2014年、長崎県佐世保市で起きた佐世保高1同級生殺害事件について今更ながらではあるが、この事件を取り上げる事にする。
何故このタイミングでこの事件を取り上げる事にしたのかといえば、今年で事件から10年目を迎え、そして逮捕された当時15歳の少女(医療少年院送致)がついに今年で少年院を出所する時を迎えるという、この節目とも呼べるタイミングでこの事件についての個人的な所見を述べようと考えた。
この事件は言わずとも知れた超有名事件であり、この事件やこの少女の猟奇性だったり異常性については他のYouTuberやブロガーが顕著に書き記しているだろうから、そこについては今更言及するつもりはない。
私は別の視点からこの事件を考えている。
私は別の視点からこの事件を考えている。
巷では「こんなサイコパス野郎が野放しにされるのか」と言われているが、実を言うとこの少女は実質的に終身刑になるのかもしれない。
2015年に「検察官送致」ではなく「医療少年院送致」を決定した長崎家裁の決定理由には、かなり厳しい事を言われている。
まず、少女が発達障害の1つである共感性が欠如した重度の自閉症スペクトラムがあり、さらに他者への攻撃性や反社会性が見られる素行障害も併発していると指摘している。
その上で「不安や恐怖の感情が弱く、決めたことは迷いなく完遂する、非常に特殊な例。ASDが非行(犯行)に直結したわけではなく、環境も影響した」と記されている。
じゃあ、自閉症スペクトラムを持つ人間がこういう事件を起こすのかと言えば、そういう話でもなく、彼女の本当にやばいところは重度の自閉症で共感性が欠如してる上にさらに他者への攻撃性や反社会性を発露する素行障害も併発し自閉症の特性の「物事へのこだわり、興味関心の偏り」が「動物虐待、殺人への興味」に向いてしまっているというのが、負と負同士がまるでサイコパスをさらに強固にするように寄りかかり、さらなる負を産んでいるような状況である。
様々な非行少年少女を見てきたであろう家裁が「非常に特殊な例」と言うのも頷ける。
様々な非行少年少女を見てきたであろう家裁が「非常に特殊な例」と言うのも頷ける。
さらに少女を考察する上で注目したいポイントはこの事件を16歳を迎える誕生日の数日前に起こしているという事で、これはどういう事なのかというと、
「16歳以上が故意の犯罪行為で人を死亡させた場合は原則、逆送しなければならない」と法律で定められているが、これはつまり「少女は16歳未満なら刑事罰を受けない事を理解した上で16歳を迎える数日前に事件を起こした確信犯」の可能性があるということ。
「16歳以上が故意の犯罪行為で人を死亡させた場合は原則、逆送しなければならない」と法律で定められているが、これはつまり「少女は16歳未満なら刑事罰を受けない事を理解した上で16歳を迎える数日前に事件を起こした確信犯」の可能性があるということ。
これは実際、家裁の決定理由でも触れられている。
「刑事罰の可能性が高くなると知っていて直前に実行した」
じゃあどうしてこんな狡猾でずる賢いサイコパスを医療少年院送致、つまり「保護処分」にしたのかと感じると思う。
確かに、家裁の決定理由では「僅かながら更生の可能性がある」と言われている。
「謝罪を述べるなど変化の兆しもある。刑務所では症状悪化の可能性がある。特性に応じた矯正教育と医療支援によって、厳しいが矯正の可能性は残されている」
これだけを見れば「家裁はこの少女にチャンスを与えたのか」と思うかもしれないが、この少女を「刑事罰」ではなく「保護処分」にした1番の理由は「刑罰による再犯阻止の効果がない」という理由である。
「刑罰による(再犯の)抑止効果がない。長期間の治療教育で矯正の効果が期待できる」
個人的に色々と少年事件を見てきた中で家裁が「刑罰による再犯の阻止効果がない」と言い切るのはかなりの異例とも言える。
しかし、これで驚くのはまだ早くて、家裁の決定理由の中でこういう記載があった。
「少年院を出た後も生涯にわたって対応を継続する必要がある」
この記載は未だかつてないぐらいに重い発言である。
そして実質、終身刑宣告のようにも取れる記載である。
そして実質、終身刑宣告のようにも取れる記載である。
さらに家庭裁判所の決定言い渡し前に裁判長が以下の言葉を少女に発したという報道があった。
「やったことはいつの時代でも許されず、社会での生活は不可能になると自覚しなさい。道義的な責任に終わりはない。どう償うか考えてほしい」
中でも注目すべきなのは「社会での生活は不可能になると自覚しなさい」という部分で上記の決定理由とも併せて、実質的に形としては保護処分になったけれど実質的には終身刑宣告では?というニュアンスを感じる。
法律上、医療少年院では「精神に著しい障害がある場合は26歳まで収容を継続できる」と定められており、少年院長が必要であれば少年院送致を決定した家庭裁判所に収容継続を申請する事が出来る。
そして、この少女が23歳になった2021年7月のタイミングで少女が入所している少年院長が収容継続を申請。そして長崎家裁は審判を開いて少女が26歳になるまでの収容継続を決定した。
少女側は収容継続を不服として福岡高裁に抗告するも、福岡高裁は長崎家裁の収容継続を支持し少女側の抗告を棄却し、少女側は最高裁に再抗告しなかった為に26歳までの収容継続が確定した。
少女側は収容継続を不服として福岡高裁に抗告するも、福岡高裁は長崎家裁の収容継続を支持し少女側の抗告を棄却し、少女側は最高裁に再抗告しなかった為に26歳までの収容継続が確定した。
医療少年院で入所者を26歳まで収容を継続する事はおそらくこの国史上初の事例で1997年の神戸連続児童殺傷事件で当時14歳だった「酒鬼薔薇聖斗」ですら、26歳までの収容継続はされなかったのである。
バーチャルYouTuberであり元少年院の法務教官であるかなえ先生氏によれば、少女が医療少年院を退所したとしても最悪の場合は出てきてすぐに措置入院をさせる可能性があると話していた。
前代未聞の事件を起こし、前代未聞の出来事を起こした少女。
ここまで来ると何故、彼女がこの世に生まれてきたのか分からなってくる。
ある意味、ここまでサイコパスという「病」を抱えて生まれてきてしまった彼女は不幸なのかもしれない。
ここまで来ると何故、彼女がこの世に生まれてきたのか分からなってくる。
ある意味、ここまでサイコパスという「病」を抱えて生まれてきてしまった彼女は不幸なのかもしれない。
最後に言いたい事。
この佐世保事件を取り扱った動画のコメント欄を見ていると、単に「この少女を死刑にすればいい」とか「刑事罰を受けさせるべき」みたいな事を言っているような人間ばかりでビックリした。
結局のところ、非行を起こした少年少女だったり、犯罪者全般に対する矯正教育の1番の理由というのは「新たな被害者を生まない為」という理由であり、本来ならば何をどうしたら新たな被害者を生むこともなく犯罪者が再犯もせずに済むかというのを考えた上での最善の対処をしなければならない。
厳罰とかそういう以前に犯罪者を生ませないようにしろという話。
ただ、悲痛な遺族感情を考えれば厳罰感情は致し方ないとも感じる。
ただ、悲痛な遺族感情を考えれば厳罰感情は致し方ないとも感じる。
例えば、もしこの少女が逆送されて刑事罰を受けていたとしても恐らく判例から考えると、不定期刑の上限の「懲役10年〜15年」になっていたと思う。
そして、この少女がたった懲役15年で「人としての心」を手に入れる事が出来るのかといえば、それは不可能だと言わざるを得ない。
そして、この少女がたった懲役15年で「人としての心」を手に入れる事が出来るのかといえば、それは不可能だと言わざるを得ない。
刑務所の矯正教育はあくまで「最後の良心を持つ人間」に対する教育で、彼女のような先天的とも言えるサイコパスに対する教育は存在しない。
そして、
懲役15年を終えても当然、更生はできずに再犯。また犠牲者が現れる。無期懲役か死刑。
そして、
懲役15年を終えても当然、更生はできずに再犯。また犠牲者が現れる。無期懲役か死刑。
長崎家裁の裁判長の脳裏にはこの未来が見えていたのだろう。
だから日本の中でも最先端の精神医療と呼ばれる医療少年院で彼女を全力で治療させる事を、僅かながら彼女が「人の心」を取り戻せる可能性に賭けたのだろう。
だから日本の中でも最先端の精神医療と呼ばれる医療少年院で彼女を全力で治療させる事を、僅かながら彼女が「人の心」を取り戻せる可能性に賭けたのだろう。
もはや厳罰とかは関係がない。
時には「手段」として厳罰も必要な時が存在するが、厳罰その物自体に意味は無い。
時には「手段」として厳罰も必要な時が存在するが、厳罰その物自体に意味は無い。
厳罰は犯罪防止になるという意見も存在するが、確かに「常人」には犯罪防止になる。
しかし、常人ではない頭のネジが弾け飛んだ人間に「厳罰になるから」なんて常識は通用しない。
しかし、常人ではない頭のネジが弾け飛んだ人間に「厳罰になるから」なんて常識は通用しない。
残念ながら、この世には先天的に脳に異常を抱えたサイコパスが存在する。
彼らサイコパスは共感性が欠如していて、容赦もなく涙も無く他者を殺す事が出来る。
そして何より厄介なのは彼らには刑事罰、刑務所での矯正教育など通用しないのだ。
何故なら、そもそも罪悪感を持ち合わせていないから。
彼らサイコパスは共感性が欠如していて、容赦もなく涙も無く他者を殺す事が出来る。
そして何より厄介なのは彼らには刑事罰、刑務所での矯正教育など通用しないのだ。
何故なら、そもそも罪悪感を持ち合わせていないから。
私は「厳罰」に反対しているわけではない。
サイコパスの脳を治療してまともな人間にできる技術があるならそれに越したことはないが、現実そんなものは存在しないので、やはりそういう場合は「厳罰」で社会から隔離する他ないと感じる。
サイコパスの脳を治療してまともな人間にできる技術があるならそれに越したことはないが、現実そんなものは存在しないので、やはりそういう場合は「厳罰」で社会から隔離する他ないと感じる。
とにかく、彼女が二度と罪を犯さない事と二度と彼女による被害者が現れない事を心から祈る。
出典元
佐世保高1殺害、少女を医療少年院送致 家裁「治療・教育を」 日本経済新聞様
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13HBH_T10C15A7CC1000/
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG13HBH_T10C15A7CC1000/
【佐世保高1同級生殺害事件】26歳まで収容継続決定!? 医療少年院ってどんなところなの?【Vtuber解説】 犯罪学教室のかなえ先生様
https://youtube.com/watch?v=Er_ZSS9nQJ0
https://youtube.com/watch?v=Er_ZSS9nQJ0