8 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 17:29:05.56 ID:pgCeTRLk0
絶大な力を持った王のあとは大体すぐに滅びゆくもの
それでも、何とか平和を保つことができたのも、世が平和だったから
平和と言っても、一部がにぎわうだけで、大多数は圧政に苦しんでいたりもする
絶大な力を持った王のあとは大体すぐに滅びゆくもの
それでも、何とか平和を保つことができたのも、世が平和だったから
平和と言っても、一部がにぎわうだけで、大多数は圧政に苦しんでいたりもする
そんな世界で、若くして両親と死別した新しい王様の話
ガーン、ガーン、ガーン
6時を告げる、大きな鐘の音。この時計台が、ある王国の真ん中にある
先代が立てた街のシンボルとして、今でも多くの人に愛されている……と思う
「ふぁぁ……」
この音で目を覚ますのが、年若い王の日課である
「お食事の用意ができまし、た……?」
目を覚ましたばかリの、まだ青年には届かない少年を食卓につかせるのもいつも通りだ
ただ、今日は少しばかり勝手が違った
「んー、どうした?私の顔に何かついているのか?」
言葉につまり呆然と立ち尽くす男を見て、王は何がおかしいのか分からず、だんだんと機嫌が悪くなる
「はやく言わんか!それともこの城から出て行きたいのか!」
一人の人間の職を本人のわがままで奪う、この国で“王”という権限はそれほどまでに強い
いや、相手は使用人である、という意味では当たり前のことではあるが
6時を告げる、大きな鐘の音。この時計台が、ある王国の真ん中にある
先代が立てた街のシンボルとして、今でも多くの人に愛されている……と思う
「ふぁぁ……」
この音で目を覚ますのが、年若い王の日課である
「お食事の用意ができまし、た……?」
目を覚ましたばかリの、まだ青年には届かない少年を食卓につかせるのもいつも通りだ
ただ、今日は少しばかり勝手が違った
「んー、どうした?私の顔に何かついているのか?」
言葉につまり呆然と立ち尽くす男を見て、王は何がおかしいのか分からず、だんだんと機嫌が悪くなる
「はやく言わんか!それともこの城から出て行きたいのか!」
一人の人間の職を本人のわがままで奪う、この国で“王”という権限はそれほどまでに強い
いや、相手は使用人である、という意味では当たり前のことではあるが
9 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 17:31:49.21 ID:pgCeTRLk0
「失礼ですが、貴方はどなた様でしょうか」
「お前は仕える主の顔も知らぬのか?それとも私の顔はそんなに覚えにくいのか?」
イライラとした表情が、文字通りの顔だけでなく、発言、言葉一つ一つに現れている
「その首に乗っているものは藁か、それともカボチャか!インコの方がまだ覚えがいいぞ!」
意味も分からず、哀れに、延々とののしられる男は、幸いそれなりに賢かった
「(王の寝室に寝ておられるのだから、それなりの立場におられる方だろう。それならば丁重に扱うべきが礼儀。)初めにも申し上げましたが、食事の準備ができましたので、お早めにお願いいたします」
「わかった、わかった。着替えたらすぐに向かうから、とっとと下がれ」
「それでは失礼します」
キィィ、と金具はだけが擦れ、扉はほとんど音を立てずに閉まる
いつもと同じように音がならないよう、ゆっくりと閉じていったのを見て、ほんの少しだけ機嫌を直した王
ふぁぁと再度あくびと伸びをすると、いつものように鏡へ向かい鏡を見て絶叫する
「失礼ですが、貴方はどなた様でしょうか」
「お前は仕える主の顔も知らぬのか?それとも私の顔はそんなに覚えにくいのか?」
イライラとした表情が、文字通りの顔だけでなく、発言、言葉一つ一つに現れている
「その首に乗っているものは藁か、それともカボチャか!インコの方がまだ覚えがいいぞ!」
意味も分からず、哀れに、延々とののしられる男は、幸いそれなりに賢かった
「(王の寝室に寝ておられるのだから、それなりの立場におられる方だろう。それならば丁重に扱うべきが礼儀。)初めにも申し上げましたが、食事の準備ができましたので、お早めにお願いいたします」
「わかった、わかった。着替えたらすぐに向かうから、とっとと下がれ」
「それでは失礼します」
キィィ、と金具はだけが擦れ、扉はほとんど音を立てずに閉まる
いつもと同じように音がならないよう、ゆっくりと閉じていったのを見て、ほんの少しだけ機嫌を直した王
ふぁぁと再度あくびと伸びをすると、いつものように鏡へ向かい鏡を見て絶叫する
「あれ?私の髪の毛、こんなには長くなかったはずじゃ……」
いや、絶叫というには遠く、思いのほか冷静であった
10 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 17:34:16.46 ID:pgCeTRLk0
「おい、朝起きたらこうなっていたのだが、お前は何かしらぬか?」
王の朝食は、むやみやたらにでかい食事の間、ではなく、いかにもこじんまりとした私生活の場に運ばれる
そこには人間が多くいるわけでなく、給仕が部屋の前までで帰ってしまえば、常、王の最も信頼する人間、ただ一人しかいない
その唯一の男に王は聞いた
「私にはとても想像がつきません。そんなことより、これからの王の不在をどうにかしないといけないことで頭が一杯です」
若い背筋の伸びた長身の、といっても少女になる前の王よりも4つか5つほどしか年の変わらない兄弟のいなかった王が兄のように慕ってきた男
言葉の一つ一つはいかにも丁寧だが、他の家臣とはどこか違う
唇の端を持ち上げながら大げさに頭を抱える仕草、態度はとても敬っているようには見えない
「お前は私を馬鹿にしているのか?そんなことどうでもいいではないか」
「いえいえ、これは重大なことですよ?もし早くあなたを元に戻せなければ世間は混乱するに決まっているでしょう」
「むぅ……。それじゃ、私の変化についてお前は何か心当たりがあるというのか?」
「いいえ、全く。まぁこれも逆に考えてみたらそうわるいことでもないでしょう?」
「逆?」
「王、としてあなたは顔が知れ渡りすぎている。でも今のあなたはどう見ても以前の王とは全く別人です」
「つまり?」
「これを機に街へ遊びに行くとか、そう言ったこともできるじゃないですか」
「おい、朝起きたらこうなっていたのだが、お前は何かしらぬか?」
王の朝食は、むやみやたらにでかい食事の間、ではなく、いかにもこじんまりとした私生活の場に運ばれる
そこには人間が多くいるわけでなく、給仕が部屋の前までで帰ってしまえば、常、王の最も信頼する人間、ただ一人しかいない
その唯一の男に王は聞いた
「私にはとても想像がつきません。そんなことより、これからの王の不在をどうにかしないといけないことで頭が一杯です」
若い背筋の伸びた長身の、といっても少女になる前の王よりも4つか5つほどしか年の変わらない兄弟のいなかった王が兄のように慕ってきた男
言葉の一つ一つはいかにも丁寧だが、他の家臣とはどこか違う
唇の端を持ち上げながら大げさに頭を抱える仕草、態度はとても敬っているようには見えない
「お前は私を馬鹿にしているのか?そんなことどうでもいいではないか」
「いえいえ、これは重大なことですよ?もし早くあなたを元に戻せなければ世間は混乱するに決まっているでしょう」
「むぅ……。それじゃ、私の変化についてお前は何か心当たりがあるというのか?」
「いいえ、全く。まぁこれも逆に考えてみたらそうわるいことでもないでしょう?」
「逆?」
「王、としてあなたは顔が知れ渡りすぎている。でも今のあなたはどう見ても以前の王とは全く別人です」
「つまり?」
「これを機に街へ遊びに行くとか、そう言ったこともできるじゃないですか」
11 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 17:36:33.37 ID:pgCeTRLk0
ここまで言って、男ははっと気がつく
目の前の少女の目がきらりと光った、男にはそう見えた
「それは名案だな」
笑顔。満面の、笑み。不安、ものすごい不吉な予想が頭をよぎる
「あの、王様。これはあくまで例えで……!」
予想は、確実に現実となる、そう判断した男は懸命に手を伸ばした
ただ、ソレよりも王の動きの方が速かった
「わはははは、さらばじゃぁ……!」
窓をピシャンと空けて、外へ駆け出す
王の部屋が二階であったなら、あんなことを口にしなければ、こんなことにはならなかったのに
様々な思念が駆け巡る
「……貴方も、まさか“王”を名乗るわけにはいかないでしょう!」
そう、すこしでも王の気を引いて、追いかけねば
窓の外へ向かって大声で叫ぶ
「ティアナ!母上の名前ならよかろう!」
男の思惑などまったく知り得ないうら若き乙女
後ろを振り返り模せずに、そう言い放って、いつのまにか城壁の向こうへと消えていく
「どうして、法律で王の名前はつけられないというのに、王妃の名前は赦されるんだ……」
元気に走っていった王の後ろ姿を、とても困った風に、それでも少し嬉しそうに男は呟いた
ここまで言って、男ははっと気がつく
目の前の少女の目がきらりと光った、男にはそう見えた
「それは名案だな」
笑顔。満面の、笑み。不安、ものすごい不吉な予想が頭をよぎる
「あの、王様。これはあくまで例えで……!」
予想は、確実に現実となる、そう判断した男は懸命に手を伸ばした
ただ、ソレよりも王の動きの方が速かった
「わはははは、さらばじゃぁ……!」
窓をピシャンと空けて、外へ駆け出す
王の部屋が二階であったなら、あんなことを口にしなければ、こんなことにはならなかったのに
様々な思念が駆け巡る
「……貴方も、まさか“王”を名乗るわけにはいかないでしょう!」
そう、すこしでも王の気を引いて、追いかけねば
窓の外へ向かって大声で叫ぶ
「ティアナ!母上の名前ならよかろう!」
男の思惑などまったく知り得ないうら若き乙女
後ろを振り返り模せずに、そう言い放って、いつのまにか城壁の向こうへと消えていく
「どうして、法律で王の名前はつけられないというのに、王妃の名前は赦されるんだ……」
元気に走っていった王の後ろ姿を、とても困った風に、それでも少し嬉しそうに男は呟いた
12 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 17:41:15.85 ID:pgCeTRLk0
~城外~
~城外~
城の外はなかなかににぎわっている
仮にも城下町、そこに、貧しきは存在せず、近づくことは赦されず
そのかわりそこそこ程度の高い人間ならば、自由に行き来することのできる王国の表
「ふぅ、ここへくるのも久々だな」
活気溢れる表通りの市場
季節の果物が、陸続きであるにも関わらず、新鮮な魚が、そして肉が延々と、道続く限り並ぶ
「うぐぅ……美味しそうなのにぃ……」
王とはいえ、買い物に金が必要なことくらい常識として知っている
今現在の自分の立場上、勝手に持って行くわけにもいかないことも知っている
……そして、一番の問題は朝食をきちんと食べなかったことだということも知っている
王の現在の所有物は、前髪が目に被らぬよう男につけてもらった髪留めと服のみ
そして服も、急いで、その場の勢いで城を出てきたしまったため、寝間着と、そののうえに羽織った上着だけ
昔、誕生日のお祝いと、器用ではなかった母親が丁寧に作ってくれた上着
お世辞にも上品とはいえず、上辺だけで見れば、ここら下々の人間と似たような服だが
遺品であり、大切な思い出であり、なにより王族二関係があるとはバレず、そして丈夫だ
「あいつの言う通り、普段からこれを着てすごさずに正解だったな」
だらしなく涎を垂らした王の、目の前にちらつく、この国の庶民の食べ物の代名詞
パンに焼いた肉と野菜を挟んだだけの簡単な料理であるが故の功績である
「くそぅ……どうして私はお金を持っていないのじゃ……」
空腹時にはいささか刺激が強過ぎるこの匂いを背に、王はまた、とぼとぼと歩き出した
仮にも城下町、そこに、貧しきは存在せず、近づくことは赦されず
そのかわりそこそこ程度の高い人間ならば、自由に行き来することのできる王国の表
「ふぅ、ここへくるのも久々だな」
活気溢れる表通りの市場
季節の果物が、陸続きであるにも関わらず、新鮮な魚が、そして肉が延々と、道続く限り並ぶ
「うぐぅ……美味しそうなのにぃ……」
王とはいえ、買い物に金が必要なことくらい常識として知っている
今現在の自分の立場上、勝手に持って行くわけにもいかないことも知っている
……そして、一番の問題は朝食をきちんと食べなかったことだということも知っている
王の現在の所有物は、前髪が目に被らぬよう男につけてもらった髪留めと服のみ
そして服も、急いで、その場の勢いで城を出てきたしまったため、寝間着と、そののうえに羽織った上着だけ
昔、誕生日のお祝いと、器用ではなかった母親が丁寧に作ってくれた上着
お世辞にも上品とはいえず、上辺だけで見れば、ここら下々の人間と似たような服だが
遺品であり、大切な思い出であり、なにより王族二関係があるとはバレず、そして丈夫だ
「あいつの言う通り、普段からこれを着てすごさずに正解だったな」
だらしなく涎を垂らした王の、目の前にちらつく、この国の庶民の食べ物の代名詞
パンに焼いた肉と野菜を挟んだだけの簡単な料理であるが故の功績である
「くそぅ……どうして私はお金を持っていないのじゃ……」
空腹時にはいささか刺激が強過ぎるこの匂いを背に、王はまた、とぼとぼと歩き出した
26 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 21:19:18.70 ID:pgCeTRLk0
「お嬢ちゃん、腹ぁ空いてんのかい?」
みてくれ、危ないオヤジ
筋肉隆々でもっさりした髭、微妙に張った腹、短い足
左手には酒、全体的にごわごわしていそうな体毛、怪しくない場所を探す方が難しい
「お前のような下賎な物に付き合っている暇はない」
王は一蹴する。痛い目に遭うかもしれない、一般人なら考えそうなそんなことはおかまいなしに、横を通っていく
「フン、見た感じそれほど貧乏ってわけでもなさそうだが」
荒くれは一人ではない。幾人もの視線が、道を歩く間に降り注ぐ
「おい!お前らはこんな早くから酒に溺れているのか?少しは働いたらどうだ」
にやにやと笑う男ども
「そいつぁそうだなぁ、嬢ちゃんこっち向けや」
ゴキュッゴキュッと酒を飲み干し、空になった空き瓶を丁度男の方を向いた少女目掛けて投げつける
ビンは頭のほんの少し左を通り、後ろでおおきな音を立ててくだけちる
「ゲハハハハ!寸とも動かんとは度胸あるじゃねぇか!それともチビって動けねぇか?」
とたんわき上がる下品な笑い
口からはつばが飛び、酒の匂いがより強くなる
「お嬢ちゃん、腹ぁ空いてんのかい?」
みてくれ、危ないオヤジ
筋肉隆々でもっさりした髭、微妙に張った腹、短い足
左手には酒、全体的にごわごわしていそうな体毛、怪しくない場所を探す方が難しい
「お前のような下賎な物に付き合っている暇はない」
王は一蹴する。痛い目に遭うかもしれない、一般人なら考えそうなそんなことはおかまいなしに、横を通っていく
「フン、見た感じそれほど貧乏ってわけでもなさそうだが」
荒くれは一人ではない。幾人もの視線が、道を歩く間に降り注ぐ
「おい!お前らはこんな早くから酒に溺れているのか?少しは働いたらどうだ」
にやにやと笑う男ども
「そいつぁそうだなぁ、嬢ちゃんこっち向けや」
ゴキュッゴキュッと酒を飲み干し、空になった空き瓶を丁度男の方を向いた少女目掛けて投げつける
ビンは頭のほんの少し左を通り、後ろでおおきな音を立ててくだけちる
「ゲハハハハ!寸とも動かんとは度胸あるじゃねぇか!それともチビって動けねぇか?」
とたんわき上がる下品な笑い
口からはつばが飛び、酒の匂いがより強くなる
27 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 21:20:26.68 ID:pgCeTRLk0
ゴロツキのリーダーなのか、男は新しい酒をもって来させると、コルクを噛み、思い切り引き抜く
「酒、飲んだことあるか?」
「あるわけなかろう」
少し声の震えたその答えに、また周囲で笑いが巻き起こる
男はたってそばにより、頭の上で、酒瓶を逆さにした
髪を、頭を、顔を、そして上着をつたって、体中が酒にまみれる
「どうだいお嬢ちゃん。初めての酒の味は!?」
少女の目に涙が浮かぶ
「お、お、お、!悔しいか?悔しいのか!?」
ギャラリーはよりいっそう、酒でずぶ濡れた少女をはやし立てる
「……この上着は、母上から頂いた大事な上着だ!」
少女はそう叫ぶと、自分に酒をかけた張本人に飛びかかった
ゴロツキのリーダーなのか、男は新しい酒をもって来させると、コルクを噛み、思い切り引き抜く
「酒、飲んだことあるか?」
「あるわけなかろう」
少し声の震えたその答えに、また周囲で笑いが巻き起こる
男はたってそばにより、頭の上で、酒瓶を逆さにした
髪を、頭を、顔を、そして上着をつたって、体中が酒にまみれる
「どうだいお嬢ちゃん。初めての酒の味は!?」
少女の目に涙が浮かぶ
「お、お、お、!悔しいか?悔しいのか!?」
ギャラリーはよりいっそう、酒でずぶ濡れた少女をはやし立てる
「……この上着は、母上から頂いた大事な上着だ!」
少女はそう叫ぶと、自分に酒をかけた張本人に飛びかかった
28 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 21:23:45.06 ID:pgCeTRLk0
もちろん力で敵うはずがない。少女の両腕は荒くれの片手で行動を封じられ、小さい体は宙に浮く
「嬢ちゃん、確かに勇敢だなぁ、あ?」
男を睨もうにも、無理矢理に体は別方向を向かされる
首の後ろから回ってきた腕が顎を掴む
「泣くなら、最初っから突っかかってくんなよ?それくらい分からねぇのか?」
耳に息がかかる。悪寒、背筋がゾクゾクする
「お前さん。文無しで腹が減ってんだろ?俺たちがたらふく喰わせてやるよ」
涙で滲む視界、そこに現れる男達
皆が皆、前よりも下品に、にやにやと笑い、次々にズボンを下ろし、下着を脱いでいく
「恨むなら美人に産んでくれた母上様にしてくれよ」
男どもの手が、上着のボタンを引きちぎるように無理矢理……
「おいおい、下はこんだけかぁ?」
「ゲハハ本当は誘ってんじゃねぇか!」
「こんなチッチェのは初めてだな」
「ゲヒヒ、久々の女だぁ!」
目前の野郎どもの目、言葉、動き、全てが狂気
王は心の中で、なぜ城を抜け出してしまったのかを考える。そして後悔する
もちろん力で敵うはずがない。少女の両腕は荒くれの片手で行動を封じられ、小さい体は宙に浮く
「嬢ちゃん、確かに勇敢だなぁ、あ?」
男を睨もうにも、無理矢理に体は別方向を向かされる
首の後ろから回ってきた腕が顎を掴む
「泣くなら、最初っから突っかかってくんなよ?それくらい分からねぇのか?」
耳に息がかかる。悪寒、背筋がゾクゾクする
「お前さん。文無しで腹が減ってんだろ?俺たちがたらふく喰わせてやるよ」
涙で滲む視界、そこに現れる男達
皆が皆、前よりも下品に、にやにやと笑い、次々にズボンを下ろし、下着を脱いでいく
「恨むなら美人に産んでくれた母上様にしてくれよ」
男どもの手が、上着のボタンを引きちぎるように無理矢理……
「おいおい、下はこんだけかぁ?」
「ゲハハ本当は誘ってんじゃねぇか!」
「こんなチッチェのは初めてだな」
「ゲヒヒ、久々の女だぁ!」
目前の野郎どもの目、言葉、動き、全てが狂気
王は心の中で、なぜ城を抜け出してしまったのかを考える。そして後悔する
29 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 21:24:55.23 ID:pgCeTRLk0
下に着ていた寝間着もはぎ取られー
「こいつ、こんななりして男モンの下着っすよ」
「こんだけ可愛けりゃ男だってかまわねぇよ」
「おいおい、こんだけの人数、こいつ一人じゃ足んねぇんじゃねぇの?」
ー覚悟する
そう、何が起こってもいい、最悪の覚悟を
「おいおい、お前ら、俺が最初だろ!?おうおう、きちんと女じゃねぇか」
粗末なベッド、そこらの箱に古ぼけたつぎはぎだらけのマットがしかれただけの、簡易ベッド
「初めてか?だとしたらちょっとワイルドだな!」
わき起こる嘲笑と、ソレを制する男の声
そしてベッドに仰向けに押し倒されて、目の前には昨日まで自分が持っていた、気色の悪い物
「幾らでも泣け。俺たち全員を相手にして生きてられるかわからねぇ」
下に着ていた寝間着もはぎ取られー
「こいつ、こんななりして男モンの下着っすよ」
「こんだけ可愛けりゃ男だってかまわねぇよ」
「おいおい、こんだけの人数、こいつ一人じゃ足んねぇんじゃねぇの?」
ー覚悟する
そう、何が起こってもいい、最悪の覚悟を
「おいおい、お前ら、俺が最初だろ!?おうおう、きちんと女じゃねぇか」
粗末なベッド、そこらの箱に古ぼけたつぎはぎだらけのマットがしかれただけの、簡易ベッド
「初めてか?だとしたらちょっとワイルドだな!」
わき起こる嘲笑と、ソレを制する男の声
そしてベッドに仰向けに押し倒されて、目の前には昨日まで自分が持っていた、気色の悪い物
「幾らでも泣け。俺たち全員を相手にして生きてられるかわからねぇ」
「生きてるうちに後悔のないようにな!」
醜い野郎の顔といっしょに、目には見えないけれど、確かに近づいてくるものがある
醜い野郎の顔といっしょに、目には見えないけれど、確かに近づいてくるものがある
“死”
31 : Webデザイナー(アラバマ州) :2007/04/06(金) 21:28:06.89 ID:pgCeTRLk0
「どおおおおおおおりゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
そこらに大きな声が鳴り響く
そんな声に耳も貸さずに、目の前の男は露出した少女の肌を撫で回す
「いい加減にしろぉ!てんめぇぇぇらぁぁぁ!!」
男の巨体が急に飛び込んできた青年の足で吹き飛ばされる
「いいか、大の大人が、昼間っから酒を飲んでだべっているのは認めよう」
壁に豪快な音を立てて突っ込んだ男には目もくれず、そこらで目を丸くしている男達へ語り出す
「力にもの言わせて女の子襲うってのはどうよ?」
それだけ言って、少女の方へつかつかと歩ていく
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫に見えるのか?」
実際に、恐怖から解放された安心か、酷く歪んだ顔と、ぼろぼろこぼれる涙
服を破かれた時に着いた赤い痕と上着以外を着ていない事実。どうみても大丈夫ではない
「お前ら、その労力を別なことに使えよ」
酒に濡れた少女の上着のボタンを丁寧に上から止めて、小さい体を抱きかかえる
普段なら無礼者と怒り立てるが、今は安心できるからか、そんなことを言う気にはならなかった
男は続ける
「……腐ったこの国をどうにかするとかさぁ」
少女もとい王の耳に入った言葉を、王自身は疑った
「腐った、国?」
「あれ?君は……そうか裕福なところのお嬢ちゃんか」
抱きかかえる、その強さは変わらないが、顔が一瞬、こわばる、目が、濁る
「ちょうどいい。君の知らない世界を見せてあげようか」
青年は少女の重さを苦にする様子もなく、ひらりと壁を飛び越えていった
「どおおおおおおおりゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」
そこらに大きな声が鳴り響く
そんな声に耳も貸さずに、目の前の男は露出した少女の肌を撫で回す
「いい加減にしろぉ!てんめぇぇぇらぁぁぁ!!」
男の巨体が急に飛び込んできた青年の足で吹き飛ばされる
「いいか、大の大人が、昼間っから酒を飲んでだべっているのは認めよう」
壁に豪快な音を立てて突っ込んだ男には目もくれず、そこらで目を丸くしている男達へ語り出す
「力にもの言わせて女の子襲うってのはどうよ?」
それだけ言って、少女の方へつかつかと歩ていく
「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫に見えるのか?」
実際に、恐怖から解放された安心か、酷く歪んだ顔と、ぼろぼろこぼれる涙
服を破かれた時に着いた赤い痕と上着以外を着ていない事実。どうみても大丈夫ではない
「お前ら、その労力を別なことに使えよ」
酒に濡れた少女の上着のボタンを丁寧に上から止めて、小さい体を抱きかかえる
普段なら無礼者と怒り立てるが、今は安心できるからか、そんなことを言う気にはならなかった
男は続ける
「……腐ったこの国をどうにかするとかさぁ」
少女もとい王の耳に入った言葉を、王自身は疑った
「腐った、国?」
「あれ?君は……そうか裕福なところのお嬢ちゃんか」
抱きかかえる、その強さは変わらないが、顔が一瞬、こわばる、目が、濁る
「ちょうどいい。君の知らない世界を見せてあげようか」
青年は少女の重さを苦にする様子もなく、ひらりと壁を飛び越えていった
「ぐぞう……あんガキャあ覚えてやがれぇぇ!」
負け犬の遠吠えは実によく響く
負け犬の遠吠えは実によく響く
「その台詞何度目だぁ?クソジジイぃ!」
青年の声も、よく響く
青年の声も、よく響く
135 : 海賊(アラバマ州) :2007/04/08(日) 09:56:54.54 ID:1IA35fQ80
たっ、たっ、と軽快に屋根の上を跳ねる
頬に当たる風と、空の青さ、太陽の光が心地いい
加えて、抱きかかえる青年の心音、そして安心感
一瞬見せた目も、今は昼の太陽みたいに、少しの陰りもない
「さぁ、到着だ」
思い切り持ち上げられて、絨毯でもしかれているみたいに、ふわりとおろされる
「まあ入れ入れ」
案内された先に有るのは、今まで見たこともない、みすぼらしい、木でできた小屋
「ここがお前の家か?」
「貴族のお嬢さんにはゴミみたいでも、俺の大切な家さ」
扉の中に入っていくその背中は物寂しげに見える
(……大切な家)
この上着を貰ったばかりのことを王は思い出す
母親が精一杯作ってくれた嬉しさではしゃぎ回る子どもの前で
「まるでボロ切れだ」
どこかで、誰かがそう言った
子どもを傷つけるには十分な言葉だ
「すまぬ」
「ふん、相当にいい暮らしをしてきたみたいだねぇー?」
言葉一つ一つはちくりと引っ掻く程度にとげを持っている
「豪華なお菓子も、椅子もないけどな」
ヒビの入った年季の入ったカップを渡される
「これは?」
「俺の命の水」
透明な、水のような、どこか懐かしい、花の香り
たっ、たっ、と軽快に屋根の上を跳ねる
頬に当たる風と、空の青さ、太陽の光が心地いい
加えて、抱きかかえる青年の心音、そして安心感
一瞬見せた目も、今は昼の太陽みたいに、少しの陰りもない
「さぁ、到着だ」
思い切り持ち上げられて、絨毯でもしかれているみたいに、ふわりとおろされる
「まあ入れ入れ」
案内された先に有るのは、今まで見たこともない、みすぼらしい、木でできた小屋
「ここがお前の家か?」
「貴族のお嬢さんにはゴミみたいでも、俺の大切な家さ」
扉の中に入っていくその背中は物寂しげに見える
(……大切な家)
この上着を貰ったばかりのことを王は思い出す
母親が精一杯作ってくれた嬉しさではしゃぎ回る子どもの前で
「まるでボロ切れだ」
どこかで、誰かがそう言った
子どもを傷つけるには十分な言葉だ
「すまぬ」
「ふん、相当にいい暮らしをしてきたみたいだねぇー?」
言葉一つ一つはちくりと引っ掻く程度にとげを持っている
「豪華なお菓子も、椅子もないけどな」
ヒビの入った年季の入ったカップを渡される
「これは?」
「俺の命の水」
透明な、水のような、どこか懐かしい、花の香り
136 : 海賊(アラバマ州) :2007/04/08(日) 09:59:20.91 ID:1IA35fQ80
「おいしい……」
「まずいっつったって、ソレ以外お前にやれるもんはねーけどな」
ここで、ごそごそと動いている姿が目の端に映った
「ところで、お前はなにをしている?」
「服。そのままじゃ悲惨だろ?」
確かに
服は酒まみれ、ここへくる際に、跳び回ったせいで誇り等々、汚れが目立つ
「だ、だがこの下……」
上着のボタンに手をかける途中、さっきの、男連中に囲まれていたことを思い出す
「とりあえず、この服だけ受け取れ、そしたら奥にでも行ってるから」
「そうか、お前はいいやつだな」
やれやれ、と首をすぼめて、青年は部屋から出て行く
「しかし、私は本当に女なんだなぁ」
上着を脱いで、下から現れる何の屈託もない綺麗な体
胸の膨らみはそれほどはないが、もとより女の体というものもよく知らない王には
微妙に膨らんでいるというだけで、女と認識するにはそれほど難しくなかった
「このような庶民の服をきるのは初めてじゃ」
渡された服を、一枚一枚、いつもと違って手伝いはいないので、悪戦苦闘しながら
なんとか着衣する
「どうだ、そこな男!似合うか?」
「貴族の娘にしちゃえらく質素だな」
「それでも、私は素敵だと思うぞ」
「あいあい、さいですか」
相手を貴族、高貴な育ちと知っていても、青年は完全に素で対応して、言葉遣いも汚い辺り、あまりよい身分ではなさそうだ
「おいしい……」
「まずいっつったって、ソレ以外お前にやれるもんはねーけどな」
ここで、ごそごそと動いている姿が目の端に映った
「ところで、お前はなにをしている?」
「服。そのままじゃ悲惨だろ?」
確かに
服は酒まみれ、ここへくる際に、跳び回ったせいで誇り等々、汚れが目立つ
「だ、だがこの下……」
上着のボタンに手をかける途中、さっきの、男連中に囲まれていたことを思い出す
「とりあえず、この服だけ受け取れ、そしたら奥にでも行ってるから」
「そうか、お前はいいやつだな」
やれやれ、と首をすぼめて、青年は部屋から出て行く
「しかし、私は本当に女なんだなぁ」
上着を脱いで、下から現れる何の屈託もない綺麗な体
胸の膨らみはそれほどはないが、もとより女の体というものもよく知らない王には
微妙に膨らんでいるというだけで、女と認識するにはそれほど難しくなかった
「このような庶民の服をきるのは初めてじゃ」
渡された服を、一枚一枚、いつもと違って手伝いはいないので、悪戦苦闘しながら
なんとか着衣する
「どうだ、そこな男!似合うか?」
「貴族の娘にしちゃえらく質素だな」
「それでも、私は素敵だと思うぞ」
「あいあい、さいですか」
相手を貴族、高貴な育ちと知っていても、青年は完全に素で対応して、言葉遣いも汚い辺り、あまりよい身分ではなさそうだ
137 : 海賊(アラバマ州) :2007/04/08(日) 10:01:02.17 ID:1IA35fQ80
「ところで……」
「なに?」
「いつからそこで覗きはじめた?」
「鼻歌まじりでシャツを着ている時、だったかな。いい食生活してんだな、綺麗な肌だったぞ」
さも当たり前のように、感想を言う
シャツを着ている時、ほぼ最初から、ということか
「こんの無礼者があぁあぁぁぁ!」
近く似合ったカップを思いっきり投げつける
「服代ってことで勘弁しろよ」
そこそこにはやいガラスの塊を、難なくパシと掴む
「……お前、すごいな!」
あまりの巧みさに、王は怒りを忘れて感心した
「あまり怒りっぽいと人生楽しくないだろ、かんしゃく娘」
「うぐぐ……」
そんな考えもまた、すぐに流れていった、が
「ところで……」
「なに?」
「いつからそこで覗きはじめた?」
「鼻歌まじりでシャツを着ている時、だったかな。いい食生活してんだな、綺麗な肌だったぞ」
さも当たり前のように、感想を言う
シャツを着ている時、ほぼ最初から、ということか
「こんの無礼者があぁあぁぁぁ!」
近く似合ったカップを思いっきり投げつける
「服代ってことで勘弁しろよ」
そこそこにはやいガラスの塊を、難なくパシと掴む
「……お前、すごいな!」
あまりの巧みさに、王は怒りを忘れて感心した
「あまり怒りっぽいと人生楽しくないだろ、かんしゃく娘」
「うぐぐ……」
そんな考えもまた、すぐに流れていった、が
5 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 07:47:11.97 ID:6Nz4HU5D0
「お前さんもお嬢さんなんだろ?これから少しの間はネコ被っとけよ」
少女の投げつけたコップをそこらに置いて、青年は入り口の脇に立つ
「なにかある……」
「しっ!」
台詞を遮られ口を紡ぐ
「おーすっ!、遊びにきーたぞー!」
少年特有の高い声とともに、玄関の布を蹴りではじきとばす影
少年が室内をぶっ壊す前に、青年の手強制的に停止させられる
「がっ……ふげっ!」
哀れ、足を固定され、勢いそのままに地面に激突する
「鍛錬が足りないな、坊主」
「くっ、次は一発食らわせてやる!」
笑顔で見下す青年と、敵意と、尊敬を混ぜ合わせたような顔をした少年
「一体なんなんだ、お前は……」
驚き、そんな気持ちを通り越して、呆れてしまう
この声を聞いて、争乱の張本人が少女を向く
スクと立ち上がり、腰の砂を落として、少女の周りをジロジロと見て回る
「なんじゃ、無礼者」
「兄貴。この子新しい彼女か?」
少女に指を指しながら、青年の方を向く
一瞬の隙を王は見逃さない
「お前、当分は俺に一発食らわそうなんて無理だな」
へっ?と少女の方を向き直す
とたん、顔面にグー
「ヘビァッ!」
「お前さんもお嬢さんなんだろ?これから少しの間はネコ被っとけよ」
少女の投げつけたコップをそこらに置いて、青年は入り口の脇に立つ
「なにかある……」
「しっ!」
台詞を遮られ口を紡ぐ
「おーすっ!、遊びにきーたぞー!」
少年特有の高い声とともに、玄関の布を蹴りではじきとばす影
少年が室内をぶっ壊す前に、青年の手強制的に停止させられる
「がっ……ふげっ!」
哀れ、足を固定され、勢いそのままに地面に激突する
「鍛錬が足りないな、坊主」
「くっ、次は一発食らわせてやる!」
笑顔で見下す青年と、敵意と、尊敬を混ぜ合わせたような顔をした少年
「一体なんなんだ、お前は……」
驚き、そんな気持ちを通り越して、呆れてしまう
この声を聞いて、争乱の張本人が少女を向く
スクと立ち上がり、腰の砂を落として、少女の周りをジロジロと見て回る
「なんじゃ、無礼者」
「兄貴。この子新しい彼女か?」
少女に指を指しながら、青年の方を向く
一瞬の隙を王は見逃さない
「お前、当分は俺に一発食らわそうなんて無理だな」
へっ?と少女の方を向き直す
とたん、顔面にグー
「ヘビァッ!」
6 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 07:48:20.09 ID:6Nz4HU5D0
「……薬はねぇぞ」
鼻血をだして崩れ落ちた少年
「ご、ごれぐらい、づばづげときゃ治る……ぜぃ」
言葉がこれでもか、というくらいに濁る
「暴力女に一撃でのされた少年の心の傷のための薬の話しだ」
正拳以上の衝撃があったようだ
鼻血といっしょに涙が顔をぐちゃぐちゃに汚す
「……あ、兄貴」
「だれが暴力女じゃー!」
地面に寝転ぶ少年の腹を、思いっきり踏みつけて殴りにかかる少女
「忙しないねぇ」
まっすぐに伸びた拳を難なく掴み、力そのままに反動利用して地面へ叩き付ける
地面、といっても少年と言うなまえの絨毯がある、が
「い、つつ……くそぅ、なぜ主はそんなに強いのじゃ」
「貧乏してるとな、拳がなけりゃ生きていけねぇんだよ」
「やっぱり……国が悪いのか?」
「……ああ、そうさ……」
国という言葉で、ふざけた表情は消える
かわりに浮かぶのは、悲しみ、怒り、それとも……
「とりあえずそこ。どいてやれ」
「ん?下……のわっ……」
絨毯は血まみれ水まみれ、さらに泡を吹いている
「……薬はねぇぞ」
鼻血をだして崩れ落ちた少年
「ご、ごれぐらい、づばづげときゃ治る……ぜぃ」
言葉がこれでもか、というくらいに濁る
「暴力女に一撃でのされた少年の心の傷のための薬の話しだ」
正拳以上の衝撃があったようだ
鼻血といっしょに涙が顔をぐちゃぐちゃに汚す
「……あ、兄貴」
「だれが暴力女じゃー!」
地面に寝転ぶ少年の腹を、思いっきり踏みつけて殴りにかかる少女
「忙しないねぇ」
まっすぐに伸びた拳を難なく掴み、力そのままに反動利用して地面へ叩き付ける
地面、といっても少年と言うなまえの絨毯がある、が
「い、つつ……くそぅ、なぜ主はそんなに強いのじゃ」
「貧乏してるとな、拳がなけりゃ生きていけねぇんだよ」
「やっぱり……国が悪いのか?」
「……ああ、そうさ……」
国という言葉で、ふざけた表情は消える
かわりに浮かぶのは、悲しみ、怒り、それとも……
「とりあえずそこ。どいてやれ」
「ん?下……のわっ……」
絨毯は血まみれ水まみれ、さらに泡を吹いている
32 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 21:30:08.06 ID:6Nz4HU5D0
「なあ、私はどうすればいい?」
「謝ればいい」
「謝る、なぜ?」
一人、家の前のがれきの上ですねている少年と、そんな寂しげな背中を見ながら喋る二人
「普通、自分がいけないことをしたら謝るのが道理だろ」
「だがしかしな、お前のせいであいつの上に落下したのじゃ」
「その前に踏んだじゃんか、しかも顔面なぐって一撃で倒しちゃって」
「あ、あれは、私がお前ごときの女などと浮ついたことを!」
「ふん、お前みたいなガキ。俺の方から願い下げだ」
「なにを言うか無礼者!」
「無礼で結構、弱虫嬢ちゃん」
もう一度、何を言うか!と怒鳴って、もう一度殴りかかる
もう一度、難なく掴まれて、今度は足から着地する
「ぬぅぅ、また届かんのか……」
「貴族娘にしちゃ良くやるよ。他にあったことないから多分だけどな」
少女にとって、こんな男は初めてだった
物心ついた頃から大切に育てられて、絶対王政万々歳に生きてきた王だからこそ
こうやって自分と対等以上に喋りかける人間なんて一人もいなかった
「兄貴、いいかげん俺のことも気遣ってくださいよ」
「ん?ああ、別にいつものことじゃんか、喧嘩に負けるなんてよ」
いつのまにか、ガラクタから降りてきた少年が横にいる
「女に負けたから悔しいんだ!」
「ふん、なにをいうかチビ」
「な、誰がチビだ!お前もほとんど俺と変わんないじゃんかよ!」
「なあ、私はどうすればいい?」
「謝ればいい」
「謝る、なぜ?」
一人、家の前のがれきの上ですねている少年と、そんな寂しげな背中を見ながら喋る二人
「普通、自分がいけないことをしたら謝るのが道理だろ」
「だがしかしな、お前のせいであいつの上に落下したのじゃ」
「その前に踏んだじゃんか、しかも顔面なぐって一撃で倒しちゃって」
「あ、あれは、私がお前ごときの女などと浮ついたことを!」
「ふん、お前みたいなガキ。俺の方から願い下げだ」
「なにを言うか無礼者!」
「無礼で結構、弱虫嬢ちゃん」
もう一度、何を言うか!と怒鳴って、もう一度殴りかかる
もう一度、難なく掴まれて、今度は足から着地する
「ぬぅぅ、また届かんのか……」
「貴族娘にしちゃ良くやるよ。他にあったことないから多分だけどな」
少女にとって、こんな男は初めてだった
物心ついた頃から大切に育てられて、絶対王政万々歳に生きてきた王だからこそ
こうやって自分と対等以上に喋りかける人間なんて一人もいなかった
「兄貴、いいかげん俺のことも気遣ってくださいよ」
「ん?ああ、別にいつものことじゃんか、喧嘩に負けるなんてよ」
いつのまにか、ガラクタから降りてきた少年が横にいる
「女に負けたから悔しいんだ!」
「ふん、なにをいうかチビ」
「な、誰がチビだ!お前もほとんど俺と変わんないじゃんかよ!」
33 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 21:31:19.35 ID:6Nz4HU5D0
確かに、背を比べてみればほんの少し少年の方が高い
ただ、風格。腐っても国王をしているだけあって、少女はそれなり気品がにじみ出る
そういう、全体的な雰囲気を見ると、少年より一回りも二回りも大きく見える
「心の狭いやつだ」
やれやれ、と溜息をつく
「がぁぁー!女だからって容赦死ねぇーぞ!」
「男として最低だな」
「ぜってーぶん殴る!」
売り言葉に買い言葉。過激にエスカレートしていく口喧嘩
「オラオラガキども。いい加減にしろ。だいたい母さんの服が汚れる」
みかねた男から、忠告の言葉
「むぅ……この服はお前の母上の物か」
「ああ、ろくに飯も食えないで死んだけどな」
「なっ……!そんな簡単にどうして……」
「肉親の死は、確かに辛くてもな、いつまでも気にしてたら生きていけねぇんだよ」
「……やはりお前の母上も国が悪いのか?」
「ふん。テメェにいったってどうしようもねぇよ」
「だが、しかしだな……!」
貴族だろうが、王族だろうが、家族が死んでしまったら皆悲しむ
それでもこの貧民層達は、悲しむ余裕がないと少女は今更に知る
そもそもこの国に貧しい人間が入るということも、初めて知った少女、王様
必死な声と、わずかに浮かぶ涙、薄紅色の頬
「お前にその服やるよ。どうせ売ったって二束三文だ」
「お前の母上の、大事な物じゃないのか?」
「目の前で汚されんのは簡便だけど、誰もきねぇでいるよかマシだろ」
確かに、背を比べてみればほんの少し少年の方が高い
ただ、風格。腐っても国王をしているだけあって、少女はそれなり気品がにじみ出る
そういう、全体的な雰囲気を見ると、少年より一回りも二回りも大きく見える
「心の狭いやつだ」
やれやれ、と溜息をつく
「がぁぁー!女だからって容赦死ねぇーぞ!」
「男として最低だな」
「ぜってーぶん殴る!」
売り言葉に買い言葉。過激にエスカレートしていく口喧嘩
「オラオラガキども。いい加減にしろ。だいたい母さんの服が汚れる」
みかねた男から、忠告の言葉
「むぅ……この服はお前の母上の物か」
「ああ、ろくに飯も食えないで死んだけどな」
「なっ……!そんな簡単にどうして……」
「肉親の死は、確かに辛くてもな、いつまでも気にしてたら生きていけねぇんだよ」
「……やはりお前の母上も国が悪いのか?」
「ふん。テメェにいったってどうしようもねぇよ」
「だが、しかしだな……!」
貴族だろうが、王族だろうが、家族が死んでしまったら皆悲しむ
それでもこの貧民層達は、悲しむ余裕がないと少女は今更に知る
そもそもこの国に貧しい人間が入るということも、初めて知った少女、王様
必死な声と、わずかに浮かぶ涙、薄紅色の頬
「お前にその服やるよ。どうせ売ったって二束三文だ」
「お前の母上の、大事な物じゃないのか?」
「目の前で汚されんのは簡便だけど、誰もきねぇでいるよかマシだろ」
34 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 21:32:27.71 ID:6Nz4HU5D0
「し、しかしだな!」
必死になる少女の肩をつかんで、じっと目を見つめる
近づいた顔に、動いていた唇も止まる
「こんなこというのもあれだけどな、お前は母さんに似てんだ」
それだけいって、ぱっと肩から手を離す
男は、くるりと逆を向いて家の中へ入っていった
「……兄貴の母ちゃん。お前と顔は全然似てないけどな。お前みたいに他人の命に必死だったんだ」
「私は、ただ母上のことだから……」
「兄貴の母ちゃんは自分より他の奴らの方を重く見てたから」
「そうか、私とは全然違うな」
「兄貴には同じに見えたみたいだけどな」
二人のこされて、場は沈黙に包まれる
「なぁ、これあいつに渡しておいてくれないか?」
自分の長い前髪を止めた綺麗な飾りを渡す
「服の代わりにこれをやる、って」
「ふーん。で、お前、これからどうすんだ?」
「家に帰る」
「帰り道、わかんのか?貴族はこんなとこ、こないもんな」
そういえば、と辺りを見回す
「城が見えるから……帰れる」
「し、しかしだな!」
必死になる少女の肩をつかんで、じっと目を見つめる
近づいた顔に、動いていた唇も止まる
「こんなこというのもあれだけどな、お前は母さんに似てんだ」
それだけいって、ぱっと肩から手を離す
男は、くるりと逆を向いて家の中へ入っていった
「……兄貴の母ちゃん。お前と顔は全然似てないけどな。お前みたいに他人の命に必死だったんだ」
「私は、ただ母上のことだから……」
「兄貴の母ちゃんは自分より他の奴らの方を重く見てたから」
「そうか、私とは全然違うな」
「兄貴には同じに見えたみたいだけどな」
二人のこされて、場は沈黙に包まれる
「なぁ、これあいつに渡しておいてくれないか?」
自分の長い前髪を止めた綺麗な飾りを渡す
「服の代わりにこれをやる、って」
「ふーん。で、お前、これからどうすんだ?」
「家に帰る」
「帰り道、わかんのか?貴族はこんなとこ、こないもんな」
そういえば、と辺りを見回す
「城が見えるから……帰れる」
35 : ロケットガール(アラバマ州):2007/04/10(火) 21:33:48.90 ID:6Nz4HU5D0
国一番の大豪邸。王宮が自分の家だと知ったら、この二人はどう思うだろう、と考える
「じゃあ、俺がそこまで案内してやるよ」
「いや、いい」
もし、兵士でもいて、自分の正体がばれたら嫌だな、そんなコトを考える
「そうだ、お前」
「なんだよ」
城の中ではこんなことは言わなかっただろうなと思うと、笑みがこぼれる
ちょっと、音を出すのに手間取った
「さっきはすまなかった」
多分。産まれて初めて謝った
「そんなこと、気にすんなよな」
ああ、こんな男の子がいてくれたら……
そうだ、友達っていうんだっけ
「心が狭いっていったけど、案内するって言ったお前はなかなか紳士だな」
沈む夕日が、大きく、紅く。少年を光で綺麗に染め上げる
「ありがとう。感謝するぞ」
国一番の大豪邸。王宮が自分の家だと知ったら、この二人はどう思うだろう、と考える
「じゃあ、俺がそこまで案内してやるよ」
「いや、いい」
もし、兵士でもいて、自分の正体がばれたら嫌だな、そんなコトを考える
「そうだ、お前」
「なんだよ」
城の中ではこんなことは言わなかっただろうなと思うと、笑みがこぼれる
ちょっと、音を出すのに手間取った
「さっきはすまなかった」
多分。産まれて初めて謝った
「そんなこと、気にすんなよな」
ああ、こんな男の子がいてくれたら……
そうだ、友達っていうんだっけ
「心が狭いっていったけど、案内するって言ったお前はなかなか紳士だな」
沈む夕日が、大きく、紅く。少年を光で綺麗に染め上げる
「ありがとう。感謝するぞ」
たったった、っと木製の今にも崩れそうな町並みを駆けていく
少女は思う。どうも今日は笑顔をやめられそうにない
少女は思う。どうも今日は笑顔をやめられそうにない