128 :名無草 :2007/05/02(水) 20:40:56.12 ID:p/EsaMU0
「“女”、おはよう」
春の朝、その日差しと同じように優しい声に起こされる。
「ん、あ。“男”、おはよう」
時計は8時を指している。
……寝すぎだ。
たぶん、叔母さんが来るのは9時くらいだろう。
急いで支度しないと。
見れば“男”の方はそういったことは完全に終わらせているようだ。
七分袖のシャツと膝より少し上くらいのスカートを穿いている。
「……待て、その服どうしたの?」
なんとなく見覚えのある服、なんとなく予想できる答え。
「……“女”のお母さんに、着ろって渡されたんだけど」
やっぱりか、これ以上聞くのはやめておこう。
きっと“男”に、できたばかりのトラウマを掘り起こさせることになる。
後でお母さんに聞いておこう。
どういうつもりで私の古着なんかを出したのか。
129 :名無草 :2007/05/02(水) 20:41:21.68 ID:p/EsaMU0
ゆっくりのんびりと歯を磨いて顔を洗って。
それが終わって鏡を覗き込む。
あ、寝癖ついてる。
さっきは「急いで」と言ったわりには急いでるように見えないとか思ったあんた。
これでも急いでるつもりなのよ、朝に弱くて悪い?
と、誰にともなく文句を零して、今日は何を着ようか。
クローゼットを開いてあれこれと試してみる。
着替え終わって、時計は8時50分。
うん、思ったより早く終わったよね。
人と比べると確実に遅いんだろうけど気にしない。
そうして居間に行くと、従弟が居た。
「あ、“女”か。おはよう」
従弟と言っても同い年で、しかも通ってる学校も同じなのだが。
さらに言うなら、ここだけの話。
クラスまで同じと言うのは誰かの陰謀だろうか?
にしても、そうか。叔母さんが来ると言う事はコイツだって来るかもしれないってことだったのか……。
「“女”、おはよう」
春の朝、その日差しと同じように優しい声に起こされる。
「ん、あ。“男”、おはよう」
時計は8時を指している。
……寝すぎだ。
たぶん、叔母さんが来るのは9時くらいだろう。
急いで支度しないと。
見れば“男”の方はそういったことは完全に終わらせているようだ。
七分袖のシャツと膝より少し上くらいのスカートを穿いている。
「……待て、その服どうしたの?」
なんとなく見覚えのある服、なんとなく予想できる答え。
「……“女”のお母さんに、着ろって渡されたんだけど」
やっぱりか、これ以上聞くのはやめておこう。
きっと“男”に、できたばかりのトラウマを掘り起こさせることになる。
後でお母さんに聞いておこう。
どういうつもりで私の古着なんかを出したのか。
129 :名無草 :2007/05/02(水) 20:41:21.68 ID:p/EsaMU0
ゆっくりのんびりと歯を磨いて顔を洗って。
それが終わって鏡を覗き込む。
あ、寝癖ついてる。
さっきは「急いで」と言ったわりには急いでるように見えないとか思ったあんた。
これでも急いでるつもりなのよ、朝に弱くて悪い?
と、誰にともなく文句を零して、今日は何を着ようか。
クローゼットを開いてあれこれと試してみる。
着替え終わって、時計は8時50分。
うん、思ったより早く終わったよね。
人と比べると確実に遅いんだろうけど気にしない。
そうして居間に行くと、従弟が居た。
「あ、“女”か。おはよう」
従弟と言っても同い年で、しかも通ってる学校も同じなのだが。
さらに言うなら、ここだけの話。
クラスまで同じと言うのは誰かの陰謀だろうか?
にしても、そうか。叔母さんが来ると言う事はコイツだって来るかもしれないってことだったのか……。
私はコイツが嫌いだ。
チビのくせに生意気で、いや、チビだから生意気なのか。
そんなことはどうでもいいけど、そんなことに腹を立てるなんて、私もまだまだ子供みたいだ。
チビのくせに生意気で、いや、チビだから生意気なのか。
そんなことはどうでもいいけど、そんなことに腹を立てるなんて、私もまだまだ子供みたいだ。
――だから、嫌いなのかもしれない。
私はまだまだ子供で、コイツはそのことを思い出させる。
もしかしたら、いつまでも子供のままなんだって思わせる。
たぶん、だから私はコイツが嫌いなんだ。
「ん、おはよう」
適当に返事を返して、部屋を見渡す。
ソファーに腰掛けてテレビを見ている一つ下の従妹。
台所から聞こえる音、お母さんと叔母さんはそっちでご飯でも作ってるんだろう。
それじゃぁ“男”はどこだろう?
見れば洗面所のドアが半開きで、従妹に「おはよう」とだけ言ってそちらに歩き出す。
130 :名無草 :2007/05/02(水) 20:41:45.74 ID:p/EsaMU0
「で、何やってんの?」
ドアに背を任せて立ち尽くしている“男”。
「え、うん。いや、“友”が……」
“友”? つまりウチの従弟が何かしたんだろうか。
そんなことを考えて、思い出した。
コイツ、あいつと仲良いんだっけ。
こそあどが続くと分かり難いとか思いながらもふと思う。
こいつは一度実の兄から――信じてもらえなくて――逃げ出している。
その傷は、相手と近しければその分だけ苦しいものになるのは想像に難くない。
だけど、それで逃げて、どうするんだ。
中には時間が解決してくれる問題も確かにあるだろう。
でも、これはそういう問題じゃないでしょ。
いつかは、信じてくれなくたって、それで傷ついたって。
面と向かって話をしないといけないことじゃないの?
「で、いつまでも隠れてるつもりなの?」
“男”は俯いている。
「黙ってちゃ解決することも解決しないよ?」
その肩は僅かに震えていて、それでも、私の言葉で後押しできるのなら。
私は鬼にだってなってやる。
「信じてくれるとか信じてくれないとか、そう言う問題じゃないでしょ?」
上がらない顔はきっと見ただけで、悲しみで胸が痛むくらいに歪んでいるんだろう。
「いつまで逃げてるの? ちゃんと自分の声で叫ばないと誰にも届く訳がないでしょ!?」
大きく震える“男”の体、今にも折れてしまいそうで、
「大丈夫、今は私だってついてるんだから」
折れて、崩れ落ちてしまいそうなその体を抱きとめて、
「頼りないかもしれないけど、精一杯支えるから」
出来るだけ優しく、少しでも伝えられるように。
131 :名無草 :2007/05/02(水) 20:42:03.66 ID:p/EsaMU0
柔らかくて、優しい温もりが――“女”の両腕が解けて――離れていく。
「ぁ」
その温もりに少しでも縋っていたくて、そんな声が漏れた。
「だから、ね。一緒に頑張ろ?」
照れ隠しのように笑って、鼻の頭をかきながら言う“女”。
「う、ん」
溢れそうになる涙に耐えようとして、
「もう、泣かないの」
ダメだったみたい、“女”が流れ落ちた涙の跡を拭ってくれて。
「ありがとう」
“女”は困ったように笑みを作る。
「ごめん」
彼女の胸に抱きついて、
「ごめん……」
涙は止まってくれなくて、そんな僕の頭を撫でてくれる“女”。
「もう……」
暖かな優しさに包まれて、そのまま泣き続けた。
私はまだまだ子供で、コイツはそのことを思い出させる。
もしかしたら、いつまでも子供のままなんだって思わせる。
たぶん、だから私はコイツが嫌いなんだ。
「ん、おはよう」
適当に返事を返して、部屋を見渡す。
ソファーに腰掛けてテレビを見ている一つ下の従妹。
台所から聞こえる音、お母さんと叔母さんはそっちでご飯でも作ってるんだろう。
それじゃぁ“男”はどこだろう?
見れば洗面所のドアが半開きで、従妹に「おはよう」とだけ言ってそちらに歩き出す。
130 :名無草 :2007/05/02(水) 20:41:45.74 ID:p/EsaMU0
「で、何やってんの?」
ドアに背を任せて立ち尽くしている“男”。
「え、うん。いや、“友”が……」
“友”? つまりウチの従弟が何かしたんだろうか。
そんなことを考えて、思い出した。
コイツ、あいつと仲良いんだっけ。
こそあどが続くと分かり難いとか思いながらもふと思う。
こいつは一度実の兄から――信じてもらえなくて――逃げ出している。
その傷は、相手と近しければその分だけ苦しいものになるのは想像に難くない。
だけど、それで逃げて、どうするんだ。
中には時間が解決してくれる問題も確かにあるだろう。
でも、これはそういう問題じゃないでしょ。
いつかは、信じてくれなくたって、それで傷ついたって。
面と向かって話をしないといけないことじゃないの?
「で、いつまでも隠れてるつもりなの?」
“男”は俯いている。
「黙ってちゃ解決することも解決しないよ?」
その肩は僅かに震えていて、それでも、私の言葉で後押しできるのなら。
私は鬼にだってなってやる。
「信じてくれるとか信じてくれないとか、そう言う問題じゃないでしょ?」
上がらない顔はきっと見ただけで、悲しみで胸が痛むくらいに歪んでいるんだろう。
「いつまで逃げてるの? ちゃんと自分の声で叫ばないと誰にも届く訳がないでしょ!?」
大きく震える“男”の体、今にも折れてしまいそうで、
「大丈夫、今は私だってついてるんだから」
折れて、崩れ落ちてしまいそうなその体を抱きとめて、
「頼りないかもしれないけど、精一杯支えるから」
出来るだけ優しく、少しでも伝えられるように。
131 :名無草 :2007/05/02(水) 20:42:03.66 ID:p/EsaMU0
柔らかくて、優しい温もりが――“女”の両腕が解けて――離れていく。
「ぁ」
その温もりに少しでも縋っていたくて、そんな声が漏れた。
「だから、ね。一緒に頑張ろ?」
照れ隠しのように笑って、鼻の頭をかきながら言う“女”。
「う、ん」
溢れそうになる涙に耐えようとして、
「もう、泣かないの」
ダメだったみたい、“女”が流れ落ちた涙の跡を拭ってくれて。
「ありがとう」
“女”は困ったように笑みを作る。
「ごめん」
彼女の胸に抱きついて、
「ごめん……」
涙は止まってくれなくて、そんな僕の頭を撫でてくれる“女”。
「もう……」
暖かな優しさに包まれて、そのまま泣き続けた。
姿形は変わっても、その心は変わらないと。
誰一人信じることがなくても信じ続けると言った僅かに背の高い、けれど小さな花。
その優しさはきっと傍らの花を勇気付けて。
誰一人信じることがなくても信じ続けると言った僅かに背の高い、けれど小さな花。
その優しさはきっと傍らの花を勇気付けて。