178 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/09(水) 22:07:53.74 ID:cV7rcjQo
「そいじゃ、お先失礼しまーす!」
定時になったので仕事を切り上げると、
俺は神業のようにタイムカードを切ってゲーセン『アドアッー!!ス』に直行する。
仕事のストレスをゲームで発散するダメ人間っぷりは、社内でももっぱらの噂だが気にしない!
オフィス街を抜けたら、ネクタイを緩めて周囲の目も気にせずひた走る!
商店街のゲートを右に曲がればお目当てのゲーセンに到着だ。
はやる気持ちをおさえながらゲーセンの自動ドアを開くと、
クーラーの冷気が、頭冷やせよw、とでも言いたげに俺の身体を包んだ。
俺がここに来た目的はただ一つ! 一部地域で超人気のカードゲーム≪カード・ドミネイト≫だ!
定時になったので仕事を切り上げると、
俺は神業のようにタイムカードを切ってゲーセン『アドアッー!!ス』に直行する。
仕事のストレスをゲームで発散するダメ人間っぷりは、社内でももっぱらの噂だが気にしない!
オフィス街を抜けたら、ネクタイを緩めて周囲の目も気にせずひた走る!
商店街のゲートを右に曲がればお目当てのゲーセンに到着だ。
はやる気持ちをおさえながらゲーセンの自動ドアを開くと、
クーラーの冷気が、頭冷やせよw、とでも言いたげに俺の身体を包んだ。
俺がここに来た目的はただ一つ! 一部地域で超人気のカードゲーム≪カード・ドミネイト≫だ!
カード・ドミネイトとは、最大八名までプレイできる超巨大筐体で、
名刺ほどの大きさのカードをタッチパネル上に配置し、
そのカードを”一部隊”として操作するリアルタイムウォーシュミレーションだ。
カードには武将や軍師などのイラストが描かれており、これらのカードは一枚一枚能力が設定されていて、
複数のカードの中から自分好みの部隊(これをデッキという。ハズ)を作り上げる楽しみもある。
まぁ、この手のゲームにはバランスブレイカー的な高性能カードが往々にしてあるわけだが、
それも、自分の戦略で叩き潰すのも楽しみの一つだ。
なんせ、シュミレーションといっても、六角四角ヘクスではなく、
カードの動き、向きをタッチパネルが読み取って、ゲーム上で再現するのだから柔軟性が段違いに高い。
俺は、このゲームの全国大会で三位に入賞したことがある。
その時の一位のヤツもこのゲーセンの常連なのだが、今日も来ているだろうか?
「おお、やっと来たっふ。サラリー遅いっふ」
「しかたないでヤンス! サラリーはボキ達のようなニートとは違うでヤンス!」
筐体の前で、いつものドミネイト仲間達が待っていた。
語尾に≪ふ≫をつける巨漢が「[ピザ]リ」。あだ名だ。命名人は俺だ。理由は[ピザ]だからだ。
語尾に≪ヤンス≫をつける痩身長躯が「ガリアン」。もちろんあだ名で俺がつけた。ガリだからだ。
俺のあだなは「サラリー」。これはさっきの二人が命名してくれた。ネーミングセンスは五十歩百歩だ。
179 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/09(水) 22:09:43.83 ID:cV7rcjQo
「うぃーっす! あれ? チャンプはまだ来てねえの?」
チャンプはこの店の常連で、俺達のドミネイト仲間であり最大のライバルだ。
先程の≪全国大会一位のヤツ≫ってのはこのチャンプのことで、
仕事終りには、俺とチャンプ、デフ”リとガリアンの四人で、いつも閉店になるまで遊んでいる。
チャンプは四人の中では最年少の15才で、どこかのお坊ちゃまなのか経済力はハンパない。
「遅いっふね。いつもならワンゲームやってるハズっふよね?」
「多分トイレにでも行ってるでヤンスよ!」
「そっかぁ。こないだオークションで≪無敵将軍ル=ブ≫入手したからさ、デッキが機能するか試してみたかったんだよね」
「うひょーーー!! 無敵将軍ktkr! アッシで良ければ相手になるでヤンス!」
「サラリー! おれも戦いたいっふ!」
「いだだだだだだだだだだ!!」
「クスクス……」
デフ”とガリに腕を引っ張られ、大岡裁きスタイルの俺を見て、見知らぬ少女が微笑んでいる。
誰だ? このゲーセンではあまり見ない顔だ。
流行のものとは思えない地味目のワンピースに、これまた地味なサンダル。
背中あたりまで伸びた髪を二つに分け、先端を髪留めでまとめて首筋から胸に流している。
身にまとうファッションが幼さを増長させていて、少女の年齢を把握しにくくさせている。
ただ、少女の表情はどこか大人びていて、白い肌に映える赤い唇が妖しく、美しく思えた。
「か、可憐っふ……」
「可憐でヤンス……」
どうやらこの少女に見とれていたのは俺だけではなかったらしい。
ロリコンなのも俺だけじゃなかった! 俺だけじゃなかった!!
少女はそんな穢れた俺達を無視してカード・ドミネイトの筐体に腰掛ける。
「……よっと」
(ちょwwwwww子供がドミネイトをプレイするのかよwwww2プレイ500円だぞ!)
そんな俺の勝手な懸念も無視して、少女は男物のサイフから100円玉を五枚投入してみせた。
少女のサイズでは大きすぎる椅子に座って、ぷらんぷらんと足を振り子のように動かしている。
その可愛い振り子動作を見ているうちに、いつの間にか俺は向かいの筐体から対戦を挑んでいた。
名刺ほどの大きさのカードをタッチパネル上に配置し、
そのカードを”一部隊”として操作するリアルタイムウォーシュミレーションだ。
カードには武将や軍師などのイラストが描かれており、これらのカードは一枚一枚能力が設定されていて、
複数のカードの中から自分好みの部隊(これをデッキという。ハズ)を作り上げる楽しみもある。
まぁ、この手のゲームにはバランスブレイカー的な高性能カードが往々にしてあるわけだが、
それも、自分の戦略で叩き潰すのも楽しみの一つだ。
なんせ、シュミレーションといっても、六角四角ヘクスではなく、
カードの動き、向きをタッチパネルが読み取って、ゲーム上で再現するのだから柔軟性が段違いに高い。
俺は、このゲームの全国大会で三位に入賞したことがある。
その時の一位のヤツもこのゲーセンの常連なのだが、今日も来ているだろうか?
「おお、やっと来たっふ。サラリー遅いっふ」
「しかたないでヤンス! サラリーはボキ達のようなニートとは違うでヤンス!」
筐体の前で、いつものドミネイト仲間達が待っていた。
語尾に≪ふ≫をつける巨漢が「[ピザ]リ」。あだ名だ。命名人は俺だ。理由は[ピザ]だからだ。
語尾に≪ヤンス≫をつける痩身長躯が「ガリアン」。もちろんあだ名で俺がつけた。ガリだからだ。
俺のあだなは「サラリー」。これはさっきの二人が命名してくれた。ネーミングセンスは五十歩百歩だ。
179 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/09(水) 22:09:43.83 ID:cV7rcjQo
「うぃーっす! あれ? チャンプはまだ来てねえの?」
チャンプはこの店の常連で、俺達のドミネイト仲間であり最大のライバルだ。
先程の≪全国大会一位のヤツ≫ってのはこのチャンプのことで、
仕事終りには、俺とチャンプ、デフ”リとガリアンの四人で、いつも閉店になるまで遊んでいる。
チャンプは四人の中では最年少の15才で、どこかのお坊ちゃまなのか経済力はハンパない。
「遅いっふね。いつもならワンゲームやってるハズっふよね?」
「多分トイレにでも行ってるでヤンスよ!」
「そっかぁ。こないだオークションで≪無敵将軍ル=ブ≫入手したからさ、デッキが機能するか試してみたかったんだよね」
「うひょーーー!! 無敵将軍ktkr! アッシで良ければ相手になるでヤンス!」
「サラリー! おれも戦いたいっふ!」
「いだだだだだだだだだだ!!」
「クスクス……」
デフ”とガリに腕を引っ張られ、大岡裁きスタイルの俺を見て、見知らぬ少女が微笑んでいる。
誰だ? このゲーセンではあまり見ない顔だ。
流行のものとは思えない地味目のワンピースに、これまた地味なサンダル。
背中あたりまで伸びた髪を二つに分け、先端を髪留めでまとめて首筋から胸に流している。
身にまとうファッションが幼さを増長させていて、少女の年齢を把握しにくくさせている。
ただ、少女の表情はどこか大人びていて、白い肌に映える赤い唇が妖しく、美しく思えた。
「か、可憐っふ……」
「可憐でヤンス……」
どうやらこの少女に見とれていたのは俺だけではなかったらしい。
ロリコンなのも俺だけじゃなかった! 俺だけじゃなかった!!
少女はそんな穢れた俺達を無視してカード・ドミネイトの筐体に腰掛ける。
「……よっと」
(ちょwwwwww子供がドミネイトをプレイするのかよwwww2プレイ500円だぞ!)
そんな俺の勝手な懸念も無視して、少女は男物のサイフから100円玉を五枚投入してみせた。
少女のサイズでは大きすぎる椅子に座って、ぷらんぷらんと足を振り子のように動かしている。
その可愛い振り子動作を見ているうちに、いつの間にか俺は向かいの筐体から対戦を挑んでいた。
188 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/09(水) 22:44:58.02 ID:cV7rcjQo
(なんで俺はこんな子供に……。まぁいい。デッキも未完成だし、本気出すまでもないだろ)
少女の方に目をやると、もうデッキを展開し終えたのか、棒付きキャンディの袋を開いていた。
海外の菓子会社の商品で、ツッパツァップスというやつだ。チャンプがこれ好きだったからよく覚えている。
少女がそのキャンディを口に含む。
開かれる口元。キャンディを受け入れる舌。綺麗に整った白い歯。キャンディを受け入れて柔らかく歪む唇。妖しく光る唾液。ふくらむ頬……。
キャンディを口に含む、ただそれだけのことなのに目が離せなかった!
彼女のひとつひとつの動作が脳裏に焼きついて離れない。まるで女性の裸を始めて目の当たりにした時の興奮にも似ている……。
俺が見蕩れていると、少女の口元がわずかにつりあがった。どうやら少女を凝視しているのに気付いたっぽい。
(やっぺ、見とれてる場合じゃねえ! デッキ展開しねえと……)
俺は慌ててデッキケースからカードを引き抜いた。
スリーブに包まれた5枚の我が精鋭がタッチパネルの前に躍り出る!
≪無敵将軍ル=ブ≫。ホロの箔押し仕様のまさにレア!とでも言わんばかりの存在感&光沢感……!
実力も超レア級! これに勝るカードはまずないだろう。あえて挙げるとするなら≪義兄弟ヒゲヲ≫か≪無傷武将フォンダム≫あたりだろうか。
≪十文字槍ユキムラス≫。攻めてよし守ってよしの優れた武将だ。ただ、フレーバーテキストの『ふぇぇぇ~、おやかたさま好き好きですぅ~~(はぁと)』と
女にしか見えない、目のくりっとした半ズボン姿のショタイラストが嫌いだ。
≪怪鳥軍師イャンカック≫。無敵将軍ル=ブを縦横無尽に活躍させるためには欠かせない軍師カード。
戦闘は苦手だが、その分策略でカバー。アンコモンながらスペックは高いが、エリマキトカゲのような鳥のイラストが嫌いだ。
≪踊り子二喬ダイチョウセン≫。そのテの人達に媚び媚びのロリキャラ。俺はイラストでなく実力でデッキを作っているのを先に言っておく。
≪泣いて斬られろ!バーショック≫。コストが余っていたから突っこんだ。おとりにでもなれば御の字だ。
(なんで俺はこんな子供に……。まぁいい。デッキも未完成だし、本気出すまでもないだろ)
少女の方に目をやると、もうデッキを展開し終えたのか、棒付きキャンディの袋を開いていた。
海外の菓子会社の商品で、ツッパツァップスというやつだ。チャンプがこれ好きだったからよく覚えている。
少女がそのキャンディを口に含む。
開かれる口元。キャンディを受け入れる舌。綺麗に整った白い歯。キャンディを受け入れて柔らかく歪む唇。妖しく光る唾液。ふくらむ頬……。
キャンディを口に含む、ただそれだけのことなのに目が離せなかった!
彼女のひとつひとつの動作が脳裏に焼きついて離れない。まるで女性の裸を始めて目の当たりにした時の興奮にも似ている……。
俺が見蕩れていると、少女の口元がわずかにつりあがった。どうやら少女を凝視しているのに気付いたっぽい。
(やっぺ、見とれてる場合じゃねえ! デッキ展開しねえと……)
俺は慌ててデッキケースからカードを引き抜いた。
スリーブに包まれた5枚の我が精鋭がタッチパネルの前に躍り出る!
≪無敵将軍ル=ブ≫。ホロの箔押し仕様のまさにレア!とでも言わんばかりの存在感&光沢感……!
実力も超レア級! これに勝るカードはまずないだろう。あえて挙げるとするなら≪義兄弟ヒゲヲ≫か≪無傷武将フォンダム≫あたりだろうか。
≪十文字槍ユキムラス≫。攻めてよし守ってよしの優れた武将だ。ただ、フレーバーテキストの『ふぇぇぇ~、おやかたさま好き好きですぅ~~(はぁと)』と
女にしか見えない、目のくりっとした半ズボン姿のショタイラストが嫌いだ。
≪怪鳥軍師イャンカック≫。無敵将軍ル=ブを縦横無尽に活躍させるためには欠かせない軍師カード。
戦闘は苦手だが、その分策略でカバー。アンコモンながらスペックは高いが、エリマキトカゲのような鳥のイラストが嫌いだ。
≪踊り子二喬ダイチョウセン≫。そのテの人達に媚び媚びのロリキャラ。俺はイラストでなく実力でデッキを作っているのを先に言っておく。
≪泣いて斬られろ!バーショック≫。コストが余っていたから突っこんだ。おとりにでもなれば御の字だ。
201 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/10(木) 22:23:47.41 ID:hjVTNQko
「まけないからね、サラリー!」
我が精鋭部隊を展開し終えると同時に少女が口を開いた。
少女の方へ目を向けると、挑戦的な、それでいてどことなく人を惹きつける、そんな不思議な微笑を浮かべている。
≪小悪魔の笑み≫といった表現はイメージしにくいんだが、多分こういう笑顔の事なんだろうと勝手に納得した。
「ん? 待てよ、なんで俺のあだ名知ってるんだ?」
「そりゃきっと、さっきのやりとり聞かれてたでヤンスよ!」
「そっか。まぁそうだろうな」
言ってみたが、何かが心に引っかかった。
あだ名の事じゃなくて、少女の口調が誰かに似ているような……。そんな気がする。
俺の頭の中のモヤモヤは、ゲーム開始を知らせる銅鑼の音が掻き消した。
「まけないからね、サラリー!」
我が精鋭部隊を展開し終えると同時に少女が口を開いた。
少女の方へ目を向けると、挑戦的な、それでいてどことなく人を惹きつける、そんな不思議な微笑を浮かべている。
≪小悪魔の笑み≫といった表現はイメージしにくいんだが、多分こういう笑顔の事なんだろうと勝手に納得した。
「ん? 待てよ、なんで俺のあだ名知ってるんだ?」
「そりゃきっと、さっきのやりとり聞かれてたでヤンスよ!」
「そっか。まぁそうだろうな」
言ってみたが、何かが心に引っかかった。
あだ名の事じゃなくて、少女の口調が誰かに似ているような……。そんな気がする。
俺の頭の中のモヤモヤは、ゲーム開始を知らせる銅鑼の音が掻き消した。
少女の部隊は俺と同じく5枚で構成されていた。
≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫強力な攻撃翌力の為に他の全ての能力を捨て去った、活用タイミングが限られる尖ったカード。
初心者の頃はパワーの大きさだけでデッキ作るから、簡単に〆られるんだよな。俺もそうだった。
≪蛮族王シャーマカーン≫可も無く不可もない、無難なコモンカード。備え付けのゴミ箱によく捨ててある。
≪弓の達人コーチウ≫可も無く不可もない、無難なアンコモンカード。備え付けのいらないカードBOXでよく眠っている。
≪隻眼マサムネン≫俺の≪ユキムラス≫と同等クラスの武将。例によってイラストはショタ全開だ。
≪虎戦車考案者ゲツエ≫レア軍師。最大の特徴として部隊の移動旋回速度を速める計略が使える。
この計略で足の遅いゴツコツゴツを活かそうと目論んでいるに違いない。なかなか考えている。
≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫強力な攻撃翌力の為に他の全ての能力を捨て去った、活用タイミングが限られる尖ったカード。
初心者の頃はパワーの大きさだけでデッキ作るから、簡単に〆られるんだよな。俺もそうだった。
≪蛮族王シャーマカーン≫可も無く不可もない、無難なコモンカード。備え付けのゴミ箱によく捨ててある。
≪弓の達人コーチウ≫可も無く不可もない、無難なアンコモンカード。備え付けのいらないカードBOXでよく眠っている。
≪隻眼マサムネン≫俺の≪ユキムラス≫と同等クラスの武将。例によってイラストはショタ全開だ。
≪虎戦車考案者ゲツエ≫レア軍師。最大の特徴として部隊の移動旋回速度を速める計略が使える。
この計略で足の遅いゴツコツゴツを活かそうと目論んでいるに違いない。なかなか考えている。
見た感じ、我がル=ブに匹敵するカードは存在しない。ゴツコツゴツのパワーは脅威になるが、
移動力が無きに等しいレベルなので実質は5対4の戦いになるはずだ。
一気呵成に攻め立てて、敵部隊を揉みに揉む。それで、決着はつくだろう。
だがそれではル=ブの初陣に相応しくない。
俺は戦略など一切考えずに≪無敵将軍ル=ブ≫を単騎、敵陣に突っ込ませてみた。
──速い!!
ル=ブの愛馬≪レッド・セキトーバー≫のスペックを再現しているのだろうか。
敵のエリアまであっという間にたどり着いてみせた。
この速度に俺はリ○ジのデビ○カーに初めて対峙した時のことを思い出していた。
「サラリー! 自分の世界に浸ってる場合じゃないでヤンス!」
そうだった。単騎で敵陣に特攻するのは、いくらル=ブのようなレアカードでも自殺行為に等しい。
移動力が無きに等しいレベルなので実質は5対4の戦いになるはずだ。
一気呵成に攻め立てて、敵部隊を揉みに揉む。それで、決着はつくだろう。
だがそれではル=ブの初陣に相応しくない。
俺は戦略など一切考えずに≪無敵将軍ル=ブ≫を単騎、敵陣に突っ込ませてみた。
──速い!!
ル=ブの愛馬≪レッド・セキトーバー≫のスペックを再現しているのだろうか。
敵のエリアまであっという間にたどり着いてみせた。
この速度に俺はリ○ジのデビ○カーに初めて対峙した時のことを思い出していた。
「サラリー! 自分の世界に浸ってる場合じゃないでヤンス!」
そうだった。単騎で敵陣に特攻するのは、いくらル=ブのようなレアカードでも自殺行為に等しい。
202 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 22:25:57.13 ID:3vxchGQo
俺は慌ててル=ブのカードを自軍エリアにUターンさせる。
現実と同じく背後や側面からの攻撃には弱いもので、
去り際に背後から集中砲火を受けてしまう。ル=ブが自軍エリア到着時にはライフ20%を切っていた。
「ふっふーん!」
少女の満足そうな呟き。
この少女の言動、仕草にはなにか心にひっかかるものがある。
「でも良かったでふ。もしかしたら≪ドミネイト≫されてたかもしれないっふ!」
「まぁサラリーもそこまでアフォじゃないでヤンス」
≪ドミネイト≫とは、このゲーム最大の売りのひとつで、敵のカードを四体のカードで取り囲むことに成功すると、
その敵のカードを自軍の部隊として操る事が可能になる、一発逆転の必殺技だ!
≪ドミネイト≫、つまり”威圧”のことを指すが、
その能力から、スラングで「心変わり」、「裏切り」または「誘惑」という意味で使われている。
(まぁ画期的なのは認めるけどさ、『初心者いじめ』のあだ名の通り、
新参を参加させにくくしてるんだよな。このシステム)
俺は意識をパネルに戻して部隊を再編する。
ル=ブを後衛に下がらせると同時にライフ回復効果のあるダイチョウセンを隣接させて、
さらにユキムラスとバーショックを前衛に出して戦線を押し上げた。
俺の陣形を見て、少女も適時陣形を変えてゆく。
──俺は正直舌を巻いた!
少女の敷いた陣は、明らかにこちらのカードのスペックを知った上で作られていたからだ。
こちらかの攻撃を最小限に受け流し、チャンスが訪れたら最大限の打撃を間断なく与え続けるだろう。
俺が考えうる限りで、最善の陣容なのだ。それが、じわりじわりと迫ってくる。
(なんなんだ一体! いったい何なんだこの少女はッ!)
「……こっからが勝負だからね!」
いかにも愉しそうな少女の言葉と、敵部隊への焦りが、俺の心をかき乱した。
203 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 22:26:37.70 ID:3vxchGQo
戦況は膠着状態に陥った。
俺の部隊を火に例えるなら、少女は水だった。
こちらの攻撃を柔らかく受け止め、隙あらば火をかき消さんと総力でぶつかってくる。
たまらず手負いのル=ブを前に出せば、少女は必ずこれに二部隊使ってせき止める。
二対一の闘いは下策もいいところなので、こうなると退くしかない。
お互い部隊は疲弊している。大した能力を持ち合わせていないバーショックなどは虫の息だ。
(ル=ブのライフは60%まで回復したか……。そろそろ攻め時だな)
ル=ブが戦場へ躍り出る。
駈けた勢いを殺さないように≪隻眼マサムネン≫に特攻をしかけた。
それと同時に≪怪鳥軍師イャンカック≫の策略、≪攻撃翌力UP【大】+体力アップ【大】≫を使用する。
強化したとはいえ、一撃でマサムネンの部隊は全滅した。これでしばらくは戦場へ戻れないだろう。
敵もさるもの、≪虎戦車考案者ゲツエ≫の、≪移動旋回速度UP≫の策略を利用して、ル=ブの攻撃をかわしてみせる。
「へへっ、”兵は拙速を尊ぶ”ってね!」
見事なカードさばきだ、と俺は素直に感動した。
実際にここまで部隊を操れる人は、俺の周りではチャンプぐらいしか知らない。
(この子、もしかしてチャンプの妹か? でもあいつって一人っ子だったような……)
戦場では依然、敵を捉えられない自部隊が必死の抵抗を続けていた。
俺は逃げ回る敵部隊に業を煮やし、≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫に狙いを定めた。
こいつは計略で速度UPしてても依然鈍足だ。
単騎で攻める事になるが、強化している状態ならまず当たり負けしない。
距離を詰めて一撃を見舞う。
ライフゲージの色が、黄色から赤に一気に変わる。残りのライフは10%ほどだろうか。
「やったぁ!!」
攻撃を受けたというのに、少女は歓喜の声をあげている。
その理由はすぐにわかった。残りの三部隊が一斉にル=ブ目掛けて突進してきたのだ。
俺はUターンして一度自軍エリアまで退くことにした。
──退けなかった。
移動ルート上に、≪蛮族王シャーマカーン≫が取り付いて行く手を遮ったからだ。
間髪いれず、側面に≪弓の達人コーチウ≫反対側に≪虎戦車考案者ゲツエ≫が取り付いた。
正面には先程の≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫が近づいてくる……。
「ちょwwおまwwww、来るな、来ないでくれぇ~~!!」
ゆっくりと巨人が迫ってくる。巨人の足音は敗北へのカウントダウンに他ならない。
「全国大会3位のこの俺が! ドミネイトされるなんて! 恥ずかしすぐる!」
そんな俺の気も知らず、筐体に備え付けられた大型画面は【ドミネイト成功!】の文字を立派に表示してみせた。
204 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 22:27:01.74 ID:3vxchGQo
【我が軍の完敗ですぅ!】
画面上には藤甲鎧に身を包んだマスコットキャラ(幼女)が自軍の惨状を知らせてくれていた。
(……それくらい分かってるつーの)
一度深呼吸し、高翌揚していた気分を落ち着かせる。
相手が誰であろうと負けは負けだ。今回の敗因を糧にしてまた強くなればいい……。
「トントントントン……」
何かを叩く音が聞こえて、俺は少女に眼を向けると、
少女は筐体に肘ついて、自身の右のこめかみを人差し指で叩いていた。
それは、頭の出来が違うんだよねwwww、とアピールしているようにも見える。
口元にはあの≪小悪魔の笑み≫があり、思わず魅入ってしまう。
トントントントントン……
その音を聞いているうちに俺は、自分の心に引っかかっていたものがひとつひとつ解氷していった。
どことなく気になっていた少女の言動、あれはチャンプそのものだ。
少女が使っていた男物のサイフ、これもチャンプが使っていたものと同じものだ。
巧みな采配も、あれもチャンプしか出来ない芸当だ。それは、戦った者同士でしか分かり合えない。
そしてこのこめかみを叩くポーズ。実際にチャンプもやっていたことがある。
彼女がチャンプなら全てに説明がつく! 俺は思わず立ち上がっていた。
何故女の姿をしてるのかはわからない。けど、彼女は間違いなく……。
「おまえ……、チャンプ、なのか?」
少女、いやチャンプは、答えの代わりに≪天使の笑み≫を俺に向けた。
俺は慌ててル=ブのカードを自軍エリアにUターンさせる。
現実と同じく背後や側面からの攻撃には弱いもので、
去り際に背後から集中砲火を受けてしまう。ル=ブが自軍エリア到着時にはライフ20%を切っていた。
「ふっふーん!」
少女の満足そうな呟き。
この少女の言動、仕草にはなにか心にひっかかるものがある。
「でも良かったでふ。もしかしたら≪ドミネイト≫されてたかもしれないっふ!」
「まぁサラリーもそこまでアフォじゃないでヤンス」
≪ドミネイト≫とは、このゲーム最大の売りのひとつで、敵のカードを四体のカードで取り囲むことに成功すると、
その敵のカードを自軍の部隊として操る事が可能になる、一発逆転の必殺技だ!
≪ドミネイト≫、つまり”威圧”のことを指すが、
その能力から、スラングで「心変わり」、「裏切り」または「誘惑」という意味で使われている。
(まぁ画期的なのは認めるけどさ、『初心者いじめ』のあだ名の通り、
新参を参加させにくくしてるんだよな。このシステム)
俺は意識をパネルに戻して部隊を再編する。
ル=ブを後衛に下がらせると同時にライフ回復効果のあるダイチョウセンを隣接させて、
さらにユキムラスとバーショックを前衛に出して戦線を押し上げた。
俺の陣形を見て、少女も適時陣形を変えてゆく。
──俺は正直舌を巻いた!
少女の敷いた陣は、明らかにこちらのカードのスペックを知った上で作られていたからだ。
こちらかの攻撃を最小限に受け流し、チャンスが訪れたら最大限の打撃を間断なく与え続けるだろう。
俺が考えうる限りで、最善の陣容なのだ。それが、じわりじわりと迫ってくる。
(なんなんだ一体! いったい何なんだこの少女はッ!)
「……こっからが勝負だからね!」
いかにも愉しそうな少女の言葉と、敵部隊への焦りが、俺の心をかき乱した。
203 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 22:26:37.70 ID:3vxchGQo
戦況は膠着状態に陥った。
俺の部隊を火に例えるなら、少女は水だった。
こちらの攻撃を柔らかく受け止め、隙あらば火をかき消さんと総力でぶつかってくる。
たまらず手負いのル=ブを前に出せば、少女は必ずこれに二部隊使ってせき止める。
二対一の闘いは下策もいいところなので、こうなると退くしかない。
お互い部隊は疲弊している。大した能力を持ち合わせていないバーショックなどは虫の息だ。
(ル=ブのライフは60%まで回復したか……。そろそろ攻め時だな)
ル=ブが戦場へ躍り出る。
駈けた勢いを殺さないように≪隻眼マサムネン≫に特攻をしかけた。
それと同時に≪怪鳥軍師イャンカック≫の策略、≪攻撃翌力UP【大】+体力アップ【大】≫を使用する。
強化したとはいえ、一撃でマサムネンの部隊は全滅した。これでしばらくは戦場へ戻れないだろう。
敵もさるもの、≪虎戦車考案者ゲツエ≫の、≪移動旋回速度UP≫の策略を利用して、ル=ブの攻撃をかわしてみせる。
「へへっ、”兵は拙速を尊ぶ”ってね!」
見事なカードさばきだ、と俺は素直に感動した。
実際にここまで部隊を操れる人は、俺の周りではチャンプぐらいしか知らない。
(この子、もしかしてチャンプの妹か? でもあいつって一人っ子だったような……)
戦場では依然、敵を捉えられない自部隊が必死の抵抗を続けていた。
俺は逃げ回る敵部隊に業を煮やし、≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫に狙いを定めた。
こいつは計略で速度UPしてても依然鈍足だ。
単騎で攻める事になるが、強化している状態ならまず当たり負けしない。
距離を詰めて一撃を見舞う。
ライフゲージの色が、黄色から赤に一気に変わる。残りのライフは10%ほどだろうか。
「やったぁ!!」
攻撃を受けたというのに、少女は歓喜の声をあげている。
その理由はすぐにわかった。残りの三部隊が一斉にル=ブ目掛けて突進してきたのだ。
俺はUターンして一度自軍エリアまで退くことにした。
──退けなかった。
移動ルート上に、≪蛮族王シャーマカーン≫が取り付いて行く手を遮ったからだ。
間髪いれず、側面に≪弓の達人コーチウ≫反対側に≪虎戦車考案者ゲツエ≫が取り付いた。
正面には先程の≪南蛮巨人ゴツコツゴツ≫が近づいてくる……。
「ちょwwおまwwww、来るな、来ないでくれぇ~~!!」
ゆっくりと巨人が迫ってくる。巨人の足音は敗北へのカウントダウンに他ならない。
「全国大会3位のこの俺が! ドミネイトされるなんて! 恥ずかしすぐる!」
そんな俺の気も知らず、筐体に備え付けられた大型画面は【ドミネイト成功!】の文字を立派に表示してみせた。
204 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 22:27:01.74 ID:3vxchGQo
【我が軍の完敗ですぅ!】
画面上には藤甲鎧に身を包んだマスコットキャラ(幼女)が自軍の惨状を知らせてくれていた。
(……それくらい分かってるつーの)
一度深呼吸し、高翌揚していた気分を落ち着かせる。
相手が誰であろうと負けは負けだ。今回の敗因を糧にしてまた強くなればいい……。
「トントントントン……」
何かを叩く音が聞こえて、俺は少女に眼を向けると、
少女は筐体に肘ついて、自身の右のこめかみを人差し指で叩いていた。
それは、頭の出来が違うんだよねwwww、とアピールしているようにも見える。
口元にはあの≪小悪魔の笑み≫があり、思わず魅入ってしまう。
トントントントントン……
その音を聞いているうちに俺は、自分の心に引っかかっていたものがひとつひとつ解氷していった。
どことなく気になっていた少女の言動、あれはチャンプそのものだ。
少女が使っていた男物のサイフ、これもチャンプが使っていたものと同じものだ。
巧みな采配も、あれもチャンプしか出来ない芸当だ。それは、戦った者同士でしか分かり合えない。
そしてこのこめかみを叩くポーズ。実際にチャンプもやっていたことがある。
彼女がチャンプなら全てに説明がつく! 俺は思わず立ち上がっていた。
何故女の姿をしてるのかはわからない。けど、彼女は間違いなく……。
「おまえ……、チャンプ、なのか?」
少女、いやチャンプは、答えの代わりに≪天使の笑み≫を俺に向けた。
206 :VIPにかわりましてパー速からお送りしますPart774 [sage]:2007/05/11(金) 23:14:30.37 ID:3vxchGQo
「だーかーらー、朝起きたら女になってたんだって! 」
「原因とか心当たりないっふ? 新薬の臨床実験とか……」
「そんな危険なバイトしないよ、お金ならあるもん!」
「いやー、最近の新薬はオトコノコをここまで可愛くできるんでヤンスねー」
「だから違うってば! ねぇ、サラリーはどう思う?」
「ん? 特に何も」
「特に何もってナンだよ! 俺はこの身体で悩んでるんだぞ! サラリーはひどいやつだ」
「ごめん、言い方が悪かった。でもさ! どんな姿になってもチャンプはチャンプだろ?
俺にとってはかけがえの無い仲間なのは変らないよ。それは皆だって同じなはずだぜ?」
「そりゃモチロンでヤンス!」
「こんごともよろしくっふ!」
「むぅ~、、、ま、いっか! 俺、女になっちゃったケド、これからもよろしくね!」
彼女、チャンプはそう言ってペコリと頭を下げた。揺れ動く頭髪からシャンプーの甘い香りが鼻をくすぐる。
チャンプの仕草ひとつひとつがいとおしい……。
確かに性は変わったが、それは瑣末な問題だ。
──俺はこの少女を真剣に欲している。
この気持の昂りは自分で抑える事は出来ないだろう。
何故なら棒付き飴をくわえるあの仕草を見た時から、俺の心はチャンプに≪ドミネイト≫されていたのだから。
「だーかーらー、朝起きたら女になってたんだって! 」
「原因とか心当たりないっふ? 新薬の臨床実験とか……」
「そんな危険なバイトしないよ、お金ならあるもん!」
「いやー、最近の新薬はオトコノコをここまで可愛くできるんでヤンスねー」
「だから違うってば! ねぇ、サラリーはどう思う?」
「ん? 特に何も」
「特に何もってナンだよ! 俺はこの身体で悩んでるんだぞ! サラリーはひどいやつだ」
「ごめん、言い方が悪かった。でもさ! どんな姿になってもチャンプはチャンプだろ?
俺にとってはかけがえの無い仲間なのは変らないよ。それは皆だって同じなはずだぜ?」
「そりゃモチロンでヤンス!」
「こんごともよろしくっふ!」
「むぅ~、、、ま、いっか! 俺、女になっちゃったケド、これからもよろしくね!」
彼女、チャンプはそう言ってペコリと頭を下げた。揺れ動く頭髪からシャンプーの甘い香りが鼻をくすぐる。
チャンプの仕草ひとつひとつがいとおしい……。
確かに性は変わったが、それは瑣末な問題だ。
──俺はこの少女を真剣に欲している。
この気持の昂りは自分で抑える事は出来ないだろう。
何故なら棒付き飴をくわえるあの仕草を見た時から、俺の心はチャンプに≪ドミネイト≫されていたのだから。
終