0050:魁!!一護100%~死兆星は危険な輝き~





 恐慌状態に陥った真中を覚醒させたのは、たった一つの思考だった。

(西野……東城……さつき……俺、こんなところじゃ死にたくない!)

 辛くも小屋の窓から逃げ出すものの、ラオウの腕の一振りでバランスを崩し、その場に転倒する。ひ……膝が笑って、立てない!!
泡を食いながらも体勢を立て直し、ラオウに向けて自分の支給品、警察用拳銃、ニューナンブを発砲するものの。
悲しいかな、真中淳平は悲しいまでの一般人。
訓練も受けていないどころか、銃器に触れるのすら初めての彼では、数メートル先の巨漢に銃弾を掠らせることすらままならない。
逆に、銃器の反動で、自分の手首を痛めてしまう始末。
焦る真中をよそに、悠然とラオウは歩を進め、真中に近づいていく。
「フン……どのような強者がいるのかと思えば、単なる羽虫か」
 だが、その顔に貼り付いているのは、これ以上ないほどの渋面。拳王たる自分が、このような塵掃除をさせられるとは!
「ウヌにこの拳王の拳は過ぎた土産ぞ!光栄に思い、死ねい!!」



「ったく、なんだってんだ!無事でいろよ、ルキア!!」
 銃声を聞き、駆けつけてきたのは一人の青年。名を黒崎一護。携えるものは白銀の盾、シャハルの鏡。
彼もまた、このゲームに放り込まれて、仲間を探しているものの一人。
(力が制限されて、霊絡が読めねぇ!剣八のヤロウはゲームに乗っててもおかしくねぇし、あの藍染とかいうメガネまでいる。
 あのヤロウがまだルキアを狙ってやがったらッ!畜生、どこだ、ルキア!)
 彼の知り合いも、この『くそったれなゲーム』に招かれている。その面子をみて、一護は、このゲームが安全なものではないと確信していた。
ならば。自分に”護る”力を与えてくれた少女、朽木ルキアを、今度は自分が護ってやりたい。
そして例え自分と無関係な人間であろうと。目の前で襲われているのならば、そいつも護ってやりたい。
青年、黒崎一護は、そう考えていた。

 そして今。眼前に見えるのは、天を衝くような巨漢が自分と同じ年頃の青年を殺害しようとする瞬間そのもの。

「クソッ!」

 弾かれたように、一護は速度を上げる。このままではあの青年は殺される。これは絶対だ。
だが……巨漢はあまりにも迅く、自分はあまりにも遠い位置にいる。見殺しにしたくはない……が、それは動かし難い事実。
(間に合わねぇ……ッ!せめて斬月が手元にあればッ!!)

そして……

「ムゥ、何奴!」

……結果として、一人の乱入者によって真中は命を取り留めることになる。それが幸運なのかは誰も知らない。




「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!!」




 その場にいる全ての存在の動きを一瞬止めたのは、銃声をも凌ぐ、鼓膜を張り裂かんばかりの大音声。

 現れたのは一護ではなかった。勿論、東城綾でも西野つかさでも北大路さつきでもない。
現れたのは。禿頭の偉丈夫、希代のカリスマ、私塾、男塾における絶対神、江田島平八その人であった。
絶対的な眼差しでラオウを見据えつつ、吼える。

「情けなくも抵抗の力の無い子供を嬲るなど、日本男児にあるまじき所業である!」
「この拳王相手にそこまで吼えるか。殺す前に、もう一度、ウヌの名を聞いておいてやろう」
「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」

 無論、平八にはこのような下らないゲームに乗るつもりなど毛頭ない。
これからの日本を復興させるのは若者。教育者としてその若者を育成しようと男塾という私塾の塾長となった平八にとって、
数多くの若者の未来を摘み取るこのようなゲームは、決して看過できるものではなかったからだ。

 戦後はアメリカから「EDAJIMAが十人いたら戦争に負けていた」と言わしめた程の男、江田島平八を見てラオウは思う。
(この男、目の前の餓鬼のような腑抜けではない!ククク、このゲームとやら、全く楽しませよるわ!
 どれ、今、真に自分と戦うべき男であるのかを問うてやろう。)

 既に真中の如き羽虫の生死など、拳王、ラオウの頭からは抜け落ちていた。

「ウヌには北斗七星の脇に輝く、あの星が見えているか?」
 突然のラオウの言葉に、その場にいた全員が夜空を見上げる。
「……?何のことだ?」
 平八の心は水面の如く。
(……アレのこと?ムッチャ見えてるんですけど)
 真中は内心穏かではなく。
「フフフ……ハハハハハハハハハハ!!どうやら貴様はまだ俺と闘う運命には無いらしい!次に会う時まで、その命、預けておくぞ!」
 自分と戦えば、相手は間違いなく死ぬ。だが平八に、死を告げる星、死兆星が見えていないということから、ラオウは判断する。
どうやら今は闘うべき時ではないらしい。そして平八の返事を待つこと無く、世紀末覇者は踵を返す。
威風堂々、その足取りは王者の如く。
「フフフ…いいよるわ」
 平八のラオウを見送る目、それは百年来の強敵(トモ)に出会ったかのようで。
「……俺、助かったの?????」
 真中の頭上の星、北斗七星の補星である「死兆星」は何故かさらにその輝きを増す。

「いや、ワケわかんねぇよ……」
 一護の呟きは、誰にも聞き取られること無く……





【群馬県の小屋周辺/黎明】

【真中淳平@いちご100%】
【状態】手首捻挫、放心状態
【装備】ニューナンブ@こち亀
【道具】水6分の1、食料1食分消費した支給品一式
【思考】放心状態

【ラオウ@北斗の拳】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明
【思考】1.いずれ江田島平八と決着をつける
    2.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)

【江田島平八@魁!!男塾】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明
【思考】1.「わしが男塾塾長、江田島平八である!!!」
    2.「日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり」

【黒崎一護@BLEACH】
【状態】健康 、半茫然自失(名簿に写真がないため、メガネ藍染かオールバック藍染かは知らない)
【装備】シャハルの鏡@ダイの大冒険
【道具】支給品一式
【思考】1.目の前で襲われている奴らがいたら助ける
    2.朽木ルキアとの合流


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049:油断 真中淳平 072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~
049:油断 ラオウ 088:勝利への執念
GAME START 江田島平八 072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~
GAME START 黒崎一護 072:魁!!一護100%~血を吐くような思いと共に~

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最終更新:2023年10月23日 15:13