296 :名無草 :2007/05/24(木) 23:11:18.71 ID:fErfbzg0
私と“男”、“友”に“妹”ちゃんと叔母さんとで服を買いに行くことになった。
お母さんは先日の仕事でダウンしている。
そう言う訳で家から車で三十分程の距離にあるショッピングモールまで。
そうして今は行きの車の中。
先日お母さんから聞いたこと、その真偽を確かめてみよう。
そう思って言葉を発する。
「あの、叔母さん」
バックミラー越しに叔母さんと目が合う。
「何? “女”ちゃん」
本当に子供を産んだのかと疑いたくなる程に若々しい顔だち、きっと私たちと並んで歩いていても同い年と思えるくらいに。
「叔母さんは……」
そこで詰まる。
何と訊ねれば良いのか……。
「叔母さんも昔は男の人だったって本当なんですか?」
悩んで居たって仕方ない、単刀直入に聞いてみることにした。
「あ、姉さんから聞いた?」
返事は思ったよりも呆気ないものだった。
「あ、はい」
“友”と“妹”ちゃんは驚いている様子で、
「え、本当なのか?」
「嘘!?」
こんな感じの反応をしている。
鏡の向こうの叔母さんは幼ささえ感じられる笑顔を作って、
「隠してても仕方ないし、普通に喋っても良いかな?」
真っ直ぐに私を見つめて言う。
「喋りやすいように喋って下さい」
297 :名無草 :2007/05/24(木) 23:14:12.20 ID:fErfbzg0
「そっか、じゃぁ普通に話すね」
そして話し始める叔母さんの瞳は、なんだか……そう、少年みたいな輝きを湛えていた。
「男から女になったのは丁度“友”や“男”君くらいの年だったかな」
叔母さんがよく未成年と間違えられてお酒が買えないとぼやいているのを思い出して、
確かに間違えられてもおかしくない、なんて考えてると。
「女として生きてる時間は“女”ちゃんと同じくらいだね」
つまり実質女としての年齢は……、二十歳弱。
十八歳か十九歳なら納得出来るくらいに幼いんだ。
「二人と同じように朝起きたらいきなり女になってた」
その時の瞳だけは年相応な、遠く昔を懐かしむような目をしていたと思う。
「俺の時は周りの人達に随分助けられたな」
特に姉貴、“女”ちゃんのお母さんにね。
そう付け足して先を続ける。
「うん、あの時は助けられてばっかりだったし。今度は俺が助ける番だよな」
言ってクシャクシャな笑顔を作る叔母さんは、チグハグで、幼げで、何より魅力的で。
純粋な笑顔ってこんなにも人を惹きつけるものなんだ、なんて思った。
「ほい、到着っと」
そうして気付けば目的地に到着していて、
「それじゃぁ今日は張り切って買い物しちゃおっか」
“男”と“友”の手を掴んで歩き出す、“妹”ちゃんは遅れまいと“男”の隣を歩いて。
私たちの少し後ろ、微笑んで見守る叔母さんの笑顔を盗み見ながら歩いて行く。
298 :名無草 :2007/05/24(木) 23:17:41.02 ID:fErfbzg0
服と下着を買って、それだけで時刻は昼前。
買い物風景はお決まりなイベントなだけに割愛させてもらう。
お昼ごはんはこの近くにあるお母さんとお父さん、それと叔母さんと叔父さんが経営している喫茶店で食べることになった。
でもその喫茶店に行くまでの間にもいろんな店があって。
折角だからと言う事で歩いていく事になって、今はその道中。
「あ、懐かしい。ここ俺が女になった頃に姉貴とお袋に連れてこられた店なんだよ。
まだ店あったんだ。こっち側あんまり来ないからなー」
なんて言いながら妖しげな店に入っていく叔母さん。
えっと、入り口にメイド服ってどうなのよ?
「……どうする?」
問いかけてくる“友”。
「待ってる訳にも、いかないんじゃない?」
そう言う“男”。
そうして一行は昼なお暗い魔窟へと足を踏み入れる……。
私と“男”、“友”に“妹”ちゃんと叔母さんとで服を買いに行くことになった。
お母さんは先日の仕事でダウンしている。
そう言う訳で家から車で三十分程の距離にあるショッピングモールまで。
そうして今は行きの車の中。
先日お母さんから聞いたこと、その真偽を確かめてみよう。
そう思って言葉を発する。
「あの、叔母さん」
バックミラー越しに叔母さんと目が合う。
「何? “女”ちゃん」
本当に子供を産んだのかと疑いたくなる程に若々しい顔だち、きっと私たちと並んで歩いていても同い年と思えるくらいに。
「叔母さんは……」
そこで詰まる。
何と訊ねれば良いのか……。
「叔母さんも昔は男の人だったって本当なんですか?」
悩んで居たって仕方ない、単刀直入に聞いてみることにした。
「あ、姉さんから聞いた?」
返事は思ったよりも呆気ないものだった。
「あ、はい」
“友”と“妹”ちゃんは驚いている様子で、
「え、本当なのか?」
「嘘!?」
こんな感じの反応をしている。
鏡の向こうの叔母さんは幼ささえ感じられる笑顔を作って、
「隠してても仕方ないし、普通に喋っても良いかな?」
真っ直ぐに私を見つめて言う。
「喋りやすいように喋って下さい」
297 :名無草 :2007/05/24(木) 23:14:12.20 ID:fErfbzg0
「そっか、じゃぁ普通に話すね」
そして話し始める叔母さんの瞳は、なんだか……そう、少年みたいな輝きを湛えていた。
「男から女になったのは丁度“友”や“男”君くらいの年だったかな」
叔母さんがよく未成年と間違えられてお酒が買えないとぼやいているのを思い出して、
確かに間違えられてもおかしくない、なんて考えてると。
「女として生きてる時間は“女”ちゃんと同じくらいだね」
つまり実質女としての年齢は……、二十歳弱。
十八歳か十九歳なら納得出来るくらいに幼いんだ。
「二人と同じように朝起きたらいきなり女になってた」
その時の瞳だけは年相応な、遠く昔を懐かしむような目をしていたと思う。
「俺の時は周りの人達に随分助けられたな」
特に姉貴、“女”ちゃんのお母さんにね。
そう付け足して先を続ける。
「うん、あの時は助けられてばっかりだったし。今度は俺が助ける番だよな」
言ってクシャクシャな笑顔を作る叔母さんは、チグハグで、幼げで、何より魅力的で。
純粋な笑顔ってこんなにも人を惹きつけるものなんだ、なんて思った。
「ほい、到着っと」
そうして気付けば目的地に到着していて、
「それじゃぁ今日は張り切って買い物しちゃおっか」
“男”と“友”の手を掴んで歩き出す、“妹”ちゃんは遅れまいと“男”の隣を歩いて。
私たちの少し後ろ、微笑んで見守る叔母さんの笑顔を盗み見ながら歩いて行く。
298 :名無草 :2007/05/24(木) 23:17:41.02 ID:fErfbzg0
服と下着を買って、それだけで時刻は昼前。
買い物風景はお決まりなイベントなだけに割愛させてもらう。
お昼ごはんはこの近くにあるお母さんとお父さん、それと叔母さんと叔父さんが経営している喫茶店で食べることになった。
でもその喫茶店に行くまでの間にもいろんな店があって。
折角だからと言う事で歩いていく事になって、今はその道中。
「あ、懐かしい。ここ俺が女になった頃に姉貴とお袋に連れてこられた店なんだよ。
まだ店あったんだ。こっち側あんまり来ないからなー」
なんて言いながら妖しげな店に入っていく叔母さん。
えっと、入り口にメイド服ってどうなのよ?
「……どうする?」
問いかけてくる“友”。
「待ってる訳にも、いかないんじゃない?」
そう言う“男”。
そうして一行は昼なお暗い魔窟へと足を踏み入れる……。
307 :名無草 :2007/05/29(火) 08:01:22.70 ID:IRt/dbo0
店内には節操がない程の服、服、服。
西へ東へ昔へ今へ。
よくもまぁこんなにも集めたものだ。
そんなことを思っていると、
「“女”ちゃん、こっちこっち」
私を呼ぶ叔母さん。
「何ですか?」
近づく、と、いつの間にか手には巫女装束が……
「これ着てみて」
笑顔で言う叔母さん。
その笑顔は反則です……
思うも逆らえず身に纏うは巫女装束。
おまけに叔母さんに髪を結われてポニーテール。
「似合う似合う」
ちょ、写真は勘弁して下さい。
「うん、似合ってるよ」
“男”が言う。
「うっさい」
しばらく放っておいて欲しい……。
「“男”君、ちょっとこっち来て」
そうして不用意に近付く“男”、こいつ絶対バカだ。
308 :名無草 :2007/05/29(火) 08:03:19.74 ID:IRt/dbo0
太陽の光、それは全てを照らす希望の光で、全てを責める断罪の光で……。
今の私にはその光は眩し過ぎる。
それは“男”や“友”、“妹”ちゃんにも同じようで、みんな俯き気味で歩いている。
あの店に入るまでは、そんなことは考えもしなかったのに。
それは全て今の格好が原因だろう。
今の私は、似非巫女さんなんだから……。
私だけではなく、“男”はゴスロリ(?)、“友”はチャイナドレスで“妹”ちゃんはメイドさんだ。
そんな私たちの前を歩く叔母さんも婦警さんで、
「なんでこんな事に……」
思わず呟いてしまった。
「あの店に入ったのが間違い、だな」
私の声に返事する“友”。
そうして二人で“男”の方を見る。
“男”は全くの無反応。
「ん?」
“友”が変な声を上げる。
「どうしたの?」
聞いても、
「いや、なんでもない」
そうとしか答えない。
もう一度“男”の方に目を向ける、と。
その向こうに歩いているのは何だか型破りな着物を着た男女の二人組みで、良く見るとその他にも普通は着ない服を着ている。
つまりはコスプレ(?)している人が居る。
それは、この辺りがそう言う場所だってこと?
叔母さんの方を見るとこっちを見て微笑んでいて。
後でまた話をしないといけないな……。
そんなことを考えている間に目的の喫茶店に着いた。
309 :名無草 :2007/05/29(火) 08:04:19.76 ID:IRt/dbo0
とりあえずランチセットを頼んで、
「それで、何であんな店に入ったんですか?」
単刀直入、本題だけを切り出す。
「んー、何か他人行儀だよねぇ。普通に喋って欲しいな」
はぐらかす叔母さん。
「叔母さん、何であの店に入ったの?」
仕方なく言い直す。
「気付かない?」
何となくは察しが付く、けれどそれ以外に何か意味があったんじゃないだろうか。
「あの店に入る前までは、辺りの様子も分からないくらいに余裕がないみたいだったからね」
それは……確かにそうだろう。
現にあんな服装をした人達とすれ違っていたのにずっと気付かなかったんだから。
「それだけ、ですか?」
その問いに叔母さんはこっちを真っ直ぐに見て、
「強いて言えば、見てみたかったから。かな」
そう言った。
「まさか母さんにこんな趣味があったとはな」
フォークを動かすのを止めて、“友”が言う。
「露とも思わなかったね」
“妹”ちゃんが後を続ける。
310 :名無草 :2007/05/29(火) 08:05:39.09 ID:IRt/dbo0
“妹”ちゃんの方を見たときに“男”が目に入って、
「どうしたの? 食べられないなら無理しなくても良いわよ」
体が小さくなったからか、出された量の半分くらいから全然減っていないようだ。
「うん、大丈夫だから」
そう言いながらまだ食べ続けようとする。
――なんでこいつはこんなに無理しようとするんだろう。
私の所に来た時だってそうだ。
涙を溜められるだけ溜めて、止まらなくなるまで溜め込んで。
それでも必至に止めようとするんだもの……。
「まだデザートだって残ってるんだから。ほら、残りは私か“友”が食べるから」
そう言いながら“男”のお皿を取り上げる。
「あ、大丈夫だよ」
まだそんな事を言いやがる。
「ダメ、もう私のだもん」
そう言うと諦めて、幾分安堵したように肩の力が抜けるのが分かる。
さて、私が食べるって言っても、ここのセットは量が多いんだよなぁ……。
どうしよう……。
店内には節操がない程の服、服、服。
西へ東へ昔へ今へ。
よくもまぁこんなにも集めたものだ。
そんなことを思っていると、
「“女”ちゃん、こっちこっち」
私を呼ぶ叔母さん。
「何ですか?」
近づく、と、いつの間にか手には巫女装束が……
「これ着てみて」
笑顔で言う叔母さん。
その笑顔は反則です……
思うも逆らえず身に纏うは巫女装束。
おまけに叔母さんに髪を結われてポニーテール。
「似合う似合う」
ちょ、写真は勘弁して下さい。
「うん、似合ってるよ」
“男”が言う。
「うっさい」
しばらく放っておいて欲しい……。
「“男”君、ちょっとこっち来て」
そうして不用意に近付く“男”、こいつ絶対バカだ。
308 :名無草 :2007/05/29(火) 08:03:19.74 ID:IRt/dbo0
太陽の光、それは全てを照らす希望の光で、全てを責める断罪の光で……。
今の私にはその光は眩し過ぎる。
それは“男”や“友”、“妹”ちゃんにも同じようで、みんな俯き気味で歩いている。
あの店に入るまでは、そんなことは考えもしなかったのに。
それは全て今の格好が原因だろう。
今の私は、似非巫女さんなんだから……。
私だけではなく、“男”はゴスロリ(?)、“友”はチャイナドレスで“妹”ちゃんはメイドさんだ。
そんな私たちの前を歩く叔母さんも婦警さんで、
「なんでこんな事に……」
思わず呟いてしまった。
「あの店に入ったのが間違い、だな」
私の声に返事する“友”。
そうして二人で“男”の方を見る。
“男”は全くの無反応。
「ん?」
“友”が変な声を上げる。
「どうしたの?」
聞いても、
「いや、なんでもない」
そうとしか答えない。
もう一度“男”の方に目を向ける、と。
その向こうに歩いているのは何だか型破りな着物を着た男女の二人組みで、良く見るとその他にも普通は着ない服を着ている。
つまりはコスプレ(?)している人が居る。
それは、この辺りがそう言う場所だってこと?
叔母さんの方を見るとこっちを見て微笑んでいて。
後でまた話をしないといけないな……。
そんなことを考えている間に目的の喫茶店に着いた。
309 :名無草 :2007/05/29(火) 08:04:19.76 ID:IRt/dbo0
とりあえずランチセットを頼んで、
「それで、何であんな店に入ったんですか?」
単刀直入、本題だけを切り出す。
「んー、何か他人行儀だよねぇ。普通に喋って欲しいな」
はぐらかす叔母さん。
「叔母さん、何であの店に入ったの?」
仕方なく言い直す。
「気付かない?」
何となくは察しが付く、けれどそれ以外に何か意味があったんじゃないだろうか。
「あの店に入る前までは、辺りの様子も分からないくらいに余裕がないみたいだったからね」
それは……確かにそうだろう。
現にあんな服装をした人達とすれ違っていたのにずっと気付かなかったんだから。
「それだけ、ですか?」
その問いに叔母さんはこっちを真っ直ぐに見て、
「強いて言えば、見てみたかったから。かな」
そう言った。
「まさか母さんにこんな趣味があったとはな」
フォークを動かすのを止めて、“友”が言う。
「露とも思わなかったね」
“妹”ちゃんが後を続ける。
310 :名無草 :2007/05/29(火) 08:05:39.09 ID:IRt/dbo0
“妹”ちゃんの方を見たときに“男”が目に入って、
「どうしたの? 食べられないなら無理しなくても良いわよ」
体が小さくなったからか、出された量の半分くらいから全然減っていないようだ。
「うん、大丈夫だから」
そう言いながらまだ食べ続けようとする。
――なんでこいつはこんなに無理しようとするんだろう。
私の所に来た時だってそうだ。
涙を溜められるだけ溜めて、止まらなくなるまで溜め込んで。
それでも必至に止めようとするんだもの……。
「まだデザートだって残ってるんだから。ほら、残りは私か“友”が食べるから」
そう言いながら“男”のお皿を取り上げる。
「あ、大丈夫だよ」
まだそんな事を言いやがる。
「ダメ、もう私のだもん」
そう言うと諦めて、幾分安堵したように肩の力が抜けるのが分かる。
さて、私が食べるって言っても、ここのセットは量が多いんだよなぁ……。
どうしよう……。
結局、“男”が残した分は“友”と半分ずつ食べた。
満腹だ、けどデザートは別腹と言うのは伊達ではない。
特にここのデザートは美味しくて難なく食べられるんだ。
“男”の方もデザートは問題なく食べられるようで、小さく一口ずつ食べている。
311 :名無草 :2007/05/29(火) 08:09:18.09 ID:IRt/dbo0
“妹”の声に視線をずらした“女”ちゃんは“男”君が辛そうにしているのに気付いて。
「どうしたの? 食べられないなら無理しなくても良いわよ」
そう言いながら“男”君の方を見つめる。
「うん、大丈夫だから」
大丈夫そうには見えないのだけど、“男”君はそう言った。
まぁ、頼んだ手前意地みたいなものがあるんだろう。
私だって男だったんだから分からないでもないけど、今は女の子なんだから程ほどにね。
そんな事を考えていると“女”ちゃんは“男”君の料理を強奪してしまった。
男だった頃にこんなことをされれば表情は不満で一杯になるだろう、けれど今の“男”君はほっとしたような顔をしている。
“女”ちゃんはそんな“男”君の様子に満足した様子で、一頻り頬を緩めた後料理に向かい表情を引き締める。
――姉貴に似てか、気が利くんだね。
気が強いところとか、ちょっと強引なところ。
それに勘も鋭いところも似てる。
でもちょっと詰めが甘いかな。
二人を眺めながら取り留めもなくそんな事を考えていると電話が鳴った。
「あ、ちょっと席外すね」
そう言ってから店の外へ。
「姉貴、どうしたの?」
携帯電話を耳にあて訊ねる。
「頼んでた四人の写真、撮れた?」
「ああ、バッチリ撮れたよ」
つまりはそう言うこと。
四人には悪いけど、俺は姉貴には逆らえないんだ。
いろんな意味で。
312 :名無草 :2007/05/29(火) 08:11:22.78 ID:IRt/dbo0
寄り添う花は、ただただ寒さや強い風に耐えるのに必死で。
見兼ねた赤い花は少しの悪戯と、小さなエールを送る。
どうかこの幼い花たちが枯れてしまわないように。
満腹だ、けどデザートは別腹と言うのは伊達ではない。
特にここのデザートは美味しくて難なく食べられるんだ。
“男”の方もデザートは問題なく食べられるようで、小さく一口ずつ食べている。
311 :名無草 :2007/05/29(火) 08:09:18.09 ID:IRt/dbo0
“妹”の声に視線をずらした“女”ちゃんは“男”君が辛そうにしているのに気付いて。
「どうしたの? 食べられないなら無理しなくても良いわよ」
そう言いながら“男”君の方を見つめる。
「うん、大丈夫だから」
大丈夫そうには見えないのだけど、“男”君はそう言った。
まぁ、頼んだ手前意地みたいなものがあるんだろう。
私だって男だったんだから分からないでもないけど、今は女の子なんだから程ほどにね。
そんな事を考えていると“女”ちゃんは“男”君の料理を強奪してしまった。
男だった頃にこんなことをされれば表情は不満で一杯になるだろう、けれど今の“男”君はほっとしたような顔をしている。
“女”ちゃんはそんな“男”君の様子に満足した様子で、一頻り頬を緩めた後料理に向かい表情を引き締める。
――姉貴に似てか、気が利くんだね。
気が強いところとか、ちょっと強引なところ。
それに勘も鋭いところも似てる。
でもちょっと詰めが甘いかな。
二人を眺めながら取り留めもなくそんな事を考えていると電話が鳴った。
「あ、ちょっと席外すね」
そう言ってから店の外へ。
「姉貴、どうしたの?」
携帯電話を耳にあて訊ねる。
「頼んでた四人の写真、撮れた?」
「ああ、バッチリ撮れたよ」
つまりはそう言うこと。
四人には悪いけど、俺は姉貴には逆らえないんだ。
いろんな意味で。
312 :名無草 :2007/05/29(火) 08:11:22.78 ID:IRt/dbo0
寄り添う花は、ただただ寒さや強い風に耐えるのに必死で。
見兼ねた赤い花は少しの悪戯と、小さなエールを送る。
どうかこの幼い花たちが枯れてしまわないように。