0110:生き残るために ◆QGtS.0RtWo





あれから少しばかり走った後、ロビンは休憩していた。
唯でさえ疲労しきっていたスヴェンをあのラオウという男と無理矢理戦わせたのだ。
幾ら操っていたとしても素が人間であり、疲労すれば動きは鈍くなる。
ならこれからの為にも此処で休憩して、いざという時に備えておいた方が賢明であると判断したからだ。
「――さて、これからどうしようかしら」
頭の中で必死に生き残る方法を模索する。
そうして考えている内に時間は刻々と過ぎていった。

『―――諸君、ご苦労……』
ふと頭の中に別の思考が混ざってきた。
勿論それは自分の思考ではなく他人の声である。
バーン、フリーザとノイズが頭の中を流れていく。
その声にて解った事はこの島に来て6時間の内に18名も死んだという事だ。
しかし別にこれには驚きはない。
色々な戦いを目にしてきたがその時の死者はその数の比ではない。
つまりはこの18名という数字が何を表しているのかと言うと、思ったより殺し合いをしている人数の方が少なかったということだ。
思えば3人出会った内のラオウ以外は別段乗っている訳でも無かった。
しかし、彼女の中でそれ以上にショックだったのは……
「――勝利マン
勿論あの化け物相手に無事でいられるとは考えてもなかった。
が、最後に命令に背いたにしろ彼はロビンの中で仲間だったのだ。
無事でなくても逃げてくれさえしていれば、とほんの少しだが希望を抱いていた。
それに結果的に見たら彼があの絶望的状況から逃がしてくれたとも考えられる。
「ごめんなさいね、そしてありがとう。貴方のことは忘れないわ」
何処に言うともなくそう呟いた。

仲間という存在に人一倍恐れていた彼女だからこそ、その契約が絶対な物として存在した場合、それに盲目的になってしまうのであった。
孤独に耐えきれず自分自身で絶対服従という名のを仲間を作った彼女。
裏切らないからこそ安心して信じられる――そんな甘美な誘惑に彼女は負けていた。
結局は彼女の方こそが剣に魅了された道化だったのであった。


それから少しした後ロビンは前方から人の気配を感じた。
逃げてきた方角とその気配からラオウではないことをまず確認して、ロビンは胸をなで下ろす。
眠っているスヴェンから荷物だけを拝借してそのまま起こさず相手の様子を窺った。
キョロキョロ周りを見渡しながら歩いてくる少女。
向こうは警戒しているつもりでもてんでなっちゃいない。
明らかな素人だろうということは一瞬で察しがついた。

「此方には戦う気はないわ」
いつも通り両手を挙げながら物陰から姿を現した。
目の前の女性は一瞬吃驚するが、此方が丸腰なのと戦う気がないのを確認したからか警戒を解いた。
「あのっ!遊戯って子を知りませんか?」
ロビンが次の声をかけようとする前に彼女の方から喋りかけてきた。
「この位の背で髪の毛はツンツンに逆立ってて……」
「残念だけど知らないわ」
一生懸命ジェスチャーをする彼女に両手を挙げたまま知らないというジェスチャーを使って答える。
それを聞くと目の前の女性――杏子はがっくりと項垂れた。
「落ち込んでいるところ悪いんだけどイヴって子を知らない?」
人を訪ねられたので思い出した。
自分には特に探し人はいないのだが、仲間――スヴェンが最後まで気にかけていた子がいたということを。
「イヴ……?私も残念ですが知りません。何しろ此処に来て初めて出会ったのが貴方でしたので……」
先程の念話で18人も死んだという事を知って怯えているのだろうか、身体が小刻みに震え、ロビンを見つめる瞳は潤んでいる。
「――そう、ならもう用はないわ」
別にゲームに乗ったわけでもなく、他人の生死に関わりたくないロビンはくるりと回れ右をした。
「待って下さい!一緒に人捜しをしませんか?」
最初に出会った人を信用して心細い状況から逃れようとする杏子。
「――口だけの仲間ってのが信用できないの、この島じゃ特にね」
振り返りもせずそうロビンは突っぱねる。
「だけど……」
そう呟き、ロビンがちらっと後ろを振り返ると、其処には体中から生える手に動きを封じられた杏子がいた。
ご丁寧にも叫ばれないように口も生えている手で押さえている。
驚きと恐怖で叫ぼうとする杏子だったがそれすら叶わなかった。
「これは貰っていくわ」
手に持っていたロッドとバッグをロビンは杏子から奪い取った。

この島で生き残るには何が必要か?
それは長い日数生き残るための食料と、自分を裏切らない仲間。
そしてあのラオウという男みたいなのを倒す圧倒的な火力を持った武器。
結局あの時自分たちは何故勝てなかったのか?
それは絶対的な火力が不足していたからである。
自分の能力は奇襲で一番活きてくる。
だけどその奇襲すらダメージを与えられない相手にはただ死を待つしか無いのだ。
あの時も攻撃は何度も当たっていたし、チャンスは幾らでも見つけられた。
だけどそのチャンスを活かせる武器が無かったのだ。
攻撃は最大の防御。
つまりは、生き残るためには相手を殺せる位の力を所持していないといけないという結論に行き着いた。
降魔の剣が無い現在、火力は無いに等しい。
勿論火力のある武器でなくてもかまわない。
一見アクセサリや唯の剣のようで小さくなれたり、相手を絶対服従させることの出来るアイテムだって存在したのだ。
一見無用でも実はとんでもないアイテムかもしれない。
ロビンは走って逃げながら手に入れたばかりのロッドを調べてみる。
案の定、儀式用に見えて実は仕込み杖だったらしい。
柄の部分から覗く鈍い光を確認してからバッグにしまう。
「逃げるわよ、スヴェン!」
眠っていた仲間を起こし、借りていた荷物を返しながらロビンは走り去る。
後方でやっと手から解放された杏子が「どろぼーーーっ!!」っと叫んでいるのを聞いて思わず頬が緩む。
「――海賊だったんけどね」
まぁ陸に上がった海賊は唯の賊、つまりは泥棒なのかもしれない。
そんな些細なことであったがロビンは久し振りに笑ったような気がした。





【茨城県/朝~午前】

【ニコ・ロビン@ONE PIECE】
 [状態]:健康(休憩してある程度は疲労回復)
 [装備]:千年ロッド@遊戯王
 [道具]:荷物二人分
 [思考]:1隙あらばアイテムと食料を盗む
     2イヴを探す
     3死にたくない

【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
 [状態]:妖怪化、疲労(ある程度は回復)、予見眼使用不可
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(不明)
 [思考]:妖怪化しロビン絶対

【真崎杏子@遊戯王】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:無し
 [思考]:1.街の探索。遊戯を捜す
     2.疑心暗鬼
     3.海馬と合流。
     4.ゲームを脱出。


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088:勝利への執念 ニコ・ロビン 193:夢、幻の如く
088:勝利への執念 スヴェン・ボルフィード 193:夢、幻の如く
083:少女の行く道 真崎杏子 115:少女の道標

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最終更新:2023年12月14日 03:57