854 :佐白 :2008/05/20(火) 23:18:45.99 ID:CJbaKv60
『シガレット→しがれっと』第十一話
2限目の講義室に入ると、4年間一貫の講義なだけに、去年とメンバーは殆ど代わっていない。見知った顔を見つけたが、すぐに近づくのも変な気がして、適当な席に腰を降ろした。
教室の前のドアから、カグヤが入ってきた。カグヤが教壇に立つなり、周囲が騒がしくなった。それもそうだ、元々この講義の講師はじいさん教授。それなのに、胸元がきわどい白いワイシャツに黒いスーツ でビシッときめた美人がいきなり入ってくれば当然だ。
「お、おい、この講義を担当してるのって確か片岡じいさんだよな?」
「なんで片岡先生じゃなくて、あんな見たこと無い人が教壇に立ってるのよ」
「でもかなり美人じゃね?新任の講師かなぁ」
カグヤの唐突な出現に他の学生達は困惑しているようだった。カグヤに対する意見は様々だったが、やはり見たことの無い美人講師という点が大半学生の興味を独占していた。
「はい、静かにしてください。私は急な都合により片岡教授からこの授業を任された高狭かぐやです。急な講師の変更でみなさんが動揺するのも解かりますが、任された以上は責任を持って一年間みなさんに講義をしていきたいと思っています。どうぞよろしく」
最後に、カグヤは学生達に向ってお得意の営業スマイルを見せ付けた。きっと殆どの男子学生が、この瞬間彼女の手に落ちてしまっただろう。
「それと、片岡先生のゼミも私が担当することになっています。片岡ゼミを取っている学生は安心してください」
「よっしゃー!!!」
突然、聞き覚えのある歓喜声が教室に響き渡った。声の主は俺の親友である木村高弘だった。高弘は明るい性格でノリが良いことから、俺にとっては最高の悪友だった。さらに付け加えると、とんでもない女好きだ。
「ちょ、高弘!恥ずかしいでしょ」
隣の席から高弘を小声で制したのは、これまた悪友の日比野明美が座っていた。彼女はショートカットで性格もボーイッシュな感じの女の子であり、反面ものすごい心配性でもあった。俺と高弘が馬鹿をやっては明美が叱る、大体こんな関係を俺たちは幼稚園の頃から続けていた。
そして、明美の隣にはもう一人、女子学生が座っていた。
「あ・・・・・・、琴美・・・・・・」
855 :佐白 :2008/05/20(火) 23:19:50.35 ID:CJbaKv60
俺は思わずつぶやいてしまった。明美の隣に座っていたのは、俺が思いを馳せている女性、佐宗琴美だった。彼女は大学から俺ら3人の輪に入ってきた唯一の人間だった。彼女は俺たち以外に友達を作ろうとはせず、同じ講義の時は必ず俺の隣の席で静かに座っていた。しかし、俺が彼女に告白し、彼女がそれを断ったことでこの関係は崩れてしまったと俺は勘違いしていただけに、彼女がちゃんと高弘や明美の横に居ることに安堵した。
ちなみに、どういうめぐり合わせなのか、俺たち4人は全員同じゼミ──片岡ゼミに組み込まれている。
そして、カグヤの講義が始まって30分が経過した。周りの学生──特に男たちは必死に講義を受けている。俺はというと、片岡教授よりも小難しく早口な講義のせいで眠気と格闘をし始めていた。まぶたが重く、こくこくと何度も船を漕ぐ。
「(あー、だめだ。相手はカグヤだし寝ちまおう)」
そう思ったが最後、俺は机に突っ伏すと眠りに入ってしまった。
──なんだ?なんかふわふわするぞ?
目を開けると、俺は何もない空間に一人浮いていた。ここは一体どこだろう。もう一度目を瞑る。もう一度目を開いたとき、俺はさっき居た空間ではなく、見たことも無い部屋のソファーに座っていた。
「カグヤ、ご飯よ。お父さんを呼んできて」
どこからとも無く、優しそうな女性の声が頭の中に入ってきた。この懐かしさのある声は、どこかで聞いたことがあるような気がする。そんなことを考える間に、俺は無意識の内に見知らぬ扉の前に移動していた。自分の意思とは関係なく、そのドアをノックする。
「父さん、ご飯ができたみたい」
「わかった。もうすぐ仕事が一区切りするから、先にリビングに行って待ってなさい」
見知らぬドアの向こうから、厳格で、でもどことなく優しさが含まれた声が頭の中に入ってきた。この声も聞き覚えがある。
俺は一体どうしてしまったのだろう。俺の意識はあるのに、体はまるで別物の様にまったく言うことを聞かない。そんな時、ふと窓のほうに視界が移った。外はもう夜なのか真っ暗で、窓ガラスには俺の姿が映し出されていた。
その姿は、正しく今の俺の姿だった。少しだけ違うのは髪が金髪である、それだけだった。
──こら。
どこからか、若い女性の声が聞こえる。これは・・・・・・、これはカグヤの声だ。
──こら、起きなさい。
ああ、なんだって?愛の告白ならあとでしてくれ。帰国チケットは受け取ってやるから。
──帰国チケット?何を言ってるのよ・・・・・・はぁ。仕方の無い奴ね。
バシーン!
「あいたー!!!」
後頭部に突然激痛が走り、俺は思わず体を起こした。
856 :佐白 :2008/05/20(火) 23:20:36.35 ID:CJbaKv60
「あ、あれ?」
教室には、既に講義が終わったのか学生は一人も居らず、目の前にただ一人、白く綺麗な額に青筋を浮かべたカグヤが仁王立ちをしていた。
「あ、あっれ~?もう講義は終わったのかなぁ?」
「そうね、アンタが1時間も爆睡している間に、とっくに終わったわよ。それにしても良い度胸ね?今の講義であんなに堂々と寝たのはアンタだけよ」
カ、カグヤさん!?マジギレですか?目が全然笑ってないです。
「いや、ほら、あれだ!さっき講義とかをサポートしてくれるって言ったじゃん!?」
プチっと、何かが切れたような、嫌な音が聞こえた。
「アンタね・・・・・・、サポートするとは言っても、無条件で単位あげられる訳ないでしょ!!サポートはあくまで最小限って本部からも通達が来てるし、甘えるんじゃないわよ!!」
「は、はいぃぃ!すみません・・・・・・」
「とにかく、今日は帰ったらたっぷりとシゴいてあげるわ。覚悟なさい」
今夜は徹夜が確定した瞬間だった。
「そうそう、次のゼミの時間は健康診断だから、早く支度しなさい」
「あー、そっか。新学期の初めはそれがあったっけね・・・・・・ん?」
「今は同じ女子とはいえ、あまり他の女の子をジロジロ見るんじゃないわよ」
俺は今、この一言を大声で叫びたいね。
「(キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)」
『シガレット→しがれっと』第十一話
2限目の講義室に入ると、4年間一貫の講義なだけに、去年とメンバーは殆ど代わっていない。見知った顔を見つけたが、すぐに近づくのも変な気がして、適当な席に腰を降ろした。
教室の前のドアから、カグヤが入ってきた。カグヤが教壇に立つなり、周囲が騒がしくなった。それもそうだ、元々この講義の講師はじいさん教授。それなのに、胸元がきわどい白いワイシャツに黒いスーツ でビシッときめた美人がいきなり入ってくれば当然だ。
「お、おい、この講義を担当してるのって確か片岡じいさんだよな?」
「なんで片岡先生じゃなくて、あんな見たこと無い人が教壇に立ってるのよ」
「でもかなり美人じゃね?新任の講師かなぁ」
カグヤの唐突な出現に他の学生達は困惑しているようだった。カグヤに対する意見は様々だったが、やはり見たことの無い美人講師という点が大半学生の興味を独占していた。
「はい、静かにしてください。私は急な都合により片岡教授からこの授業を任された高狭かぐやです。急な講師の変更でみなさんが動揺するのも解かりますが、任された以上は責任を持って一年間みなさんに講義をしていきたいと思っています。どうぞよろしく」
最後に、カグヤは学生達に向ってお得意の営業スマイルを見せ付けた。きっと殆どの男子学生が、この瞬間彼女の手に落ちてしまっただろう。
「それと、片岡先生のゼミも私が担当することになっています。片岡ゼミを取っている学生は安心してください」
「よっしゃー!!!」
突然、聞き覚えのある歓喜声が教室に響き渡った。声の主は俺の親友である木村高弘だった。高弘は明るい性格でノリが良いことから、俺にとっては最高の悪友だった。さらに付け加えると、とんでもない女好きだ。
「ちょ、高弘!恥ずかしいでしょ」
隣の席から高弘を小声で制したのは、これまた悪友の日比野明美が座っていた。彼女はショートカットで性格もボーイッシュな感じの女の子であり、反面ものすごい心配性でもあった。俺と高弘が馬鹿をやっては明美が叱る、大体こんな関係を俺たちは幼稚園の頃から続けていた。
そして、明美の隣にはもう一人、女子学生が座っていた。
「あ・・・・・・、琴美・・・・・・」
855 :佐白 :2008/05/20(火) 23:19:50.35 ID:CJbaKv60
俺は思わずつぶやいてしまった。明美の隣に座っていたのは、俺が思いを馳せている女性、佐宗琴美だった。彼女は大学から俺ら3人の輪に入ってきた唯一の人間だった。彼女は俺たち以外に友達を作ろうとはせず、同じ講義の時は必ず俺の隣の席で静かに座っていた。しかし、俺が彼女に告白し、彼女がそれを断ったことでこの関係は崩れてしまったと俺は勘違いしていただけに、彼女がちゃんと高弘や明美の横に居ることに安堵した。
ちなみに、どういうめぐり合わせなのか、俺たち4人は全員同じゼミ──片岡ゼミに組み込まれている。
そして、カグヤの講義が始まって30分が経過した。周りの学生──特に男たちは必死に講義を受けている。俺はというと、片岡教授よりも小難しく早口な講義のせいで眠気と格闘をし始めていた。まぶたが重く、こくこくと何度も船を漕ぐ。
「(あー、だめだ。相手はカグヤだし寝ちまおう)」
そう思ったが最後、俺は机に突っ伏すと眠りに入ってしまった。
──なんだ?なんかふわふわするぞ?
目を開けると、俺は何もない空間に一人浮いていた。ここは一体どこだろう。もう一度目を瞑る。もう一度目を開いたとき、俺はさっき居た空間ではなく、見たことも無い部屋のソファーに座っていた。
「カグヤ、ご飯よ。お父さんを呼んできて」
どこからとも無く、優しそうな女性の声が頭の中に入ってきた。この懐かしさのある声は、どこかで聞いたことがあるような気がする。そんなことを考える間に、俺は無意識の内に見知らぬ扉の前に移動していた。自分の意思とは関係なく、そのドアをノックする。
「父さん、ご飯ができたみたい」
「わかった。もうすぐ仕事が一区切りするから、先にリビングに行って待ってなさい」
見知らぬドアの向こうから、厳格で、でもどことなく優しさが含まれた声が頭の中に入ってきた。この声も聞き覚えがある。
俺は一体どうしてしまったのだろう。俺の意識はあるのに、体はまるで別物の様にまったく言うことを聞かない。そんな時、ふと窓のほうに視界が移った。外はもう夜なのか真っ暗で、窓ガラスには俺の姿が映し出されていた。
その姿は、正しく今の俺の姿だった。少しだけ違うのは髪が金髪である、それだけだった。
──こら。
どこからか、若い女性の声が聞こえる。これは・・・・・・、これはカグヤの声だ。
──こら、起きなさい。
ああ、なんだって?愛の告白ならあとでしてくれ。帰国チケットは受け取ってやるから。
──帰国チケット?何を言ってるのよ・・・・・・はぁ。仕方の無い奴ね。
バシーン!
「あいたー!!!」
後頭部に突然激痛が走り、俺は思わず体を起こした。
856 :佐白 :2008/05/20(火) 23:20:36.35 ID:CJbaKv60
「あ、あれ?」
教室には、既に講義が終わったのか学生は一人も居らず、目の前にただ一人、白く綺麗な額に青筋を浮かべたカグヤが仁王立ちをしていた。
「あ、あっれ~?もう講義は終わったのかなぁ?」
「そうね、アンタが1時間も爆睡している間に、とっくに終わったわよ。それにしても良い度胸ね?今の講義であんなに堂々と寝たのはアンタだけよ」
カ、カグヤさん!?マジギレですか?目が全然笑ってないです。
「いや、ほら、あれだ!さっき講義とかをサポートしてくれるって言ったじゃん!?」
プチっと、何かが切れたような、嫌な音が聞こえた。
「アンタね・・・・・・、サポートするとは言っても、無条件で単位あげられる訳ないでしょ!!サポートはあくまで最小限って本部からも通達が来てるし、甘えるんじゃないわよ!!」
「は、はいぃぃ!すみません・・・・・・」
「とにかく、今日は帰ったらたっぷりとシゴいてあげるわ。覚悟なさい」
今夜は徹夜が確定した瞬間だった。
「そうそう、次のゼミの時間は健康診断だから、早く支度しなさい」
「あー、そっか。新学期の初めはそれがあったっけね・・・・・・ん?」
「今は同じ女子とはいえ、あまり他の女の子をジロジロ見るんじゃないわよ」
俺は今、この一言を大声で叫びたいね。
「(キターーーーーーーーーーーーーーーーーーー!)」