白 [sage]:2007/12/11(火) 00:55:48.23 ID:PYx64SU0
『シガレット→しがれっと』第八話
『シガレット→しがれっと』第八話
春休みももうすぐ終わりに近づいていたある日、カグヤは呼び出しがあったと一言メモを残して朝から姿を消していたが、夕方くらいになってふらっと戻ってきた。
「昭人、アンタにプレゼントよ」
「へ?うわっと!」
カグヤは帰ってくるなり、いきなり俺に何かを放り投げた。それを何とかキャッチをし、確認する。
「・・・タバコ?」
渡されたものは、見たことも無い銘柄だが、確かにタバコのようなものだった。
「そう、アンタ最近タバコ吸ってないでしょ?だから特別にプレゼント」
確かに、俺は女になってしまってからというものの、服やら身の回りの物への失費が重なり貯金すら尽きかけていたため、節約生活を強制されていたのだ。
しかし、急にカグヤがプレゼントなんて・・・何か怪しいものを感じてしまう。
それと補足だが、この家にカグヤが正式に居候することが認められた日に、カグヤから「さんは不要よ」と言われているため、その日からは呼び捨てをしている。
「ん~、なんだか怪しいなぁ」
「あら、怪しいとは失礼じゃない?女の子から折角のプレゼントなのにそんなことを言うなんて」
「女の子・・・ねぇ」
その言葉を聞いて、カグヤは一瞬はムッとした顔をした。
しかし、俺としてはカグヤを女の子としては見れないのは事実だった。彼女は「子」と呼ぶには大人しく美人すぎるのだ。
「ま、折角の好意だし、ありがたく受け取っておくよ」
「あれ?今吸わないの?」
ポケットにタバコをしまおうとすると予想外に呼び止められた。
「ん、今はそんな気分じゃないというか、この姿になってから吸いたい気が起こらないんだよ」
「良いじゃない、今吸ってみてよ」
そんなに言うなんて、よっぽど自分のプレゼントしたものがちゃんと使ってもらえるかが気になるのか。
「そこまで言うなら」
それは箱を空け(なぜかビニールで封はされてなかった)、慣れた手つきで一本取り出した。
机の上に置きざりにしていたライターを手に取り、咥えたタバコに火をつける。
「すぅ~・・・、はぁ~・・・」
一瞬、頭がクラっとした。ヤニクラだ。久しぶりに吸うのに、以前のように一度に一杯吸ってしまったからだろう。
「どうかしら?」
「ん~、不味くは無いね」
「そうじゃなくて、体に異変とかない?」
「少しクラっとしたくらいだ。それも特に問題は無い現象だから」
「そう、クラっとしたのね・・・」
その時、確かにカグヤは妖しくにやりと微笑んだのを俺は見逃さなかった。
そして次の瞬間、俺の視界はブラックアウトし、その場に倒れこんだ。
643 :佐白 [sage]:2007/12/11(火) 01:22:38.75 ID:PYx64SU0
「・・・ん」
目を覚ますと、見慣れた天井がそこにはあった。
俺はいつの間に寝ていたのだろうか。そもそも、寝る前の記憶がぼやけていて思い出せない。
それにしても、体が締め付けられるような、異様な窮屈感がしていた。
俺は布団をめくって原因を確認してみて、驚いた。
「元に戻ってる・・・。は、ははは!夢じゃない!体が元に戻ったぞ!」
古風にも頬を抓って現実を確認しながら、思わず歓喜の声が漏れてしまった。
そう、何があったか知らないが、俺の体は本来の男の体に戻っていたのだ。
そのせいで、女物の服がきつくなり体を締め付けていたのだ。
着ていた服を脱ぎ捨てると、タンスにしまってあった着慣れたスウェットを取り出して早速着替える。
ブカブカじゃない。本当に元に戻ったのだと再確認する。
俺は急いでカグヤを探した。当の本人はリビングでマキと共にテレビを見ていた。
「なあ、見てくれ!男に戻ったぞ!」
しかし、2人の反応は思ったよりよくなかった。
「へ~、良かったねアキ兄ぃ」
「そうか、無事成功したのね」
マキの淡白すぎる態度も気になるが、カグヤは今「無事成功した」と言わなかったか?
まさか・・・。
「なあ、カグヤ。俺に何かしたのか?」
「タバコをプレゼントしたわ。それだけ」
「まさかそのタバコは・・・」
「ええ、私の世界の政府が設けた例のアレの研究チームが作ったものよ。以前頼んでおいたそれがやっと届いたのよ」
なるほど、つまりカグヤは俺の体を元に戻すために、裏で手回しをしてくれていたのか。
「ちなみに、それは試作品だからすぐに元に戻るかもしれないけどね」
「はぁ?なんだそりゃ!かも知れないってどういうことだよ」
「だって、アンタ以外にそのタバコを実験する相手はどこにも居ないもの」
なるほどと納得はできるが、つまり俺は未知な薬の実験台にされていたのか?
「でも良かったじゃない。念願の男に戻れて─」
バシッ─
俺の平手がカグヤの頬を叩いた。
カグヤは何が起きたのか解からない風に、ただ唖然と赤く染まりだした左頬に手を添えていた。
「この・・・馬鹿野郎!」
俺はそう言い捨てると、咄嗟に家から飛び出した。
カグヤに悪気はあったかどうかは俺には解からない。
だけど、些細なことでも彼女に騙されていたという事実は、今の俺にはすごく辛かったのだ。
だって、彼女が嘘を吐く人間なら、彼女が今まで話してくれた話の中に嘘があるかもしれないじゃないか。
今の俺にとって、彼女の言葉を信じるしか術はないというのに、それはあんまりにも・・・酷いと感じた。
闇雲に走り、そろそろ体が疲れたと悲鳴をあげその場に立ち止まると、タイミングを見計らったように雨が降ってきた。
雨は次第に強くなっていく。しかし、あたりには雨をしのげるような場所は無かった。
そして、何の前触れも無く俺の体は女に戻ってしまった。
644 :佐白 [sage]:2007/12/11(火) 01:52:16.84 ID:PYx64SU0
びちょびちょに濡れて冷たく、そして雨を含み重くなったスウェットのズボンをずり上げながら、俺は土砂降りの中、当てもなく無く彷徨っていた。
冷静に考えれば、カグヤはカグヤなりに頑張ってくれたのだろう。
何も言わずにあの試供品を俺に吸わせたのだって、多分照れくさかったのだろう。
数日共に生活をしてきて、彼女には少しあまのじゃくな所があるとわかっていたのに、俺と言う奴は・・・。
まさか、この年になって女性に手を上げるなんて、俺は最低な男だ。いや、今は女か・・・。
「はは・・・」
どうしようもない自分に思わず嘲笑ってしまった。
雨のせいで、段々と体温は下がっていき、ガクガクと体が無意識に身震いをし始めた。
「寒い」
ついに俺はその場でうずくまってしまった。もう一歩も動けなかった。
このまま死ぬのだろうか?いや、人間そこまで弱くは無いだろう。しかし、死んだほうがマシなのだろうか。
不毛な考えが俺の頭の中で堂々巡りしていた。その時、俺の周りだけ雨が急にやんだ。
「こんなになってまで、何ですぐ戻ってこないのよ・・・ばか」
すぐ後ろから、今俺が一番顔を合わせ辛い人の声がした。恐る恐る振り返ると、やはり彼女が傘を差して立っていた。
「昭人、ごめんなさい!辛いのはあなたも一緒なのに、つい甘えて、酷いことしちゃって」
カグヤは、そう謝りながら初めて俺の前で涙を流した。ぼろぼろと、止まるのか心配になるほど泣いている。
普段の行動からは予想できないほど心は繊細なんだ、彼女も俺も。そう思った。
だから、俺は立ち上がって彼女の手を握った。とても暖かかった。
「・・・帰ろう、カグヤ」
「うん・・・、うん・・・」
カグヤのほうから迎えに来てくれたのに、今度は俺がカグヤの手を引いて帰ることになった。
ブカブカでびしょ濡れな服を着た小柄な少女と、その子に手を引かれて泣きながら歩く美女。
すれ違った人はその光景を見ては何事かと思っただろう。
遠くのほうに我が家が見えてきた。その時、散々に降っていた雨はピタリと止み、曇天の隙間から眩しい光があたりを照らし始めた。
幸先は良い。もう後ろ向きに考えるのはやめよう。
俺は、繋いだままの手に少し力を加えた。すると、カグヤもそれに答えてか握り返してきた。
カグヤとの距離が少し縮まった、そんな気がした。
「昭人、アンタにプレゼントよ」
「へ?うわっと!」
カグヤは帰ってくるなり、いきなり俺に何かを放り投げた。それを何とかキャッチをし、確認する。
「・・・タバコ?」
渡されたものは、見たことも無い銘柄だが、確かにタバコのようなものだった。
「そう、アンタ最近タバコ吸ってないでしょ?だから特別にプレゼント」
確かに、俺は女になってしまってからというものの、服やら身の回りの物への失費が重なり貯金すら尽きかけていたため、節約生活を強制されていたのだ。
しかし、急にカグヤがプレゼントなんて・・・何か怪しいものを感じてしまう。
それと補足だが、この家にカグヤが正式に居候することが認められた日に、カグヤから「さんは不要よ」と言われているため、その日からは呼び捨てをしている。
「ん~、なんだか怪しいなぁ」
「あら、怪しいとは失礼じゃない?女の子から折角のプレゼントなのにそんなことを言うなんて」
「女の子・・・ねぇ」
その言葉を聞いて、カグヤは一瞬はムッとした顔をした。
しかし、俺としてはカグヤを女の子としては見れないのは事実だった。彼女は「子」と呼ぶには大人しく美人すぎるのだ。
「ま、折角の好意だし、ありがたく受け取っておくよ」
「あれ?今吸わないの?」
ポケットにタバコをしまおうとすると予想外に呼び止められた。
「ん、今はそんな気分じゃないというか、この姿になってから吸いたい気が起こらないんだよ」
「良いじゃない、今吸ってみてよ」
そんなに言うなんて、よっぽど自分のプレゼントしたものがちゃんと使ってもらえるかが気になるのか。
「そこまで言うなら」
それは箱を空け(なぜかビニールで封はされてなかった)、慣れた手つきで一本取り出した。
机の上に置きざりにしていたライターを手に取り、咥えたタバコに火をつける。
「すぅ~・・・、はぁ~・・・」
一瞬、頭がクラっとした。ヤニクラだ。久しぶりに吸うのに、以前のように一度に一杯吸ってしまったからだろう。
「どうかしら?」
「ん~、不味くは無いね」
「そうじゃなくて、体に異変とかない?」
「少しクラっとしたくらいだ。それも特に問題は無い現象だから」
「そう、クラっとしたのね・・・」
その時、確かにカグヤは妖しくにやりと微笑んだのを俺は見逃さなかった。
そして次の瞬間、俺の視界はブラックアウトし、その場に倒れこんだ。
643 :佐白 [sage]:2007/12/11(火) 01:22:38.75 ID:PYx64SU0
「・・・ん」
目を覚ますと、見慣れた天井がそこにはあった。
俺はいつの間に寝ていたのだろうか。そもそも、寝る前の記憶がぼやけていて思い出せない。
それにしても、体が締め付けられるような、異様な窮屈感がしていた。
俺は布団をめくって原因を確認してみて、驚いた。
「元に戻ってる・・・。は、ははは!夢じゃない!体が元に戻ったぞ!」
古風にも頬を抓って現実を確認しながら、思わず歓喜の声が漏れてしまった。
そう、何があったか知らないが、俺の体は本来の男の体に戻っていたのだ。
そのせいで、女物の服がきつくなり体を締め付けていたのだ。
着ていた服を脱ぎ捨てると、タンスにしまってあった着慣れたスウェットを取り出して早速着替える。
ブカブカじゃない。本当に元に戻ったのだと再確認する。
俺は急いでカグヤを探した。当の本人はリビングでマキと共にテレビを見ていた。
「なあ、見てくれ!男に戻ったぞ!」
しかし、2人の反応は思ったよりよくなかった。
「へ~、良かったねアキ兄ぃ」
「そうか、無事成功したのね」
マキの淡白すぎる態度も気になるが、カグヤは今「無事成功した」と言わなかったか?
まさか・・・。
「なあ、カグヤ。俺に何かしたのか?」
「タバコをプレゼントしたわ。それだけ」
「まさかそのタバコは・・・」
「ええ、私の世界の政府が設けた例のアレの研究チームが作ったものよ。以前頼んでおいたそれがやっと届いたのよ」
なるほど、つまりカグヤは俺の体を元に戻すために、裏で手回しをしてくれていたのか。
「ちなみに、それは試作品だからすぐに元に戻るかもしれないけどね」
「はぁ?なんだそりゃ!かも知れないってどういうことだよ」
「だって、アンタ以外にそのタバコを実験する相手はどこにも居ないもの」
なるほどと納得はできるが、つまり俺は未知な薬の実験台にされていたのか?
「でも良かったじゃない。念願の男に戻れて─」
バシッ─
俺の平手がカグヤの頬を叩いた。
カグヤは何が起きたのか解からない風に、ただ唖然と赤く染まりだした左頬に手を添えていた。
「この・・・馬鹿野郎!」
俺はそう言い捨てると、咄嗟に家から飛び出した。
カグヤに悪気はあったかどうかは俺には解からない。
だけど、些細なことでも彼女に騙されていたという事実は、今の俺にはすごく辛かったのだ。
だって、彼女が嘘を吐く人間なら、彼女が今まで話してくれた話の中に嘘があるかもしれないじゃないか。
今の俺にとって、彼女の言葉を信じるしか術はないというのに、それはあんまりにも・・・酷いと感じた。
闇雲に走り、そろそろ体が疲れたと悲鳴をあげその場に立ち止まると、タイミングを見計らったように雨が降ってきた。
雨は次第に強くなっていく。しかし、あたりには雨をしのげるような場所は無かった。
そして、何の前触れも無く俺の体は女に戻ってしまった。
644 :佐白 [sage]:2007/12/11(火) 01:52:16.84 ID:PYx64SU0
びちょびちょに濡れて冷たく、そして雨を含み重くなったスウェットのズボンをずり上げながら、俺は土砂降りの中、当てもなく無く彷徨っていた。
冷静に考えれば、カグヤはカグヤなりに頑張ってくれたのだろう。
何も言わずにあの試供品を俺に吸わせたのだって、多分照れくさかったのだろう。
数日共に生活をしてきて、彼女には少しあまのじゃくな所があるとわかっていたのに、俺と言う奴は・・・。
まさか、この年になって女性に手を上げるなんて、俺は最低な男だ。いや、今は女か・・・。
「はは・・・」
どうしようもない自分に思わず嘲笑ってしまった。
雨のせいで、段々と体温は下がっていき、ガクガクと体が無意識に身震いをし始めた。
「寒い」
ついに俺はその場でうずくまってしまった。もう一歩も動けなかった。
このまま死ぬのだろうか?いや、人間そこまで弱くは無いだろう。しかし、死んだほうがマシなのだろうか。
不毛な考えが俺の頭の中で堂々巡りしていた。その時、俺の周りだけ雨が急にやんだ。
「こんなになってまで、何ですぐ戻ってこないのよ・・・ばか」
すぐ後ろから、今俺が一番顔を合わせ辛い人の声がした。恐る恐る振り返ると、やはり彼女が傘を差して立っていた。
「昭人、ごめんなさい!辛いのはあなたも一緒なのに、つい甘えて、酷いことしちゃって」
カグヤは、そう謝りながら初めて俺の前で涙を流した。ぼろぼろと、止まるのか心配になるほど泣いている。
普段の行動からは予想できないほど心は繊細なんだ、彼女も俺も。そう思った。
だから、俺は立ち上がって彼女の手を握った。とても暖かかった。
「・・・帰ろう、カグヤ」
「うん・・・、うん・・・」
カグヤのほうから迎えに来てくれたのに、今度は俺がカグヤの手を引いて帰ることになった。
ブカブカでびしょ濡れな服を着た小柄な少女と、その子に手を引かれて泣きながら歩く美女。
すれ違った人はその光景を見ては何事かと思っただろう。
遠くのほうに我が家が見えてきた。その時、散々に降っていた雨はピタリと止み、曇天の隙間から眩しい光があたりを照らし始めた。
幸先は良い。もう後ろ向きに考えるのはやめよう。
俺は、繋いだままの手に少し力を加えた。すると、カグヤもそれに答えてか握り返してきた。
カグヤとの距離が少し縮まった、そんな気がした。
「体冷えたし、一緒に風呂に入るか?」
「・・・調子に乗りすぎよ」
「・・・調子に乗りすぎよ」