633 :佐白 [sage]:2007/12/09(日) 00:44:48.31 ID:Gddp6lQ0
『シガレット→しがれっと』第七話
『シガレット→しがれっと』第七話
いつもと変わらない朝、いつものように目を覚ますと、見知らぬ美女が同じ布団の中で寝息を立てていた。
いや、この女には見覚えがあった。俺は寝起きでぼやけている思考をなんとか稼動させて記憶を探る。
そうだ、昨晩にいきなり現れた”違う世界”の人間、タカサ・サクヤさんだ。
あまりにも非現実的な彼女の発言を、どうやら俺は無意識の内に夢だと思い込んでしまったようだ。
そう、夢なら良いのだが、視線を下に向けると、あるはずのなかった自分の胸の膨らみが嫌でも目に付く。
とりあえず、なんで彼女がここで寝ているのか聞かないといけないな。
「カグヤさん、起きてくれ」
「ん・・・。もう少し・・・寝かせて・・・すぅ」
そういって、カグヤさんは布団に包まってしまった。
昨日は口調からして厳しい性格の人かと思っていたが、案外子供っぽい所もあるんだな。
「おい、朝起きたら詳しい説明してくれるんだろう?というか、この家に泊まるなんて一言も言ってなかったじゃないか」
しかし、俺がいくら話しかけても返事はなく、安らかな寝息しか聞こえてこない。
カグヤさんはまったく起きる気配がなかった。こうなった最終手段を執るしかないようだ。
俺は布団の端を掴んで思いっきり引き上げた。
「喰らえ!必殺布団剥がし!」
すると、角度が付いた布団からコロコロと転がる様にカグヤさんが布団から出てきた。
「痛ぁ!いてて、一体なんなのよ、もう」
何が起こったの解からず困惑しているカグヤさんと目が合った。
「昭人、アンタなにしたのよ!起こすならもっと優しく起こしなさいよ!これだから童貞は・・・」
童貞・・・その言葉に何か言い返すべきだったが、俺は目の前のショッキングな出来事に声を失っていた。
「何さっきから呆然と立ってるのよ・・・ん?」
カグヤさんもやっと自体が把握できたらしく、ピシィっと音を立てて硬直した。
本当なら目を逸らすのが紳士というものだろうが、童貞の俺は彼女の体から目を離せなかった。
予想外なことに、彼女は正に布団から「生まれたままの姿」だったのだ。・・・・・・誰が上手いことを言えと。
「いつまで見てんのよアンタは!」
目にも留まらぬ速さで、カグヤさんのハイキックが俺の顎にクリーンヒットし、そのまま俺は気を失った。
いや、この女には見覚えがあった。俺は寝起きでぼやけている思考をなんとか稼動させて記憶を探る。
そうだ、昨晩にいきなり現れた”違う世界”の人間、タカサ・サクヤさんだ。
あまりにも非現実的な彼女の発言を、どうやら俺は無意識の内に夢だと思い込んでしまったようだ。
そう、夢なら良いのだが、視線を下に向けると、あるはずのなかった自分の胸の膨らみが嫌でも目に付く。
とりあえず、なんで彼女がここで寝ているのか聞かないといけないな。
「カグヤさん、起きてくれ」
「ん・・・。もう少し・・・寝かせて・・・すぅ」
そういって、カグヤさんは布団に包まってしまった。
昨日は口調からして厳しい性格の人かと思っていたが、案外子供っぽい所もあるんだな。
「おい、朝起きたら詳しい説明してくれるんだろう?というか、この家に泊まるなんて一言も言ってなかったじゃないか」
しかし、俺がいくら話しかけても返事はなく、安らかな寝息しか聞こえてこない。
カグヤさんはまったく起きる気配がなかった。こうなった最終手段を執るしかないようだ。
俺は布団の端を掴んで思いっきり引き上げた。
「喰らえ!必殺布団剥がし!」
すると、角度が付いた布団からコロコロと転がる様にカグヤさんが布団から出てきた。
「痛ぁ!いてて、一体なんなのよ、もう」
何が起こったの解からず困惑しているカグヤさんと目が合った。
「昭人、アンタなにしたのよ!起こすならもっと優しく起こしなさいよ!これだから童貞は・・・」
童貞・・・その言葉に何か言い返すべきだったが、俺は目の前のショッキングな出来事に声を失っていた。
「何さっきから呆然と立ってるのよ・・・ん?」
カグヤさんもやっと自体が把握できたらしく、ピシィっと音を立てて硬直した。
本当なら目を逸らすのが紳士というものだろうが、童貞の俺は彼女の体から目を離せなかった。
予想外なことに、彼女は正に布団から「生まれたままの姿」だったのだ。・・・・・・誰が上手いことを言えと。
「いつまで見てんのよアンタは!」
目にも留まらぬ速さで、カグヤさんのハイキックが俺の顎にクリーンヒットし、そのまま俺は気を失った。
意識が薄れる中、俺は確かに天国を見た・・・。
635 :佐白 [sage]:2007/12/09(日) 02:01:41.56 ID:Gddp6lQ0
「つまり、シャワー浴びるだけじゃ飽き足らず、勝手に冷蔵庫を漁って買い置きのビールを全て飲んだ挙句に、酔っ払ってそのまま全裸で寝た、と?」
「はい・・・、その通りです」
思いっきり蹴られ、じんじんと痛む顎をさすりながら、俺は着替えが済んだカグヤさんに経緯を訊いていた。
「こっちとしてはやっと一息つけて、お酒の一杯でも飲みたい気分だったのよ」
カグヤさんはさっきまでしおらしかったのに、段々逆ギレ気味になってきた。
「俺はね、カグヤさんはクールでしっかりした性格の人だと勘違いしてたよ」
「何よそれ。私だって世界は違えど、殆どアンタと同じ人間なんだからね」
確かに、俺だって羽目を外す時もあるし、これ以上彼女をきつくは怒れないな。
「それでも、勝手に他人の家の冷蔵庫は漁らないだろ・・・。別に一言言ってくれれば付き合ったのにさ」
「ふん・・・、部屋に戻ってきたら気持ち良さそうに寝てたのは誰よ・・・」
「うん?なんだって?」
「何でもないわよ!」
よく解からないが、どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。単純なマキは例外として、女というのは難しいな。
とにかく、昨夜の話─俺がカグヤさんを手伝うという話について知りたかった俺は、とりあえず訊ねてみた。
「ああ、協力・・・。そうだったわね、その話をしておかなくちゃね」
今までの態度から一転、カグヤさんは昨夜同様に凛とした態度に戻った。お仕事モードとでも名付けておこう。
「とりあえず、昭人にやってもらいたいのは普段通り生活してくれればいいわ」
「へ?なんだそりゃ!」
「言葉の通りよ。あいつはコレを熱心に研究してたみたい。きっと昭人の存在を今頃嗅ぎつけて、その内何らかの接触を昭人にしてくると思うの」
カグヤさんは、机の上にそのまま置いてあったあのタバコのような箱を大事そうに手に取った。
「あいつを逃がした今、残る手がかりはこれと・・・昭人、アンタよ」
「せ、接触って、具体的にはどんなことをされるんだ?」
そのとたん、カグヤさんの顔が険しくなったのを感じ、俺は言ってから後悔した。
「そうね・・・。物が物だけに、遠くからの観察だけというわけには行かないでしょうね」
カグヤさんは数秒目を閉じて何かを考えてから口を開いた。
「サンプルの採取をしに来るのは、まず間違いないでしょうね」
「サンプル?」
「これを使って体質が変わった、彼の研究の中で予想外のサンプル。つまり、昭人自身の事よ」
背筋がゾッとした。つまり、俺自身が得体の知れない奴に狙われるということなのか?
その時、ピピピと聞き慣れない電子音が彼女の上着から発せられた。
「あ、本部からの通信だわ」
そう言って、カグヤさんは上着から携帯のような物を取り出して、画面を見始めた。
それにしても、俺の生活はこれからどうなってしまうのだろうか。まさか女になるばかりか、生命の危機に発展するとは・・・。
「お待たせ、本部から新しい指示がでたわ・・・」
本部からの通信を読み終えたであろうカグヤさんは、明らかにテンションが沈んでいた。
「いやに暗い表情だけど、何かあったのか?」
そう訊ねると、はぁ~と重いため息を吐かれた。一体どうしたというのだろうか?
「不本意だけど、本部からの指示だし仕方ないわね・・・」
「だからどうしたのさ?」
「本部から私だけ本隊から別行動で、アンタを守れとの指示よ」
それが何で暗くなるのか、まったく理解できない俺に向って、カグヤさんはビシッと人差し指を指した。
「つまり、シャワー浴びるだけじゃ飽き足らず、勝手に冷蔵庫を漁って買い置きのビールを全て飲んだ挙句に、酔っ払ってそのまま全裸で寝た、と?」
「はい・・・、その通りです」
思いっきり蹴られ、じんじんと痛む顎をさすりながら、俺は着替えが済んだカグヤさんに経緯を訊いていた。
「こっちとしてはやっと一息つけて、お酒の一杯でも飲みたい気分だったのよ」
カグヤさんはさっきまでしおらしかったのに、段々逆ギレ気味になってきた。
「俺はね、カグヤさんはクールでしっかりした性格の人だと勘違いしてたよ」
「何よそれ。私だって世界は違えど、殆どアンタと同じ人間なんだからね」
確かに、俺だって羽目を外す時もあるし、これ以上彼女をきつくは怒れないな。
「それでも、勝手に他人の家の冷蔵庫は漁らないだろ・・・。別に一言言ってくれれば付き合ったのにさ」
「ふん・・・、部屋に戻ってきたら気持ち良さそうに寝てたのは誰よ・・・」
「うん?なんだって?」
「何でもないわよ!」
よく解からないが、どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。単純なマキは例外として、女というのは難しいな。
とにかく、昨夜の話─俺がカグヤさんを手伝うという話について知りたかった俺は、とりあえず訊ねてみた。
「ああ、協力・・・。そうだったわね、その話をしておかなくちゃね」
今までの態度から一転、カグヤさんは昨夜同様に凛とした態度に戻った。お仕事モードとでも名付けておこう。
「とりあえず、昭人にやってもらいたいのは普段通り生活してくれればいいわ」
「へ?なんだそりゃ!」
「言葉の通りよ。あいつはコレを熱心に研究してたみたい。きっと昭人の存在を今頃嗅ぎつけて、その内何らかの接触を昭人にしてくると思うの」
カグヤさんは、机の上にそのまま置いてあったあのタバコのような箱を大事そうに手に取った。
「あいつを逃がした今、残る手がかりはこれと・・・昭人、アンタよ」
「せ、接触って、具体的にはどんなことをされるんだ?」
そのとたん、カグヤさんの顔が険しくなったのを感じ、俺は言ってから後悔した。
「そうね・・・。物が物だけに、遠くからの観察だけというわけには行かないでしょうね」
カグヤさんは数秒目を閉じて何かを考えてから口を開いた。
「サンプルの採取をしに来るのは、まず間違いないでしょうね」
「サンプル?」
「これを使って体質が変わった、彼の研究の中で予想外のサンプル。つまり、昭人自身の事よ」
背筋がゾッとした。つまり、俺自身が得体の知れない奴に狙われるということなのか?
その時、ピピピと聞き慣れない電子音が彼女の上着から発せられた。
「あ、本部からの通信だわ」
そう言って、カグヤさんは上着から携帯のような物を取り出して、画面を見始めた。
それにしても、俺の生活はこれからどうなってしまうのだろうか。まさか女になるばかりか、生命の危機に発展するとは・・・。
「お待たせ、本部から新しい指示がでたわ・・・」
本部からの通信を読み終えたであろうカグヤさんは、明らかにテンションが沈んでいた。
「いやに暗い表情だけど、何かあったのか?」
そう訊ねると、はぁ~と重いため息を吐かれた。一体どうしたというのだろうか?
「不本意だけど、本部からの指示だし仕方ないわね・・・」
「だからどうしたのさ?」
「本部から私だけ本隊から別行動で、アンタを守れとの指示よ」
それが何で暗くなるのか、まったく理解できない俺に向って、カグヤさんはビシッと人差し指を指した。
「つまり、24時間!この家に下宿しつつ!いつでもアンタの側から離れずに、危険からアンタを守ってあげるってことよ!この私が!」
要約すると、同棲するって事か・・・って─
「何だってぇぇーー!?」
要約すると、同棲するって事か・・・って─
「何だってぇぇーー!?」
637 :佐白 [sage]:2007/12/10(月) 01:24:43.64 ID:n.oxu8k0
父さんとマキをリビングに呼んだ。二人とも何事かと言いたげな顔をしつつソファーに座って俺の言葉を待っている。
「実は、2人に頼みがあるんだ」
「頼み?どうしたんだそんなに畏まって」
俺はドアに向って声をかけた。それに応じて、リビングにカグヤさんが恐る恐る入ってくる。
リビングに緊張が走り、父さんとマキは見知らぬ女性の登場に困惑した様子だった。
「昭人、このお嬢さんは?」
「アキ兄ぃ・・・まさか子供が・・・」
「ば、ばか!」「なにぃ!」
マキの斜め上を行く予想に、俺と父さんは同時に声を上げた。
「そうなのか、昭人!?」
「違う!違うよ!この人はタカサカグヤさんといって、今は訳あって家に帰れないから、暫く家に居させて欲しいんだ」
父さんは一先ずほっとした様子を見せたが、すぐにカグヤさんを心配そうに見つめた。
「お嬢さん、いや、タカサさん。昭人とはどういった関係なのかな?」
父さんの問に、カグヤさんはしっかりと正面を向いて返答した。
「将来を約束した仲です」
「ちょっと待て!なんだそれは!?」
予定にはなかったとんでもない発言をしたカグヤさんは、声を上げた俺には一目もくれずにずっと二人を見つめたままだ。
「なるほど、それなら問題はないか」
「父さん!?何を─」
「見ての通り、息子は今こんな姿だが、それでよければいつまでもこの家に居てくれて構わないさ」
「ありがとうございます、お父様」
どう考えても営業スマイルなカグヤさんは、既に父さんと馴染んでいる。
父さんも父さんで、たったこれだけの会話で何かを勘違いしたのか、一人納得している様子だ。
「お父さん!」
そんな中、マキが急に大声を上げた。今まで黙って話を聞いていたマキだが、やはりこの異様な展開に納得できないのだろう。
「もう部屋は余ってないんだから、カグヤさんはマキの部屋に泊まってもらうんだからね~」
「・・・は?」
「マキね、実はこんな美人なお姉ちゃんが欲しいって思ってたの~」
マキは目をキラキラさせてカグヤさんを見つめている。マキの反論に期待した俺が馬鹿だった。まあ反論されない方が良いのだから問題はないが。
「マキちゃん・・・だったかしら?よろしくね」
「カグヤお姉さまぁ~」
予想していなかった超展開に唖然としていると、父さんがポンっと俺の方に手を置いた。
「なあ、昭人」
「父さん?」
「今までお前から女性の気配を感じられなかったが、裏では上手くやっていたんだな」
はいはい、どうせ俺は彼女居ない暦イコール年ですよ。しかもカグヤさんとの事は嘘だから現在進行形だしね。
「男として、責任は・・・取るんだぞ?」
「は、はい・・・」
肩に置かれた父さんの手は痛いぐらいに力が篭っており、俺は素直に頷くしかなかった。
こうして、カグヤさんが加わり、我が家は数年ぶりに4人で生活することになった。
638 :佐白 [sage]:2007/12/10(月) 02:09:52.50 ID:n.oxu8k0
とある町の外れに位置する、今はもう人々から忘れられた病院の廃墟に、一人の男が足を踏み入れた。
昼間だというのに建物の中は真っ暗な闇が広がる空間になっていた。そんな中、彼は迷うことなくとある部屋に向かい足を進めた。
彼はもうこの建物に数年通っている。闇によって視界がなくとも、目的の部屋までのルートは体が覚えているのだろう。
彼は開業していた頃は存在しなかった地下へ続く階段を黙々と下りていく。
そして、どれくらい地下に来たか解からないくらいの所で、階段は終わっていた。
目の前には、暗闇の中に青白く光る板のようなものが浮いている。彼はそれに自分の掌を合わせた。
すると、重たいものを引きずるような音を立てながら、目の前の壁は横にスライドし、隠し通路が現れた。
彼はその通路に入って行った。また音を立てながら、壁が元に戻る。
その通路を抜けると、暗闇から一転、蛍光灯の光が彼を迎えた。
その部屋は様々な機器やら道具が存在し、壁に埋め込まれている大きな試験管の中には人間の死骸が何かの液に漬けられて保存されていた。
死骸は全て彼がこの町の墓場から取ってきたものだった。
この町の風習で、死体は焼かずにそのまま生めるのだが、そのことを彼の依頼主は狂ったように喜んでいたのを、彼は覚えている。
「どうだった?」
何かの実験機器の陰から、背中が曲がり顔を垢で真っ黒にさせた男─彼の依頼主が姿を現した。
「アレは見つかったか?」
「いいえ、やはりあの夜我々を追っていた捜索隊員の手に渡ってしまったと考えるのが良いかと」
「そうか・・・。まあ良い、また作れば良いだけの話だ。それよりも、問題はあっちの方だが・・・、あったか?」
「はい、流石に数年立っているので状態はあまりよくないですが、間違いなく貴方が探していた物です」
「おお、そうか!早く、早く見せてくれ!」
彼は背負っていた巨大なカバンを大きな机の上に置き、丁寧に開いて中身を取り出した。
その取り出したものを一目見て、男は大笑いをし始めた。
「くくく・・・ははははははは!これだ!これこそ私が求めていたものだ!これで、条件はほぼ揃った!やっと・・・、やっと!」
狂喜する男を尻目に、彼は声をかけずにこの部屋から出て行った。
彼は思う。自分のしていることは正しいことなのかと。
しかし、すぐにその考えを止めた。彼はなんであろうとやらなければいけないのだ。
彼自身、実現させたい事があり、その為にはあの男の手を借りなければいけないのだから。
彼は廃墟から外に出ると、そのまま自分の居場所に帰っていった。
父さんとマキをリビングに呼んだ。二人とも何事かと言いたげな顔をしつつソファーに座って俺の言葉を待っている。
「実は、2人に頼みがあるんだ」
「頼み?どうしたんだそんなに畏まって」
俺はドアに向って声をかけた。それに応じて、リビングにカグヤさんが恐る恐る入ってくる。
リビングに緊張が走り、父さんとマキは見知らぬ女性の登場に困惑した様子だった。
「昭人、このお嬢さんは?」
「アキ兄ぃ・・・まさか子供が・・・」
「ば、ばか!」「なにぃ!」
マキの斜め上を行く予想に、俺と父さんは同時に声を上げた。
「そうなのか、昭人!?」
「違う!違うよ!この人はタカサカグヤさんといって、今は訳あって家に帰れないから、暫く家に居させて欲しいんだ」
父さんは一先ずほっとした様子を見せたが、すぐにカグヤさんを心配そうに見つめた。
「お嬢さん、いや、タカサさん。昭人とはどういった関係なのかな?」
父さんの問に、カグヤさんはしっかりと正面を向いて返答した。
「将来を約束した仲です」
「ちょっと待て!なんだそれは!?」
予定にはなかったとんでもない発言をしたカグヤさんは、声を上げた俺には一目もくれずにずっと二人を見つめたままだ。
「なるほど、それなら問題はないか」
「父さん!?何を─」
「見ての通り、息子は今こんな姿だが、それでよければいつまでもこの家に居てくれて構わないさ」
「ありがとうございます、お父様」
どう考えても営業スマイルなカグヤさんは、既に父さんと馴染んでいる。
父さんも父さんで、たったこれだけの会話で何かを勘違いしたのか、一人納得している様子だ。
「お父さん!」
そんな中、マキが急に大声を上げた。今まで黙って話を聞いていたマキだが、やはりこの異様な展開に納得できないのだろう。
「もう部屋は余ってないんだから、カグヤさんはマキの部屋に泊まってもらうんだからね~」
「・・・は?」
「マキね、実はこんな美人なお姉ちゃんが欲しいって思ってたの~」
マキは目をキラキラさせてカグヤさんを見つめている。マキの反論に期待した俺が馬鹿だった。まあ反論されない方が良いのだから問題はないが。
「マキちゃん・・・だったかしら?よろしくね」
「カグヤお姉さまぁ~」
予想していなかった超展開に唖然としていると、父さんがポンっと俺の方に手を置いた。
「なあ、昭人」
「父さん?」
「今までお前から女性の気配を感じられなかったが、裏では上手くやっていたんだな」
はいはい、どうせ俺は彼女居ない暦イコール年ですよ。しかもカグヤさんとの事は嘘だから現在進行形だしね。
「男として、責任は・・・取るんだぞ?」
「は、はい・・・」
肩に置かれた父さんの手は痛いぐらいに力が篭っており、俺は素直に頷くしかなかった。
こうして、カグヤさんが加わり、我が家は数年ぶりに4人で生活することになった。
638 :佐白 [sage]:2007/12/10(月) 02:09:52.50 ID:n.oxu8k0
とある町の外れに位置する、今はもう人々から忘れられた病院の廃墟に、一人の男が足を踏み入れた。
昼間だというのに建物の中は真っ暗な闇が広がる空間になっていた。そんな中、彼は迷うことなくとある部屋に向かい足を進めた。
彼はもうこの建物に数年通っている。闇によって視界がなくとも、目的の部屋までのルートは体が覚えているのだろう。
彼は開業していた頃は存在しなかった地下へ続く階段を黙々と下りていく。
そして、どれくらい地下に来たか解からないくらいの所で、階段は終わっていた。
目の前には、暗闇の中に青白く光る板のようなものが浮いている。彼はそれに自分の掌を合わせた。
すると、重たいものを引きずるような音を立てながら、目の前の壁は横にスライドし、隠し通路が現れた。
彼はその通路に入って行った。また音を立てながら、壁が元に戻る。
その通路を抜けると、暗闇から一転、蛍光灯の光が彼を迎えた。
その部屋は様々な機器やら道具が存在し、壁に埋め込まれている大きな試験管の中には人間の死骸が何かの液に漬けられて保存されていた。
死骸は全て彼がこの町の墓場から取ってきたものだった。
この町の風習で、死体は焼かずにそのまま生めるのだが、そのことを彼の依頼主は狂ったように喜んでいたのを、彼は覚えている。
「どうだった?」
何かの実験機器の陰から、背中が曲がり顔を垢で真っ黒にさせた男─彼の依頼主が姿を現した。
「アレは見つかったか?」
「いいえ、やはりあの夜我々を追っていた捜索隊員の手に渡ってしまったと考えるのが良いかと」
「そうか・・・。まあ良い、また作れば良いだけの話だ。それよりも、問題はあっちの方だが・・・、あったか?」
「はい、流石に数年立っているので状態はあまりよくないですが、間違いなく貴方が探していた物です」
「おお、そうか!早く、早く見せてくれ!」
彼は背負っていた巨大なカバンを大きな机の上に置き、丁寧に開いて中身を取り出した。
その取り出したものを一目見て、男は大笑いをし始めた。
「くくく・・・ははははははは!これだ!これこそ私が求めていたものだ!これで、条件はほぼ揃った!やっと・・・、やっと!」
狂喜する男を尻目に、彼は声をかけずにこの部屋から出て行った。
彼は思う。自分のしていることは正しいことなのかと。
しかし、すぐにその考えを止めた。彼はなんであろうとやらなければいけないのだ。
彼自身、実現させたい事があり、その為にはあの男の手を借りなければいけないのだから。
彼は廃墟から外に出ると、そのまま自分の居場所に帰っていった。