第十一章 境界突破《アフターライン》
第五学区のある病院の三階のナースステーション。
そこで軍隊蟻《アーミーアンツ》は窮地に追い込まれていた。
毒島拳は姉の帆露を抱え、
四方神茜は能力を発動させて霞の盗賊を警戒する。
樫閑恋嬢を人質に取られた2人は家政夫《ヘルプマン》たちに手を出せない。
毒島「お前のことだ。どうせ、大金を払ってくれるパトロンでもついたんだろ?」
家政夫「まぁ、大正解やな。」
藤原「おいおい。喋っていいのかよ。」
天明「どうせここで潰すんだ。問題はないだろ?」
地炭「同感ですわな。」
すると藤原はナイフを取り出し、家政夫《ヘルプマン》が抱える樫閑の首筋に刃を押し当てる。
藤原「おい。そこのクソアマも能力を解除しな。じゃねぇと、この女、殺すぞ。」
藤原の言ったことは茜には通じてないものの、場の空気を読んで茜が能力を解除する。
解除したと言っても、超音波メスなどの人間が知覚できるものだけであり、振動の膜や音波レーダーは未だに展開している。
家政夫「毒島ちゃん。同じ霞の盗賊の好や。こっち側につかんか?」
毒島「お断りだ。俺の目的は姉さんの仇を取ること、お前が金でホイホイ寝返るのと同じだよ。」
家政夫「そっか~。じゃあ、ここからはお願いやなくて、命令。」
そう言うと、家政夫《ヘルプマン》は樫閑を自分の胸元に寄せ、腕で首を押さえる。
家政夫「今、軍隊蟻《アーミーアンツ》はどこにおるんや?はよ言わんと、この嬢ちゃんの首をへし折るで?」
毒島「くっ・・・・!!」
毒島は迷った。家政夫《ヘルプマン》は殺る時は殺る男だ。嘘やハッタリでもかませば、躊躇いも無く樫閑を殺すだろう。
ならば、いっそのこと喋ればいいのだろうか。軍隊蟻《アーミーアンツ》はそんじょそこらのスキルアウトとは格が違う。
寄せ集めの能力者集団に劣るとは考えられないが、境界突破《アフターライン》計画阻止にどれほどの戦力が必要なのか分からない今、
無意味に戦力を消耗したくない。
毒島(クソッ!どうすればいい。)
茜に頼ろうにも、樫閑だけを避けて家政夫《ヘルプマン》を攻撃したりは出来ない。
榊原兄弟と藤原は倒せても、その瞬間、樫閑が殺されるだろう。
天明「!?」
地炭「どしたの?」
天明「過剰探査《オーバーファインド》の範囲内に何か入り込んだ。」
藤原「病室を抜け出した患者か何かじゃねぇの?」
天明「いや、何か小さなマシンだ。ラジコンみたいな・・・」
地炭「ラジコンって、真夜中の病院にラジコン何かあると思ってるん?」
家政夫「軍隊蟻《アーミーアンツ》が侵入させた小型の偵察ロボットかもしれへん。
この嬢ちゃんも何か勘付いて応援を呼んどったしな。せやから、天明ちゃんは潰しといてや。」
天明「ったく、面倒だなぁ。」
そうぶつくさ言いながら、天明はマシンが入り込んだ方向へと向かった。
家政夫「さてと、そろそろ吐いてもらうで。毒島ちゃん。」
毒島「なぁ、家政夫《ヘルプマン》。お前ら、木原に利用されているのが分かってるのか?」
藤原「あぁん?てめぇ、どういう意味だよ。」
地炭「ただの時間稼ぎ、聞く耳もたなくていいですわ。」
家政夫「このまま潰すのも興が乗らんし、ちょっとは聞いたるわ。そんで?ウチらが利用されてるって?」
毒島「ああ。多分、成功したところで金は貰えねぇと思うよ。」
家政夫「何を根拠に言うとるん?」
毒島「何を?って、木原の命令で姉さんを襲った奴らは金どころか、口封じに殺された。お前らも同じように捨て駒扱いされてるんじゃねぇか?」
藤原「はん!俺らが捨て駒?俺たち能力者はそんじょそこらのスキルアウトとは違ぇんだ。学園都市にとっても価値ある存在なんだよ。
てめぇら、スキルアウトや無能力者が何人何百人くたばろうと、むしろゴミが減って大助かりって奴だ。」
家政夫「それにこっちは50人もおるんやで?口封じ目的で殺すにも手間がかかるっちゅうもんや。」
すると、奥の暗闇の中から何かしらの機械を掴んだ天明が姿を現した。
天明「あれ?まだ終わってねぇの?」
地炭「兄さん。そっちは片付いたん?」
天明「ああ。こんなちゃちなオモチャで偵察だなんて、結局、産廃は産廃だな。生かす価値もねぇ。」
そう言うと、天明は鼻先が壊れた小型の偵察ロボットを振り回す。
偵察ロボットはハエのような形をしており、学園都市の電気店などで買える材料で作られたとてもチープなものだ。
藤原「おいおい。遊んでねぇでさっさと壊せよ。ここの状態が筒抜けだろ?」
天明「大丈夫だ。こいつはカメラじゃなくて、超音波レーダーで偵察するタイプだ。まったく、何十年前の技術だよ。
とにかく、こいつは音波発信器を壊しちまえば、タダのガラクタだ。」
家政夫(音波探査・・・波・・・・・・!?)
家政夫「あかん!はよ、それ叩き潰せ!」
家政夫がそう叫んだ途端、グチュ・・・というまるでトマトでも潰すかのような音が聞こえた。
家政夫「痛あああああ!!こりゃあ、堪忍やで!!」
右肩を押さえて苦しみ出した家政夫《ヘルプマン》。そんな彼の肩からは多量の血が流れていた。
それをチャンスにしたのか、いつの間にか意識を取り戻した樫閑が家政夫の蹴り飛ばし、毒島たちのところへと駆け込んだ。
毒島「意識あったのかよ。」
樫閑「かなり前からね。目覚めるタイミングを見計らってたのよ。」
藤原「逃がすか!」
藤原が空気縛線《エアーワイヤー》で自分の手元に圧縮した空気を集めるが、彼の手に風穴が開けられた。
ポッカリと空いた穴から大量の血液が流れ出る。
藤原「ぐぁ!!!」
天明「くそっ!どうなってんだよ!」
地炭「兄さん。ここは退いた方が得策ですわ。ホントに。」
地炭がそう言って逃げようとした途端、2人の足にも風穴が開けられる。
天明・地炭「「クソッ!!!」」
出血する脚を押さえ、2人はその場に倒れ込んでゴロゴロと転がってもがき苦しむ。
そんな状況に毒島は唖然とし、何が何やら分からなかったが、とにかく助けられたのは分かった。
樫閑「今のうち逃げましょう。」
毒島「あ、ああ。そうだな。行くぞ。」
茜「あーい♪」
苦しんでいる4人を尻目に毒島たちはその場から退却しようとする。
家政夫「流石に今のは痛かったで~。」
瞬間再生《アンデッド》で肩の傷を癒した家政夫《ヘルプマン》が立ち上がる。
樫閑「えっ!?何で立てるの!?」
毒島「あいつの能力は瞬間再生《アンデッド》!致命傷でも10秒以内に修復しちまう!」
毒島はハンドガンを構えると、家政夫《ヘルプマン》に目がけて弾切れになるまで銃を撃ち尽くす。
樫閑も同様に発砲し、心臓や顔面など、ピンポイントで応射する。
しかし、そんなものは瞬間再生《アンデッド》の能力を持つ彼の前では豆鉄砲同然だった。
家政夫「無駄無駄。RPGでもぶつけんと、ウチは倒せへんで。」
そう余裕を見せた瞬間だった。
両腕から超音波メスを発生させた茜が家政夫《ヘルプマン》へと突撃した。
そして、彼の両腕と両足を一刀両断し、文字通りのだるま状態にした。
分子レベルで切断する超音波メスを前にしては、彼の鍛え上げた肉体もまるで空を切るかのように容易に切断されてしまった。
家政夫「え・・・ちょ!?わい、何でダルマなってんねん!?」
それでも平気そうに無い手足をバタつかせる家政夫《ヘルプマン》。
スプラッタ映画ばりの惨状に毒島と樫閑はちょっと胃の内容物を吐きそうだった。
樫閑「と、とにかく逃げましょう。」
毒島「うえっ・・・ぷ。そうだな。」
軍隊蟻《アーミーアンツ》第4支部
風輪学園中等部の体育館の中で、全員が手持ちの懐中電灯で手元を探りながら黙々と作業を続ける。
作業というのは、武器の点検や装填の確認。弾の分配などである。
いくら警備がザルでも堂々と体育館の電気を点けてしまえば流石にバレるだろう。
そんな中、体育館の入り口の外で寅栄は携帯電話をポケットから取り出した。
寅栄「三ゴリ川と九野のおっさんらにも伝えとかないとな。」
そう呟きながら、寅栄は携帯で
九野獅郎に連絡を取る。
呼び鈴が二回ほど鳴った後に向こうが出てきた。
九野『はい。こちら九野。』
寅栄「九野先生か。俺だ。寅栄だ。」
九野『ああ。寅栄くんか。今、緑川先生と一緒に例のラーメン屋にいるところだ。もしかして、何か進展でもあったのか?』
寅栄「進展どころか、黒幕を潰すための準備中だ。」
寅栄「あれ?何で知ってるの?」
九野『こっちも色々と調べてみたのだよ。調べたって言うよりは、脅したに近いけどね。』
緑川『捜査開始の時から変な動きをしている奴を思い出してな。そいつをちょっと小突いたら、
それはまぁ、聞きもしないことまでベラベラと喋ってくれた。』
寅栄「三ゴリ川に迫られたら俺でもゲロっちまうぜ。」
緑川『お前、また三ゴリ川って言ったな?』
寅栄「いや?言ってねぇよ。あ、ちょっと電波が悪いかも。」
緑川『お前なぁ・・・』
九野『さっき、黒幕を潰すために準備中と言ったよな?だとしたら、お前たちもある程度の情報を得ている訳か。』
寅栄「ああ。苦労したから、流石にタダってわけにはいかないんだよなぁ・・・。」
そう言って、寅栄は何かを企む笑みを見せた。
十数秒の沈黙の後、九野たちからの回答が届く。
九野『取引に応じよう。それで、条件は何だ?』
寅栄「ああ。情報料として、―――――――――――」
階段を降りて病院の入り口付近にまで行くと、また2,3人ぐらいの男たちが倒れていた。
彼らも藤原たちのように銃撃を受けていた。かなり出血していたが、急所は外しており、幸運なことにここは病院だ。
この騒ぎにかけつけた医師が治療してくれるだろう。
病院前の広場には複数台の車が止まっており、周囲に居たのは軍隊蟻《アーミーアンツ》のメンバーだった。
蟻L「お嬢。ご無事でしたか。」
樫閑「だから姐御と呼びなさいって何度言ったら・・・。まぁ、無事よ。それに、初めてにしては上出来ね。」
毒島「どういうことだ?」
樫閑「作戦は至って簡単な物よ。音波偵察機で内部の状況を確認し、そこから敵の位置を索敵する。
あの男が偵察機を発見したのはちょっとしたトラブルだったけど、受信機まで壊されなかったのは幸運だったわ。」
毒島「そうか。茜が壊された発信器の代わりを担ったわけか。」
蟻L「後は、俺たち狙撃班がこの対装甲貫通弾をあいつらにぶち込むだけだ。」
そう言って、蟻Lは狙撃銃に装填されていた弾丸を取り出した。ハンドガンの弾の数倍は大きく、先端は鋭く尖っていた。
これが病院の壁を貫通し、音波探査機の情報のみで位置を算出した敵を貫いたのだ。
たったそれだけの情報でここまでの作戦を遂行する軍隊蟻《アーミーアンツ》の技量はアンチスキルどころか、軍隊でもそうそういないだろう。
樫閑「正直、対装甲車用の兵器だから人間に使うのはちょっとあれなんだけどね。」
毒島「家政夫《ヘルプマン》・・・あのホッケーマスクを被った男はそれくらいが丁度いい。」
樫閑「あの人たちと知り合いだったようだけど、どういう関係なのかしら?」
樫閑の質問に毒島は答えを出し渋る。かつて彼らとスキルアウト狩りをしていた過去を、つい先日まで軍隊蟻《アーミーアンツ》を標的にしていたことを、
それらが知れてしまったら、彼らは自分をどのような目で見るだろうか。
敵対、軽蔑、もしかしたら「過去なんて関係ない」なんて言ってくれるかもしれないが、些細な恐怖感に答えが詰まってしまう。
樫閑「答えられないのね。じゃあ、質問を変えるわ。あなたと彼らの関係は、今の私たちの同盟を揺るがすものなのかしら?」
毒島「それは違う。あんたらと同盟を組んだ時点であいつらとは縁を切った。」
樫閑「そう。なら良いわ。あと、何でお姉さんを病室から連れ出しているの?」
毒島「それは―――」
毒島は持蒲という男から聞いた話をそのまま樫閑たちに話す。
信じてもらえるかどうかは別として、入院患者の誘拐という明らかな犯罪行為のリスクを背負うことを承諾してくれるのかが心配だった。
樫閑「――――まぁ、大体のことは理解したわ。その持蒲って男が信用できるかどうかは分からないけど、
帆露さんをそのまま放置するのも危険だわ。人質に取られる可能性もある。」
毒島「そうか。」
蟻L「もうじき警備員《アンチスキル》が来ます。鉢合わせする前に退却した方がよろしいかと。」
樫閑「そうね。総員!撤収!痕跡の消去は怠るな!」
蟻たち「Yes sir!」
迅速な対応で銃器や薬莢を回収し、3分足らずで準備を済ませた軍隊蟻《アーミーアンツ》は数台のワゴンで病院から立ち去った。
樫閑、毒島拳、
毒島帆露、茜の4人は同じワゴンに乗り込み、メンバーの一人が車を運転していた。
樫閑「とりあえず、第七学区に向かうわ。」
拳「第七学区?何で?」
樫閑「あなたのお姉さんを隠れ家につれて行くわけにはいかないわ。」
毒島「え?・・・・あ、そうか。男だらけだもんな。」
樫閑「第七学区に優秀な医者がいるわ。余所の病院から誘拐した患者を治療してくれるかどうかは分からないけど、信用は出来るわ。」
毒島「そうか。これで姉さんは元通りになるのか・・・。でも、もしその医者がNOって言ったら?」
樫閑「足にでも鉛玉1発ブチ込んで、自分で自分の治療をさせるわ。」
毒島・運転手(うわぁ・・・・)
樫閑(出来れば、そういうことにはならないで欲しいわね。冥土返し《へヴンキャンセラー》。)
軍隊蟻《アーミーアンツ》が立ち去ってから数分後、一人の男が病院の入り口から現れた。
ホッケーマスクを被り、血まみれで袖の無いシャツと膝のところで切り取られたジーンズという滑稽な姿だった。
家政夫「あー。木原はん?獲物逃がしてもうたわ。あと10人ぐらい使い物にならへん。」
木原『――――――――。』
家政夫「あはっ♪そいつはおもろいなぁ。まだ報酬を貰うチャンスは残っとるんやな。そんで――――」
ブチッ・・・・・
先ほどまで手足を切断されてだるま状態が嘘だったように飄々とした態度の家政夫《ヘルプマン》。
その態度が木原の不快を買ったのだろうか、すぐに電話は切られてしまった。
軍隊蟻《アーミーアンツ》第4支部
寅栄が出した情報提供の条件に九野と緑川は数十秒、黙り込んだが、決断をした。
九野『いいだろう。その話、乗ったぞ。』
緑川『だが、あまり好き放題に暴れるなよ。場合によっては、俺たちがお前を拘束しなきゃらならい。』
寅栄「分かってるぜ。せいぜい、ヘマしないようにするさ。」
九野『だが、どうやってあいつを捕まえるつもりだ?相手は第二十三学区、学園都市でもトップレベルのセキリュティを持つ研究所にいるんだぞ。
まさか、そこに襲撃をかけるつもりじゃないだろうな?』
寅栄「んなもん、出来たらとっくにやってるよ。出来ないからチャンスを待ってるんだ。」
九野『チャンス?』
寅栄「ああ、木原は明後日、第十二学区で何か大事な研究をするつもりらしい。あいつのことだ。表には出来ない様なヤバい実験だろうな。
元側近が言う話だから確実だ。別の理由で奴を逮捕すれば、毒島帆露の一件も余罪として追及できるはずだ。」
九野『だが、行先は第十二学区だろう?あそこは神学を科学的な面からアプローチすることを目的とした学区だ。
木原故頼が求めている様な研究室や設備は無いと思うんだが・・・』
相手は緑川の友人であり、九野獅郎先生だった。
寅栄「そこをあんたに調べて欲しいんだ。エリート教師だったら、その辺にコネがあるんじゃねぇの?」
九野『まぁ・・・教養教育として第十二学区に何度か生徒は行かせたことがあるが・・・・、まぁ、ダメ元でやってみるさ。』
緑川『俺は木原の逮捕に賛同する同志を集めてみる。』
寅栄「集まるのか?」
緑川『心配するな。あの事件に不信感を抱いている人間は多い。ちょっと声をかければすぐに集まるさ。』
寅栄「そうか・・・。助かった。」
ピーピーピーピー!
突如、寅栄のポケットの中にある別の携帯端末が音を鳴らす。
するとすぐに体育館の中からメンバーの一人が出て来る。
蟻M「敷地内に侵入者っす。」
九野『どうした?』
寅栄「悪ぃ。どうやら客人が来ちまったようだぜ。」
九野『警備員《アンチスキル》を何人か寄こそうか?ある程度の牽制は出来るはずだ。』
寅栄「いや、いい。俺らの武装がそっちにバレたら後々、面倒なことになる。こっちはこっちで済ませる。」
九野『分かった。情報の件、忘れるなよ。』
寅栄「ああ。ここを切り抜けたら教えてやるよ。」
そう言って、寅栄は端末を切り、にやける顔からリーダーとしての真面目な顔つきになる。
寅栄「相手の勢力は?」
蟻M「ざっと30~40人ぐらいっす。」
寅栄「随分と大勢だな。木原の回し者か?」
蟻M「おそらく、そう考えていいっすね。あと、武器を持っていないことから、全員がそこそこのレベルの能力者と考えて間違いないっす。」
寅栄「無能力者狩りの連中だろうな。」
寅栄は体育館の中へと戻り、蟻Mも彼に続いて行く。
体育館の中では全員が武器を持って迎撃準備を整えており、仰羽や
サークルの連中も戦う覚悟を決めていた。
蟻N「迎撃準備完了です!」
蟻O「敵は正門に30名、西門と東門に5名ずつです。」
冷牟田「勢力的に考えたら、西門か東門から退路を開いた方が良いわね。」
仰羽「いや、西門と東門は狭い。乗用車ならともかく、トラックは通れない。」
冷牟田「・・・となると、正門しか出口がないわね。」
寅栄「相手もそれを想定しての配置だろうな。西門と東門の連中は牽制。本丸は正門の奴らだ。」
冷牟田「それで、どうするの?」
寅栄「こうなったら正面突破しかないな。樫閑に頼る時間も無さそうだし・・・・。」
三上「正面切ってのガチンコ勝負ってわけか。」
神座「やっと、サークルの切り札にして秘密兵器の
神座残時ちゃんの本領発揮だね!」
神山「乱戦は避けてくれ・・・・。俺の能力は両刃の剣だ。」
仰羽「寅栄さん。俺はまだ戦えますよ。」
蟻たち「俺らも準備万端っす!」
そう言って整列して並ぶ蟻たち。そして、威厳のある足取りで寅栄が彼らの目の前に立った。
その光景は軍隊と指導者。鉄の掟によって固められた強固な絆の姿だった。
寅栄「てめぇら!この戦いは軍隊蟻《アーミーアンツ》の筋のためだけの戦いじゃねぇ!
事件で傷ついた毒島姉弟の絆も!
警備員《アンチスキル》の誇りも!
非道な計画で傷を負った奴らの希望も!
命を落とした奴らの魂もかかってる!
俺たちは負けるわけにはいかねぇ!ここで負けるのは筋が通らねぇ!そうだろ!?」
仰羽・蟻たち「ウッス!!!!」
寅栄「蟻も群がりゃ、龍も喰らう!
虫けらの意地を見せてやれ!
軍隊蟻《アーミーアンツ》行くぞ!」
蟻たち「イェヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
持っている武器を高らかに持ち上げ、屈強な蟻たちは高らかに雄叫びをあげた。
最終章へと続く
最終更新:2013年02月25日 01:12