14 :名無草 :2007/04/24(火) 01:31:52.17 ID:Wr3InCI0
朝、薄暗い部屋の中で携帯が喧しい着信音を振りまく。
ワタシノアンミンヲサマタゲルノハダレダ……
画面を睨み付けると幼馴染の“男”からだった。
何であいつが……。
そうは思っても出ない訳にもいかないだろう。
私が朝に弱いのは知ってるはずだし、そんなあいつがこんな時間に電話してくるなんてよっぽどのことだろうから。
「もしもしー」
自分でもびっくりするくらいの不機嫌な声。
「あ、あのさ。家、行って良い?」
何だって?
「あー、聞き間違えたみたい。もう一回言ってみて」
「だから、今からお邪魔しても良い?」
何考えてんのよコイツ!
仮にもうら若き乙女に向かっての第一声がそれか!
「何考えてんのよ!」
イライラも極限、一叫びして電話を切ってやった。
すると10と数える間もなくまた鳴り出す携帯。
一体何考えてんのよ全く!
「何よ」
「ごめん、大事な、事なんだ……」
その声は翳っていて、やけに私を冷静にさせた。
「それで、何時に来るの?」
声を落ち着かせて聞いてみる。
「今からじゃ、ダメかな?」
何だろう、さっきから違和感を感じる。
「あー、もう。分かったわよ。鍵開けとくから勝手に入ってきて」
そう言って電話を切って、布団に潜り込む。
やけに深刻な声と、僅かに感じた違和感。
その二つが頭の中を行き来して、
「もう! 何なのよ一体!!」
誰に言うでもなく叫ぶより、私の体は早く動いていた。
15 :名無草 :2007/04/24(火) 01:32:15.21 ID:Wr3InCI0
家には誰も居ないみたい。
時刻は8時過ぎ、おまけに今は春休み。
とどめにうちの両親は共働きで私は一人っ子なんだから当たり前と言えば当たり前か。
そんなことを思いながら服を着替えて身支度を終わらせる。
するとタイミング良く家のドアの開く音が聞こえた。
「お邪魔します」
恐々とした声色で入ってくる様子はまさにアイツそのもの、なんだけど……。
「あんた、誰?」
目の前に居るのは私の知る幼馴染、“男”ではない。
服はアイツのだけど、それを着ているのは小柄な女の子で、もしかして私より小さい?
その女の子は私の言葉に一瞬顔を曇らせて、
「僕、“男”、だよ」
それだけ言い終えると俯いてしまった。
22 :名無草 :2007/04/24(火) 21:48:26.14 ID:Wr3InCI0
「そんな訳ないでしょ? アイツは男で、あなたはどう見ても女の子じゃない」
私の言葉に、僅かに身を震わせて、それでも返事をする。
「信じられないかもしれないけど。朝起きたら、女の子になってたんだ」
何を言ってるんだろう……。
「冗談でしょ?」
冗談としか思えない。
なのに私にの言葉に顔を曇らせるこの子は、
「本当、なんだよ」
――硝子よりも脆い、砂で形作った仮面のような―――
今にも崩れてしまいそうな、儚げな表情は何故こんなにも美しくて、それなのに見ていたくないなんて思ってしまうんだろう?
例えば桜は、散りゆく予感があるからこそその美しさを人は愛でるんだろう。
そんな危なげな美しさを放つ少女を、けれどその通りになってさせる訳にはいかない。
そんな気がして、
「……分かったわよ。仮に、あなたが“男”だったとしましょう」
その一言で、予感は予感のまま消え去ってくれたみたいだ。
「それで、どうして私の所に来たの?」
私には計り知れない感情を湛える彼女の顔はどこまでも悲しそうで、辛そうで。
それでも、これだけは聞いておかないといけない。
信じるにしても、信じないにしても……。
23 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:10.08 ID:Wr3InCI0
「言ったよね、朝、起きてたらいきなり女の子になってたんだって……」
思い出したく、ない。
でもそれは許されないだろう。
とりあえうでも、話だけでも、“女”は聞いてくれると言ったんだから。
だから、僕は思い出さないといけない。
例えそれが、どれほど辛いことだったとしても……。
「女の子になったのに気付いたのは、兄さんと会った時だった」
朝、薄暗い部屋の中で携帯が喧しい着信音を振りまく。
ワタシノアンミンヲサマタゲルノハダレダ……
画面を睨み付けると幼馴染の“男”からだった。
何であいつが……。
そうは思っても出ない訳にもいかないだろう。
私が朝に弱いのは知ってるはずだし、そんなあいつがこんな時間に電話してくるなんてよっぽどのことだろうから。
「もしもしー」
自分でもびっくりするくらいの不機嫌な声。
「あ、あのさ。家、行って良い?」
何だって?
「あー、聞き間違えたみたい。もう一回言ってみて」
「だから、今からお邪魔しても良い?」
何考えてんのよコイツ!
仮にもうら若き乙女に向かっての第一声がそれか!
「何考えてんのよ!」
イライラも極限、一叫びして電話を切ってやった。
すると10と数える間もなくまた鳴り出す携帯。
一体何考えてんのよ全く!
「何よ」
「ごめん、大事な、事なんだ……」
その声は翳っていて、やけに私を冷静にさせた。
「それで、何時に来るの?」
声を落ち着かせて聞いてみる。
「今からじゃ、ダメかな?」
何だろう、さっきから違和感を感じる。
「あー、もう。分かったわよ。鍵開けとくから勝手に入ってきて」
そう言って電話を切って、布団に潜り込む。
やけに深刻な声と、僅かに感じた違和感。
その二つが頭の中を行き来して、
「もう! 何なのよ一体!!」
誰に言うでもなく叫ぶより、私の体は早く動いていた。
15 :名無草 :2007/04/24(火) 01:32:15.21 ID:Wr3InCI0
家には誰も居ないみたい。
時刻は8時過ぎ、おまけに今は春休み。
とどめにうちの両親は共働きで私は一人っ子なんだから当たり前と言えば当たり前か。
そんなことを思いながら服を着替えて身支度を終わらせる。
するとタイミング良く家のドアの開く音が聞こえた。
「お邪魔します」
恐々とした声色で入ってくる様子はまさにアイツそのもの、なんだけど……。
「あんた、誰?」
目の前に居るのは私の知る幼馴染、“男”ではない。
服はアイツのだけど、それを着ているのは小柄な女の子で、もしかして私より小さい?
その女の子は私の言葉に一瞬顔を曇らせて、
「僕、“男”、だよ」
それだけ言い終えると俯いてしまった。
22 :名無草 :2007/04/24(火) 21:48:26.14 ID:Wr3InCI0
「そんな訳ないでしょ? アイツは男で、あなたはどう見ても女の子じゃない」
私の言葉に、僅かに身を震わせて、それでも返事をする。
「信じられないかもしれないけど。朝起きたら、女の子になってたんだ」
何を言ってるんだろう……。
「冗談でしょ?」
冗談としか思えない。
なのに私にの言葉に顔を曇らせるこの子は、
「本当、なんだよ」
――硝子よりも脆い、砂で形作った仮面のような―――
今にも崩れてしまいそうな、儚げな表情は何故こんなにも美しくて、それなのに見ていたくないなんて思ってしまうんだろう?
例えば桜は、散りゆく予感があるからこそその美しさを人は愛でるんだろう。
そんな危なげな美しさを放つ少女を、けれどその通りになってさせる訳にはいかない。
そんな気がして、
「……分かったわよ。仮に、あなたが“男”だったとしましょう」
その一言で、予感は予感のまま消え去ってくれたみたいだ。
「それで、どうして私の所に来たの?」
私には計り知れない感情を湛える彼女の顔はどこまでも悲しそうで、辛そうで。
それでも、これだけは聞いておかないといけない。
信じるにしても、信じないにしても……。
23 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:10.08 ID:Wr3InCI0
「言ったよね、朝、起きてたらいきなり女の子になってたんだって……」
思い出したく、ない。
でもそれは許されないだろう。
とりあえうでも、話だけでも、“女”は聞いてくれると言ったんだから。
だから、僕は思い出さないといけない。
例えそれが、どれほど辛いことだったとしても……。
「女の子になったのに気付いたのは、兄さんと会った時だった」
起きて、体に少し違和感を感じたけれど、気にも留めずに部屋を出た。
『お前、誰?』
聞きなれた兄さんの声。
何をふざけているんだろう、そう思って振り返る。
その時の兄さんの目を、多分忘れることはないと思う。
不信感、警戒心。そんな物に彩られた視線。
『何、言ってるの?』
そうして自分の声に、異変に、気が付いて。
『だから、お前は誰なんだよ』
『お前、誰?』
聞きなれた兄さんの声。
何をふざけているんだろう、そう思って振り返る。
その時の兄さんの目を、多分忘れることはないと思う。
不信感、警戒心。そんな物に彩られた視線。
『何、言ってるの?』
そうして自分の声に、異変に、気が付いて。
『だから、お前は誰なんだよ』
「それで、怖くなって……」
必死に、自分が“男”ってことを伝えようとして。
でも、出来なくて……。
『それで、“男”はどこなんだよ』
だから、僕が“男”なんだよ――言おうとして、思った。
兄さんは、僕を信じてはくれないんじゃないか……
もしかしたら、いや、きっと誰だって信じてくれないかもしれない。
でも、出来なくて……。
『それで、“男”はどこなんだよ』
だから、僕が“男”なんだよ――言おうとして、思った。
兄さんは、僕を信じてはくれないんじゃないか……
もしかしたら、いや、きっと誰だって信じてくれないかもしれない。
だって、一番近しいはずの家族ですら信じてくれないんだから。
24 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:32.42 ID:Wr3InCI0
声から気付いた体の異変。
外見上、今僕は女の子になっている。
24 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:32.42 ID:Wr3InCI0
声から気付いた体の異変。
外見上、今僕は女の子になっている。
なんで?
昨日まで、僕は確かに男だったはずなのに、なんで?
何か原因があった訳でもないのに、なんで?
こんなことが起こる訳がないのに、なんで?
何か原因があった訳でもないのに、なんで?
こんなことが起こる訳がないのに、なんで?
――兄さんが、訳の分からない物を見るような目で見つめているのは、なんで?――
……嫌だ。
嫌だ、嫌だ、いやだ、いやだいやだいやだイヤだイヤだイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!
僕はここに居るのに、なんだってそれを信じてくれないなんて、嫌だ!!
それで、家を飛び出して、帰ることも出来なくて。
帰る所なんて、もう僕には無いんだって、初めて気が付いて……。
25 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:58.11 ID:Wr3InCI0
嘘や冗談を言っているようには見えない。
「それで、私のところに?」
なんで、私のところなんだろうか。
「……うん、なんで、なんだろうね」
「こっちが聞きたいわよ」
目の前で沈んでいる少女は、このまま放っておいては壊れてしまうんだろう。
自称“男”のこの女の子の仕草や言動は確かに“男”そのものだけれど、それでも私には見ず知らずの女の子だ。
それでも、話を信じる信じないなんて関係なく、このまま知らん顔なんてしていて良いんだろうか?
帰る所なんて、もう僕には無いんだって、初めて気が付いて……。
25 :名無草 :2007/04/24(火) 21:49:58.11 ID:Wr3InCI0
嘘や冗談を言っているようには見えない。
「それで、私のところに?」
なんで、私のところなんだろうか。
「……うん、なんで、なんだろうね」
「こっちが聞きたいわよ」
目の前で沈んでいる少女は、このまま放っておいては壊れてしまうんだろう。
自称“男”のこの女の子の仕草や言動は確かに“男”そのものだけれど、それでも私には見ず知らずの女の子だ。
それでも、話を信じる信じないなんて関係なく、このまま知らん顔なんてしていて良いんだろうか?
――良い訳が、ないでしょう。
少しだけ、信じてみることにしよう。
もちろん今すぐに、話全部を信じることなんて出来ないけれど。
それでもこの子が味わった苦しみを疑うなんて事、私には出来ない。
思い出しただけで震えの止まらないか弱い女の子、その震えは確かに本物だって私には分かる。
それが分かるんだもの、きっと、いつかこの子を分かることが出来るだろう。
本当にしても、嘘にしても。
「分かった、ちょっとだけ信じてあげる」
彼女の体が大きく震える、それは驚きからだろうか?
上げられた顔には、瞳には涙が溜まっていて、
「うん、とりあえず座ったら?」
上手い言葉が見つからずに、隣に座るように手招きする。
ふらり、ふらり。
踏み出す姿は弱弱しくて、きっと家を飛び出してから休む暇も無かったんだろう。
ソファーに腰を下ろして、涙はついに零れ落ちる。
それほどまでに辛かったのなら涙が枯れるまで泣いても良いんだと、私よりも華奢な背中を撫でながら、止まった震えに安堵する。
もちろん今すぐに、話全部を信じることなんて出来ないけれど。
それでもこの子が味わった苦しみを疑うなんて事、私には出来ない。
思い出しただけで震えの止まらないか弱い女の子、その震えは確かに本物だって私には分かる。
それが分かるんだもの、きっと、いつかこの子を分かることが出来るだろう。
本当にしても、嘘にしても。
「分かった、ちょっとだけ信じてあげる」
彼女の体が大きく震える、それは驚きからだろうか?
上げられた顔には、瞳には涙が溜まっていて、
「うん、とりあえず座ったら?」
上手い言葉が見つからずに、隣に座るように手招きする。
ふらり、ふらり。
踏み出す姿は弱弱しくて、きっと家を飛び出してから休む暇も無かったんだろう。
ソファーに腰を下ろして、涙はついに零れ落ちる。
それほどまでに辛かったのなら涙が枯れるまで泣いても良いんだと、私よりも華奢な背中を撫でながら、止まった震えに安堵する。
26 :名無草 :2007/04/24(火) 21:50:17.91 ID:Wr3InCI0
「泣き疲れて眠っちゃったか」
その小さな体をソファーに預けて、毛布を取りに行く。
これからどうしようか。
そんな事を考えながら部屋に戻る。
「……よく見ると可愛いよね」
なんか、ちょっと嫉妬しちゃうなぁ。
女にしては高い身長のせいか、可愛いなんて言われたことないもんね、私。
どれくらい縮んだんだろう? 男だった頃は私より頭一つ分くらいは大きかったよね、コイツ。
それでも男の中では普通くらいの身長だったけど。
部屋に戻る時とはえらく違う事を考えてるな……。
思って、なんだか面倒になって。
「まぁ、なるようになるでしょ」
窓から見える空はこれでもかって言うくらいの快晴。
うん、良い天気。
春の陽気に誘われて、なんだか眠くなってきて、
「私も、もう一寝入りするとしましょうか」
「泣き疲れて眠っちゃったか」
その小さな体をソファーに預けて、毛布を取りに行く。
これからどうしようか。
そんな事を考えながら部屋に戻る。
「……よく見ると可愛いよね」
なんか、ちょっと嫉妬しちゃうなぁ。
女にしては高い身長のせいか、可愛いなんて言われたことないもんね、私。
どれくらい縮んだんだろう? 男だった頃は私より頭一つ分くらいは大きかったよね、コイツ。
それでも男の中では普通くらいの身長だったけど。
部屋に戻る時とはえらく違う事を考えてるな……。
思って、なんだか面倒になって。
「まぁ、なるようになるでしょ」
窓から見える空はこれでもかって言うくらいの快晴。
うん、良い天気。
春の陽気に誘われて、なんだか眠くなってきて、
「私も、もう一寝入りするとしましょうか」
春空の下、野に咲く花が二つ。
彼女達はきっと、同じ夢を見ているんだろう。
季節の風も手伝って、その夢はきっと暖かいに違いない。
彼女達はきっと、同じ夢を見ているんだろう。
季節の風も手伝って、その夢はきっと暖かいに違いない。