418 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:15:14.92 ID:AmVi31g0
第五話
第五話
「はー、ひどい目に遭った・・・」
時は進んで今現在。絶賛帰宅中
思わず独り言が出てしまうぐらい悲惨な一日であった
あれからしばらく真夏の攻撃が続いただけならまだしも、真冬ちゃんに変な誤解されたし、マキはマキで真夏を煽りまくってるし(しかも煽った結果怒りの矛先がきちんと僕のほうへ向くように上手く誘導してるし・・・)
勿論、毎日こんなやり取りをしているわけじゃない。今日はたまたまというか今日だけ特別というか
結論から言うとだ
僕は目の前にある家のドアを思いっきり開ける
419 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:15:50.78 ID:AmVi31g0
「ただいまーっ!」
419 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:15:50.78 ID:AmVi31g0
「ただいまーっ!」
「おかえりー」
どう見ても今返事をしたこいつが原因です。本当に有難うございました
優は今日学校へ来たときと同じ服装のままだった。ちなみに猫耳もそのまま
「久しぶりの学校どうだった?」
「ええ、誰かさんのおかげでとても充実した時間になりました」
「それはなにより」
- こめかみのあたりがピクピク動く。そうだカルシウムが足りないのかもしれない、と必死に自分を落ち着けてみる
「まあでもみんな元気そうでよかったよ」
「ああ、もう元気過ぎて逆に困った。首に変なあとが残ってないかが心配だ」
420 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:16:16.10 ID:AmVi31g0
「大丈夫、何も残ってないよ」
420 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:16:16.10 ID:AmVi31g0
「大丈夫、何も残ってないよ」
よかった、体は傷物になっているということはなかったようだ。なんかやらしい響きだけど
「・・・うん。みんな楽しそうだったよ」
そう優が呟いた
そういえば秋空優だって本当は秋空勇人なんだ。本来なら、あの場所にいるのは自分だったはずなんだ
みんなの様子を見に行ったら、そこはいつもと変わらない風景だった
自分がいなくても、何一つ変わってなかったんだ
自分が姿を現したとき、みんな興味津々な目で見ていた
でも、それは決して、友好的な態度だけとは言い切れないはず
421 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:16:42.94 ID:AmVi31g0
何処かに・・・見知らぬ人間に対する警戒心が、あったんだ
421 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:16:42.94 ID:AmVi31g0
何処かに・・・見知らぬ人間に対する警戒心が、あったんだ
自分は秋空勇人だ、と叫びたかったのかも知れない
僕だったら、そんな目をむけられて耐えられる自信がない
優は・・・何を考えていたんだろうか・・・
「大丈夫だよ」
優の声が聞こえた、それは呟きではなく、きちんと僕にむけられた声だった
「サイコロってのはね、1の反対側は6、2の反対側は5って合計して7になるように作られているんだ」
「え?」
優が何を言いたいのか理解できなかった
422 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:17:13.53 ID:AmVi31g0
「僕は今まで『秋空勇人』として、みんなを見ていた。でも今は無理。けど・・・これからは『秋空優』として、みんなを見ることができる。人が物を見るには限界がある。それは視点が一つしかないから。」
422 : ◆wjOmYNm0Aw :2008/12/19(金) 19:17:13.53 ID:AmVi31g0
「僕は今まで『秋空勇人』として、みんなを見ていた。でも今は無理。けど・・・これからは『秋空優』として、みんなを見ることができる。人が物を見るには限界がある。それは視点が一つしかないから。」
「優・・・」
ここまで来て、優が何を言いたいのかが分かった
「物、そして人ってのはサイコロとは違う。法則なんて存在しない。そして立方体ですらない。だから視点を変えるしかないんだ。でもそんなこと簡単に出来るわけがない。そして一生出来ない人もいる。でも僕は別な人間に生まれ変わった。二回分の人生を送っているってことになる。そう考えれば、すっごい得してない?」
「・・・ああ、凄い得してるように思えてきた。逆に羨ましいくらいだ」
「うん。分かればよろしい」
今ここで断言しよう、もうこいつは『秋空勇人』じゃない。僕はこんな前向きに物事を考えるなんて芸当、出来なかった
本来なら僕が励ます側なのに・・・逆に励まされてしまったみたいだ