モロ・イスラム解放戦線(MILF)とはフィリピン南部ミンダナオ島で約40年にわたり反政府武装闘争を続けてきた組織。「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」は、78年に「モロ民族解放戦線」(MNLF)」から分派した。MNLFは96年に政府と和平協定を締結したが、MILFは戦闘を継続した。トップはムラド・エブラヒム議長。MILFは2003年に、政府と停戦合意し、「国際モニタリングチーム」の監視下、和平協議の実現を目指していた。2012年11月和平合意にこぎつけ、難題は残るも平和の兆しが見えてきた。


比政府とイスラム武装勢力 ミンダナオ、和平枠組み合意(2012/10/08)

 【ジャカルタ=青木伸行】フィリピン政府と、南部ミンダナオ島を拠点とする反政府武装勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)は7日、和平の枠組みに合意した。既存の「ムスリム・ミンダナオ自治区」(ARMM)の領域拡大を認め、2016年までに新自治政府へ移行し、「移行委員会」を設置して、新自治政府の統治機構と「基本法」を策定することが柱だ。軍とイスラム武装勢力との紛争が40年以上続き、10万人以上が犠牲になったミンダナオ問題は新たな局面を迎えた。

 和平交渉は2日から、仲介国マレーシアの首都クアラルンプールで、日本もオブザーバーとして参加し続けられていた。交渉の焦点の一つは、MILF側が要求するARMMの領域拡大を、政府側がどこまで認めるのかという点にあった。

 ARMMは1990年に住民投票を経て発足し、南ラナオ、マギンダナオ(以上ミンダナオ島)、スルー、タウィタウィ、バシラン(以上スルー諸島)の5州などで構成されている。これに枠組み合意では、ミンダナオ島中部コタバト市と、バシラン州イサベラ市を加えることとした。

 MILF側は2市以外にも、複数の州などを編入するよう主張していたが、これについては結局、住民投票を今後、実施し民意に委ねることで落ち着いた。

 また、政府との徹底抗戦を主張し、MILFから離脱した強硬派「バンサモロ・イスラム自由戦士」によるテロが、激化する恐れもなしとしない。

<フィリピン>和平交渉で米を拒否 MILF(2009/11/23)

【マニラ矢野純一】フィリピン南部ミンダナオ島の紛争を巡る反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」と比政府の和平交渉で、日本や英国が交渉に直接関与する役割を強める中、米国が関与できない状態が続いている。01年の米同時多発テロ以降、ミンダナオ島に駐留を始めた米軍に対し、MILF側が拒否反応を示しているからだ。

一時停戦に合意した比政府とMILFは9月、和平交渉にオブザーバーとして参加する国際交渉団(ICG)を設置することで合意。日英のほか、サウジアラビア、トルコが参加要請を受けている。

一方、米国は10月中旬、在フィリピン米大使館の首席公使が、大使館の国防省担当者を伴ってミンダナオのMILFの拠点を訪問し、ムラドMILF議長らと会談した。MILFなどによると、米側はICGへの参加を直接的な表現で要請しなかったものの、「米政府はこれまで以上に、和平プロセスで特別な役割を担う積極的な意思がある」と交渉への関与を申し出た。

MILF側は米政府に謝意を示す一方、「米政府は和平交渉やICGの枠組みの外で、多くの事ができる」と、米の交渉への直接関与を拒否した。

米軍は、同島西方のスルー諸島を拠点にするイスラム過激派「アブ・サヤフ」を掃討する比軍の訓練目的で駐留。米政府関係者は「訓練目的で、戦闘に直接参加することはない」と説明する。しかし、国際テロ組織「アルカイダ」とは一線を画すMILFは駐留に反感を抱いている。

<フィリピン>政府とMILFが国際交渉団設置で合意(2009/09/16)

 【マニラ矢野純一】フィリピン政府は16日、ミンダナオ島を拠点とする反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」との協議で、双方の和平交渉にオブザーバー参加する国際交渉団の設置で合意したと発表した。

 交渉団には、イスラム諸国会議機構(OIC)や欧州連合(EU)が参加する見通し。MILF側は日本が参加する可能性も高いとしている。

 比政府は「国際交渉団の設置により、1年に及んだ戦闘で中断していた本格的な和平交渉が再開されることを望む」と期待を表明した。

比政府の合意署名停止、イスラム武装勢力が停戦破棄を示唆(2008/08/23)

【コタバト(比南部ミンダナオ島)=稲垣収一】フィリピン南部ミンダナオ島を拠点とするイスラム武装勢力「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」のエブラヒム・ムラド議長(60)は23日、コタバト近郊で記者会見し、比政府との和平協議について「政府側が(自治拡大などを認めた)合意文書に署名しない限り、和平プロセスは崩壊する」と明言、2003年に政府と結んだ停戦合意を破棄する可能性を示唆した。

比政府とMILFは7月末、イスラム教徒による自治拡大に合意したが、反発した地元キリスト教徒らの訴えに基づき、比最高裁は今月4日、合意文書署名の一時差し止めを命令した。これに対し、一部のMILF兵士が暴徒化して国軍との断続的な戦闘が発生、死者数十人、避難民は最大20万人に達した。

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最終更新:2014年01月07日 23:25