45 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12:31:34.50 ID:2V4DaXEm0
「君は、今現在の自分の“名字”をしってるか?」
名字、そう言えばこの名前になってはや一ヶ月。自分の名字なんて考えたことなかった
「昔の名字……なわけないから、貴方の名字?」
「まさか」
一言で完全否定
ま、そうですよね。普通に
「病院生活、覚えてる?」
「ばかにしてるんですか?なにも忘れてないって言ったじゃないですか」
「ふぅん。ならいいけど」
人を小馬鹿にしたような台詞
「じゃ、これ読んでみなさい」
にやにやしながら手渡された一枚の紙
「これは?」
「まぁ読みなさいって」
どうやら住民票、らしい
「……この名字、院長先生の?」
そう、この紙に記されている名前は私が言ったその名前と、院長先生の、つまり病院名といっしょ
「どうして?」
「それくらいは自分で考えないと、っていいたところだが、まぁもう少ししたら話すさ」
「……いじわる」
「死にたがりやさんにはいい延命材料だと思わないか?」
いつまでもにやにやと唇の端を持ち上げ続ける彼
「……院長先生は悲しんでくれるんでしょう?一人でもいるなら死にたがりませんよ」
嘘だね。彼の口はわずかに動く
「そんな簡単に生きようと思えるくらいなら初めっから死ぬなんて言わないさ」
それは確かに、そうだと思う
自分の言葉が自分でも信じられないくらい、戯れ言、虚実だ
「というわけで死にたがりやさんのために更に薬を処方しないといけないね」
彼はまた、新しい紙を取り出した
「君は、今現在の自分の“名字”をしってるか?」
名字、そう言えばこの名前になってはや一ヶ月。自分の名字なんて考えたことなかった
「昔の名字……なわけないから、貴方の名字?」
「まさか」
一言で完全否定
ま、そうですよね。普通に
「病院生活、覚えてる?」
「ばかにしてるんですか?なにも忘れてないって言ったじゃないですか」
「ふぅん。ならいいけど」
人を小馬鹿にしたような台詞
「じゃ、これ読んでみなさい」
にやにやしながら手渡された一枚の紙
「これは?」
「まぁ読みなさいって」
どうやら住民票、らしい
「……この名字、院長先生の?」
そう、この紙に記されている名前は私が言ったその名前と、院長先生の、つまり病院名といっしょ
「どうして?」
「それくらいは自分で考えないと、っていいたところだが、まぁもう少ししたら話すさ」
「……いじわる」
「死にたがりやさんにはいい延命材料だと思わないか?」
いつまでもにやにやと唇の端を持ち上げ続ける彼
「……院長先生は悲しんでくれるんでしょう?一人でもいるなら死にたがりませんよ」
嘘だね。彼の口はわずかに動く
「そんな簡単に生きようと思えるくらいなら初めっから死ぬなんて言わないさ」
それは確かに、そうだと思う
自分の言葉が自分でも信じられないくらい、戯れ言、虚実だ
「というわけで死にたがりやさんのために更に薬を処方しないといけないね」
彼はまた、新しい紙を取り出した
46 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12:32:54.40 ID:2V4DaXEm0
「今度はなに?」
「君は自分から行動することを覚えた方がいい」
定型的な言葉にもイヤミに絡んでくる
「……読みますよぉ」
紙といっても数枚の束で、なにやら難しいことがぎっしりと書かれている
ただ、幾つかの文字を抜粋して読めば、この紙全てが私のことだとわかった
「君は不思議に思わなかったのか?」
読み馴れない大量の文章と格闘する私には答える余裕はない
そもそもこの質問はどの不思議のことを指しているかも分からないのでとりあえずは聞き流す
「ふー。ま、こっちで勝手に喋るけどね」
本気、真剣に紙を睨み続ける私の解答を待たずに彼は語りはじめた
「まず、君は交通事故に合ったわけだけど、どのくらいの怪我だったか知ってるかな」
ー私は知らない
「怪我そのものはそんなに酷くはなかったけど、幾つかの問題が合った」
ー…………
「その一つが、車との接触ではあり得ない外傷の数々。そして、戻らない意識」
ーこの紙はそれを告げるためにおよそ一ページを要している
「これはなにか今までの生活に大きな問題が合ったのではないかと、医者達は考えたそうだ」
どうやら、紙とにらめっこを続けるよりも、彼と話した方がより理解は深まるそうだ
「で、どうしたの?」
資料を机の上にバサと投げ出した私を見て、やれやれ、と首を小さく振り
散らばった紙を集めて、また茶封筒へと戻す
「君の正体はそこで全部分かってたってことさ」
「今度はなに?」
「君は自分から行動することを覚えた方がいい」
定型的な言葉にもイヤミに絡んでくる
「……読みますよぉ」
紙といっても数枚の束で、なにやら難しいことがぎっしりと書かれている
ただ、幾つかの文字を抜粋して読めば、この紙全てが私のことだとわかった
「君は不思議に思わなかったのか?」
読み馴れない大量の文章と格闘する私には答える余裕はない
そもそもこの質問はどの不思議のことを指しているかも分からないのでとりあえずは聞き流す
「ふー。ま、こっちで勝手に喋るけどね」
本気、真剣に紙を睨み続ける私の解答を待たずに彼は語りはじめた
「まず、君は交通事故に合ったわけだけど、どのくらいの怪我だったか知ってるかな」
ー私は知らない
「怪我そのものはそんなに酷くはなかったけど、幾つかの問題が合った」
ー…………
「その一つが、車との接触ではあり得ない外傷の数々。そして、戻らない意識」
ーこの紙はそれを告げるためにおよそ一ページを要している
「これはなにか今までの生活に大きな問題が合ったのではないかと、医者達は考えたそうだ」
どうやら、紙とにらめっこを続けるよりも、彼と話した方がより理解は深まるそうだ
「で、どうしたの?」
資料を机の上にバサと投げ出した私を見て、やれやれ、と首を小さく振り
散らばった紙を集めて、また茶封筒へと戻す
「君の正体はそこで全部分かってたってことさ」
衝撃の事実ではある
それでも、心を動かすほど、今の私にとっては大きい問題ではなかったケド
それでも、心を動かすほど、今の私にとっては大きい問題ではなかったケド
47 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12:34:21.35 ID:2V4DaXEm0
あんまり驚かないんだ、彼の目は多分そう言っている
「そこで、君のご両親から、院長先生は親権を譲り受けたわけだけど……」
ここで、ちらと私の顔色をみる
「別に……あんなやつら、もう私と関係ないんでしょ?それでいいです」
強がって、話を続けるように促すけれど、何処か寂しい
確かに院長先生が私の父親で、私を家族としてみてくれているのは嬉しい
でも、本当の親じゃなくって、本当の親は私を見捨てたことがよりはっきりとした、と言うのは心苦しい
「この話は、延命用処方箋にはならないから言いづらいけど『彼女が幸せなら別に私のことを知る必要もない』って」
この人は私の心を見抜いているのか、それとも、本当は鈍感なのか
「ま、君も事実を知ったんだ。お父さんといってあげたらきっと喜ぶと思うよ?」
「そう、ですか」
「まぁこの話は今度にするとして、続きにいくとしよう」
彼は、今度は私の顔も見ないで、答えも待たずに話を続けた
「君がなかなか目を覚まさない中で、今度は内面的な意味で新しい問題が出てきた」
「問題?」
「君は外見上は男だけど、男として育ってきたけれど、実際はどっちでもあったって話
君のお腹の傷は、半陰陽だった君を正式に女の子にするための手術ってこと」
「じゃあ、私は本当に、本当の本当に女で、男になるとか、戻るとかそういうことは」
「ない。まぁ君の心配事かは知らないけど、そのうちに赤ちゃんも産めるらしいさ」
「でも、どうして?」
「男として暮らしてきて、辛いことがあったから、女として新しい人生を歩ませてあげたい、とのことだ」
そうか、新しい人生を私は確かに歩いていたんだね
あんまり驚かないんだ、彼の目は多分そう言っている
「そこで、君のご両親から、院長先生は親権を譲り受けたわけだけど……」
ここで、ちらと私の顔色をみる
「別に……あんなやつら、もう私と関係ないんでしょ?それでいいです」
強がって、話を続けるように促すけれど、何処か寂しい
確かに院長先生が私の父親で、私を家族としてみてくれているのは嬉しい
でも、本当の親じゃなくって、本当の親は私を見捨てたことがよりはっきりとした、と言うのは心苦しい
「この話は、延命用処方箋にはならないから言いづらいけど『彼女が幸せなら別に私のことを知る必要もない』って」
この人は私の心を見抜いているのか、それとも、本当は鈍感なのか
「ま、君も事実を知ったんだ。お父さんといってあげたらきっと喜ぶと思うよ?」
「そう、ですか」
「まぁこの話は今度にするとして、続きにいくとしよう」
彼は、今度は私の顔も見ないで、答えも待たずに話を続けた
「君がなかなか目を覚まさない中で、今度は内面的な意味で新しい問題が出てきた」
「問題?」
「君は外見上は男だけど、男として育ってきたけれど、実際はどっちでもあったって話
君のお腹の傷は、半陰陽だった君を正式に女の子にするための手術ってこと」
「じゃあ、私は本当に、本当の本当に女で、男になるとか、戻るとかそういうことは」
「ない。まぁ君の心配事かは知らないけど、そのうちに赤ちゃんも産めるらしいさ」
「でも、どうして?」
「男として暮らしてきて、辛いことがあったから、女として新しい人生を歩ませてあげたい、とのことだ」
そうか、新しい人生を私は確かに歩いていたんだね
48 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12:37:28.87 ID:2V4DaXEm0
「でも、私の新しい人生も失敗しちゃったんだね」
本当に私は不幸な星の下に産まれたのかもしれない
「あーあ、もっと早く知ってれば、もっと楽しくすごせたのかもしれないのになぁ」
悔しさ、というよりも、あきらめ、かな?
涙は流れているけど、笑って、作り物じゃなくって心から湧いてくる笑顔
「ねぇ、こんなに汚れてるけどさ。もう一回新しく歩き出せると思う?」
彼の顔を見ても、どうもぼやけてる。それでも、笑っているのはわかる
あやふやな視界の中で、彼の手が近づいて、私の涙を拭う
「君は十分魅力的な女の子さ、いくらでもやり直しなんてできる」
「本当に?」
疑心暗鬼な私の性格でも?と聞きたくなるくらい暗いなぁ、私
そんな私を励ますためか、彼はたとえ話を始める
「人生って日記帳みたいだと思わない?」
どうだろう、もうすこし複雑な気が、する
「でも、私の新しい人生も失敗しちゃったんだね」
本当に私は不幸な星の下に産まれたのかもしれない
「あーあ、もっと早く知ってれば、もっと楽しくすごせたのかもしれないのになぁ」
悔しさ、というよりも、あきらめ、かな?
涙は流れているけど、笑って、作り物じゃなくって心から湧いてくる笑顔
「ねぇ、こんなに汚れてるけどさ。もう一回新しく歩き出せると思う?」
彼の顔を見ても、どうもぼやけてる。それでも、笑っているのはわかる
あやふやな視界の中で、彼の手が近づいて、私の涙を拭う
「君は十分魅力的な女の子さ、いくらでもやり直しなんてできる」
「本当に?」
疑心暗鬼な私の性格でも?と聞きたくなるくらい暗いなぁ、私
そんな私を励ますためか、彼はたとえ話を始める
「人生って日記帳みたいだと思わない?」
どうだろう、もうすこし複雑な気が、する
49 : 魔法少女(アラバマ州):2007/04/03(火) 12:39:35.70 ID:2V4DaXEm0
彼は両手で、長方形を作る
「毎日、毎日書いて、記録に残す。それが過去」
空気しかない、親指と人差し指で形作られた四角
「嫌なことも沢山ある。それが続く月もあるかもしれないね」
その何も無い空間を彼はつかんだ
「でも、さ」
彼は私の日記を破く、破いていく
「嫌なら、破けるし、新しい日記帳にかえたっていいじゃない?」
細かくビリビリに破って、ばっと宙へとばらまく
ひらひらと舞う、破片は一枚残らず塵と消える
「もし良かったら、俺が新しい日記をプレゼントしよう」
私に向かって伸ばされた手、その手には白い紙が握られている
「さっき君に告白されたように思うけど、アレは君の本心として受け取っていい?」
渡された紙には、彼の名前と私の名前、そして印鑑
「これって……」
「そうそう、君の新しい日記帳の初めのページにこう書いてほしいんだ」
彼は両手で、長方形を作る
「毎日、毎日書いて、記録に残す。それが過去」
空気しかない、親指と人差し指で形作られた四角
「嫌なことも沢山ある。それが続く月もあるかもしれないね」
その何も無い空間を彼はつかんだ
「でも、さ」
彼は私の日記を破く、破いていく
「嫌なら、破けるし、新しい日記帳にかえたっていいじゃない?」
細かくビリビリに破って、ばっと宙へとばらまく
ひらひらと舞う、破片は一枚残らず塵と消える
「もし良かったら、俺が新しい日記をプレゼントしよう」
私に向かって伸ばされた手、その手には白い紙が握られている
「さっき君に告白されたように思うけど、アレは君の本心として受け取っていい?」
渡された紙には、彼の名前と私の名前、そして印鑑
「これって……」
「そうそう、君の新しい日記帳の初めのページにこう書いてほしいんだ」
『『嫌なこともあったけれど、私は“彼”といっしょに歩いて生きます』』
こんな私で良かったら
「本当に、本当に……私でいいの?」
私は初めてキスをした
今までと違って、彼をしっかりとうけとめて
今までと違って、彼をしっかりとうけとめて
終わり