「そういえばアンタたちって好きな人いるの?」
必要悪の教会に所属しているミニスカワンピのシスター、
バルバラ=キャンピオンは不意にそんなことを聞いてきた。
対魔術師に特化している必要悪の教会の魔術師と言えども人間。
ましてやガールズトークの真っ最中なのだ。
こういう事を聞くのはむしろ自然なのかもしれない。
「んー、今私は誰もいないっすねェ―。ハーティはどうッスか?」
バルバラの質問を右から左へ受け流したのは、
ヴィクトリア=ベイクウェルという魔術師だ。
時代遅れの日本のSUKEBANの格好をしているが彼女も魔術師である。
「いませんね。」
潔いほどきっぱりと答えたのは
ハーティ=ブレッティンガムという魔術師だ。
彼女の名誉のために擁護すると、黒革をただツギハギしただけの露出度高めのボンテージの格好をしているのは彼女が拷問官の職も兼任しているからである。
「つまんないっすねェ―。にしてもバルバラは何故そんな質問を?あとふと思ったんスけど、バルバラはルークとはどんな感じっすか?」
ヴィクトリアの言う
ルーク=オズボーンというのは必要悪の教会の魔術師、つまり彼女たちの同僚である。
そんなヴィクトリアの茶々に対しバルバラはというと……
「無いわぁー。」
即答だった。
「だって暑苦しいわ、親父臭いわ、この前なんか任務の時、全裸だったんだから!」
ルークは顔は金髪碧眼の美少年なのだが、24時間365日モッサモサの毛皮のコートを羽織っており、どんな時でもガハハ!、と豪快に笑う、所謂「残念なイケメン」の一人である。
「もう、そこまでイクと『露出卿』っすねぇー……。」
「話は変わるけど、ハーティはモリスが好きそうよねぇー。」
「モリスって……あぁ、彼ね。何故そう思うのかしら?」
私的交流の薄いハーティにしては珍しく(というか、このガールズトークもヴィクトリアに「人付き合いに努めるべきっす。」と引っ張られてきた)ルークとモリスの顔を思い浮かべる。
前者は彼女がよく彼をOSIOKIしているから、後者は任務の際、彼の持つ『異常性』に気付いたからだ。
「だって、似合いそうじゃない?拷問官と処刑人のカップリングって―――――――」
ズガガガァン!!
「「ヒィ!?」」
この破裂音はハーティが長針をテーブルに突き刺し、ハチの巣にしたことで生まれた音だ。
突き刺したハーティはニッコリとしているが、目は笑っていなかった。
「あら、スミマセン。処刑人と聞いてつい兄(ピー!!)を思い浮かべてしまいまして。とにかく否定して貰わないとモリスをどうにかしてしまいそうだわぁ……。」
「も、モリスなんかにハーティは勿体無いっすねぇ―!」
「そうそう!モリスとハーティなんて有り得ないわ―!!」
二人は知らないことだが、ブレッティンガム兄妹は殺し合うほど仲が悪い。
そんなことより、今はモリスの救命活動に必死だ。でなければ近いうちにモリスが棺桶の中に入るかもしれない。
「ねぇ三人とも何しているの?」
こんな状況で話しかけてきたのは
マティルダ=エアルドレッドという少女だ。皆からはマチという愛称で呼ばれているが、その実凄い戦闘能力を持っており、戦闘狂でもある。
「マチ?珍しいっすね、
談話室に来るなんて。いつもは鍛錬場にいるのに。」
「だって、今クライヴさんもオズ君も任務でいないんだもん。」
その事を聞いてバルバラは、何気なく質問した。
「ふーん、ねぇ。マチはオズの事どう思っているの?」
「オズ君?私オズ君の事好きだよ。」
「「「えぇ!?」」」
この一言はバルバラもヴィクトリアも、私的交流の少ないハーティですら驚愕させた。
オズウェル=ホーストンは性格こそ紳士的だが、戦闘スタイルは霊装である獣の皮を纏い、直接接近戦を行うというマチに近いものだ。
オズウェルはマティルダが好きだ。
この事は周知の事実だが、オズウェルは奥手であるため皆が生暖かく見守るという状況を維持している。
が、しかし。
今、マチがオズのことを好きだと言ったのだ。
「え、ちょ!具体的にどこが好きか聞かせたくださいっすよ!!」
ヴィクトリアがマッハで茶々を入れてきた。
「えー、だってオズ君強いし、鍛錬の後のご飯にも付き合ってくれるし。あ、でも最近手加減するのは嫌かなー。」
この時、三人は悟った。
彼女はオズの恋心に気付いていない、と。
「(あー、オズ。アンタが惚れた相手は相当難易度高いわよ……。)」
そう、思いながらバルバラはオズの苦労を思い浮かべた。
「あ。後、最大教主からハーティに伝言。テーブルの修繕費は給料から引きたるのよ、って。」
「え。」
最終更新:2013年01月18日 00:04