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 この前年埼玉の所沢高校で起きた事件は、大きな話題となったし、また教育についての大きな問題提起ともなっている。
 所沢高校では、1990年に自治や自由をうたった「生徒会権利章典」「日の丸・君が代の強制反対決議」を生徒が採択し、毎年生徒会で確認してきた。制服もなく自由を尊重する校風が続いてきた。日の丸・君が代のない形であるが、入学式や卒業式も行われ、その後で生徒主催の式典が行われていた。ところが、1997年4月に赴任した校長が、国歌・国旗を伴う「厳粛な式」を行うことを宣言したために、卒業式も生徒主催で行うことを生徒会で決め、校長と話し合いがもたれた。しかし双方の見解は一致せず、分裂式典になったわけである。
 そして1998年3月9日の当日、校長の主催する卒業式は出席が20名、生徒代表に卒業証書を授与し、15分で終了。その後行われた生徒による「卒業記念祭」は大きな盛り上がりを見せたと報道されている。
 事態はさらに展開し、3月26日には、入学予定者の説明会で、校長と異なる説明を行ったという理由で、教諭1名が教育委員会から処分を受け、入学式も分裂式典となる展開となっていった。
 そして同日の高校職員会議で校長の罷免決議がなされた。
 分裂式典になることについて、県教育委員会は、「入学式にでないと入学が許可されない」と発言、法律的な問題となった。

所沢高校長の罷免を要求へ 処分問題で教職員ら /埼玉---

 県立所沢高校(内田達雄校長)で、入学式をめぐり、「校長に反対する発言があった」として教諭が戒告処分をうけた問題で、同校の教職員が三十一日、記者会見を開き「校長としての信頼を失わせる行為があった」として、内田校長の罷免と教諭の処分撤回を県教委に求めることを明らかにした。
 同校では、「入学式を開く」という校長と、「生徒会主催の入学を祝う会を開きたい」とする生徒や教員の意見対立が問題になっている。
 教職員によると、内田校長に対する罷免要求は二十六日に開かれた同校の職員会議で可決された。
 関係者によると、文書は三月三十一日付で「所沢高校入学許可候補者の保護者の皆様へ」とあり、校長名による「入学式に向けて」という文書と一緒に、入学予定者宅に郵送されたという。
 県教委の文書は「学校教育法施行規則では、校長は入学式において、入学の許可を行う必要がある」としたうえで、「お子さまが所沢高校の生徒となるためには入学式に出席し、校長による入学許可を受けなければなりません」としていた。
 桐川卓雄・県教育長は「正当な理由なく入学式を欠席すれば、入学は認められない。ボイコットは『正当な理由』にはあたらない」と説明している。*50)朝日新聞 1998/04/05

 もちろん、入学式というのは単なる式典であり、それが入学許可とは無関係のことは明らかであり、教育委員会は大きな過ちを犯した結果になった。
 新聞記事によって、その間の迷走ぶりを記しておこう。

所沢高の入学式「学校長と県教委の問題だ」 武田副知事 /埼玉---

 県教委が「入学式に出席しなければ入学を許可しない」という通知を県立所沢高校(内田達雄校長)に今春入学予定の生徒の父母に送っていた問題で、武田茂夫副知事は六日午前の定例記者会見で「入学式に出席しなければ、入学が必ず取り消されるということはない」と述べ、県教委とは違った見解を示した。武田副知事は夕方改めて県教委幹部とともに記者会見し、「入学式に生徒が出なかった場合、入学を認めるか、認めないかは学校長と県教委の問題だ」と釈明、あいまいさを残した。
 午前中の記者会見で、教育委員会担当である武田副知事は入学式について「生徒と学校とが特別な関係に入る重要な儀式だ」と説明した。一方、「お子さまが所沢高校の生徒となるためには入学式に出席し、校長による入学許可を受けなければなりません」としている県教委の文書について、「入学式に出ないと入学できないと、そこまでは書いていないと私は読んだ」と述べ、「出ないから必ず入学できないということではないと思う」と話した。
 ところが夕方になって、副知事は再び記者会見し、午前中の発言について「入学式に出なくても入学できるという意味ではない」と説明した。
 県教委は文書について「入学式に正当な理由なく欠席すれば入学は認められない。ボイコットは正当な理由ではない」と説明していた。一方、武田副知事は「入学式をボイコットすれば『正当な理由なく』になるかはわからない」とあいまいな見解に終始した。
 土屋知事はこの日午前中の記者会見で「県教委には『突っ走らないように』と言っておいた」と述べ、話し合いを通しての穏やかな解決を求める考えを示した。*51)朝日新聞 1998/04/07

 結局この年、新入生の4割が入学式を欠席した。
最終更新:2008年08月04日 21:45