59 :愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/06(火) 19:46:31.22 ID:iLd/CmvrO
「先輩、おはようございます!」
登校途中、図書委員の後輩に声を掛けられる。
名前は………何て言ったか忘れた。何せ、昨日入ったばっかりの一年だ。顔と名前を覚えるのが苦手な自分が覚えていられるわけがない。
顔は辛うじて覚えていたが。
「おはよう。えぇっと…」
名前を思い出せず口を開けずにいると
「篠崎です。鈴原先輩」
と、フォローしてくれた。なかなか良い奴かもしれない。
「あぁ、篠崎君か。ごめんなさいね。私、人を覚えるのが苦手だから…」
「別に構わないですよ。昨日会ったばかりですし」
彼はクスクスと笑う。
何かおかしいところがあっただろうか?
「どうかしたの篠崎君?」
「いえ。先輩って勉強出来そうだし記憶力とかも良さそうだし、意外だと思って」
…あぁ、そういうことか。
「親にも言われるわ。確かに勉強も人よりは出来るし記憶力もあるんだけど………人を覚えるのだけは苦手なのよ」
彼はもう一度クスクス笑う。
「勉強出来るってのは否定しないんですね。それと多分、先輩は嘘がつけないタイプですね?」
「えぇ。つく必要も無いし」
「そういう話ではなく何ていうんでしょうか?…先輩は根っこが正直なんですよ」
―キーンコーンカーンコーン
予鈴が響く。
幸い、既に校門前。遅刻の心配は無い。
「それじゃあ先輩。また放課後」
そう言って篠崎は私とは反対の校舎に入っていった。
うちの学校は学年ごとに校舎が別れている。
「私も行くか…」
高校に入ってから出来た、初めての後輩は何か変な奴だった。
「先輩、おはようございます!」
登校途中、図書委員の後輩に声を掛けられる。
名前は………何て言ったか忘れた。何せ、昨日入ったばっかりの一年だ。顔と名前を覚えるのが苦手な自分が覚えていられるわけがない。
顔は辛うじて覚えていたが。
「おはよう。えぇっと…」
名前を思い出せず口を開けずにいると
「篠崎です。鈴原先輩」
と、フォローしてくれた。なかなか良い奴かもしれない。
「あぁ、篠崎君か。ごめんなさいね。私、人を覚えるのが苦手だから…」
「別に構わないですよ。昨日会ったばかりですし」
彼はクスクスと笑う。
何かおかしいところがあっただろうか?
「どうかしたの篠崎君?」
「いえ。先輩って勉強出来そうだし記憶力とかも良さそうだし、意外だと思って」
…あぁ、そういうことか。
「親にも言われるわ。確かに勉強も人よりは出来るし記憶力もあるんだけど………人を覚えるのだけは苦手なのよ」
彼はもう一度クスクス笑う。
「勉強出来るってのは否定しないんですね。それと多分、先輩は嘘がつけないタイプですね?」
「えぇ。つく必要も無いし」
「そういう話ではなく何ていうんでしょうか?…先輩は根っこが正直なんですよ」
―キーンコーンカーンコーン
予鈴が響く。
幸い、既に校門前。遅刻の心配は無い。
「それじゃあ先輩。また放課後」
そう言って篠崎は私とは反対の校舎に入っていった。
うちの学校は学年ごとに校舎が別れている。
「私も行くか…」
高校に入ってから出来た、初めての後輩は何か変な奴だった。
60 :愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/06(火) 19:58:35.73 ID:iLd/CmvrO
放課後、図書室に向かう。
途中、同学年の委員三人と遭遇。一緒に行くことにした。
三人は誰がカッコいいとか可愛いとか、そんな話をしている。
私はあまり興味が無いのだが
「ねぇねぇ、鈴原さん?一年の篠崎君ってカッコいいと思わない?」
などと話を振って来る物だから困る。
「篠崎君?…まぁ、ルックスは結構いいんじゃないかな」
「うわっ!マジですか?そんな褒められると照れますよ~♪」
と、何処にいたのか、ここで本人が登場。
嫌なタイミングで現れる奴だ。
「篠崎君。私は褒めたつもりはないぞ?事実を言っただけだ」
私の言葉にがっくりと肩を落とす。感情表現が豊かだな、なんて思っていると
「鈴原先輩!昨日、一目見たときに好きになりました。付き合って下さい!」
なんて愛の告白。
放課後の廊下は人で溢れていて私たちは注目の的になる。
急な展開に、一緒にいた三人も目を輝かせてこちらを見ている。
「はぁ…。篠崎君、君は本気かね?本気で私に惚れたのかい?」
私が問いかけると彼は
「はい。マジですよ!」
真剣な目で答える。
適当にあしらっても駄目だろう。
「まぁ、とりあえず図書室に行こう。ここは人が多すぎる」
私は図書室に向かって歩きだす。
その後を四人が付いてくるのだった。
放課後、図書室に向かう。
途中、同学年の委員三人と遭遇。一緒に行くことにした。
三人は誰がカッコいいとか可愛いとか、そんな話をしている。
私はあまり興味が無いのだが
「ねぇねぇ、鈴原さん?一年の篠崎君ってカッコいいと思わない?」
などと話を振って来る物だから困る。
「篠崎君?…まぁ、ルックスは結構いいんじゃないかな」
「うわっ!マジですか?そんな褒められると照れますよ~♪」
と、何処にいたのか、ここで本人が登場。
嫌なタイミングで現れる奴だ。
「篠崎君。私は褒めたつもりはないぞ?事実を言っただけだ」
私の言葉にがっくりと肩を落とす。感情表現が豊かだな、なんて思っていると
「鈴原先輩!昨日、一目見たときに好きになりました。付き合って下さい!」
なんて愛の告白。
放課後の廊下は人で溢れていて私たちは注目の的になる。
急な展開に、一緒にいた三人も目を輝かせてこちらを見ている。
「はぁ…。篠崎君、君は本気かね?本気で私に惚れたのかい?」
私が問いかけると彼は
「はい。マジですよ!」
真剣な目で答える。
適当にあしらっても駄目だろう。
「まぁ、とりあえず図書室に行こう。ここは人が多すぎる」
私は図書室に向かって歩きだす。
その後を四人が付いてくるのだった。
62 :愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/06(火) 20:19:22.00 ID:iLd/CmvrO
「鈴原副会長、どうしたんだい?図書委員の役員を全員(七人)と篠崎を集めて」
図書委員会会長に尋ねられる。
「皆さんを集めた理由ですが…」
みんなが息を呑む中、私は話を続ける。
「一年の篠崎君に告白されました」
『な、なんだってえぇぇっっっ!!!!!』
全員がハモる。ノリが良い奴らだ。
「ふむ。そうか…」
会長が呟き、頷き、そしてまた口を開く。
「鈴原…お前…篠崎には言ったのか?」
「いえ、まだです」
私と会長のやり取りの意味が分からず目をパチパチさせる篠崎。
「なぁ、篠崎?…これを見てくれ」
会長が胸元から一枚の写真を取り出す。そこに写っていたのは一人の男の子。
「この男の人がどうかしたんですか?」
と、予想通りの反応の篠崎。
「エスカレーターで上がってきた奴ならみんな知ってる話なんだが…こいつはな…」
「鈴原副会長、どうしたんだい?図書委員の役員を全員(七人)と篠崎を集めて」
図書委員会会長に尋ねられる。
「皆さんを集めた理由ですが…」
みんなが息を呑む中、私は話を続ける。
「一年の篠崎君に告白されました」
『な、なんだってえぇぇっっっ!!!!!』
全員がハモる。ノリが良い奴らだ。
「ふむ。そうか…」
会長が呟き、頷き、そしてまた口を開く。
「鈴原…お前…篠崎には言ったのか?」
「いえ、まだです」
私と会長のやり取りの意味が分からず目をパチパチさせる篠崎。
「なぁ、篠崎?…これを見てくれ」
会長が胸元から一枚の写真を取り出す。そこに写っていたのは一人の男の子。
「この男の人がどうかしたんですか?」
と、予想通りの反応の篠崎。
「エスカレーターで上がってきた奴ならみんな知ってる話なんだが…こいつはな…」
63 :愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/06(火) 20:31:07.12 ID:iLd/CmvrO
会長が言おうとするが
『中学二年の頃の鈴原さんだよ』
他の役員が先に言ってしまった。
「え?…ドッキリ?」
普通は信じられないだろう。
「いや、それは本当に私『だった』男、『鈴原雪男』なんだよ。篠崎君、君は『HKOK』という奇病を知っているかな?二千万人に一人くらいの確率で発症する病気みたいなものだ…」
篠崎は明るく笑って
「でも、どう見ても女の子じゃないですか?」
と言う。
「『体』はね。でも、私の心は男とも女とも言えない不安定なものなんだ。どういうことか分かる?」
首を横に振る。
分からないのは当たり前だ。
篠崎は篠崎であって、私ではない。
「私は、今の私を保つことで精一杯。男の私を抑えながら、女になりきれない私を保つことでね…」
「鈴原、辛そうだぞ。大丈夫か?」
会長に言われて気付く。
額からは汗が出て、息も荒い。
「会長、保健室で休んできます」
「あぁ、そうしろ」
その言葉を背に、『俺』は図書室から出る。
篠崎は口を開いたままで少しアホに見えた。
会長が言おうとするが
『中学二年の頃の鈴原さんだよ』
他の役員が先に言ってしまった。
「え?…ドッキリ?」
普通は信じられないだろう。
「いや、それは本当に私『だった』男、『鈴原雪男』なんだよ。篠崎君、君は『HKOK』という奇病を知っているかな?二千万人に一人くらいの確率で発症する病気みたいなものだ…」
篠崎は明るく笑って
「でも、どう見ても女の子じゃないですか?」
と言う。
「『体』はね。でも、私の心は男とも女とも言えない不安定なものなんだ。どういうことか分かる?」
首を横に振る。
分からないのは当たり前だ。
篠崎は篠崎であって、私ではない。
「私は、今の私を保つことで精一杯。男の私を抑えながら、女になりきれない私を保つことでね…」
「鈴原、辛そうだぞ。大丈夫か?」
会長に言われて気付く。
額からは汗が出て、息も荒い。
「会長、保健室で休んできます」
「あぁ、そうしろ」
その言葉を背に、『俺』は図書室から出る。
篠崎は口を開いたままで少しアホに見えた。