理解できなかった。
病が流行り、世話をする人の居なくなった家畜は次々と息絶え、作物も枯れてゆき、飢えは広まるばかり。
民は原因を理解できないまま、全員がここで飢えに苦しみ息絶えるのかと思い始めた。

そんな中、1人の男が村へ足を踏み入れる。
村の最盛期から衰退までの期間は、旅に出た少年を成長させるには十分な期間だった。
飢えに苦しみつつも民は、男の帰還に驚いた。そして男の持っている大量のモロヘイヤにも。

民はかつて言い聞かされていた古い昔の祖先の話を思い出して、恥ずかしくなる。
忘れてはいけないことを忘れていたのだと気がついた民は、そこから心を改めた。
男の持ち帰ったモロヘイヤを皆で食べて、自分たちを生かしてくれることへの感謝の気持ちを持って種を植えた。

村は再びにぎわいを取り戻した。
これからは感謝の気持ちを忘れぬよう生きて行くことを心に決めて。





エントリーNo.8
提供はym0gagisです

正統派伝承詩を目指して紡いでみました。
本当は怖いWas yea ra chs hymmnos mea.のつもりです。
ほんのりと愛も混ぜてみました。

+ ...
始めに詩があった。詩は神から賜った宝だった。
恵みをもたらし邪悪を退ける詩を人々は尊んだ。
そして神への感謝の気持ちを込め詩を捧げた。
詩を捧げるのはこの地に住むものの中で一番歌声の美しい少女。
少女は毎年一回詩を捧げに岩屋戸に籠もり、詩を紡いだ。
そうして少女の役割は脈々と受け継がれていき、やがて詩を担う一族が産まれ、詩の一族として奉られるようになった。
詩の一族は美しい歌声を持つ者を神に身を捧げるものとして選び詩を捧げさせた。
少女であったり少年であったり、詩を捧げる者は様々だったが、決まって詩を捧げた後は天に召されていった。
皆神がその歌声を愛しその身の元へ誘ったからであった。
詩を捧げることは何よりも名誉なことであったが同時に詩の一族はどうしようもない諦観を覚えていた。

そんな一族の中に詩が好きな少女がいた。
少女は一族の裏の面を知りながらもただ岩屋戸の歌い手になることを夢見て詩を謳っていた。
ある日のことだった。その日も少女は一人泉のほとりで詩を謳っていた。そこへ一人の少年が現れる。
少女は問う。あなたは誰。
少年は答える。いつも君の詩を聞いていたんだと。
少年は少女の詩が好きでこっそりと聞いていたのだった。
少女は恥ずかしがったが少年があまりに素直に詩を褒め称えるので嬉しくなってしまった。
ありがとうと少女は礼を言い、詩を謳って聞かせた。
少年はその美しい歌声に聴き入りながら少女に告げる。
詩を捧げるのは命を捧げることと同じなのになぜ歌い手になりたいのか。
少女は柔らかく微笑んで言った。
神に詩を捧げられるのは何よりも尊いことで私にとって幸せなことだと。
だから私は謳うのだと。
少年は岩屋戸の歌い手を選ぶ時期まで少女と共に過ごそうと決めた。
少女は泉のほとりで毎日謳う。少年は毎日泉のほとりまで少女に会いに行った。
歌い手を選ぶ時期に入ると少女は前にも増して熱心に詩を謳うようになった。
少年は毎日少女に会いに来ていたが徐々に少女が自分から関心をそらしていくのに気付いた。
そしてある時少年は少女に言った。
そんなに岩屋戸の歌い手になりたいのかと。
少女はもちろんだと言ってのける。
本当かどうかと再三にわたり少年は少女を問い詰めると、少女は急に泣き出した。
謝ろうとした少年だったが少女は泣きながら告げた。
岩屋戸の歌い手になりたいのは本当だ、けれどあなたのために歌えなくなるのが悲しいのだと。
いつの間にか少女は少年を好いていたのだった。
歌っていた歌も少年に向けての歌だったと。
少年は驚きそして少女を抱きしめた。
歌を贈ってくれてありがとう。もし歌い手になったら自由に歌ってほしい。
君が君の望むように詩を謳ってほしい。
そう少年は告げた。
少女はせめてあなたの心に残るように謳おうと答えた。

そして次代の歌い手が選ばれた。あの少女だった。
少女は死も恐れずに歴代の歌い手達が歌った岩屋戸へと籠もる。
程なくして詩が流れ始めた。詩の一族は少女が天に召されることを陰で悲しんでいた。
少女は謳う。
その詩は歴代の歌い手達の詩に引けを取らぬ美しいものであった。
しかし、その詩に込められた感情は他のどの代にも見られないものだった。
少女は一心に謳った。心を無に帰すかのように。
他になにも求めない、天に祈り捧げる終わりのない詩をただ謳い続けた。
少女の詩はやがて大きくなる。少女の詩は少女を飲み込み波動となった。
少女は謳う。
話すための言葉を捨てた。
今まで育んできた記憶を捨てた。
少女である姿を捨てた。
謳うことに使わない全てを捨てた。
名残惜しいのはあの少年のことだった。
波動の中で少女はきっと報われない愛を夢見ながらそれすら捨てた。
少女は詩になった。

少女の詩は周囲を巻き込み大きな渦を巻き、終わらない祝福をこの地に贈った。
そして少女の詩が途切れた後、一族は少女の骸を引き取りに岩屋戸を訪れた。
少年も一族に混じり彼女の元へと訪れる。
しかしそこに少女の姿はなかった。
初めからそこにいなかったかのように少女の姿は跡形もなく消えていた。
一族は混乱した。確かに岩屋戸で少女は謳っていたはずなのに、なぜ。
すると天の神が降り立ってきた。
神は告げる。
かの娘は己の全てを捨て詩となったのだ。
これほどの詩を紡いだ娘は我が誘う前に星に還った。
この地を祝福で満たした娘に敬意を表そう。
そうして天の神は戻っていった。
詩の一族は少女はこの地に還ったのだと神の言うとおりだと納得して帰って行った。
岩屋戸に立ち尽くす少年に温かいそよ風が吹き渡った。
少年は気付いた。
この風こそが少女が自分にもたらしたかったものだと。
少年は感じ取った。少女の息吹を。
少年は感じ取った。少女の温もりを。
少年は感じ取った。少女の願いを。
少女はこの地と共にある。
少年は少女のためにこの地で懸命に生きていくことを誓った。
生きよう、この命が還るまで。
彼女はいつまでも祝福してくれるのだから。




エントリーNo.9
提供はikainoutaiteです

本編になぞらえての伝承詩です
忘れられた神さまのこと
3は未プレイですが何か( ゚д゚)

+ ...


多くの痛みと悲しみを抱えて
姫は天空の宮を追われた

それから長い間姫は一人で泣いていた
誰も彼もが次第に姫を忘れて
とうとう姫は自分自身も自分のことを忘れてしまった

ある時詩が聞こえて
姫はゆっくりと顔を上げた
少女が少年を想って謳った詩は
黒きものを祓って
人々の心を繋げていった
その詩の欠片は世界へ広がる
ほんの小さな切欠

詩の欠片は次なる大地へ届く
姫はつられて歩いて行った
詩は隠された真実を暴き
やがて尊き証を作り
想いは実ることを示した
実りは海を越えて
新たな大地へ旅をする

実りを受け取った姫は
とうとう自分を思い出す
世界は詩 詩は私
謳って全てを再生する
実りは想い 想いは命
世界を巡る心の翼
愛すべき子供たちのために

私は詩になる

姫が天空の宮へ戻るのと同じくして
人々は地へと降り立った
大地を失った人々と
天空を追われた姫との
短い空の間の邂逅は終わり
詩は 想いは 命は
いついつまでも謳われていく




エントリーNo.10
提供はkizaminorityです

伝承詩を念頭にモロヘイヤとか二面性とかをつまみ食いしたつもりです。
物語が雑で申し訳ない…


+ ...
まだ神と人が近かった時代…
美しい詩声と碧色の瞳を持ち、少女の姿をした双子の女神がいた。
双子の姉神は愛を司り、生きとし生けるものへ愛に満ち溢れた詩を届けていた。
一方、妹神は何を司っているのか明らかにはされていなかったが、日々詩を謳い続ける姉神を誇りに思い、
姉神を支えていた。

空の晴れわたったある日、いつものように地上で詩を謳う姉神の許へひとりの青年が現れる。
世界に響き渡る詩声に魅せられ、その主を探して旅をしていたのだというのだ。
また、青年も詩を謳うのだという。
彼の詩を聴いた姉神はその詩声に魅了されてゆき、次第に姉神と青年は詩を重ね謳い、
心をも重ねてゆくようになったのだ。

二人が愛を育んでいることを知った妹神は、二人を大いに祝福し、
そしてまた姉神の更なる幸せを願っていた。


しかし、穏やかに日々が過ぎていたある日、人間と神が愛し合っていることを知った欲に塗れた人間
によって彼らは利用され命を落としてしまう。
愛の詩が途絶えた世界。愛を司りし神が消失した世界。其処に残されしは、双子の神の片割…妹神。
姉神によって抑制されていた妹神の力は溢れ出し、また人間への憎悪によりその力は強大であった。

そう…妹神が司りし力…其は毒である。

大地は涸れ、天は荒れ狂う。生きとし生けるものの苦しみが響く。

その時、地獄のような世界に小さな小さな少年と少女の詩声が囀った。
妹神は驚愕する。なぜなら、その詩は青年と姉神が謳っていた愛の詩であったからだ…
妹神が動揺していると、荒れ狂っていた天はやがて穏やかになり、
詩を謳う少年と少女の周りには美しい緑が芽吹き始めた。

それを見た妹神は青年と姉神の想いを感じ、己から溢れ出す毒を自ら抑え込み、
彼女もまた愛の詩を謳い始めたのだ…


その後、神と人は遠くなってしまった。しかし、双子の少女神と青年が残した愛の詩は今もなお、
世界に響き渡り続けている。



エントリーNo.11
提供はAinfelです

「モロヘイヤ」の葉についての「伝承詩」がテーマです。兄妹の別れと出会いの「永遠」の輪廻を描いた「童謡」になっています。悲しみのシーンで“別離の「地獄」”のイメージ、最後に“「愛」の再会”をイメージしています。
+ ...


昔々、あるところに兄妹が二人で樹の家に住んでおりました。
兄の名はモロ、妹の名はヘイヤと云います。
二人はとても仲良しで、出かける時は一緒、眠るのも一緒、食事をするのも一緒で、片時も離れようとはしませんでした。
ある日、ヘイヤは病気になり、寝込んでしまいました。モロは看病の為に森の泉へ水を汲みに行きました。
泉に着くと、そこには見知らぬ緑の髪の美しい女性が、そっと水をすくっては近くの土にかけているではありませんか。
なぜかと思い、モロが尋ねてみると、女性はこう答えます。
「貴方の樹果てる時、この種子が生かすでしょう」
モロはその言葉の意味が理解できませんでした。
ヘイヤの病気はなかなか治りません。
モロは、近くの村を回って薬を探しますが、貧しいモロに薬を分けてくれる家はありませんでした。
困って、ふと緑の髪の女性を思い出し、泉を訪れました。
女性は前と同じく土に水をかけていて、こちらに気づくと云いました。
「失う日は近い。貴方の樹果てる時、この種子が生かすでしょう」

ある日、ヘイヤは云いました。
「私は知っています。私の魂がこの世界を離れようとしていることを。貴方と離れなければならない日が、近づいていることを」
悲しみのあまり、ヘイヤは泣きました。その涙の一滴が土に落ちた瞬間、辺りは真っ暗になり、風が吹き荒れ、木々が次々と枯れていきました。
ヘイヤは涙を流し続けています。その涙がこぼれる度、大地は震え、共に泣くのです。
驚いたモロはヘイヤを呼びますが、全く聞こえていないようでした。
困ったモロは、壊れた森の中を走り、あの泉の元へやってきました。

そこには、緑の髪の女性はいませんでした。
モロはいよいよ困って、近くの石に座ります。そこで彼女が水をかけていた土の辺りが、ぼんやりと光っていることに気がつきました。
モロが急いでその土の近くに寄ると、光る土からゆっくりと、緑の葉が生えてきました。その葉は、とても良い香りがするので、ふとこれをヘイヤに食べさせれば、元に戻るのではと思いました。
急いでその葉を取り、ヘイヤの元に戻ります。

ヘイヤは変わらず泣き続けていましたが、こちらに気づくとぴたりと泣きやみました。モロが葉を食べるように云うと、ヘイヤは首を振りました。
「違います。貴方がそれを食べるのです。私はこの世界を去ります。それでも、貴方は生きねばならないのです」
そしてヘイヤはそのまま樹となり、決して口を開くことはなくなりました。
モロは悲しみました。大声で泣いた後、ヘイヤの言う通り、その葉を食べました。
すると、突然目の前に、緑の髪の女性が現れました。
「人は生きている限り、別れが訪れます。それでも、貴方は生きねばならないのです」
そして、女性はモロにあの葉の苗を渡します。
「大切な人の、温かな想い出を忘れてはなりません。その想いを、貴方の命の糧とし、貴方は生きねばならないのです」
モロはそれを受け取り、泉へ向かいました。近い柔らかな土にそれを植え、水をかけはじめます。
そうして、毎日、毎日水をかけるうちに、モロの髪は深い緑色になりました。モロの心は穏やかでした。
ある日、水をかけていると、少女が桶を持って近づいてきました。声をかけてきた少女の名は、ヘイヤといいます。





エントリーNo.12
提供はAinfelです

「伝承詩」らしい話を目指してみました(モロヘイヤは出ません)。
ありきたりなお話ですが、「踊りたくなる楽しい曲」→「地獄」→「自立」への道筋のストーリーです。
あえて後半を地獄にし、そこからまだ見ぬ希望へと流れを作ってみました。救われたかはわかりません。

+ ...
命削られ 民は生きる
汚れた大地に住まう民衆の心は枯れ、
誰もが救世主を待ち望んでいた

有る時賢者は云った、
「救世主が生まれた!我々を救う、唯一の命」
その噂は瞬く間に広がり、世界は喜びに包まれた

救世主は小さな町に生まれ、
やがて彼女は人々の信頼を得る、賢い女性へと成長した。

ある日、世界に向けて初めての演説を行う日が来た。
救いを求める民衆は、ようやく自分が幸せになる日が来るのだと喜んだ。

救世主は云った。
「私ひとりの力では、この世界を幸せにはできません。
皆さん一人一人の力が、必要なのです」

心枯れた民衆は、救世主が全て救ってくれるものと考えていた。
だからこそ、その言葉に落胆した。

なぜ、苦しみの中であがいている私達に、手を差し伸べてくれないのだ!
なぜ、救世主は私達を救えないのだ!
答えは一つ、救世主は偽物だったのだ!

民衆は救世主を引きずり降ろし、暗い谷の底に突き落としてしまった。
それと同時に、世界は暗闇に包まれた。

救世主は、太陽そのものだったのだ。
朽ち果てた大地を悲しみ、人として生まれてきた彼女。
民衆は自ら太陽を落としてしまった。


世界が終わろうとするその日、賢者は云った

「太陽を落とした貴方がたは罪深い。
しかし、もう一度、光は現れるだろう。

だがこちらへやってくることはない。

救われたくば、自らの足で立ちなさい。
一人で歩くことができなければ、力を合わせ、光を探しなさい」

そう云った賢者は、落とされた太陽の亡骸と共に天へと戻っていった。

賢者は、本当の救世主であった。
自分の使命を知り、陰ながら、人の幸せを祈り、
太陽を愛した青年であった。

民衆は、恐れながらも、一人、また一人と光のある方向へと歩いていく。
険しい道、どこまで続くかも、どこで終わるかも分からぬ道だ。
民衆は、希望を求め、自らの足で歩くことを始めた。










一つのフォームに入りきらなかったらその下に、その下に、と複数使って下さいな
更新次第中身は消しますので、それまでは文面を更新しない様にお願い致します








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最終更新:2013年09月28日 00:03