152 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:48:44.74 ID:nciUuzs0
どんだけ☆エモーション(その5)
「お姉ちゃん、何してるの?」 浴室の脱衣所で固まっている俺を見て実由は不思議そうに尋ねる。 「何してるのって、実由お前は恥ずかしくないの? 今はともかく以前はお前の兄貴だった 俺の前で平然と服を脱ぐなんてさ…」 「やだぁ~♪ お姉ちゃん何意識してるの? 今は女同士なのに?」 脱衣所に入るや否やさっさと服を脱いで下着姿になった実由は俺の言葉に挑発的に微笑む。 まだ中学生ではあるが第二次性徴期真っ最中の妹である。 俺ほどでは無いにせよ多少なりとも女性らしさを感じる体つきになっているのは 確かであり、たとえ兄妹(姉妹?)であってもそれなりに恥じらいはあって然るべきでは? 「今はそうかも知れないけどさ…」 「今更何言ってるんだか。お姉ちゃん、男の頃からあたしの裸ずっと見てきてるじゃない?」 「誤解を招くような発言は控えてもらおうか。大体それは小学生の話だろ。 今現在はそんなこと全く無いしな。それによ、最近はすっかり実由は俺から疎遠に なったよな。妙によそよそしくなったというかさ…」 「…」 「ん?」 「お姉ちゃん、話はいいから入りましょ!」 実由はそう言うなり俺の着ている衣類を一気に脱がしにかかる。 「ええっ!? ち、ちょっと、実由!?」 あせる俺。 「いいからいいから♪」 「いくないからっ! って、あれぇ~!?」 またまた抵抗する間も無くあっという間に衣類を全て脱がされる俺。 これで何度目なんだろうか… 「実由! お前って奴はぁぁっ!!!!」 「やだ、本気で怒らないでよ、お姉ちゃん♪ 折角の可愛い顔が台無しだよ?」 何だか腹立たしいやら悲しいやらで涙目を通り越して本泣きの俺なんですが!
153 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:50:02.81 ID:nciUuzs0
◇
何やかんだでバスルームに入る俺と実由。 「…」 俺はバスルーム入ってすぐ目の前にある鏡を見つめる。 バスルームの大きな鏡には華奢ながらも年相応の女の子らしい体つきをした 可愛い女の子が映る。少女は顔を赤く染めつつ、恥ずかしそうに見ている。 これが今の俺なんだよな…認めたくは無いがどうにもこの事実は変えられない。 そうしているとひょこっと、鏡に映る俺の横にもう一人俺に似た可愛い女の子の姿が映る。 「何してるの、お姉ちゃん?」 実由は俺の横にやって来ると俺の腕を引っ張る。 「何だよ、実由は」 「お姉ちゃん、あたしが身体洗ったげるねっ♪」 俺の返答を聞かずに実由はスポンジをボディソープで泡立たせはじめる。 「いいよ、自分の身体くらい自分で洗えるって。」 「いいからいいから、座って」 俺が嫌がっているにも関わらず実由は俺を座らせると半ば強引に洗いはじめた。 「もう、強引なんだよな」 「女の子の肌は繊細なの。お姉ちゃん、きっとガシガシと身体洗っちゃうでしょ? だからあたしが洗い方教えてあげるからねっ☆」 …なる程、大雑把な俺だから男の感覚で強く身体を洗うつもりだったのだが それだと肌には良くないのか。 実由にしてはまともな事を言うなぁ。俺は実由が俺の身体を××したいものだと思ってたよ。 「イヤだなー!もう! お姉ちゃんったら!! まるであたしが変態みたいな事言って!!」 「…実由ちゃん、俺の考えている事読まないでくれる?」 「でもまぁ、否定しないかも。だってお姉ちゃんこんなに可愛いし、身体もキレイだし、 本気で好きになっちゃったよっ♪」 「ち、ちょっと! 実由っ!!」 気持ちが高鳴ったのか実由が抱きついてくる。正直焦る俺。 もう何してんだか。この姉妹は…。 傍からみると女の子同士でいちゃついているように思えるのだが とりあえず俺は実由から身体の洗い方のレクチャーを手取り足取り教えてもらった。 …ぐったり。
154 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:51:53.76 ID:nciUuzs0
「あたしね、お姉ちゃんが女になって良かったと思うんだ。」 身体を洗い終わった後、バスタブの湯に浸かる俺と実由。 「おいおいっ、俺はちっとも良くないぞ。この身体のせいで俺はさ…」 「あはっ、ゴメンね♪ 気に障っちゃった?」 「…」 多少ふて気味で実由を睨む俺。 「まあ、お姉ちゃんにとっては良くないのは当然か。でもあたしはお姉ちゃんには悪いけど 嬉しいの。だってそのお陰であたしは気兼ね無くお姉ちゃんに接することができるんだもん。」 実由が俺の肩に寄りかかってくる。 「まあ、同性になったからな。兄妹と姉妹とじゃ違うだろう。」 考えてみると実由が中学生になった頃からかな。俺と実由が一緒に風呂に入らなくなったのは。 その頃から疎遠気味になったんだよな俺達。 表面的には変化は無いように見えるけど、何か他所他所しくなったというか何というか。 「…お姉ちゃん、あたしの事勘違いしてない?」 「勘違い?」 「うん、疎遠がちっていうけどあたしはそんなつもり全然無いよ。 むしろお姉、…お兄ちゃんがあたしから遠ざかっている感じがしててあたしはそれが嫌だったよ。」 「俺の方が実由を避けはじめていたっていうのか?」 「うん」 「そうかな? …そうかも知れないなぁ」 実由に言われて妙に納得する俺。俺の方が意識していたのかも知れない。 考えてみると実由が女の子らしくなってから以前のように接することに 抵抗感があったような気がする。日に日に可愛らしくなっていく、異性を 感じさせていく実由に対しそれに違和感を覚える俺。 そう思ってしまったらなんだかぎこちない感じになっていたかもな。 「あたしたち、世界にたった二人の兄妹、…いや姉妹だよ。仲良くしないなんて 有り得ないよ。だから今回の件は昔のあたしたちに戻れるいい機会だと思ったんだ。」 「…」 俺は実由の顔を見つめる。 湯船に浸かっているせいか、実由の顔は上気していてほんのり赤くなっている。 顔が赤くなっているのはお風呂のせいだけではないようで、今まで言えなかった事が言えた 気持ちの高翌揚もあるのかなって俺は感じる。 「うん、そうだね。 その通りだよっ、お姉ちゃん♪」 「実由…」 「え…」 思わず実由を抱きしめる俺。こんなにも実由が愛しく感じたのは久々かも知れない。 「実由の言うとおりだな。ごめんな、お前の気持ちを考えてやれなくて…」 「嬉しい、お姉ちゃん…」 実由も俺の身体に抱きつき、俺の胸に顔をうずめる。 心なしか実由も感極まったのか涙を浮かべていて、正直そんな実由が可愛く感じる。 気が付けば俺は実由の頭を撫ぜ撫ぜしてあげていた。 「えへへ♪ お姉ちゃん、大好きww」 嬉しそうに撫ぜられている実由。 「女になって何だかなぁ…」と思っていたが、この時ばかりは良かったと思ってしまう。
その後、風呂から俺と実由はあがると下着のつけ方(ブラジャー)の着け方を実由に 教えてもらい、俺は自室へと戻った。 「お姉ちゃん、また一緒におフロ入ろうね♪」 実由は顔を赤らめて俺に抱きつく。甘えた声で嬉しそうにそう言うと自分の部屋へ行った。 ヤバイ。実由、マジ可愛い。いや、変な意味じゃないですけど。 …うーむ、変なフラグが立ったかも。
155 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:53:13.00 ID:nciUuzs0
◇
「ふぅ…、今日は色々有りすぎたなぁ。」 自分の部屋に戻るなり大きくため息をつく俺。 今日一日で起こった出来事については「どんだけ☆エモーション」の「その5」まで 引っ張っていることからその内容の濃さが物語っていると思われますが、 …とにかく疲れた。 あれだけ有った買い物の荷物は入浴前に実由と二人がかりで片付けたので 今はタンスやクローゼットの中に綺麗に片付けられている。 「…」 タンスの引き出しを開けると色とりどりのショーツとブラジャーが現れる。 …これを俺が付けなきゃなんないのか、既に付けているけど。 クローゼットを開けるとスカート、ワンピースが姿を現す。 男の時に着込んでいた洋服の類は今やどこにも無い。 男に戻る可能性も考えてか押入れのダンボールの中に以前の衣類が片付けられている。 果たしてそのダンボール内の衣類を再び着る機会はあるのだろうか。 …正直なところ俺には分からない。出来る事ならすぐにでも戻りたいのが本音だ。 「…」 俺はクローゼットからスカートを取り出す。実由の選んだピンクのミニスカート。 それを持って鏡の前に立ち、身体に合わせてみる。 しかし似合うよなぁ、どれもこれも。どの洋服を合わせてみても俺に良く似合う。 不本意ではあるが認めざるを得ないぜ…、この可愛らしさ。 今後の事を考えると女の子らしく振舞わないとならないのかぁ。 俺に出来るのかな? 誰も見ていないし、ちょっと練習せねば。 とりあえず笑顔から。 ( ̄ー ̄)ニヤリ …何か違う。 (・∀・)ニヤニヤ …これも違いますねっ。 (゚∀゚)アヒャ …何やってんだろ、俺。
156 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:54:23.34 ID:nciUuzs0
「楽しそうですね」 「!!」 いきなり何処から聞こえる声に俺は身体を硬直させる。 母さんでもない、実由でもない誰かの声。 「だ、誰?」 キョロキョロと辺りを見回す俺。 「…私? 私はここに居ますよ」 「!!」 急に俺の目の前が真っ白になる。 …。 …あれ? 何だこの感じは? どこかで同じ感覚を体験したような。 「あ。」 そうだ、これは今日の昼間にあの公園で俺が体験した白い物体との遭遇。 そして気が付いたら…こんな姿に。 「思い出したようですね。そうです、貴方が公園で衝突した存在。 そして貴方がその姿になった原因、それが私。」 …そうか、そうなのか。思い出した。あの時俺が公園のベンチで寝ていた時に 俺の頭上から落下してきた謎の白い物体。記憶が曖昧なまま自室で目覚め、 気が付いたら自分の身体が女の子になっていたあの出来事。 今の俺はベットの上に腰掛けている状態で一人ぼんやりと呆けている状況になっているが、 実際のところ自分の意識の中で俺はもう一人の誰かと会話をしていた。 「えーと、君は誰?」 「…私は○×◎☆▽と言います。端的に言いますと私は貴方達のような形態の生命体では無く、 ましてやこの世界の存在でもありません。」 「え?○×…何? 宇宙人? 異次元人? …それとも妖精?」 「今貴方の挙げた様々な”存在”の定義が正しいか否かは判断しかねますが、 私はこの世界には存在しない”思念体”のようなものと解釈していただいてよろしいかと 思います。」 意識下での会話は自問自答に近い感じではあるのだが、頭の中で返事がちゃんと 返ってくるので問題は無いようです。それにしても”白い存在”の言っている事は 俺には理解するのが難しいかも知れないです。 「うーん、まぁ何だか良く分からないけど、君は俺達のような”人間”では無く、 何か他の存在って事なんだね。」 「はい、そう理解していただいて問題ありません。」 「…ふーん、まぁ、そうならそれでいいんだけど。」 とりあえず納得する俺。これまでの経緯を考えるとそうせざるを得ない状況にあると 思われますので。
157 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:56:45.12 ID:nciUuzs0
「驚かれる様子はないので安心しました。この世界の方は異質な存在に対して 拒否感が無く意外と冷静で居られるようですね。」 「そりゃ、俺に限っては色々エロゲとか…って、やば。何でもありまry」 「えろげ?」 「いえいえっ、何でも。とにかく、君は何の用で来た訳なの? あと、どうして 俺がこんな事になってしまったのか教えて欲しいんだけど?」 焦る俺。思わず話をそらしてしまったよ。 「そうですね、この件について一番の影響を被ったのは貴方ですものね。 私は貴方にお詫びしなければなりません。あと、お礼も言わなければなりません。」 「それって、どういう事?」 「私は本来ここに居ないはずの存在。たまたまこの世界にきたのは 別の世界に移動する為でした。」 「どうして移動していたの?」 「はい、私達は時空間を移動する存在。様々な世界を渡り行き最終的に 自分の生存できる場所を見つける習性を持っています。それが私達という ”種”が存続していくための方法なんです。」 「ふぅん、…それで君は自分の住むべき場所を探すために移動していた途中だったんだ。」 「そうですね。しかしながら別世界の移動には非常に力を使います。 今回は長く移動を続けていたせいか、私自身の力不足もありましてあの場所で 力尽きてしまい、丁度貴方の居た場所に落下してしまったのです。」 「意識体が落下する? 何だか妙な感じだけど落下した先に俺が居て衝突したって事ね。」 「はい、その辺りの説明は…私も良く分からないので…お話できませんが、結果として …そうなってしまいました。」 …? ん? 「…あのままだと私だけでなく、貴方も死んでしまう状況にありました。 そこで私は貴方と融合することにしたのです。…本当に申し訳ありませんでした。 私のせいでこんな事になりまして、私にはこうするしか方法が無かったのです。」 …気のせいか意識体であるはずの○×…えーと、何とか?さんが泣いているような気がする。 「それは、分かったけど、なんでこの姿になったんだろ? 生命を永らえるだけなら男のままでも良かったと思うんだけど。」 「…ごめんなさい、私は貴方の世界でいうところの女性なんです。 だから融合の際、私の存在の影響から身体が女性になったと考えられます。」 「え~と、俺は元に戻れるのかなぁ?」 恐る恐る確認する俺。 「…ゴメンなさい、それは出来ません。今の私と貴方はある意味一心同体。 今はまだ身体のみの融合になりますが、そのうちに意識的にも何ら違和感無く融合してくると …思います。」 「えー! マジですか!! なんか!何か恐いんですけどっ!!!」 青ざめる俺。何だよそれは!! 本来の俺は何処行っちゃうの?
158 :vqzqQCI0 :2008/08/08(金) 19:58:03.58 ID:nciUuzs0
俺の身体が元に戻らないという事実よりもこの得体の知れない謎の物体との融合が 俺にとっては驚愕の事実であった。 何だか分からない不安感、恐怖感に襲われ恐慌気味の俺。本体の身体が 恐怖のあまり(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル している。 イヤ━━━━(゚∀゚;)━━━━!!!! 「落ち着いて下さい、大丈夫ですからっ! べ、別に貴方自身の存在が無くなるわけでは ありませんからっ!!」 焦り気味の○×…▽だっけ?さん。俺が半狂乱に陥ったのを慌てたのだろう。 「イヤ━━━(゚∀゚;)━( ;゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚ ;)━(;∀;)━━━!!!!!」 「心配しないでっ!! わたしを信じてっ!! 貴方の存在の保障はわたしがしますっ!! 絶対、約束しますからっ!! だから落ち着いてっ!!!」 傍から見ればベットの上で女の子がぐるぐる回って身悶えしているように見えるかも 知れない。いやぁ、これはこれで妙に艶かしくて萌えるかもしれませんが。 …しかし俺にとっては非常に恐ろしい精神状況にあったのでした。 「ミヒロちゃん~落ち着いて~! 話は私が全て聞いたわ~!!」 「お姉ちゃん! 大丈夫よっ♪ あたしが居るからっ!!」 いきなり俺の部屋がバタンと開けられたかと思うと母さんと実由がぱたぱたと やって来て回っている俺の身体に抱きついた。 …って、あなたたち何してんですか? 俺は意識体よりもあなた達のほうが恐いですよ。 「ねえ~、意識体の○×さん~?」 「は、はいっ?」 いきなり意識体に話かける母さん。いきなり話かけられて動揺する○×さん。 まぁ、普通は話しかけられることは無いはずだから驚くわな。 「ミヒロちゃんがあなたに乗っ取られることは絶対に無いのね~?」 「あ、ありません!」 「ホントに~~~~?」 「ホ、ホントですっ!!」 「そう~」 母さんは○×さんに確認を取るとおもむろに俺の顔を自分の胸に埋める。 「んー!!」 バタバタと混乱している俺などお構いなしに母さんは俺の頭を撫ぜ撫ぜし続ける。 「大丈夫だって~、ヒロちゃん~、大丈夫だからって~」 「うーん」 「大丈夫よ~、大丈夫~」 「う…」 徐々に身体の力が抜けていく俺。 …トクン、トクン、トクン 「…」 …トクン、トクン …母さんの心音が聞こえる。 規則正しいリズムは不思議にも俺の混乱状態を落ち着かせてくれる。 「…」 動き疲れたせいか、それとも母さんに抱かれて安心したのか俺はそのまま 眠りについたのであった。