0088:勝利への執念 ◆Wf0eUCE.vg
「そこの者、隠れずに出てくるがいい」
月夜の闇に、否定を許さぬ威圧感を含んだ声が響く。
問いかけた先の木々の陰から、夜の闇が良く似合うスラリとした女性が姿を現した。
「争う気は無いわ」
女は現れて早々にそう言い、両腕を高く上げ降伏を示す。
拳王は天に輝く北斗七星を指差しながら、現れた女――
ニコ・ロビンに問いかける。
「女、ウヌには北斗七星の脇に輝く星が見えるか?」
「さあ? どうかしら」
ロビンははぐらかすように肩をすくめる。
「ぬ!」
唐突に背後に気配を感じ拳王は背後を振り返る。
そこにあったのは、木から腕が生えている奇妙な光景。
その腕が持つ剣が拳王に向け振り下ろされる。
だが、拳王は素早くその刃を素手で掴み、逃がすまいと力強く握り締める。
握り締められた刃は、拳王の皮膚すら斬ることはかなわない。
「フン、この拳王に不意打ちなど通じぬわ! …ふんぬ!!」
拳王が刃を握る手に力を込める。
同時に降魔の剣が破滅の音を上げ粉々に砕け散った。
「なッ!」
その光景にロビンは驚愕する。
素手でむき出しの刃を握り潰すなど、人の業とは思えない。
力の制限されたこの空間ならなおさらだ。
それよりも降魔の剣を破壊され、これ以上の配下を増やすことが出来なくなった。
つまり、これ以降現状の手駒で戦うしかないということだ。
「クッ…」
ロビンは歯噛みする。
だが、降魔の剣が破壊されようとも、あの二人は自分の忠実な配下であることは変わらないはずだ。
「行きなさい、スヴェン、
勝利マン!」
ロビンは念のため待機させておいた二人に指示をだす。
スヴェンは激しく疲労しているが仕方ない。
今は目の男への対処が優先だ。
指示を受けた二人は、物陰から駆け出し、ラオウに向かい襲い掛かった。
ロビンは悪魔の実の能力で援護しながら、離れた場所からその戦いを見つめていた。
そして改めて驚愕する。
激しい威圧感を纏うこの男。
その強さ、まさに圧倒的。
二対一。
否、ロビンの援護も含めれば事実上、三対一か。
だというのに、その男は圧倒的だ。
次々と生え、行動を遮る腕を、意に介さず振り払い。
二人の攻撃を全て捌き、反撃に転ずる。
この二人とて雑魚ではないはずだ。
特に
勝利マンの体術はかなりのもののはず。
だというのに、この男の前では全てが児戯の如く払い落とされる。
このままでは全滅だろう。
「スヴェン、
勝利マン、退くわよ!」
勝ち目が無いと悟り、ロビンは撤退を命令する。
その言葉にスヴェンは即座に反応し、ロビンのもとに舞い戻る。
しかし、
勝利マンはその場を動かず、拳王の前を微動だにしない。
「退く…負け……退く…」
「なにをしてるの
勝利マン! 退きなさい!」
再度の命令に、
勝利マンは僅かにロビンを振り返り、再度拳王を見つめ直した。
退く?
退く=逃走=敗走=負け。
負けるだと?
勝利マンに敗走などありえない。
勝利マンに敗北などありえない。
勝利マンには勝利しかありえないのだ。
「……退く…負け……ない……勝つ、勝つ…勝ぁあつっ!!」
異常ともいえる
勝利マンの勝利への執念が、降魔の剣の支配を凌駕した。
「クッ! なんなの! もういいわ、好きにしなさい!」
そう言って、ロビンは
勝利マンを見捨て、スヴェンと共にその場から走り去った。
「勝つ、勝つ!」
好きにしろ、その命令で
勝利マンは解き放たれた。
今の
勝利マンは、まさに水を得た魚状態だ。
一歩、一歩、踏みしめるように
勝利マンは拳王へと向かう。
「ウヌ一人か、よかろう来るがいい」
迎えるように拳王は構える。
その構えに
勝利マンが駆けだし、拳王へと突撃する。
「キャベツチカカツカム!!」
Vの字に構えた両腕を、叫びと共に撃ち放つ。
その一撃は拳王を捕らえ、胸元をVに切り裂き血を噴出させる。
「ぬう…この拳王の体に傷をつけるとは、だが…」
拳王が指差すと、
勝利マンの両腕が爆ぜたように壊れた。
「鏡明という秘孔を突いた。ウヌの両腕はもはや崩れた」
勝ち誇るように拳王が言い放つ。
「ビクトリービーム!!」
だが、
勝利マンは壊れた両腕をそのままに、攻撃に転じる。
勝利マンのV字の眉から光線が放たれラオウを襲う。
「りやぁ!!」
ラオウはその光線をかいくぐり、一瞬で
勝利マンとの間合いを詰める。
そして、凄まじいまでの一撃を
勝利マンの胸に放った。
その一撃は
勝利マンの胸骨を粉々に砕き、胸に大きな窪みを作る。
勝利マンは噴水のように血を吐き、その場に崩れ落ちた。
「……負け、ねえ…このオレは…勝つ!!」
血反吐を吐き、地に伏せながらも、
勝利マンはラオウを睨み咆える。
その目を見返し、拳王は拳を振り上げる。
「その心意気、見事なり!」
叫びと共に振り下された拳を、
勝利マンの脳天に突き立てた。
「その勝利への執念、敵ながら見事であった」
拳王は拳を引き抜き、物言わぬ好敵に賛辞の言葉を送る。
「しかしこの拳王に傷をつける者が何人もいようとは、なんと心揺さぶることよ」
そう言って拳王は高々と笑い、悠然とその場から立ち去った。
【栃木県と茨城県の境目付近/早朝】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]:胸元を負傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式、不明
[思考]:1.いずれ江田島平八と決着をつける
2.主催者を含む、すべての存在を打倒する(ケンシロウ優先)
【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
[状態]:疲労
[装備]:無し
[道具]:荷物一式
[思考]:1ラオウから逃げる
2仲間を増やす中でイヴを探す
3死にたくない
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:妖怪化、激しく疲労、予見眼使用不可
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(不明)
[思考]:妖怪化しロビン絶対
※ミクロバンドはその場に放置。
【勝利マン@とっても!ラッキーマン 死亡確認】
【残り114人】
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最終更新:2024年08月17日 23:52