四霊装獣

概要

唱和園高校に巣食う四体の魔獣達。魔術世界で言う所の魔術生命体。他の学校と比較してこの学校発祥の『都市伝説』が段違いに多い理由、生徒の間にうわさ話として広がっては消え、また新たな都市伝説が生まれるといったサイクルを繰り返す理由は全てこの魔獣達に帰結する。
元は数十年前とある魔術結社に所属する四人の魔術師達(日本出身の魔術師二人と中国出身の魔術師二人)が霊装を依り代とした魔術生命体を作り出そうとしたのが事の始まり。試行錯誤を繰り返した末に作り上げたのが麒麟(きりん)、獏(ばく)、反枕(まくらがえし)、風狸(ふうり)の四体を宿す依り代となる霊装である。
霊装の元型は、それぞれ麒麟は麒麟像が刻まれた赤・青・黄・白・黒色の礎石、獏はバクの剥製、反枕は幽霊が描かれた掛軸、風狸は伝承上で風狸が使用したとされる草を使った人形。ここに各々のモデルとなった神話上の霊獣や伝承上の妖怪に関する魔術的記号を付与しており、その結果魔獣を顕現させる。霊装名=魔獣名。
作り出した製作者に影響されてか魔獣の性格は各製作者の性格をベースにした思想となっているが、そこに魔獣独自の思考能力が混ざる。魔獣達は自身のモデルとなった霊獣や妖怪の力・特性を有する。

伝説や伝承といったあやふやな空想上に登場する魔獣達を魔術生命体として顕現させる為に重要視した要素として麒麟、獏、反枕と強い関係性がある『夢』がある。『夢』=あやふや、つまり『夢』=空想・伝承・神話と定義し、『夢』を『正夢』にする事で魔獣達を現世に顕現させる術式が魔獣達の根幹に存在する。
この術式こそが、『夢』と関係性が特に強い獏が操る魔術『胡乱捕喰』である。また、これらの霊装(魔獣)は遠距離における霊装同士の力の受け渡し等を可能にする珍しいタイプであった。
魔獣達を管理する魔術結社は後に日本を発祥とする他の魔術結社との死闘の末全滅する。しかし、意思を持つ魔獣達は敵対した魔術結社の罠や追跡を全て振り切り逃げ果せる。麒麟が有する特性として魔術的罠を全て見破って避け、現世と『夢』の境界を操作する反枕の『流転境界』で霊装ごと顕現を消失させる事で追跡の目を欺き、実体の無いあやふやな存在と化しても一定期間の間存在を保てる風狸の『不死空想』で逃走した。
無用な殺生を嫌う『四霊装獣』の長たる麒麟の判断により現世への顕現を抑え、時に力を使って魔術師達を欺きながら依り代である霊装に引き篭もる事で長い間骨董品扱いで世界各地を巡っていた。

20年前に後の唱和園高校の校長に就任する塵芥誠(主に日本や中国各地で骨董品を捜し歩く蒐集家)が、勤務する高校の当代校長への土産として魔獣が宿る霊装を置いていた骨董屋でそれらを買い求めた。
だが当代校長は土産を気に入らず、自宅が骨董品で一杯の塵芥は唱和園高校の一角に存在する備品庫へ自分が購入した土産を毎度の如く無造作に置いて帰った。その置いた位置こそが偶然にも小規模な『創作魔法陣(オリジナルサークル)』となった。
その備品庫にはこれまでも塵芥が置き場所を無くした魔術的記号を持つ土産品が置かれていたのである。一つ一つには大した魔術的意味は無かったのだが、『四霊装獣』の依り代となる霊装が特定の位置に置かれた為に『創作魔法陣』と化した。

この『創作魔法陣』は『四霊装獣』を、例外たるとある一体の魔獣を除いて完璧なまでに唱和園に縛り付ける効果があり、魔獣達は何らかの方法で『創作魔法陣』を解除しない限り唱和園周辺から外へ出られなくなった(しかも、『創作魔法陣』の震源地としての強い効果によって備品庫は『神隠し』状態となっている)。
しかし、無用な殺生を望まない麒麟はこれを幸いと判断し、他の魔獣達の同意の末周辺を含めた唱和園一帯を自分達が暮らす地とした。この頃から唱和園高校に異様な程都市伝説が多く生まれ、廃れ、年月を経てもそのサイクルを繰り返し続けるループ状態に陥った。
『四霊装獣』の魔力を動力源とし、また鍵とする『創作魔法陣』の真の効果は『夢(=あやふや)』の創作と消失、すなわち『都市伝説の創世記』と、『都市伝説の神隠し』である。この二つの効果は人間の思考に影響を与え、また『創世記』がずっと続いている中で不定期に『神隠し』が発生する。都市伝説として『格』が高い代物は『神隠し』の影響を免れる。
前者はまだしも後者は『四霊装獣』の根幹である獏の魔術『胡乱捕喰』を脅かす効果である為、魔獣達は不定期に発生する『神隠し』に内心怯えながら(鍵となっている『四霊装獣』が『神隠し』から逃れる為には、その時は現世へ顕現せざるを得ない)唱和園を行き交う都市伝説―自分達の存在意義をくすぐる『御伽話』―を眺め、時には秘かに人間へ干渉したりしている。

実は魔術生命体である『四霊装獣』の体は、時の経過や今は亡き製作者達のメンテナンスを受けていない事などを理由にいよいよ限界に達しようとしている。魔獣達を消滅させる力があり、また彼等を唱和園一帯に縛り付ける『創作魔法陣』が皮肉な事に魔獣の存在を安定化させていたからこそ今まで持っていた。残り数年の命である事は皆自覚している。
そんな『四霊装獣』だが、普段は反枕の『流転境界』で唱和園一帯を覆う都市伝説空間を内部や周囲に『普通の世界』と誤認識させている。『創作魔法陣』と『流転境界』の併用効果にて魔術師にも容易に察知されない二段構えとなっている(『創作魔法陣』だけなら一般の魔術師でも魔術や魔力の痕跡を見逃さないだろうが、秩序を逆転させる『流転境界』が絡むと魔術における『常識』を魔術師当人が容易に認識できなくなる)。
『四霊装獣』と『創作魔法陣』に気付いているであろう学園都市上層部の一部は、魔獣が後数年の寿命を全うするか『創作魔法陣』で『四霊装獣』が消滅するか(『四霊装獣』が消滅=『創作魔法陣』の消滅)、どちらにしろ結局は時間の問題と見ており、今のところ唱和園高校生に魔獣『そのもの』が危害を及ぼした形跡は皆無、看過できない問題が発生すればイギリス清教『必要悪の教会』に動いてもらう算段はついている等の理由で現在は傍観体勢を取っている。


万物を司る五行たる『五麟』に変貌する『四霊装獣』の長― 麒麟

吉夢・悪夢・凶夢・正夢…数多の『夢』を支配する千変万化の悪女―

『夢現(ゆめうつつ)』の境界を弄び、秩序さえ逆転させる妖の枕小僧― 反枕

『四霊装獣』唯一の例外に位置する、『不死』と『蘇生』を意味する空想生物― 風狸

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最終更新:2015年12月02日 23:08