9 名前:愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/11(日) 16:55:54.88 ID:rARu5B0/O
一匹の猫がいる。
猫は待っている。
いや、待ち続けている。
思い出を忘れないように。
温もりを離さないように。
闇に溶け込むように、誰にも触れられないように生きてきた自分に気付いてくれた、ただ一人の少年を待っている。
そうして一年、また一年と過ぎ去っていった。
けれども、少年はやってこない。
毎日、この場所で遊んだ。
毎日、少年の話を聞いた。
毎日、膝に抱いてくれた。
気がつけば、また一年過ぎていた。
猫はそれでも少年を待っている。
だって少年は「ばいばい、また明日」って言ったんだから。
ここで待っていないと自分を見つけられないから。
そうして今日も日が暮れる。
猫はその場で丸まって寝る。
もう、何年も何年もそうしてきた。
でも、寝ている間は少年に会える。
夢の中で会えるから。
だけど、この日を最後に猫が夢から覚めることはなかった。
一匹の猫がいる。
猫は待っている。
いや、待ち続けている。
思い出を忘れないように。
温もりを離さないように。
闇に溶け込むように、誰にも触れられないように生きてきた自分に気付いてくれた、ただ一人の少年を待っている。
そうして一年、また一年と過ぎ去っていった。
けれども、少年はやってこない。
毎日、この場所で遊んだ。
毎日、少年の話を聞いた。
毎日、膝に抱いてくれた。
気がつけば、また一年過ぎていた。
猫はそれでも少年を待っている。
だって少年は「ばいばい、また明日」って言ったんだから。
ここで待っていないと自分を見つけられないから。
そうして今日も日が暮れる。
猫はその場で丸まって寝る。
もう、何年も何年もそうしてきた。
でも、寝ている間は少年に会える。
夢の中で会えるから。
だけど、この日を最後に猫が夢から覚めることはなかった。
10 名前:愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/11(日) 16:56:52.03 ID:rARu5B0/O
青年がいる。
青年は結婚を期に故郷に帰ることになった。
青年には故郷を離れている間、気掛かりなことがあった。
親友の猫のことだ。
「ばいばい、また明日」そう言ったきりで別れた、一匹の猫のことだ。
毎日、一緒に遊んだ。
毎日、話を聞いてくれた。
毎日、同じ場所で待っていてくれた。
青年は猫を置いていってしまったことが気掛かりだった。
青年は故郷に着くと真っ先に毎日猫と遊んだ場所に走った。
すぐに息が切れる。
それでも青年は走った。
そうして、辿り着いた場所に猫がいた。
最後に会ったときのように体を丸めて。
青年は自分が猫にあげた名前を呼ぶ。
しかし、返事はない。
青年は猫に触れる。
猫は既に冷たくなっていた。
青年は泣いた。
猫が、いや、親友が死んだことに。
泣き終えた青年は、親友を庭に埋めてやった。
「これからはいつも一緒だよ」
そう言って埋めてやった。
青年がいる。
青年は結婚を期に故郷に帰ることになった。
青年には故郷を離れている間、気掛かりなことがあった。
親友の猫のことだ。
「ばいばい、また明日」そう言ったきりで別れた、一匹の猫のことだ。
毎日、一緒に遊んだ。
毎日、話を聞いてくれた。
毎日、同じ場所で待っていてくれた。
青年は猫を置いていってしまったことが気掛かりだった。
青年は故郷に着くと真っ先に毎日猫と遊んだ場所に走った。
すぐに息が切れる。
それでも青年は走った。
そうして、辿り着いた場所に猫がいた。
最後に会ったときのように体を丸めて。
青年は自分が猫にあげた名前を呼ぶ。
しかし、返事はない。
青年は猫に触れる。
猫は既に冷たくなっていた。
青年は泣いた。
猫が、いや、親友が死んだことに。
泣き終えた青年は、親友を庭に埋めてやった。
「これからはいつも一緒だよ」
そう言って埋めてやった。
11 名前:愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/11(日) 16:57:33.28 ID:rARu5B0/O
猫は目を覚ました。
だけど思うように体を動かせなかった。
猫は思った。
自分の体では無いみたいだと。
声を出す。
出たのは泣き声。
まるで人間の赤子のような泣き声。
その声に気付いたのか、誰か近付いてくる。
「よしよし、どうしたんだい環?」
そう言って猫を抱き上げる誰か。
猫はその声に、その名前に覚えがあった。
少年だ。少年が自分にくれた名前で呼んでくれた。
猫は嬉しくて温かい気持ちで一杯になった。
「おっ?急に機嫌が良くなったな?」
少年が会いに来てくれた。
やっと、やっと来てくれたのだ。
しかし、すぐに眠気が襲ってきた。
猫はそれ以上起きていることが出来なかった。
猫は目を覚ました。
だけど思うように体を動かせなかった。
猫は思った。
自分の体では無いみたいだと。
声を出す。
出たのは泣き声。
まるで人間の赤子のような泣き声。
その声に気付いたのか、誰か近付いてくる。
「よしよし、どうしたんだい環?」
そう言って猫を抱き上げる誰か。
猫はその声に、その名前に覚えがあった。
少年だ。少年が自分にくれた名前で呼んでくれた。
猫は嬉しくて温かい気持ちで一杯になった。
「おっ?急に機嫌が良くなったな?」
少年が会いに来てくれた。
やっと、やっと来てくれたのだ。
しかし、すぐに眠気が襲ってきた。
猫はそれ以上起きていることが出来なかった。
12 名前:愛謝 ◆AwRoH5fkCI :2007/03/11(日) 16:58:34.41 ID:rARu5B0/O
猫を埋めた翌月、青年に子供が生まれた。
可愛い女の子だった。
初めて我が子を抱いたとき、青年は懐かしい温かさを感じた。
あの、親友の猫とよく似た温かさだった。
青年は思った。
猫が生まれ変わったんだと。
自分に、また会いに来てくれたんだと。
青年は少年のような瞳で娘を呼んだ。
「たま」
隣にいた妻が呆れたように笑う。
「自分の娘を猫にでもするんですか」と。
青年は構わず名前を呼ぶ。
「たま………いや、環」
そう呼ばれた娘は嬉しそうにキャッキャと声をあげている。
「環、これからはずっと一緒だよ」
そう言って青年は娘を抱きしめるのだった。
そして娘は青年の腕の中で、猫のように丸まって眠るのだった。
猫を埋めた翌月、青年に子供が生まれた。
可愛い女の子だった。
初めて我が子を抱いたとき、青年は懐かしい温かさを感じた。
あの、親友の猫とよく似た温かさだった。
青年は思った。
猫が生まれ変わったんだと。
自分に、また会いに来てくれたんだと。
青年は少年のような瞳で娘を呼んだ。
「たま」
隣にいた妻が呆れたように笑う。
「自分の娘を猫にでもするんですか」と。
青年は構わず名前を呼ぶ。
「たま………いや、環」
そう呼ばれた娘は嬉しそうにキャッキャと声をあげている。
「環、これからはずっと一緒だよ」
そう言って青年は娘を抱きしめるのだった。
そして娘は青年の腕の中で、猫のように丸まって眠るのだった。