14 名前: 気象庁勤務(京都府) 2007/03/31(土) 19:00:09.45 ID:oMZilE1G0
それから数日が過ぎて、悩みは悩みのまま、一向に答えは見つからなかった。
見つからない、じゃないか……答えはとっくに出てる。ただ決心できないだけだ。
想いと思いは絡まりあって、そうして心は堂々巡り。
いつまでもこのままなんて精神衛生上よろしくないし、
もしかしたらその答えを俺自身も待ちわびていた気がする。
それでも、言ってしまうと、言葉にしてしまえばもう元の関係には戻れない。
……元の関係、か。
そんなの、もう戻れないじゃないか。
俺は女になって、でも“男”と“友”は男のまま。
それでも変わらない事が出来る人なんて、そんなのは本当に強い人たちだけじゃないのか。
いっそ、変わってしまおうか。
そんな風にも思う。
けれど、いざ言おうと思うと口は上手く動いてくれなくて。
チグハグでも今の関係が大事に思えて、もうこのまま何も無かった事に……
それでも体は女のままで、“男”のあの言葉はいつまでも頭の中で反芻される。
どうすれば、良いんだろう?
どうしたいと、思ってるんだろう?
もう自分の心さえ分からなくなってしまって。
そこで考えるのが面倒になって、姉貴と同じ布団で、今日も浅い眠りに身を委ねる。
見つからない、じゃないか……答えはとっくに出てる。ただ決心できないだけだ。
想いと思いは絡まりあって、そうして心は堂々巡り。
いつまでもこのままなんて精神衛生上よろしくないし、
もしかしたらその答えを俺自身も待ちわびていた気がする。
それでも、言ってしまうと、言葉にしてしまえばもう元の関係には戻れない。
……元の関係、か。
そんなの、もう戻れないじゃないか。
俺は女になって、でも“男”と“友”は男のまま。
それでも変わらない事が出来る人なんて、そんなのは本当に強い人たちだけじゃないのか。
いっそ、変わってしまおうか。
そんな風にも思う。
けれど、いざ言おうと思うと口は上手く動いてくれなくて。
チグハグでも今の関係が大事に思えて、もうこのまま何も無かった事に……
それでも体は女のままで、“男”のあの言葉はいつまでも頭の中で反芻される。
どうすれば、良いんだろう?
どうしたいと、思ってるんだろう?
もう自分の心さえ分からなくなってしまって。
そこで考えるのが面倒になって、姉貴と同じ布団で、今日も浅い眠りに身を委ねる。
50 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 06:09:38.13 ID:tIHibIXe0
俺「よっ!」
清潔で明るいけれど、どこか翳りのある部屋に場違いな程明るい声が響く。
男「ぁ、“俺”君。おはよう」
どこまでもリアルなのにどこか現実感に乏しい情景。
それと君付けで俺を呼ぶ“男”が、これは夢なんだと教えてくれる。
これは、俺と“男”がまだ小学生だった頃、俺たちが知り合ったばかりの頃の記憶だろうか?
俺「ほら、ギブス取れたんだ。もう病院に来なくても良くなった」
少し細くなった左腕を掲げて言う俺。
男「そっか、おめでとう。でも、ちょっと寂しいな……」
何これくらいで涙ぐんでるんだよ、“男”。
俺「来なくても良いだけで、来たらダメな訳じゃないだろ?」
“男”は意外そうに目を見開いてこちらを見つめる。
俺「“男”は泣き虫で寂しがりだからな、泣かないように毎日来てやるよ」
男「本当に?」
俺「その代わり、冷蔵庫のプリンは俺のな」
……我ながら食い意地の張った子供だったと思う。
それを聞いて“男”は嬉しそうに言った。
男「うん、じゃぁ冷蔵庫一杯にプリン用意して待ってるね」
話をする二人の子供達。
そうして時刻は面会時間の終わりに近づいてきて、
俺「わぁ! もうこんな時間だ、早く帰らないと!」
男「もう帰っちゃうの?」
俺「何泣きそうになってんだよ、また来るから」
それでも戻らない“男”の表情に、
俺「母さんがしてくれる魔法のおまじない、ほら、泣くなよ」
そう言って“男”の額にキスする子供の頃の俺。
そこで目が覚めた。
俺「よっ!」
清潔で明るいけれど、どこか翳りのある部屋に場違いな程明るい声が響く。
男「ぁ、“俺”君。おはよう」
どこまでもリアルなのにどこか現実感に乏しい情景。
それと君付けで俺を呼ぶ“男”が、これは夢なんだと教えてくれる。
これは、俺と“男”がまだ小学生だった頃、俺たちが知り合ったばかりの頃の記憶だろうか?
俺「ほら、ギブス取れたんだ。もう病院に来なくても良くなった」
少し細くなった左腕を掲げて言う俺。
男「そっか、おめでとう。でも、ちょっと寂しいな……」
何これくらいで涙ぐんでるんだよ、“男”。
俺「来なくても良いだけで、来たらダメな訳じゃないだろ?」
“男”は意外そうに目を見開いてこちらを見つめる。
俺「“男”は泣き虫で寂しがりだからな、泣かないように毎日来てやるよ」
男「本当に?」
俺「その代わり、冷蔵庫のプリンは俺のな」
……我ながら食い意地の張った子供だったと思う。
それを聞いて“男”は嬉しそうに言った。
男「うん、じゃぁ冷蔵庫一杯にプリン用意して待ってるね」
話をする二人の子供達。
そうして時刻は面会時間の終わりに近づいてきて、
俺「わぁ! もうこんな時間だ、早く帰らないと!」
男「もう帰っちゃうの?」
俺「何泣きそうになってんだよ、また来るから」
それでも戻らない“男”の表情に、
俺「母さんがしてくれる魔法のおまじない、ほら、泣くなよ」
そう言って“男”の額にキスする子供の頃の俺。
そこで目が覚めた。
51 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 06:10:01.48 ID:tIHibIXe0
俺「……子供に何教えてるんだろうな、お袋は」
そう呟く俺の顔は、鏡を見なくても真っ赤になってることが分かる。
にしても、子供ってのは意味も考えずにとんでもない事をしたりするもんだ。
でもあれは別にそう言う意味じゃないよな?
でも“男”にキス……いや、子供だったし男同士だったんだ、ノーカンだ、ノーカン。
若気の至りだ、仕方ない。
子供同士の戯れだ、忘れよう忘れよう……。
俺「……子供に何教えてるんだろうな、お袋は」
そう呟く俺の顔は、鏡を見なくても真っ赤になってることが分かる。
にしても、子供ってのは意味も考えずにとんでもない事をしたりするもんだ。
でもあれは別にそう言う意味じゃないよな?
でも“男”にキス……いや、子供だったし男同士だったんだ、ノーカンだ、ノーカン。
若気の至りだ、仕方ない。
子供同士の戯れだ、忘れよう忘れよう……。
忘れられる訳ないだろ……。
時計を見るとまだ朝の4時。
その後俺は2時間程布団の中で身悶えていた。
時計を見るとまだ朝の4時。
その後俺は2時間程布団の中で身悶えていた。
その日は休日、と言うか春休みに入っていたので朝からこの家に集まってまたぎゃーぎゃー騒ぐ予定だった。
……あんな夢見た直後に“男”と会えってのか?
居るなら本気で恨むぞ、神様……。
……あんな夢見た直後に“男”と会えってのか?
居るなら本気で恨むぞ、神様……。
52 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 06:10:22.56 ID:tIHibIXe0
それから“男”と“友”、それに“女”が来て、なんとか普段通りに振舞う。
さすがに“男”とは目を合わせられなかったけどな。
そうして昼前に女3人と俺で飯を作ることになって、
台所で騒いだり、“大阪”が作ったシューマイがロシアンルーレットだったりで午後。
することも無かったので全員でゲームをすることになった。
まずはトランプでババ抜き、ジジ抜き、大富豪にポーカー。
……ほとんど姉貴と“大阪”の一騎打ちだった。
そうして最後に何故か王様ゲーム。
姉貴も“大阪”も信用出来ないのでその他4人で親を回す。
ゲームの展開は無難な試合運びだった。
姉貴が王様になった時はキワドイのもあったけどな……。
そうして最後の最後、王様は姉貴。
頼むから変な事言うなよ……。
姉「じゃぁ3番が2番にキスしよう!」
2番は俺……もしかして狙われてた?
3番は……
男「あの、ほっぺたとかじゃダメですか?」
“男”か……。
姉「ダーメ、それじゃ面白くないじゃない」
それから“男”と“友”、それに“女”が来て、なんとか普段通りに振舞う。
さすがに“男”とは目を合わせられなかったけどな。
そうして昼前に女3人と俺で飯を作ることになって、
台所で騒いだり、“大阪”が作ったシューマイがロシアンルーレットだったりで午後。
することも無かったので全員でゲームをすることになった。
まずはトランプでババ抜き、ジジ抜き、大富豪にポーカー。
……ほとんど姉貴と“大阪”の一騎打ちだった。
そうして最後に何故か王様ゲーム。
姉貴も“大阪”も信用出来ないのでその他4人で親を回す。
ゲームの展開は無難な試合運びだった。
姉貴が王様になった時はキワドイのもあったけどな……。
そうして最後の最後、王様は姉貴。
頼むから変な事言うなよ……。
姉「じゃぁ3番が2番にキスしよう!」
2番は俺……もしかして狙われてた?
3番は……
男「あの、ほっぺたとかじゃダメですか?」
“男”か……。
姉「ダーメ、それじゃ面白くないじゃない」
69 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 14:57:08.40 ID:tIHibIXe0
“男”と向かい合って座る。
目が合ったのは今日始めてだ。
……ダメだ、今朝の夢の事を思い出してしまう。
男「“俺”、ごめん……」
変な顔でもしてたんだろうか、謝る“男”。
俺「謝んなよ、仕方ないし」
“男”は俺の方に手を置いて言う。
男「それじゃ、いくね」
俺「お、おおう」
ゆっくりと近づいてくる“男”の顔、俺は目を閉じる。
心臓の鼓動は際限無く高まり、唇が触れ合うまでの数秒が酷く長く感じられて。
まだなのか、もう胸が潰れてしまいそうで。
まだだめだ、きっと触れると後戻り出来なくなる。
まだ触れない、もう“男”はすぐそこのはずなのに。
なのに目は開けられない、そうするときっともう唇は重なっている。
でも開けずに居るのがもどかしい、あとどれだけ待てば良いんだろう。
そんな葛藤はけれど一瞬で終わった。
妨げたのは唇から伝う優しい暖かさと、そして柔らかさ。
触れ合ったのは一瞬、けれど確かに重なり合った一瞬。
離れる唇に未練が募り、僅かに目を開く。
目に映るのはゆっくりと離れていく、耳まで真っ赤になって何だか可愛い“男”の顔。
それに見入ってしまって、
男「これで、良いですか?」
その言葉に現実に引き戻される。
途端、顔が熱くなっていくのが分かる。
姉「うん、それで良いよ」
“男”と向かい合って座る。
目が合ったのは今日始めてだ。
……ダメだ、今朝の夢の事を思い出してしまう。
男「“俺”、ごめん……」
変な顔でもしてたんだろうか、謝る“男”。
俺「謝んなよ、仕方ないし」
“男”は俺の方に手を置いて言う。
男「それじゃ、いくね」
俺「お、おおう」
ゆっくりと近づいてくる“男”の顔、俺は目を閉じる。
心臓の鼓動は際限無く高まり、唇が触れ合うまでの数秒が酷く長く感じられて。
まだなのか、もう胸が潰れてしまいそうで。
まだだめだ、きっと触れると後戻り出来なくなる。
まだ触れない、もう“男”はすぐそこのはずなのに。
なのに目は開けられない、そうするときっともう唇は重なっている。
でも開けずに居るのがもどかしい、あとどれだけ待てば良いんだろう。
そんな葛藤はけれど一瞬で終わった。
妨げたのは唇から伝う優しい暖かさと、そして柔らかさ。
触れ合ったのは一瞬、けれど確かに重なり合った一瞬。
離れる唇に未練が募り、僅かに目を開く。
目に映るのはゆっくりと離れていく、耳まで真っ赤になって何だか可愛い“男”の顔。
それに見入ってしまって、
男「これで、良いですか?」
その言葉に現実に引き戻される。
途端、顔が熱くなっていくのが分かる。
姉「うん、それで良いよ」
70 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 14:57:39.70 ID:tIHibIXe0
なんとなく居心地が悪くて、目線を泳がせると時計が目に入った。
時刻は“男”の門限の10分前。
もうそんな時間なのか……。
少し早いが今日はそこで解散になった。
もう少し、ゆっくりしていけば良いのに。
そうは思っても引き止めることも出来ず、俺は三人を見送ろうと一緒に玄関へ向かう。
途中、“男”にしか聞こえないように呟いた。
俺「明日の午後2時、あの公園で」
“男”は僅かに頷いて、そのまま玄関へと到る。
俺「それじゃ、またな」
友「おう、またな」
男&女「またね」
そう言って歩き出す三人に手を振って、その姿が見えなくなった頃に家に入った。
なんとなく居心地が悪くて、目線を泳がせると時計が目に入った。
時刻は“男”の門限の10分前。
もうそんな時間なのか……。
少し早いが今日はそこで解散になった。
もう少し、ゆっくりしていけば良いのに。
そうは思っても引き止めることも出来ず、俺は三人を見送ろうと一緒に玄関へ向かう。
途中、“男”にしか聞こえないように呟いた。
俺「明日の午後2時、あの公園で」
“男”は僅かに頷いて、そのまま玄関へと到る。
俺「それじゃ、またな」
友「おう、またな」
男&女「またね」
そう言って歩き出す三人に手を振って、その姿が見えなくなった頃に家に入った。
姉「その顔。うん、ようやく決心したんだ」
玄関のドアを閉めるなりいきなり姉貴はそんなことを言った。
俺「姉貴がたきつけた……いや、後押ししてくれたんじゃないか」
姉「そうだけどね、うん。がんばりなよ」
俺「うん」
姉貴はそれだけ言って、自分の部屋に戻っていった。
ありがとな、姉貴。
心の中で呟いて、俺も自分の部屋に戻った。
玄関のドアを閉めるなりいきなり姉貴はそんなことを言った。
俺「姉貴がたきつけた……いや、後押ししてくれたんじゃないか」
姉「そうだけどね、うん。がんばりなよ」
俺「うん」
姉貴はそれだけ言って、自分の部屋に戻っていった。
ありがとな、姉貴。
心の中で呟いて、俺も自分の部屋に戻った。
71 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 14:57:58.85 ID:tIHibIXe0
そうして押入れの中の物を引きずり出して物色した。
俺が男だった頃の写真。
“男”と“友”と俺で、馬鹿して笑ってた頃の思い出の品。
半分以上がガラクタで、でもそのどれもが大切な宝物。
その一つ一つを見て、手にとって。
その時の光景を振り返る。
男だって、女になったって、俺は俺、“俺”なんだ。
これからの“男”との関係が今までと違ってしまったって、
それまで過ごしてきた月日は変わることはない。
そんな事も分からなくて悩んでて、今思うと馬鹿みたいで。
それでもそれすらも愛おしいくて。
そうしてまた、一つ一つ丁寧に押入れに直していった。
これでさよならなんじゃないぜ、男だった頃の俺。
お前は今だってお前で、俺はあの頃だって俺だった。
だから、これからもよろしくな。
自分自身に語りかけるのに言葉は要らない。
ただ心の中でそう呟く。
明日から、今までとは少し違った日々が待ってるんだろう。
これからも、その一つ一つを大切に心に刻んで。
忘れないように、なくさないように。
そして後悔なんてしないように、そう生きていける事を願って、
俺は今日も眠りにつく。
そうして押入れの中の物を引きずり出して物色した。
俺が男だった頃の写真。
“男”と“友”と俺で、馬鹿して笑ってた頃の思い出の品。
半分以上がガラクタで、でもそのどれもが大切な宝物。
その一つ一つを見て、手にとって。
その時の光景を振り返る。
男だって、女になったって、俺は俺、“俺”なんだ。
これからの“男”との関係が今までと違ってしまったって、
それまで過ごしてきた月日は変わることはない。
そんな事も分からなくて悩んでて、今思うと馬鹿みたいで。
それでもそれすらも愛おしいくて。
そうしてまた、一つ一つ丁寧に押入れに直していった。
これでさよならなんじゃないぜ、男だった頃の俺。
お前は今だってお前で、俺はあの頃だって俺だった。
だから、これからもよろしくな。
自分自身に語りかけるのに言葉は要らない。
ただ心の中でそう呟く。
明日から、今までとは少し違った日々が待ってるんだろう。
これからも、その一つ一つを大切に心に刻んで。
忘れないように、なくさないように。
そして後悔なんてしないように、そう生きていける事を願って、
俺は今日も眠りにつく。
72 名前: 空気コテ(京都府) 2007/04/01(日) 14:58:21.35 ID:tIHibIXe0
良く晴れた昼下がり、満開の桜に囲まれた公園を歩く。
舞い散る桜の花は雪のように柔らかで、どこか雪よりも幻想的だった。
時刻は午後二時。
約束の時間ぴったりに、その場所へと到着。
“男”がベンチから立ち上がる。
そうして俺はその側まで歩いて行って。
男「返事を、聞かせてくれますか?」
その問いに小さく頷いて、
「俺は、いいえ。私は、
良く晴れた昼下がり、満開の桜に囲まれた公園を歩く。
舞い散る桜の花は雪のように柔らかで、どこか雪よりも幻想的だった。
時刻は午後二時。
約束の時間ぴったりに、その場所へと到着。
“男”がベンチから立ち上がる。
そうして俺はその側まで歩いて行って。
男「返事を、聞かせてくれますか?」
その問いに小さく頷いて、
「俺は、いいえ。私は、
“男”さん、貴方のことが………
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