とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

第二章

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(3.)
「ガラン、ガラン、ガラン」
大きな鐘の音が特売タイムの終了を告げている。
外で待っていた上条の所に姫神秋沙と吹寄制理が出て来たのはその直ぐ後だった。

「買ってきたわよ。上条当麻」

姫神秋沙と吹寄制理が手に提げた大きなレジ袋を見た瞬間、上条は軽い立ちくらみを感じた。

「そ、そんなに買っちゃったのか?吹寄。」
「これ。レシート」
「あれ?こんなに買ったのに、たったこれだけの値段?」
「普段、貴様は一体どんな買い方をしているの?」
「買い物する前に売り場を一回りしておけば。このぐらいは当然」
「すげーな。きっと二人とも良いお嫁さんになるぞ」
「「……………………」」

上条が視線をレジ袋から上げると、姫神秋沙も吹寄制理も頬を赤く染めていた。

「どうしたんだ?二人とも顔がちょっと赤いぞ。熱でもあるのか?…………痛てーーっ!」

姫神秋沙と吹寄制理に同時に左右の足の甲を踏みつけられた上条当麻はその場にうずくまってしまった。

「全く、貴様というヤツは」
「ホントに鈍感なんだから」

朴念仁である上条当麻は二人の言葉の意味も当然のように理解できていない。
レジ袋を上条に押しつけスタスタと歩き始めた二人に向かって上条は恐る恐る声を掛けた。

「あのーっ、この両手一杯の食材は上条さん一人で運ばないといけないのでしょうか?」
「貴様は、これから手料理を振る舞ってもらう女の子に力仕事までさせる気?」
「君は鈍感なんだから。これぐらいの荷物なんて重くも感じないでしょ」
「うっう、なんだか二人の言葉にトゲトゲしさを感じるのですが……
 上条さんは何か粗相でもしでかしたのでしょうか?」
「なにブツブツ言ってんの?早く歩きなさい」
「頑張れ!上条君」

学生寮にたどり着いたときには上条の握力は無くなる寸前だった。

「ふーっ、やっと着いた。たっ、ただいまーっ」
「「お邪魔します」」
「おかえり、とうま。……って、あれ?なんであいさとせいりが一緒なの?」
「それは。今日の昼休みに上条君に迷惑を掛けたから。そのお詫び」

インデックスはみるみる不機嫌になりキッと上条を睨み付けた。

「とうま!とうまはそんなことがある度に女の子を家に呼びつけたりするわけ?」
「バカ野郎、俺は何も頼んじゃいない!」
「全く……いつもいつも……とうまはとうまなんだから!」
「落ち着け!インデックス。お客さんの前で流血沙汰は止めてくれ。
 つり上がった目も大きく開けた口も清楚なシスターさんには似合わねえぞ」

レジ袋を床に置いた上条は防御姿勢を取りつつ、今にも飛び掛かろうとするインデックスを必死になだめていた。

「取り込み中の二人には悪いんだけれど。台所に通してもらえると嬉しい」
「えっ?あっ、悪りい」
「本当に、前から不思議に思ってるんだけど、貴様とその子は一体どういう関係なの?」
「だから……この子は知り合いから預かっている子で…………」
「あー、わかったわよ。そういうことでいいわ!
 じゃあ、私と秋沙は夕飯を準備するから貴様はリビングでくつろいでなさい」

噛み付くタイミングを外されたインデックスが再び上条に文句を言いかけた時、
TVから『超機動少女カナミンインテグラル』のテーマ曲が流れてきた。
そのとたん「カナミンだーっ!」と言ってインデックスはリビングに飛んでいった。
カナミンに救われた上条も後を追って一旦はリビングに腰掛けた。
しかし女の子にだけ仕事をさせて自分だけくつろぐことなどできない上条当麻である。

「俺もなにか手伝おうか?」

声を掛けた上条の視線の先にはエプロン姿の姫神秋沙と吹寄制理がいた。
その姿を見た瞬間、上条の頬を熱いものが一筋流れ落ちていった。
その時、上条の顔は神の奇跡を目の当たりにした子羊のようだったに違いない。

「台所にエプロン姿の女の子がいる。……うっう、なんて、なんて感動的な光景なんだ」

上条は一人感動を噛み締めていたが、姫神秋沙から声を掛けられてようやく我に返った。

「上条君。昆布あるかな?」
「あー、昆布なら流しの上の棚に置いてあるから俺が取ってやるよ。
 よっと。はい、姫神」
「あっ、ありがとう」
「何言ってんだ。俺の方が礼を言わなきゃなんないのに」
「ううん。そんなこと……」

なんだかラブラブカップル状態になりつつある姫神秋沙と上条の後ろで、
吹寄制理がこめかみをヒクつかせていた。


(4.)
「ちょっと!計量スプーンはどこなの?」

吹寄の問いかけに上条が背を向けると、良い雰囲気を壊された姫神秋沙は口の中で小さく
「…………上条君のバカ」と呟いた。

「計量スプーンならこの引き出しの中にあったハズって……あれ?」

上条が引き出しの中をカチャカチャとかき回していると吹寄制理も顔を近づけてきた。

「私が探してあげるわよ」
「いいよ。俺が探すから」
「いいから私に任せなさい」
「「あっ、あった!」」

二人が同時に見つけた計量スプーンの上で吹寄制理の左手と上条の右手が重なってしまった。

「「あっ……」」

至近距離で顔を見合わせた吹寄制理と上条の顔が赤く染まっていたのは窓から差し込む夕日のせいだけではなかったかもしれない。

「……吹寄」
「……上条……当麻」
「コホン!」

姫神秋沙の咳払いに二人は瞬間的に手を引き戻した。

「みっ、見つかって良かったな」
「ええ、ありがと。そっ、そういえば男子の下宿の台所にしてはずいぶん綺麗ね?ここ」
「そっ、そうか?」
「ひょっとして。誰かが頻繁に片付けに来てくれてるとか?」
「そっ、そんなわけあるハズないだろ。ハハッ、ハハハッ」

何故かちょっとトゲのある姫神秋沙の問いかけを上条は引きつった笑いを浮かべ否定した。
そこにインデックスがリビングから上条に相槌を打った。

「そうだよ。頻繁ってわけじゃないよ」
「「えっ?」」
「こら、インデックス。なに訳分かんないこと言ってんだ。
 それよりいつも食っちゃ寝している自分の行いを反省しなさい。
 見なさいインデックス!!これが居候の正しいあり方だ!!」

上条に相槌を打っただけなのに上条から怒られたインデックスはむくれてしまった。

「むーっ、とうま。それって五和の時にも言ったことだよ」
「あっ、こら!インデックス」

「五和?五和って何?」
「いや、五和っていうのはただの知り合いで」
「女の子?」
「あーっ、姫神。人の話を聞かないうちから女と決めつけるのはどうかと思うぞ」
「女の子なの?」
「いや、だからそれは…………」
「女の子なのね!」
「…………はい」
「…………ハァーッ…………やっぱり」
「まったく貴様は次から次へと。一度その性根をたたき直さないといけないわね」

「そっ、そんなことより二人は何を作るんだ?」
「私は。鶏肉のピリ辛炒めと肉じゃがとだし巻き卵」
「私はロールキャベツにパンプキンクリームスープにシーフードサラダよ」
「どっちも美味そうだ。こりゃ何から食べるか迷っちゃうな。きっと、ハハハッ」

何とか話題を変えようとした上条であったが、上条を見る二人の目はジト目のままだった。

「うっ、じゃあ俺はテーブルでも拭いてくるかな」

二人の視線に耐えかねた上条はフキンを持って台所からそそくさと逃げだした。
すると、上条が逃げ出した台所からは姫神秋沙と吹寄制理が大笑いする声が聞こえてきた。
(あいつら、俺で遊びやがったな!)と上条は憤りつつも、二人が本気で怒っていないことにホッと胸をなで下ろしていた。


(5.)
結局何もすることがなくなった上条は仕方なくインデックスとTVを見ていた。
しばらくすると台所から漂ってくる香りが上条の鼻腔をくすぐり始めた。
TVに釘付けのインデックスですら香りが気になるのか時々鼻をヒクヒク動かしている。

そうしている内に姫神秋沙と吹寄制理ができあがった料理をトレイにのせて運んで来た。
テーブルから溢れんばかりに並べられていく料理に上条は再び感動の涙を流してしまった。
だから、つまみ食いしようとしたインデックスの手を上条はペシッと叩いた。

「こら!インデックス。行儀良く待ちなさい」
「むーっ、味見してあげようと思っただけなのにーっ」
「どんぶり片手にかっ喰らうことを世間では味見とは言いません!」
「もーっ、お腹空いた、お腹空いたよーっ!」

上条が暴食シスターを押さえている間に料理を並べ終えた姫神秋沙と吹寄制理が上条の右と左に腰を下ろした。
4人揃ったところで上条がいただきますと手を合わせると、左右から同時に声を掛けられた。

「はい。上条君」
「ほら、上条当麻」

姫神秋沙が箸でつまんだ鶏肉と吹寄制理がスプーンにすくったパンプキンスープが同時に上条に差し出されていた。
その瞬間、今まで和やかだったリビングの空気がピーーンと張りつめた。
上条を見つめる二人の美少女は一見微笑んでいるようだが、目は笑っていない。

(えっ?なに、この状況?
 今から楽しい夕飯じゃないの?
 この緊張感は何?
 こいつら、俺が何から食べる始めるかで賭でもしているのか?
 なんだか良くわからないけどこの状況は危険だ。
 根拠はないけど、どっちから食べてもろくでもない結果が待っている気がする。
 どっ、どうする?上条当麻)

上条はヘビに睨まれたカエルのように固まってしまった。
しかも(だめだ。先に動いた方の負けだ)などと思考も完全に空回りしている。
この上条当麻の絶体絶命のピンチを救ったのは、意外なことにインデックスだった。

「むーっ、とうまったら!私の前でイチャイチャして!もう、こうしてやるんだからーっ」

そういうなり姫神秋沙の箸を左手で吹寄制理のスプーンを右手で握ると鶏肉とスープを一気に口に放り込んでしまった。

「「あーーっ!」」
「(ナイスだぞ!インデックス)さあ、それじゃ俺も食べようかなっ!」

今日ばかりは暴食シスターに感謝しつつ最も無難な白ご飯に手をつけた上条当麻であった。
インデックスも二人の料理が気に入ったらしくものすごい勢いで食べ始めた。
姫神秋沙と吹寄制理は二人揃って大きなため息をついたものの、視線が合わさるとどちらからとはなくクスクスと笑いだした。

「それじゃ私達もいただきましょ」
「そうね」
「「いただきます」」

上条にとって4人でたわいもない話をしながら食べる夕食はとても美味しいものだった。
上条は並べられた料理を全て平らげ、インデックスに至っては3度もおかわりをした程だ。
食事が終わって食器を片付け始めたその時、グラッと床が揺れた。
突然の地震にちょうど立とうとしていた姫神秋沙は手を滑らしトレイに乗せていた大皿を落としてしまった。

運悪く大皿が直撃する位置にインデックスがいたが、一瞬の出来事に誰も動けなかった。
大皿が当たると覚悟したインデックスは硬く目を閉じたがいくら経っても何も起こらない。
正確にいうと何も起こらなかった訳ではなかった。
インデックスが目を開けるとなぜか目の前に超機動少女カナミンが大皿を持って立っていた。


(6.)
今上条家のリビングには5人の人物(?)がいる。

突然のカナミン出現に目をキラキラさせているインデックス。
予想外の出来事に目が点となり固まってしまった吹寄制理。
この状況をどう説明したら良いものかと頭を抱える上条当麻。
当事者でありながら全くなにも理解できていない姫神秋沙。
そして大皿を持ちニッコリ微笑んでいる超機動少女カナミン。

「お、おぉーーっ!カナミンだ!カナミン……って
 あれ?このカナミン……なんだか変……まるでテレズマの塊…………」
「あーっ、その、なんだ……これは……」
「え?上条当麻!貴様は何か知ってるの?」

出現したカナミンの正体をインデックスが見抜いたため、もはや上条は沈黙を続ける訳にはいかなくなった。

「えーっと、姫神」
「え?」
「気をしっかり持つんだぞ」
「なっ、何?」
「これ(カナミン)がお前の『癒之御使(エンゼルフェザー)』だ」

「え?「「え”ーーーー?」」 」

姫神の驚きはインデックスと吹寄制理の驚愕の声にかき消されてしまった。

「そうなの?カナミンの正体はあいさだったの?ホントに?」
「秋沙!ホントにこの子(カナミン)は秋沙の能力なの?ねえ、そうなの?」

未だ状況を飲み込めない所にインデックスと吹寄制理に詰め寄られ姫神秋沙はパニックに陥ってしまった。

「こっ、ここはどこ?私はだあれ?」
「おい、姫神。気をしっかり持つんだ!こっちの世界に戻って来い!」
「ふふっ、カナミン、ふふふっ、カナミン…………ふふふふふふふふ…………」
「ひっ、姫神?だっ、大丈夫か?」
「カナミンだなんて、…………よりにもよってカナミンだなんて。
 こんな能力人前で使ったら。きっと私は『カナミンの中の人』とか呼ばれちゃう。
 そしてもう誰も私を姫神秋沙って呼んでくれないの。ええ。きっとそう。
 やっぱり。影の薄い女はいくらイメチェンしても影は薄いままなのね。
 ふふふっ、ははっ、はははっ…………」

力無く乾いた笑い声を上げながら、姫神秋沙は座り込んでしまった。
するとカナミンの姿も徐々に薄くなり、消えると同時に持っていた大皿も落ちてしまった。
今回は反応できた上条が床に落ちる直前で大皿をキャッチした。

姫神秋沙に声を掛けようと振り向くと、顔に縦線を貼り付けた姫神がドンヨリとした空気をまとわせていた。
予想通りの姫神秋沙の反応に上条は(あっちゃー)っと頭を抱えてしまった。

「あの子(カナミン)消えちゃったわよ。どうなったの?」
「多分姫神はまだこの能力を巧くコントロールできないんだ」

上条は吹寄制理の問いかけに応えつつ姫神秋沙をどうなぐさめようかと思案していた。
そんな上条の苦悩も知らず、興奮気味のインデックスが尋ねてきた。

「ねえ、ねえ、とうま。あのカナミンは何ができるの?教えて欲しいかも」
「あー、そうだな。まず弁当が作れる」
「え?」
「それにハンカチにアイロンだって掛けられる。どうだ、すごいだろ?」
「とうま、そんなことじゃなくて。シュプリームフレアは出せる?」
「それは無理だな」
「じゃあスプラッシュウイップは?サンダーボルトハリケーンは?
 七色の魔法のどれならできるの?」
「残念だけど、あのカナミンは魔法が使えないんだ」
「え”ぇぇエエエエーー!」

漫画であればインデックスの頭上には「がーーん!」という擬音が鎮座していただろう。
落胆したインデックスもまた姫神秋沙の横にヘナヘナと座り込んでしまった。

「カナミンなのに、せっかくカナミンに会えたのに……
 そのカナミンは魔法を使えないだなんて…………フフッ、フフフッ」
「おっ、おまえもか?インデックス。おい、気を確かに持つんだ。
 インデックス…………あのー、インデックスさん?……もしもーし」
「…………アハッ、アハハハハ、そうだ、そうなんだよ」

突然笑い出したインデックスはガバッと顔を上げて姫神の手を強く握りしめた。

「あいさ。カナミンは私がどうにかしてあげる」
「え?どうにかって?」
「ここはどーんと私にまかせて。
 だから、あいさは心配しないで。
 フフッ、それじゃ早速イギリスに連絡しなきゃね。フフフッ」

尋常でないインデックスの言動に上条はもはやアハハッと笑うしかなかった。

「あのさ、姫神も吹寄も今日は疲れたろ。
 インデックスはあんな感じだから今から二人を家まで送っていくよ。
 今日はありがとな」
「インデックスさん。大丈夫なの?」
「まあ、大丈夫だろう。多分……」
「あいさ!あさっての夕方また家にきて欲しいかも。じゃあまたね」


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