498 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 20:48:05.14 ID:ZGiKPIg0
『シガレット→しがれっと』第六話
『シガレット→しがれっと』第六話
目の前に座る女は長い説明を終えて一息ついた。
一方俺は、彼女の話を素直に信じられずに面食らっていた。しかしこれは夢ではないのだと正座で痺れた両足が語っていた。
もう一度頭の中で、俺が今の彼女の話の中で理解できた部分を繋ぎ合わせて簡潔に纏めてみた。
一方俺は、彼女の話を素直に信じられずに面食らっていた。しかしこれは夢ではないのだと正座で痺れた両足が語っていた。
もう一度頭の中で、俺が今の彼女の話の中で理解できた部分を繋ぎ合わせて簡潔に纏めてみた。
彼女の元居た世界はこの世界、つまり俺が生きている世界から遠い昔に分裂した別の世界だという。
向こうの世界ではこっちと比べものにならないほど文明が進み、こちらで夢とされている事以上の事が現実として存在しているらしい。
そんな彼女の世界に住む学者たちは、かなり前からこちらの世界の存在を何らかの形で発見した。
そして何年か前にこちらの世界に移動できるパラレルワープという装置が完成し、こちらの世界への干渉が可能になったそうだ。
かくして、こちらの世界で時々起こる不可解な事件こそ、その”干渉”の仕業によるものらしい。
しかし干渉行為の中にはこちらの世界の理を無視するものもあり、彼女の世界の政府はそれを重大な犯罪として罰するようになった。それにより干渉行為は激減した。
それでもごく一部の人間が自らの欲を満たしたいが為に、こちらの世界への干渉が無くなる事はなかった。
そして、彼女の世界で最重要危険人物とされる一人の科学者が数ヶ月前にこちらの世界に逃亡、行方を眩ました。
その科学者はタカサ博士と呼ばれ、生物研究の第一人者であったが、近年は人体実験によりDNAを違法に改造しているとの報告があった。
その報告の後、急いで政府機関が博士の身柄を確保しに向かったが、その時彼は既に姿を消し、後の調査でこちらの世界に居ることが判明した。
そして、大きな干渉を防ぐために少人数で編成された捜索部隊がこちらの世界に派遣され、そのメンバーの一人こそ自分であると彼女は言った。
「難しいが、少しは理解できた・・・・・・と思う。ところで、名前をまだ聞いてなかったけど、教えてくれるか?」
「そう言えばそうね。私の名前はタカサ・カグヤ。年齢はこちらの時間で考えると大体21歳くらいよ」
一目見たときから思ってはいたが、やはり年上らしい。それよりも、彼女の名前に気になることがあった。俺は少し悩んだ後、尋ねてみた。
「ちゃんと話を聞いてくれていたのね、驚いたわ。別に隠すつもりはなかったけど、今アンタが考えているとおり、私はタカサ博士の実の娘よ」
「そうか。自分の父親を追わなければいけないなんて大変だな」
俺の言葉が気に障ったのか、彼女は少しムッとした表情になる。
「捜索隊には私が自分で志願したの。あの男は私と母さんを裏切ったんだもの、ゆるせない」
そう語る彼女の目にははっきりとした憎悪が浮かんでいた。よほどのことがあったのだろう。
それにしても、理由はどうであれ親子が憎み憎まれの関係になってしまうのは悲しいことだと思う。もちろん俺も人のことは言えないが・・・・・・。
499 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21:27:28.47 ID:ZGiKPIg0
「んじゃ、もしかしてそのタバコは博士が作ったものか?」
彼女が手に持っているタバコと言われればタバコに見えてしまうその物体を指さす。
「ええ、これは口にくわえて吸うことにより、体質を変化させ肉体の怪我を治す効果があるの」
でもね、と彼女は続けた。
「アンタは火を付けて吸った。それによりこれの性質が偶然変化してしまい、元と違った効果が出てしまったみたいね」
「そんな馬鹿な・・・・・・」
そして彼女が言うには、俺の体は完璧に女へと変化してしまい、このままいくら待っても元に戻る可能性はゼロに等しいらしい。
俺は目の前が真っ暗になってしまった。このままこうして女として生きていかなければならないのだろうか。
「頼む!そっちの力でなんとか元に戻せないか!?このままだなんてあんまりだ!」
女になり涙腺が緩くなっているのか、俺は頬を伝う涙を感じながら彼女にしがみついた。
しかし、無情な感じで彼女は立ち上がってすがりついていた俺を振り解いた。彼女の表情は見るからに怒りを孕んでいる。
「鬱陶しいわね!泣きたいのはこっちだって同じよ・・・・・・。あの夜、アンタとぶつかりさえしなければあいつを見失うこともなかった!」
・・・・・・かもしれない、と彼女は小声で付け足した。泣きたいのは彼女も同じみたいだった。
「ここまで知ってしまった以上、アンタもタカサ博士の捜索を手伝いなさい。博士の身柄を確保できればアンタの体だって治せるかもしれないわ」
拒否、という言葉はまったく頭に浮かばなかった。彼女の最後の一言で既に答えは決まっているのだ。
俺は服の袖で涙を拭うと、立ち上がって彼女の目を正面から見つめた。顔立ちはこちらの世界の人間と変わらないが、彼女は真の意味で違う世界の人間なのだ。
本当に全てを信じて良いのだろうか。いや、今の俺は彼女を信じる意外に元に戻る方法はないのだ。
「解った。俺に手伝えることがあるなら、なんだってするさ。でも、家族は巻き込まないと約束してくれ」
こんなおかしな、こちらでは非現実的なことになるのは俺だけで十分だ。
「ええ、約束するわ。けど、貴方から話すのもダメよ。こちらとしてもこれ以上干渉は避けたいもの」
「それと、アンタってのも止してくれ。俺のことは昭人って呼んで欲しい」
そう言って、俺は一回り小さくなってしまった右手を彼女の前に差し出す。
彼女は一瞬疑問を浮かべたが、すぐに納得したように自分の右手で差し出した手を握ってくれた。
「協力してもらうからには甘やかさないからな、昭人」
「善処してみるさ、カグヤさん」
この日、二人だけの、世界を超えた同盟が組まれた。
500 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21:55:51.08 ID:ZGiKPIg0
気が緩んだのか大きな欠伸が出そうになり、慌てて噛み[ピーーー]。時計に目をやると既に2時を過ぎていた。
「眠いの?大体話もしたし、今日はもう終わりにしましょ」
見るとカグヤさんも小さな欠伸を手で隠していた。キツイ性格の割に仕草は可愛いと思ってしまった。
「捜索の手伝いに関しては、朝起きた後にまた話すわね。ところで・・・・・・」
「ん?どうかした?」
「お風呂を借りることはできるかしら。私は寝る前と起きた後には必ずお風呂に入らないとダメなのよ」
お風呂?もしかして彼女の拠点にはお風呂がないのだろうか?別にこの時間なら家族も寝てるし構わないだろう。
「ああ、使って良いよ。家族を起こさないようになるべく静かに入ってくれるならね」
「そ、それくらい心得てるわよ・・・・・・」
とか言いつつも、すぐにでもお風呂に行きたそうにソワソワしている。
とりあえず、下の階にあるお風呂場に隣接した脱衣兼洗面所まで彼女を連れて行く。
お風呂の説明をしようと思ったが、それぐらい知っていると言われ、すぐに追い出されそうになった。
「それじゃ、俺はもう先に寝てるから、好きなだけ入ってよ」
「ありがと、助かるわ」
脱衣所のドアを閉めると、俺は何らかの興奮を感じた。何故なら妹以外の女性が自分の家のお風呂に入っているのだ。
しかし不思議とその興奮はすぐに収まり、覗こうとも思わずにさっさと自分の部屋に戻ってきてしまった。
彼女が風呂から上がるのを待ち、帰りを見送ろうとも考えたが、かなりの眠気に堪らず布団に潜り込む。
彼女には悪いが先に寝かせてもらおう。
「おやすみ・・・・・・」
照明を消し真っ暗になった部屋で、彼女に向けて言った言葉を最後に、俺はすぐ眠りに就いた。
そして、翌日――
いつもと違う窮屈感によって目を覚ますと・・・・・・。
何故か隣で彼女が気持ちよさそうな寝息を立てていた。
向こうの世界ではこっちと比べものにならないほど文明が進み、こちらで夢とされている事以上の事が現実として存在しているらしい。
そんな彼女の世界に住む学者たちは、かなり前からこちらの世界の存在を何らかの形で発見した。
そして何年か前にこちらの世界に移動できるパラレルワープという装置が完成し、こちらの世界への干渉が可能になったそうだ。
かくして、こちらの世界で時々起こる不可解な事件こそ、その”干渉”の仕業によるものらしい。
しかし干渉行為の中にはこちらの世界の理を無視するものもあり、彼女の世界の政府はそれを重大な犯罪として罰するようになった。それにより干渉行為は激減した。
それでもごく一部の人間が自らの欲を満たしたいが為に、こちらの世界への干渉が無くなる事はなかった。
そして、彼女の世界で最重要危険人物とされる一人の科学者が数ヶ月前にこちらの世界に逃亡、行方を眩ました。
その科学者はタカサ博士と呼ばれ、生物研究の第一人者であったが、近年は人体実験によりDNAを違法に改造しているとの報告があった。
その報告の後、急いで政府機関が博士の身柄を確保しに向かったが、その時彼は既に姿を消し、後の調査でこちらの世界に居ることが判明した。
そして、大きな干渉を防ぐために少人数で編成された捜索部隊がこちらの世界に派遣され、そのメンバーの一人こそ自分であると彼女は言った。
「難しいが、少しは理解できた・・・・・・と思う。ところで、名前をまだ聞いてなかったけど、教えてくれるか?」
「そう言えばそうね。私の名前はタカサ・カグヤ。年齢はこちらの時間で考えると大体21歳くらいよ」
一目見たときから思ってはいたが、やはり年上らしい。それよりも、彼女の名前に気になることがあった。俺は少し悩んだ後、尋ねてみた。
「ちゃんと話を聞いてくれていたのね、驚いたわ。別に隠すつもりはなかったけど、今アンタが考えているとおり、私はタカサ博士の実の娘よ」
「そうか。自分の父親を追わなければいけないなんて大変だな」
俺の言葉が気に障ったのか、彼女は少しムッとした表情になる。
「捜索隊には私が自分で志願したの。あの男は私と母さんを裏切ったんだもの、ゆるせない」
そう語る彼女の目にははっきりとした憎悪が浮かんでいた。よほどのことがあったのだろう。
それにしても、理由はどうであれ親子が憎み憎まれの関係になってしまうのは悲しいことだと思う。もちろん俺も人のことは言えないが・・・・・・。
499 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21:27:28.47 ID:ZGiKPIg0
「んじゃ、もしかしてそのタバコは博士が作ったものか?」
彼女が手に持っているタバコと言われればタバコに見えてしまうその物体を指さす。
「ええ、これは口にくわえて吸うことにより、体質を変化させ肉体の怪我を治す効果があるの」
でもね、と彼女は続けた。
「アンタは火を付けて吸った。それによりこれの性質が偶然変化してしまい、元と違った効果が出てしまったみたいね」
「そんな馬鹿な・・・・・・」
そして彼女が言うには、俺の体は完璧に女へと変化してしまい、このままいくら待っても元に戻る可能性はゼロに等しいらしい。
俺は目の前が真っ暗になってしまった。このままこうして女として生きていかなければならないのだろうか。
「頼む!そっちの力でなんとか元に戻せないか!?このままだなんてあんまりだ!」
女になり涙腺が緩くなっているのか、俺は頬を伝う涙を感じながら彼女にしがみついた。
しかし、無情な感じで彼女は立ち上がってすがりついていた俺を振り解いた。彼女の表情は見るからに怒りを孕んでいる。
「鬱陶しいわね!泣きたいのはこっちだって同じよ・・・・・・。あの夜、アンタとぶつかりさえしなければあいつを見失うこともなかった!」
・・・・・・かもしれない、と彼女は小声で付け足した。泣きたいのは彼女も同じみたいだった。
「ここまで知ってしまった以上、アンタもタカサ博士の捜索を手伝いなさい。博士の身柄を確保できればアンタの体だって治せるかもしれないわ」
拒否、という言葉はまったく頭に浮かばなかった。彼女の最後の一言で既に答えは決まっているのだ。
俺は服の袖で涙を拭うと、立ち上がって彼女の目を正面から見つめた。顔立ちはこちらの世界の人間と変わらないが、彼女は真の意味で違う世界の人間なのだ。
本当に全てを信じて良いのだろうか。いや、今の俺は彼女を信じる意外に元に戻る方法はないのだ。
「解った。俺に手伝えることがあるなら、なんだってするさ。でも、家族は巻き込まないと約束してくれ」
こんなおかしな、こちらでは非現実的なことになるのは俺だけで十分だ。
「ええ、約束するわ。けど、貴方から話すのもダメよ。こちらとしてもこれ以上干渉は避けたいもの」
「それと、アンタってのも止してくれ。俺のことは昭人って呼んで欲しい」
そう言って、俺は一回り小さくなってしまった右手を彼女の前に差し出す。
彼女は一瞬疑問を浮かべたが、すぐに納得したように自分の右手で差し出した手を握ってくれた。
「協力してもらうからには甘やかさないからな、昭人」
「善処してみるさ、カグヤさん」
この日、二人だけの、世界を超えた同盟が組まれた。
500 :佐白 [sage]:2007/08/19(日) 21:55:51.08 ID:ZGiKPIg0
気が緩んだのか大きな欠伸が出そうになり、慌てて噛み[ピーーー]。時計に目をやると既に2時を過ぎていた。
「眠いの?大体話もしたし、今日はもう終わりにしましょ」
見るとカグヤさんも小さな欠伸を手で隠していた。キツイ性格の割に仕草は可愛いと思ってしまった。
「捜索の手伝いに関しては、朝起きた後にまた話すわね。ところで・・・・・・」
「ん?どうかした?」
「お風呂を借りることはできるかしら。私は寝る前と起きた後には必ずお風呂に入らないとダメなのよ」
お風呂?もしかして彼女の拠点にはお風呂がないのだろうか?別にこの時間なら家族も寝てるし構わないだろう。
「ああ、使って良いよ。家族を起こさないようになるべく静かに入ってくれるならね」
「そ、それくらい心得てるわよ・・・・・・」
とか言いつつも、すぐにでもお風呂に行きたそうにソワソワしている。
とりあえず、下の階にあるお風呂場に隣接した脱衣兼洗面所まで彼女を連れて行く。
お風呂の説明をしようと思ったが、それぐらい知っていると言われ、すぐに追い出されそうになった。
「それじゃ、俺はもう先に寝てるから、好きなだけ入ってよ」
「ありがと、助かるわ」
脱衣所のドアを閉めると、俺は何らかの興奮を感じた。何故なら妹以外の女性が自分の家のお風呂に入っているのだ。
しかし不思議とその興奮はすぐに収まり、覗こうとも思わずにさっさと自分の部屋に戻ってきてしまった。
彼女が風呂から上がるのを待ち、帰りを見送ろうとも考えたが、かなりの眠気に堪らず布団に潜り込む。
彼女には悪いが先に寝かせてもらおう。
「おやすみ・・・・・・」
照明を消し真っ暗になった部屋で、彼女に向けて言った言葉を最後に、俺はすぐ眠りに就いた。
そして、翌日――
いつもと違う窮屈感によって目を覚ますと・・・・・・。
何故か隣で彼女が気持ちよさそうな寝息を立てていた。