0055:醤油、豚骨、味噌、そして塩。 ◆lEaRyM8GWs





最初は北を目指していた友情マンだが、ピッコロの強襲に遭って逃げた先は不運にも南だった。
しかし桑原という利用しやすい友達に巡り会えたのは不幸中の幸い。
北にいるピッコロからさらに逃げるため、友情マンは南を目指す事にした。
やはり人が集まるのは東京だろう。そこなら頼りになる仲間をたくさん得、邪魔な者をたくさん殺せるに違いない。

友情マン達は偶然見つけた線路に沿って南へ向かい、岩手県にある駅へと到着した。
どうやら電車が走っているらしく、長距離移動にはもってこいのようだ。
それに駅を利用しようとする参加者に会えるかもしれない。
その参加者が友達になれそうなら友達になり、襲ってきたなら返り討ちにし、勝てそうにないなら桑原を囮にする。
駅を利用しようと決めた友情マンは、桑原を連れて駅員室を探した。
もしかしたらこの小さくなった日本での路線図や時刻表を入手出来るかもしれないし、
他にも役立ちそうな物や武器になりそうな物がある可能性は十分ある。
と思っていたのだが、まさかこんな物を武器にする者がいるとは思わなかった。

駅員室の戸を開けた瞬間、友情マン達の鼻腔に美味しそうな匂いが漂った。
誰かいる。警戒心を高めた刹那、シャープペンやボールペンが飛んできたのだ。
驚くべきはその正確な狙いと速度。
2人とも咄嗟にペンを避ける事はできたものの、飛ばされた何本かのペンはそのまま背後の闇の中へと消えていってしまった。
まともに食らえば身体に浅く突き刺さっていただろう。
重量のあるナイフなどと違い、ペンを投げて人体に突き刺すなど、どれほどの力と技が必要なのかは分からない。
しかし、相手が相当の使い手だという事だけは確かだ。

「クソッ、どうする友情マン!? こう暗くっちゃ戦えねぇぞ!」
「分かってます。大声を出すと居場所がバレますから静かにしててください、霊剣も接近されるまで出さないで」
頭の悪い桑原に足を引っ張られまいと予防線を張った友情マンは、駅内を走りながら対応策を考えていた。
(さっきの奴がゲームに乗っているとは限らない、単なる自衛の可能性も十分あるからだ。
 後者なら説得の余地はある。ただのペンを凶器に変えるほどの参加者、ぜひとも友達になりたい!
 しかし戦う意志は無いと叫んだところで信用するだろうか? 奴が殺し合いをする気満々の可能性だってあるんだ。
 ……もったいないがカードを使うか? しかし相手の居場所が分からなければ魔法・罠カードは……)
プラットホームから線路に飛び降りて身を隠した友情マンは、神経を張り巡らせて相手の気配を探る。
駅には漆黒の闇が広がったままであり、人の気配など桑原のものしか感じられない。
長期戦になれば、襲われる側が神経を削り殺されてしまうのは明白。
(桑原君は幽助君と友達になるのに使える。モンスターカードを囮にして逃げるか?)
友情マンがブラックマジシャンガールのカードを取り出した瞬間、桑原の手が光り輝いた。
「霊剣!」
さっき使うなと言ったにも関わらず使った理由は、ひとつしか考えられない。
桑原が剣を向けた先を友情マンは見て敵の姿を探すのに2~3秒経った瞬間、背中を蹴飛ばされカードを手落とした。
桑原が慌てて霊剣を友情マンの背後に向かって振るが、相手は半身を引いただけで刃をかわす。
針のような殺気を桑原に放ち、自分がいた方向に気を取らせている間に凄まじいスピードで背後に回る、
しかも気配を微塵も感じさせず。
敵は明らかに格上だった。また、間違いなく闇の中での戦いに長けている。
友情マンの背後を取りながら致命の一撃を与えなかったのは殺しをする気が無いためか、
もしくは武器を支給されておらず徒手空拳で殺傷能力の高い技を持っていないためか。
どちらにせよ、自分の背中を蹴飛ばした男に対し、友情マンが苛立ちを覚えた事に変わりはなかった。
(この私の顔に泥をつけるなんて!)
地面にお尻をつけたまま振り返った友情マンは、額に両手をかざして叫んだ。
「太陽光線!」
高熱の光エネルギーが敵の姿を照らし出す。
一言で言うならば巨漢。
無駄な贅肉が1グラムも存在しないかのような、鍛え上げられた肉体を黒っぽい服で包んでいる。
彼は太陽光線の熱エネルギーを前にしながら不敵な笑みを浮かべていた。
友情マンの額から真っ直ぐに伸びる光線を、男は両手で挟むように 掴 ん だ 。
「光線白刃取りぃっ!!」
光線は白刃取りなどできないし掴むなんてもってのほか。
そんなツッコミを入れるのも忘れ、友情マンは目の前の状況に我を忘れていた。
つい冷静さを失い殺す気で放った太陽光線は、力が制限されていてもそれなりの殺傷力を持つはず。
それがまさか、こんなにも簡単に防がれるとは。
ヒーローの中でも非常に高い戦闘力を持つ実兄勝利マンとも、本気を出せば互角に渡り合える自分の攻撃が……
「へっ、眩しいじゃねぇか。人に見つかったらどーする」
男はニヤリと笑いながら光線をホームの壁目掛けて投げ捨てる。光線はコンクリートの表面をわずかに焼いて消えた。
桑原は霊剣を構えながら男と友情マンの間に入り、相手の行動を見極めようとする。
「ったく。ラーメン食ってたところにいきなり入ってきたから驚いちまったじゃねぇか」
世間話でもするように男は言った。そこには殺意も敵意も微塵も感じられない。
「お前らアレか? 殺し合いに乗ってんなら相手してやるぜ、それはそれで面白いからな」
「そう言うてめぇはどうなんだよ!?」
桑原の問いに顎を掻きながら、男は少し考える。
「ん~……俺は別に殺し合いする気は無いが、強ぇ奴と戦うのも面白いしなぁ……
 ダーク・シュナイダーと改めて決着つけるのも悪かねぇが、あいつが面白ぇ事を企んでたらそれに乗るのもいいな」
どうやらこの男は積極的に殺しをするつもりは無いらしい。
それどころか面白いか面白くないかで己の行動を決めるような奴だ。
ならば――
「でしたら、私達の仲間になりませんか?」
「あん?」
すでに友情マンの頭に怒りは無い。素晴らしく強い友達を得られるかもしれない喜びに震えている。
「私達はゲームを脱出し、主催者を倒そうと思っています。
 主催者は恐ろしい力を持っている……戦うのが楽しいと言うのなら、奴らと戦う事は?」
「おいおい、こんな首輪着けられてるんだぜ? 戦う前に殺されるなんざお断りだ」
「で、ですが首輪を外す方法だってきっとあるはずです。みんなで力を合わせれば……」
「みんなって誰だよ? お前さんの仲間に首輪を外せるような奴がいるのか?」
「……ラッキーマンなら……ラッキーで何とかしてくれるかもしれない」
「ラッキー? 運頼みかよ」
「ラッキーマンはその名の通りラッキーを起こすヒーローです! ただの運頼みではありません!」
友情マンはラッキーマンについて説明をした。彼の起こしたラッキーについても。
それを聞いた男は面白そうに頷き、話に聞き入った。
こんなラッキーで敵を倒した、あんなラッキーで仲間を守った。
とても興味深そうに男は頷く。
「へぇ~、面白い奴がいたもんだ。一度見てみてぇもんだな」
「でしたら一緒に行きましょう! 彼は私の友達ですから、絶対協力してくれるはずです!」

こうして友情マンは新たな友達を得る事に成功した。
友達の名はガラ。
忍者マスターである彼は闇夜の戦いやサバイバル技術に優れており、このゲームに打ってつけの人材だった。
しかも支給品は斬魄刀。ムラサメブレードという刀を愛用していたガラにとって使いやすい武器だ。
友情マンを斬殺せず蹴飛ばすだけにしたのは、こちらがまだ攻撃をしていなかったからだろう。
彼の持つ情報も非常に有益だ。
アビゲイルという魔法に詳しい男に、ヨーコという回復魔法の使い手。どちらも友達になれば非常に役立つ。
そしてダーク・シュナイダーという男の強さと性格。
もしかしたらゲーム最強のマーダーかもしれない男だが、ヨーコという女の前では犬コロに成り下がる。
ヨーコを仲間にしてからダーク・シュナイダーに会えば、ゲーム優勝とゲーム脱出、どちらも成功率がグンと上がるのだ。
聞けばダーク・シュナイダーも魔法に非常に詳しく、科学に関する知識も高いというのだから。
しかしもし、ヨーコを仲間にする前にダーク・シュナイダーに会ったら殺されるかもしれない。
ヨーコにしばかれだいぶ丸くなったものの、やはり鬼畜で残忍で卑劣な男なのだ。警戒の必要がある。
こうして友情マンは有利な手札を増やしていくのだった。
その代償として、友情マンと戦ってたせいで職員室に置きっぱなしになっていたカップラーメンが伸びてしまったガラのために、
友情マンは冷蔵庫に入っていたラーメンを作ってやる事になったが。
ちなみに……冷蔵庫に入っていたラーメンは醤油、豚骨、味噌、そして塩がひとつずつ。
そのすべてをラーメン大好きなガラは食べ尽くしてしまったのだ。
ラーメンを作るには水も必要だったが、それはガラの飲み水を全部使ったので問題無い。
鍛えてる忍者だから2~3日くらい水を飲まなくても平気というのもあるが、冷蔵庫の中はちゃんと他の飲み物もあった。
ガラが役立つ友達でいる限り、友情マンは彼に飲み物を与えてくれるだろう。そう、役立つ友達でいる限り……





 【岩手県北部の駅/黎明~早朝】

 【チーム名:偽りの友達】
 【友情マン@とっても!ラッキーマン】
 [状態]:健康
 [装備]:遊戯王カード(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、千本ナイフ、光の封札剣、落とし穴)@遊戯王
 [道具]:荷物一式、ペドロの荷物一式、食料セット(十数日分、ラーメン類品切れ)、青酸カリ
 [思考]:1強い者と友達になる。ヨーコ優先。
     2ピッコロ、ダーク・シュナイダーに警戒。
     3最後の一人になる。

 【桑原和真@幽遊白書】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式
 [思考]:1ピッコロを倒す仲間を集める。浦飯と飛影を優先。
     2ピッコロ、ダーク・シュナイダーに警戒。
     3ゲームを脱出する。

 【ガラ@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
 [状態]:健康、満腹
 [装備]:斬魄刀@BLEACH
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費、水無し)
 [思考]:1とりあえず友情マンについて行き、ラッキーマンのラッキーを拝んでみる。
     2ピッコロ、ダーク・シュナイダーに警戒。
     3脱出と優勝、面白そうな方に乗る。


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034:切り札 友情マン 145:甘い果実
034:切り札 桑原和真 145:甘い果実
GAME START ガラ 145:甘い果実

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最終更新:2024年08月16日 20:54