944 :(・・) :2008/05/30(金) 01:19:40.82 ID:e77i2CY0
「まあ、入れよ」
「まあ、入れよ」
「ああ」
俺は由雄の招きで部屋に入る。
昨日あれだけ散らかっていた部屋は俺と由雄の二人で片付けたので
すっかり整理されているのだが、どうやらあの後由雄はさらに色々手を入れたらしい。
すっかり部屋は模様替えされていて由雄共々雰囲気が随分変わっている。
昨日あれだけ散らかっていた部屋は俺と由雄の二人で片付けたので
すっかり整理されているのだが、どうやらあの後由雄はさらに色々手を入れたらしい。
すっかり部屋は模様替えされていて由雄共々雰囲気が随分変わっている。
「あれから部屋をちょっといじってさ。多少は変わっただろ?」
由雄はウーロン茶のペットボトルとコップを2つ テーブルに置くと
ウーロン茶をコップに注ぐ。
ウーロン茶をコップに注ぐ。
「ああ、変わったといえば変わったよな。」
お前程じゃ無いけどな…と思いつつ、俺は由雄からお茶の入ったコップを
受け取る。
お前程じゃ無いけどな…と思いつつ、俺は由雄からお茶の入ったコップを
受け取る。
「でも、一体どうしたんだ? ここまで模様替えするのも大変だったろ?」
「ま、何だろうか。 心境の変化って奴かな。 こないだまでの自分と今の自分を
区別するって感じかな。今の俺に前の部屋の雰囲気は合わないというか、…ね。」
さばさばした表情で俺の問いに答える由雄。
区別するって感じかな。今の俺に前の部屋の雰囲気は合わないというか、…ね。」
さばさばした表情で俺の問いに答える由雄。
何か思うところがあったのか由雄の立場に無い俺には皆目見当が付かなかったが、
由雄は昔から形から入る人間だったので今回の模様替えは現状の自分を受け入れる為の
一連の儀式みたいなものなのかも知れない。
由雄は昔から形から入る人間だったので今回の模様替えは現状の自分を受け入れる為の
一連の儀式みたいなものなのかも知れない。
確かに部屋の状況を今と昔と比較してみると通常使用しているものは当然同じもので
あるのだが、昨日までの整理整頓されて綺麗にしているが何処と無く殺風景な状態の部屋に
対し、たぶんタンスの奥にでも入りっ放しだったのかも知れないカラフルな彩りの
シーツ類や、放置気味であった観葉植物を使って部屋の要所要所をコーディネートして
どこか女性的な雰囲気を醸し出している今の部屋の状況とでは随分な変化を感じる。
由雄の言う通りここに住んでいる人間の姿に合わせたといったところか。
945 :(・・) :2008/05/30(金) 01:23:14.12 ID:e77i2CY0
「…で、このあとどうするって?」
由雄は俺とテーブルの向かい合わせで座り込むとお茶を口にする。
あるのだが、昨日までの整理整頓されて綺麗にしているが何処と無く殺風景な状態の部屋に
対し、たぶんタンスの奥にでも入りっ放しだったのかも知れないカラフルな彩りの
シーツ類や、放置気味であった観葉植物を使って部屋の要所要所をコーディネートして
どこか女性的な雰囲気を醸し出している今の部屋の状況とでは随分な変化を感じる。
由雄の言う通りここに住んでいる人間の姿に合わせたといったところか。
945 :(・・) :2008/05/30(金) 01:23:14.12 ID:e77i2CY0
「…で、このあとどうするって?」
由雄は俺とテーブルの向かい合わせで座り込むとお茶を口にする。
「まずは由雄はどうしたいのかが重要だよな。
まずそれからじゃないと何も出来ない。」
まずそれからじゃないと何も出来ない。」
うーん、と由雄は考え込み
「そうだな、元の男に戻りたいというのが正直なところだよな。」
「そうだな、元の男に戻りたいというのが正直なところだよな。」
「…そうか、そうだよな」
「ん? どうした浩輔? 何か急に元気が無くなったけど。」
「…いや、別に。」
俺にも良く分からないが、由雄の「戻りたい」という言葉に少々気持ちが萎える。
元に戻ってしまう事を想像すると何か残念な感じがするのは由雄には悪いが言えない。
俺にも良く分からないが、由雄の「戻りたい」という言葉に少々気持ちが萎える。
元に戻ってしまう事を想像すると何か残念な感じがするのは由雄には悪いが言えない。
「でもまぁ、由雄のいう通りだな。男から女になったんだ、その逆の事も
当然あるはずだよだ。そう考えると…。」
当然あるはずだよだ。そう考えると…。」
「ふんふん」
身を乗り出す由雄。
身を乗り出す由雄。
「とりあえず病院に行って診てもらうのがいいかな?」
思わずテーブルからズレ落ちそうになる由雄。
「…あのなぁ、それで解決するなら初めから病院に行っているって。
でも考えてみろよ、どこの世界に『男が女になりました』って話があるんだよ。
漫画やテレビじゃあるまいし、精神的にキタコレって扱われるのかオチだよ。」
「…あのなぁ、それで解決するなら初めから病院に行っているって。
でも考えてみろよ、どこの世界に『男が女になりました』って話があるんだよ。
漫画やテレビじゃあるまいし、精神的にキタコレって扱われるのかオチだよ。」
「まあ、誰も信じないか。俺だって由雄と会った時も当然ながら信じることなんて
出来なかったもんな。」
俺は昨日の由雄とのやり取りを思い出していた。
出来なかったもんな。」
俺は昨日の由雄とのやり取りを思い出していた。
「普通に考えればこんな事有り得ないからな。俺だって浩輔が俺の事信じてくれるかどうか
わかんなかったし、まして他人なんかが俺がこないだまで男だったのが女になったなんて
話、信じれるわけないよなぁ。」
由雄は座り直すとお茶請け用に準備したと思われるクッキーを口にする。
わかんなかったし、まして他人なんかが俺がこないだまで男だったのが女になったなんて
話、信じれるわけないよなぁ。」
由雄は座り直すとお茶請け用に準備したと思われるクッキーを口にする。
…あれ? 確か由雄は昔から辛党だったよな。甘いものは苦手だったはずなんだが。
だから奴の用意するものは煎餅とか珍味類とか糖分の少ないものばかりだったんだけど。
。
「でさ、元に戻る為のいい解決策を見つけないとな。」
由雄は俺の視線を気にせず美味しそうにクッキーを食べている。
だから奴の用意するものは煎餅とか珍味類とか糖分の少ないものばかりだったんだけど。
。
「でさ、元に戻る為のいい解決策を見つけないとな。」
由雄は俺の視線を気にせず美味しそうにクッキーを食べている。
「でも由雄、原因が分からないとその解決策だって浮ばないよな?
お前自身の身体の状態がどうなのかも知らないとならないし。」
946 :(・・) :2008/05/30(金) 01:24:14.13 ID:e77i2CY0
「う…まぁ、そうなんだよな。外見上はどこからみても女なんだけど
ホントにそうなのかと言われたら自信無いし、そもそもなんでこうなっちゃったのかも
全然分かんないからな…。」
由雄のクッキーを食べる手が止まる。
お前自身の身体の状態がどうなのかも知らないとならないし。」
946 :(・・) :2008/05/30(金) 01:24:14.13 ID:e77i2CY0
「う…まぁ、そうなんだよな。外見上はどこからみても女なんだけど
ホントにそうなのかと言われたら自信無いし、そもそもなんでこうなっちゃったのかも
全然分かんないからな…。」
由雄のクッキーを食べる手が止まる。
「…そうなるとやっぱり病院に行く事になるよな。」
「…」
由雄の表情が一瞬曇る。
由雄の表情が一瞬曇る。
「そんな顔すんなよ。俺だって病院に行ったところで難しいのは承知済みだよ。
で、俺は考えた。俺の知り合いに病院の医師をしている人がいるんだ。
実はもうその人に由雄のことを相談したんだけど、その人の友人で性転換について研究している
人が居るらしい。まずはその人の研究所で診てもらったらどうだ、と言うことになったんだ。」
で、俺は考えた。俺の知り合いに病院の医師をしている人がいるんだ。
実はもうその人に由雄のことを相談したんだけど、その人の友人で性転換について研究している
人が居るらしい。まずはその人の研究所で診てもらったらどうだ、と言うことになったんだ。」
「研究所か…。まるでモルモットみたいだよな、俺はいい研究対象ってとこか。」
少々自虐的に由雄は呟く。
少々自虐的に由雄は呟く。
「何言ってんだよ、研究対象だろうと何だろうと今の自分自身が何なのか分からない以上
手の打ちようがないだろ。考えようによっては自分自身の現状を知るいい機会じゃないか。
俺も付き合ってやるから、まずは行こうぜ。」
俺はそう言うと残りのお茶を飲み干し、立ち上がる。
手の打ちようがないだろ。考えようによっては自分自身の現状を知るいい機会じゃないか。
俺も付き合ってやるから、まずは行こうぜ。」
俺はそう言うと残りのお茶を飲み干し、立ち上がる。
「え? 今から?」
いきなりの展開に驚きの表情をする由雄。
いきなりの展開に驚きの表情をする由雄。
「当然だろ、善は急げって!」
「…何か違うような気がするけど、まあいいか。」
由雄は苦笑いを浮かべた。
由雄は苦笑いを浮かべた。
953 :(・・) :2008/05/31(土) 01:17:30.69 ID:jw6HROQ0
俺と由雄はある研究所に行く為、電車の中で揺られている。
流石に通勤通学のピークを過ぎた時間なので乗客の数も疎らで妙にゆったりとした
時間が過ぎている感じがする。
俺と由雄はある研究所に行く為、電車の中で揺られている。
流石に通勤通学のピークを過ぎた時間なので乗客の数も疎らで妙にゆったりとした
時間が過ぎている感じがする。
空いている席に適当に座り、窓から見える外の風景を俺達はぼんやりと眺めていた。
「なあ、今日はお前いいのか?」
俺のすぐ隣に座る由雄が俺の顔を覗き込む。
俺のすぐ隣に座る由雄が俺の顔を覗き込む。
「ん?何が?」
一見何事も無い素振りをしているがその由雄の仕草と表情にドキドキする俺。
一見何事も無い素振りをしているがその由雄の仕草と表情にドキドキする俺。
由雄は女になってからこれだけ近距離で俺に近づいている事に気付いてないのだろうか。
アパートを出てからずっと緊張した表情を浮べている由雄は
その緊張を和らげるためか先程から俺の側を離れない。これだけ電車のシートが
空いているのだから余裕を持って座ればいいものを、密着するような感じで俺の横に座っている。
アパートを出てからずっと緊張した表情を浮べている由雄は
その緊張を和らげるためか先程から俺の側を離れない。これだけ電車のシートが
空いているのだから余裕を持って座ればいいものを、密着するような感じで俺の横に座っている。
そうなってくると俺の鼻に由雄のいい香りがやってくるのは言うまでもない。
元々由雄は綺麗好きなので毎朝のシャワーは習慣であったが、シャンプーの香り以外にも
何とも言えない良い香りがするのは俺の気のせいであろうか。
元々由雄は綺麗好きなので毎朝のシャワーは習慣であったが、シャンプーの香り以外にも
何とも言えない良い香りがするのは俺の気のせいであろうか。
勿論伝わってくるのは香りばかりでは無い。
由雄からのほんのり暖かい体温とか柔らかな身体の感触(といっても腕だけだが)とか
今まで体験したことの無い女性独特の雰囲気そのものが俺に伝わってきて
俺は俺である意味至福の時を過ごしていたのは言うまでも無い。
由雄からのほんのり暖かい体温とか柔らかな身体の感触(といっても腕だけだが)とか
今まで体験したことの無い女性独特の雰囲気そのものが俺に伝わってきて
俺は俺である意味至福の時を過ごしていたのは言うまでも無い。
「確か、今の時間だと丁度必修の講義の時間だよな。受けなくていいのか?」
「あー、それね。まあ、いいんじゃね? 俺は後からノート借りればいいし、
出席も代返頼んでるしな。」
俺は今朝から由雄の事で予定を変更したり、事前に色々と手を打っていたので
特に事も無げに答える。
出席も代返頼んでるしな。」
俺は今朝から由雄の事で予定を変更したり、事前に色々と手を打っていたので
特に事も無げに答える。
「おいおい、いいのかよ、それで…」
「今の俺にとって最優先事項はお前なの。まずはお前の問題を解決しないと
お前もそうだけど俺が安心できないからな。」
困惑の表情を浮かべる由雄に対し、俺は全然平気な振りをして安心させようとする。
お前もそうだけど俺が安心できないからな。」
困惑の表情を浮かべる由雄に対し、俺は全然平気な振りをして安心させようとする。
「そう…浩輔、ありがと…」
一瞬、複雑な表情をしたがすぐに笑みを浮かべる由雄。
心なしか由雄の緊張がほぐれてきたような気がする。
954 :(・・) :2008/05/31(土) 01:22:35.78 ID:jw6HROQ0
「…」 「…」
一瞬、複雑な表情をしたがすぐに笑みを浮かべる由雄。
心なしか由雄の緊張がほぐれてきたような気がする。
954 :(・・) :2008/05/31(土) 01:22:35.78 ID:jw6HROQ0
「…」 「…」
「~間も無く○○、○○に到着します 」
その後 俺と由雄は特に会話することなくぼんやりと電車に揺られていると
俺達の下車する駅名を告げる電車のアナウンスが流れる。
俺達の下車する駅名を告げる電車のアナウンスが流れる。
「お、着くぞ」
「…うん」
俺の呼び掛けに由雄の身体がピクンと反応する。
再び由雄の表情に緊張の色が走る。
再び由雄の表情に緊張の色が走る。
「大丈夫だから、安心しろ。」
「…うん」
俺の呼びかけに頷く由雄。これから由雄に起こる事を考えてみると
緊張するなというのも無理な話ではあるのだが、俺は俺で由雄の気持ちを和らげてやれればと
気にかけていたりする。
俺の呼びかけに頷く由雄。これから由雄に起こる事を考えてみると
緊張するなというのも無理な話ではあるのだが、俺は俺で由雄の気持ちを和らげてやれればと
気にかけていたりする。
程無く俺達は電車から降りた。
「プッ、クス、クスッ…」
改札に向かう途中、何かを思い出したかのように由雄は笑い出す。
改札に向かう途中、何かを思い出したかのように由雄は笑い出す。
「? どうしたんだ?」
怪訝な表情を浮かべる俺。
怪訝な表情を浮かべる俺。
「…クス、悪ぃ、急に笑っちゃってサ。でも可笑しくって、ホント。
正直、…浩輔がこんなに頼もしく感じたのは初めてだよ。普段はだらしなくて馬鹿で変態で
見た目もキモイのにな、って思ったら…何だか笑っちゃった。」
さっきの緊張の表情から一転、由雄は楽しそうに笑っている。
正直、…浩輔がこんなに頼もしく感じたのは初めてだよ。普段はだらしなくて馬鹿で変態で
見た目もキモイのにな、って思ったら…何だか笑っちゃった。」
さっきの緊張の表情から一転、由雄は楽しそうに笑っている。
「…キモ」
俺は俺なりに由雄の為にと考えていたのだが、そんな風に思われていたのかと思うと
正直、ダメージを受ける。
奴が男の時であればそんなに気にならないセリフではあるのだが、
こんな可愛い女の子の姿で言われると受けるダメージは随分変わってくるものだ。
俺は俺なりに由雄の為にと考えていたのだが、そんな風に思われていたのかと思うと
正直、ダメージを受ける。
奴が男の時であればそんなに気にならないセリフではあるのだが、
こんな可愛い女の子の姿で言われると受けるダメージは随分変わってくるものだ。
「アハハ、嘘だって!」
予想以上に落ち込んだ俺を見て何を思ったのか由雄は俺の手を取り、改札へと駆け出す。
予想以上に落ち込んだ俺を見て何を思ったのか由雄は俺の手を取り、改札へと駆け出す。
「…浩輔、…(ボソボソ)…だから。」
「え、え?」
何が起こったのか、由雄が何を言ったのか理解できない俺。
何が起こったのか、由雄が何を言ったのか理解できない俺。
由雄の顔を見ようとするが、俺の前にいて顔を見せようとしないのでその表情が読めない。
でも何だか照れくさそうにしている、そんな風に俺は思った。
でも何だか照れくさそうにしている、そんな風に俺は思った。