0119:ん?間違ったかな ◆Wv7hRKzBHM





―――諸君、ご苦労。
…爽やかな朝だ。よく眠れたかね?

「……はっ!?」
気がつくと、アミバは逆さ吊りにされていた。
気を失う前の最後の記憶は、目の前に迫る足。
「あ、あの凡人どもが…!よくも天才であるオレにあんなことを!」
クソガキどもをぶちのめしてやろうと周囲を見回すが、誰もいない。
というか既に日が昇っているし、なにやら声が聞こえている。
(そうか、これが例の放送だな?禁止エリアとやらが伝えられるはずだ)
アミバはロープを千切って地面に降り、荷物を探した。
が、持ち去られたらしく何もなかった。
「…せめて食料と武器だけにしとけ!これでは禁止エリアがどこかも分からん!」
歯噛みして悔しがるが、どうにもならない。
しかたないので、せめてエリアの名前だけは覚えておく。
「ぬぅ、あのガキどもに仕返しをする前に、せめて荷物だけでも手に入れたいものだな」
食料は最悪その辺の自然物で代用する手もあるが、地図だけは必要だった。
アミバは人を探すべく、東京(方向をかろうじて覚えていた)へ向けて歩きはじめた。

しばらく歩いて、アミバは川を見つけるとそこで一休みした。
水を飲み、そして魚を釣ろうとする。
木の枝などで即席の竿を作ろうとしていると、誰かが近づいてくる気配がした。
(…ひとまず隠れて様子を見るか。隠れてるのがバレたら、襲われて荷物を奪われて命からがら逃げ出した哀れな男を装えば良い…
 オレは別人のフリをするのも天才だからな)
茂みに隠れて様子を覗っていると、一人の少年がやってきた。
見るからに弱そうな子供だ。もし一人なら格好の獲物といえる。
少年は周囲をキョロキョロ見回してから、川で顔を洗い始めた。
(よし…油断させて荷物を奪うとするか。まぁ正面から戦っても負けるはずもないがな)
アミバはなるべく優しそうな声で、茂みの中から声をかけた。
「もし、そこの少年…」

真中は東京へ向かう途中のこの森で放送を聞き、そこで仲間と共に休憩していた。
幸いにも、真中の知り合いは死んでいなかった。
ただし、江田島平八と名乗った威厳のあるオジサンの知り合い(教え子らしい)が死んだそうだ。
あまり多くを語らないが、かなり強い人だったということは真中にも分かった。
そんな人があっさりと死んでしまうということは、自分や東城たちはいつ死んでもおかしくない。
「死…」
自分たちが死んで倒れているイメージが脳裏に浮かぶ。
頭を振ってそれをかき消すと、気分転換のためにすぐ側に流れている川で顔を洗うことにした。
仲間の一護がついて行こうかと言ったが、すぐ側だからと断って。
そして、顔を洗ったところで突然声がした。
「もし、そこの少年…」

アミバは疲れた様子を装って茂みから歩み出た。
不意に声をかけられた真中は銃を向けかけるが、アミバの様子を見てすぐに降ろしてしまう。
体格はがっしりしているが表情は優しげで、しかもかなり苦しそうにしている。
「ど、どうしたんですか?」
「あぁ…実はゲームに乗っている奴に襲われてね…荷物を奪われてしまったんだ。私は何とか逃げてきたが…」
「ど、どこか怪我とかは…」
完全に信じきっている様子の真中に、アミバは内心ほくそえむ。
それでも表には出さず、疲れた男を演じ続ける。
「大丈夫だ。ただずっと走り通しだったのでね…すまないが食料を少し分けてもらえないだろうか」
「……えぇ、いいですよ。そうだ、良かったら向こうに仲間がいるから、一緒に来ませんか?」
…「仲間がいる」。その言葉に一瞬焦るアミバ。
だが、すぐに平静を取り戻して演技を続ける。
「いや、私は追われているからな。すぐにここを去るつもりだ。他の人に迷惑をかけるつもりはない」
「そうですか…俺たちは東京に行きますから。何かあったら来てください……どうぞ、パンです」
パンを受け取り一口かじって、ようやく落ち着いたという素振りを見せるアミバ。
「…ありがとう。君は優しいな。何かお礼がしたいが…あいにく何も持っていない」
「そんな、いいですよお礼なんて」
「そうはいかない……そうだ、君は強くなりたいかね?」
そう言って微笑みかけるアミバ。
その笑みにはかすかに邪悪なものが混じっていたが、真中は気づかない。
「そ、そりゃあ強くなれるなら、東城たちも守れるし……」
「私は筋力と敏捷性を上げる秘孔を知っている。それを突いてあげよう」
「え?なんですって?飛行機?」
優しげな笑みを浮かべたまま歩み寄ってくるアミバ。
真中は感じていた。この男は只者ではない、と。そして、その感覚に圧倒されて動けないでいた。
「秘孔とはツボのようなものだ。それを突くと、人を強くすることができるんだよ」
「……で、でも俺…」
「友達を守りたいのだろう?仲間がいると言っても、君と君の友達を同時に守るのは難しいだろう」
「う……」
「君が強くなれば…『君が』友達を守れるようになる」
「……わ、わかりました」
真中はついに決心して目を閉じる。
アミバはゆっくりと指を近づけて……
「さぁ、君を強くする秘孔はここだ!」
「うぐっ、ぐああああ!」
秘孔を突かれた途端、苦しみ始める真中。
だがアミバは悪びれる様子もない。
「こ、これはぁ、あぐぐ、一体…?」
「ん?間違ったかな」
「がはっ、ぐぎぎ」
ガクガクと痙攣しながら倒れる真中を尻目に、アミバは真中の荷物を拾う。
「ふふ、じゃあ秘孔を突いてあげた代償として荷物は頂いていくぞ」
「…ぐあぁぁぁ…」
「今回は命は取らん。その症状は1時間ほどすれば収まるから安心しろ」
真中から受け取ったパンをかじりながら、アミバは森の中へ姿を消した。
…かに見えたが、何者かがその前に立ちふさがった。
「ちっ、仲間か。だがオレは天才だ!キサマのような凡人がオレに勝てるかーっ!!」





【埼玉県(森)/朝】
【アミバ@北斗の拳】
 [状態]:やや疲労
 [装備]:ニューナンブ@こち亀
 [道具]:支給品一式(食料1日分消費)
 [思考]:1.目の前の敵と戦う 
      2.皆殺し

【真中淳平@いちご100%】
 [状態]:手首捻挫、痙攣中(1時間ほどで治まる)
 [装備]:無し
 [道具]:無し
 [思考]:1.知り合いとの合流
     2.東京を目指す

※江田島平八、または黒崎一護がアミバの前に立ちふさがっています。
※どちらか一人。もう片方は真中の様子を見に行っています


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029:天才 アミバ 130:天才の知略
072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~ 真中淳平 130:天才の知略

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最終更新:2023年12月08日 14:01